【カリウム】欠乏すると心停止の危険があるカリウムの機能と豊富な食べ物

2016/01/26/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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カリウムの食事摂取基準

成人女性1日の目安量2,000mg、目標量2,600mg以上

成人男性1日の目安量2,500mg、目標量3,000mg以上

必要量や推奨量を決定する科学的根拠が乏しいとして、厚生労働省は目安量(健康維持)と目標量(生活習慣病予防)の設定に留めています。

カリウムの性質

カリウムは、体重1kgあたり2gほど体内にあり、その98%が細胞内にあります。

カリウムは、食事から摂る必要のある生命維持にかかせないミネラルです。

カリウムの機能

カリウムは、体内で電解質として働きます。電解質というのは、体液中でイオンになって電気を通す物質です。細胞の内側と外側のカリウムの濃度は、一定に保たれるよう厳密にコントロールされています。

細胞機能の維持(余剰ナトリウムの排出)

細胞膜では、内側と外側全体のカリウムとナトリウムの濃度の差によって、膜電位と呼ばれる、電気化学勾配が発生しています。その濃度差のバランスによって、細胞膜の浸透圧や細胞内の水分量が変化します。(塩分/ナトリウムと細胞浸透圧については『食事中の塩分が腸内細菌と免疫機能に与える影響』もご参照ください。)

細胞膜にあるイオンポンプが、ATP(私達の元気の源/エネルギー)を使ってカリウムと引き換えにナトリウムを細胞から排出し、膜電位を一定にコントロールしています。

平均的な大人の基礎代謝の約20%~40%が、この機能によると考えられていて、細胞膜の電位の維持が如何に私達の生命維持にとって重要であるかが分かります。

カリウムイオン(K+)は、細胞内の体液に主に存在し、ナトリウムイオン(Na+)は、細胞外の体液に主に存在している陽イオンです。正常な細胞では、細胞の内側のカリウムの濃度は外側の約30倍、ナトリウムの濃度は外側の10分の1以下に保たれています。

そうした細胞の仕組みが創られた原始の時代には、ヒトの塩分摂取量はカリウム摂取量の約7分の1だったものの、現代の先進国における1日の塩分(塩化ナトリウム)摂取量は、平均してカリウム摂取量の約3倍(モルベース)と言われています。この、カリウムに対するナトリウム摂取量の爆発的な上昇が、現代人の生活習慣病に関与していると考えられています。

筋肉の収縮と弛緩

膜電位は、筋肉の動きを正常に保つためにも働いています。

神経伝達

カリウムも神経伝達物質のひとつです。

酵素の補因子

カリウムを必要とする酵素はあまり多くありませんが、ATPの活性化酵素炭水化物の代謝酵素ピルビン酸キナーゼの活性に必要です。

脳卒中予防

カリウム摂取量と脳卒中は逆相関の関係があることがわかっています。

また、1日に3,510mg~4,680mgのカリウムを摂取すると、脳卒中の発症リスクが約30%減少し、1日にカリウムを3,500mg摂取する時が脳卒中のリスクが最も低くなると報告されています。

更に、食事中のナトリウムとカリウムの比率が1単位増加するごとに、脳卒中のリスクが22%高くなることが示されています。

腎臓結石予防

食事中のカリウム摂取量を増やすと、尿へのカルシウムの排出が減少します。逆に、カリウムが不足すると、尿へのカルシウムの排出が増加します。

193,676人の参加者を含む3つの大規模な米国のコホート研究(医療専門家フォローアップ研究、看護師健康研究IおよびII) によって、カリウム摂取量が最も少ない下位20%と比較し、最も多い上位20%は腎結石を発症する可能性が33%〜56%低いことが報告されています。

更に、動物性タンパク質とカリウムの摂取量の比率が最も低いグループ(肉よりも野菜を多く食べているグループ)と比較し、最も高いグループ(野菜よりも肉を多く食べているグループ)は、腎臓結石を発症する可能性が41%高いことが示されています。

骨粗鬆症予防

カリウムの摂取量が増えると、尿中に排出されるカルシウムの量が減ります。

欧州で行われた「がんと栄養に関する調査(EPIC)」のノーフォーク研究や高齢者を対象とした韓国で行われた調査では、カリウム摂取量と骨の健康に相関関係があることが判りましたが、因果関係があるかどうかを確認することはできず、カリウムが骨の健康に影響を与えるメカニズムはまだよく分かっていません。

体内のpHは一定に保たれるようになっていて、食事によって生じた酸は、重炭酸イオンによって中和されます。体内で酸を発生させる食べ物は炭水化物やタンパク質などで、重炭酸イオンを提供するのがカリウム豊富な野菜と果物です。カリウムも体内を中和する作用を持っています

重炭酸イオンやカリウムが不足すると、体は骨を溶かしてカルシウムによって体内を中和します。そのため、カリウムを不足させないことで、骨からのカルシウムの流出が抑えられ、結果、骨粗鬆症予防になると考えられています。

低カリウム血症(カリウム欠乏)

血液中のカリウムの濃度が、異常に低い状態を、低カリウム血症と呼びます。食事からのカリウムの摂取量が少ないだけでは、低カリウム血症になることは稀です。

低カリウム血症になりやすい人

ただ次の様な疾患や状態にある人は、低カリウム血症を起こしやすいことが分かっています。

  • 過度の発汗
  • マグネシウム欠乏
  • 慢性的な低栄養状態
  • 下剤の乱用
  • 長時間の嘔吐または下痢
  • 神経性食欲不振症または過食症
  • 利尿薬の服用(詳しくは後述します)
  • 多尿症
  • 腎症
  • 高アルドステロン症

ブラックリコリス(甘草の抽出液を固めた黒いグミ)を日常的に大量に食べると、低カリウム血症になることがあります。甘草には、尿に排出されるカリウムを増やすアルドステロンと同じ効果を持つグリチルリチン酸が含まれています。

低カリウム血症の症状

低カリウム血症は、膜電位と細胞代謝に変化を起こすため次の様な症状が現れます。

  • 倦怠感
  • 筋力低下
  • けいれん
  • 腸の麻痺/膨満感/便秘/腹痛

低カリウム血症が慢性化すると、高血圧や腎臓結石のリスクが高まり、低カリウム血症が重症化すると、筋肉が麻痺したり、心不整脈が起き、死に至ることもあります。

低カリウム血症リスクを高める医薬品

カリウム排出を加速させる医薬品

尿へのカリウムの排出を加速させる作用がある医薬品です。

  • ループ利尿薬|ブメタニド(Bumex)、エタクリン酸(Edecrin)、フロセミド(Lasix)、トルセミド(Demadex)
  • チアジド利尿薬|アセタゾラミド、チアジド、クロルタリドン(Hygroton)、インダパミド(Lozol)、メトラゾン(Zaroxolyn)、クロロチアジド(Diuril)
  • ペニシリン|ペニシリンGナトリウム(Pfizerpen)、メズロシリン(Mezlin)、カルベニシリン(Geocillin)、チカルシリン(Ticar)
  • その他|メチルキサンチン(テオフィリンなど)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム

医薬品ではありませんが、カフェインもカリウムの排出を促します

カリウム排出を増加させる医薬品

ナトリウムの蓄積を促す作用があるため、結果として尿へのカリウム排出を増加させてしまう医薬品です。

  • 鉱質コルチコイド|フルドロコルチゾン(フロリネフ)、ヒドロコルチゾン(コルテフ)、コルチゾン(コルチゾン)、プレドニゾン(デルタソン)
  • 鉱質コルチコイド効果のある物質|甘草、カルベノキソロン、ゴシポール

重度のカリウム喪失を起こす医薬品

尿細管上皮を損傷させることで、重度のカリウム喪失を引き起こすことのある医薬品です。

  • アミノグリコシド系抗生物質|アミカシン(アミキン)、ゲンタマイシン(ガラマイシン)、カナマイシン(カントレックス)、トブラマイシン(ネブシン)、ストレプトマイシン
  • 抗がん剤|シスプラチン(プラチノール-AQ)
  • 抗真菌剤|アムホテリシンB(Abelcet、Amphotec、AmBisome、Amphocin、Fungizone)、フルコナゾール(Diflucan)
  • βアドレナリン作動薬|アルブテロール(サルブタモール、ベントリン)、ビトルテロール(トルナレート)、メタプロテレノール(アルペント)

電解質障害を起こす可能性のある医薬品

  • 抗生物質|テトラサイクリン

カリウム豊富な食品

海藻類や山菜に多く含まれています。やはり山菜系、そして伝統的な和食材に多いです。

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フルーツもカリウムの宝庫です。

フルーツガイド

各フルーツについては、『個性色々カリウム豊富なフルーツランキング』をご参照ください。

DASHに高血圧の改善効果

2014年の米国国民健康栄養調査(NHANES)では、「DASH ダイエット」に、次の様な降圧効果があることが示されています。

  • 高血圧症の人|収縮期血圧(上の血圧)は平均11.4mmHg、拡張期血圧(下の血圧)は平均5.5 mm Hg
  • 健常者|収縮期血圧は平均3.5mmHg、拡張期血圧は平均2.1 mm Hg

「DASH ダイエット」とは

Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を治す食事療法)」の頭文字をとった食事法で、米国保健福祉省の国立衛生研究所に属する国立心肺血液研究所が、高血圧を予防し治療するために考案した食事法です。

1日の食事が、原則、次のバランスに整えられている食事を指します。

  • カリウムとカルシウム豊富な野菜と果物・・8.5食分/カリウム4,100mg相当
  • タンパク質・・適度に十分
  • 脂質・飽和脂肪酸・コレステロール・お肉・甘いお菓子・・少量
  • 加糖飲料・・少量

食品添加物/代替食品としてのカリウム

塩化カリウム

減塩のため、ナトリウム(塩)の代替品として塩化カリウムがあります。食品添加物です。

アセスルファムカリウム

減糖のため、砂糖の代替品としてアセスルファムカリウム(Ace-K)という人工甘味料があります。

アセスルファムカリウムは、厚生労働省やFDA(米国食品医薬品局)によって承認されている人工甘味料です。しかしながら、製造工程で発がん性のある塩化メチレン(ジクロメタン)を使用することから、その微量残留による安全性に疑問がもたれている人工甘味料でもあります。

サプリメント

カリウムのサプリメントに使用されている成分には、様々な形態があります。

  • 塩化カリウム
  • クエン酸カリウム
  • グルコン酸カリウム
  • 重炭酸カリウム
  • アスパラギン酸カリウム
  • オロチン酸カリウム

など

サプリメントの表示の1ミリモル当(mEq)または1ミリモル(mmol)は、約39mgのカリウムに相当します。1日2~3g(2,000~3,000mg)のカリウム摂取であれば、健康な成人の心拍数に影響する可能性は低いと考えられています。

  • 重炭酸カリウムを用いた研究|カリウムの補給によって閉経後の女性の骨形成(骨芽)マーカーが増加し、骨吸収(破骨)マーカーが減少することが示されています。また、骨粗鬆症ではない高齢者(平均年齢69歳)を対象とした2年間のランダム化二重盲検対照試験によって、カリウムの補給によって骨密度が増加することが証明されています。
  • クエン酸カリウムを用いた研究|I型プロコラーゲンのN末端プロペプチド(骨形成マーカー)の血中濃度が上昇し、I型コラーゲンのN-テロペプチド(骨吸収マーカー)の尿中濃度が低下することが証明されました。
  • 塩化カリウムを用いた研究|上と下の両方の血圧を下げる効果が観察されています。特に、高血圧の人で顕著な降圧効果がありました。

しかし、カリウムの追加補給には、深刻な副作用が起こる可能性があります。カリウムのサプリメントの服用については、自己判断せず、必ず医師の診断を受け、医師の指導に従ってください

カリウムのサプリメントによる有害反応

カリウムのサプリメントによる最も一般的な