甲状腺機能低下症|(3)統合食養学アプローチによる基本の食事と考え方

2015/11/04/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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甲状腺機能低下症のための食事法(つづき)

甲状腺

甲状腺機能低下症について4回に渡ってお伝えしています。今回は、その3回目、症状の改善と予防に効果のある食事や食品について、前回からの続きを紹介します。

10. 野菜と果物

抗酸化作用が特に強いと言われるビタミンC、ビタミンE、ビタミンA(βカロテン)は、多くの野菜と果物に含まれています。これらのビタミンは、他の栄養素の体内吸収を促し、細胞を酸化ダメージから守り、甲状腺機能低下症の人に多い、老化に似た症状の改善にとって有益に働きます。

是非、野菜と果物を積極的に食べるようにしてくださいね。

ただし注意が必要な野菜があります。

アブラナ科の野菜のゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)

アブラナ科の野菜

アブラナ科の野菜には、ゴイトロゲンが多く含まれています。

ゴイトロゲンの語源は、『肥大化した甲状腺』という意味のゴイターで、甲状腺の機能を阻害する物質です。甲状腺は、甲状腺ホルモンの生成が困難になると、自分自身を肥大化させることで、機能の不足を補おうとしてしまうことに由来しています。

(1)ヨウ素欠乏によって甲状腺機能低下症を起こしている場合

  • アブラナ科の野菜に多く含まれている抗酸化物質イソチアネート(スルフォラファン)は、甲状腺によるヨウ素の吸収を阻害し、ゴイトロゲンとして作用します。そのため症状を悪化させてしまうので、原則、控えめに食べることが求められます。
  • ただし、生のアブラナ科の野菜に、スルフォラファンが直接含まれているわけではなく、食物酵素のミロシナーゼといっしょになることで、スルフォラファンに変換します。
  • 酵素ミロシナーゼは熱を加えることで不活性化するので、アブラナ科の野菜を茹でたり、煮たり、焼いたりすれば、スルフォラファンは造られませんから、アブラナ科の野菜は、熱調理してから食べれば問題はありません。

(2)自己免疫疾患によって甲状腺機能低下症を起こしている(橋本病などの)場合

  • アブラナ科の野菜に含まれているゴイトロゲンよる影響はないという報告があります。

11. 海藻、昆布、海苔(ヨウ素)

ヨウ素は、T3とT4ホルモンの生成に欠かせない成分です。甲状腺の細胞だけが、私達の体の中で、ヨウ素を吸収できる器官です。

そのため、ヨウ素が欠乏すると甲状腺機能低下症が起こります。

(T3とT4については『甲状腺機能低下症の予防と改善(1) – こんな症状ありませんか?』を参照ください。)

(1)ヨウ素欠乏予防とヨウ素欠乏で甲状腺機能が低下している場合

  • 甲状腺ホルモンの生成が不足することを予防し、甲状腺機能低下症を予防するためには、ヨウ素が豊富な食品、例えば、海草や昆布や海苔を食べることが大切です。特にヒバマタと呼ばれる海藻の種類が甲状腺機能にとって効果があることが報告されています。
  • でも、食べ過ぎると、脳下垂体のフィードバック機能によって、返って、甲状腺ホルモンの生成が抑制されてしまい、甲状腺機能低下症の様な症状を起こしてしまいますから、むやみに大量に食べれば良いというものでもありません。多くても少なくてもよくないのです。
  • 健康な成人では一日に150mg、妊婦は220mg、授乳婦は290mgの摂取が推奨されています。ちなみに海苔1枚には約95mgのヨウ素が含まれています。

(2)ヨウ素欠乏症以外の原因で、甲状腺機能が低下している場合

  • 海藻、昆布、海苔など、ヨウ素が豊富な食品の摂取を控える必要があります。

ヨウ素の適切な摂取方法や摂取量については『生命維持と脳に不可欠な微量元素ヨウ素は多くても少なくてもダメ』をご確認ください。

12. キノコ類

キノコ類に多く含まれているビタミンB群は、エネルギー代謝と深く関わりがあります。そのため甲状腺ホルモンの不足による代謝の低下を補ってくれると考えられていますので、積極的に食べてほしい食品群です。

(1)SIBOがある場合

キノコ類からビタミンB群を摂るようにしてくださいね。

13. セレニウム/セレン

ヨウ素が甲状腺ホルモンの生成に不可欠なものであることは、上述した通りです。しかし、体内でヨウ素が食品から抽出される消化の過程で過酸化水素が発生します。そのままでは、過酸化水素が細胞を傷つけてしまうのですが、セレニウムが過酸化水素による害から細胞を守っているのです。

セレニウムが不足すれば、過酸化水素によって甲状腺が傷つけられていくことになります。

また、セレニウムは、T4がT3に変換されるために必要なミネラルです。つまり甲状腺が正常に機能するためには、セレニウムも欠かせないミネラルです。

実際、セレニウムの欠乏が、橋本病の引き金をひくという報告が多くなされています。自己免疫疾患の甲状腺機能低下症(橋本病)の患者で、セレニウム値が低下していることが観察されています。

セレニウムは、グルタチオンの材料でもあります。グルタチオンは体内で抗がん作用抗酸化作用抗炎症作用をもっている成分です。セレニウムが欠乏すると、内臓炎症や癌になる確率も高めてしまうことになります。

しかし、セレニウムも、ヨウ素と同様に多ければ良いとものではありません。

(1)自己免疫疾患による甲状腺機能低下症の場合

甲状腺内の自己抗体を減少させるために必要なセレニウムの量は、一日に200μg以上900μg未満です。

200μg未満では効果がなく、900μg以上で有害となることが報告されています。

また、橋本病の人が、日々200μgのサプリメントを3ヵ月間摂取した場合、自己抗体が50%減少したと報告されています。

統合食養(ホリスティック)ヘルスコーチとしては、健康な人には、食品からセレンを摂ってほしいですが、病気改善のためには、産地や収穫時期や処理方法によって含有量が一定でない自然食品で厳密な量を日々摂ることは、現実的に難しいと考えます。

厳密なセレンの摂取量を管理するためには、1錠の含有量が明記されているサプリメントから摂ることをお勧めします。

セレンを多く含む食品については、『落ち込んだ気分を改善してくれる食べ物 その1(セレン)』をご覧ください。

14. 亜鉛

亜鉛は、T4がT3に変換される時に必要なミネラルであると同時に、甲状腺ホルモンのフィードバック機能をコントロールするTSH(甲状腺刺激ホルモン)の生成にとっても不可欠なミネラルです。

ミネラルの体内吸収は、腸内環境と大きく結びついていますので、腸内環境を整えることが大切です。

(1)甲状腺機能亢進症の場合

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンのフィードバック機能が巧く働かず、甲状腺ホルモンを造り続けてしまう病気です。そのため、TSHの生成に関与している亜鉛は不可欠なミネラルです。

亜鉛は摂りすぎると、銅の吸収を阻害してしまいますので、サプリメントで摂ることには注意が必要です。亜鉛を多く含む食品については『亜鉛を多く含む食品』をご参照ください。

15. 鉄分

鉄分は、T3を細胞核に届ける役割を果たしているだけでなく、細胞がT3を活用することを助けています。

甲状腺機能低下症の人がひどい抜け毛に悩まされる原因のひとつは、鉄分の欠乏です。健康な若い女性でも鉄分が不足してくると抜け毛が多くなります。

鉄分と甲状腺異能低下症との関係については『鉄分不足でも甲状腺機能低下症が起こる』をご参照ください。また、鉄分の機能と鉄分の多い食品については『鉄分はほとんど排出されないのになぜ不足しやすいのでしょうか』をご確認ください。

鉄分の体内吸収を阻害するものは

  • ワインなどに含まれているタンニン
  • コーヒーなどのカフェイン
  • カルシウムのサプリメント

鉄分とカルシウムはいっしょに摂らないことが大切です。

鉄分はビタミンCといっしょに摂ると体内吸収率が高まります。柑橘類などといっしょに食べると良いでしょう。ビタミンC豊富な食品については『ビタミンCは多く摂れば摂るほど美容と免疫力がアップする、の嘘と本当』をご確認ください。

(1)SIBOやDAO遺伝子異常のある橋本病の場合

鉄分とビタミンCはヒスタミンの分解を促進してくれますので、お勧めです。

16. 銅

鉄と結合して、血液中の赤血球の生成に関与している他、鉄の吸収と代謝を高めるためにも不可欠なミネラルです。また、正常な免疫機能の働きにも欠かせません。

ただ、亜鉛を摂り過ぎると銅の吸収は阻害されてしまいます。

(1)SIBOやDAO遺伝子異常のある橋本病の場合

銅がヒスタミンの分解を促進してくれます。

銅の働きについては『銅は摂るべき?摂るべきでない?』をご確認ください。

亜鉛、鉄分、銅は、サプリメントで摂れば良いというものではありません。食品から摂れば、自然とバランスしますので、これらミネラルが豊富な食品をバランスよく食事に取入れていくことが大切です。

生姜には、甲状腺機能にとって有益となるミネラルがバランスよく含まれています。

17. 砂糖とカフェインを避ける

既に、甲状腺機能が低下している人は、カフェインを含んだ飲料を控えることが大切です。

砂糖とカフェインは、甲状腺だけでなく副腎にとっても大敵です。ホルモンバランスを乱し、副腎を疲労させてしまいます。

コーヒーの健康への影響は、プラスとマイナスの両面があり、その功罪には決着がつかないまま(参考『コーヒーは体に良いの?悪いの?』)ですが、近年の研究により、コーヒーのプラス面はコーヒーに含まれるクロロゲン酸やフェルラ酸の効能ではないかということが判ってきました。一方、マイナスの面はカフェインによるものではないかと言われています。

であれば、クロロゲン酸はなどの果物からも摂れますし(参考『不老長寿の果物 – 桃』)、フェルラ酸は全粒穀類(精白されていない穀類、例:玄米など)や種(たね)類(ゴマ等)にも多く含まれていますから、何もコーヒーから摂る必要はありません。

一般的な飲料に含まれるカフェイン量

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ソフィアウッズ・インスティテュートができること

最近、甲状腺機能に問題を抱えている人が増えてきている印象をもっています。

講座の生徒さんの中には必ず一人以上が甲状腺機能低下症の方がいらっしゃいますし、現在までにプライベート・ヘルスコーチング・プログラムにお申込みくださったクライアントさんの8人にひとりは甲状腺に何等かの問題をもっていらっしゃいます。

クライアントさんの多くはヘルスコーチングプログラムを通して、体調の改善だけでなく、実際の数値の改善もされています。

お読みいただいているように、甲状腺機能低下の食事は非常に複雑です。

もしおひとりで取り組むことに不安や難しさを感じていらっしゃるなら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング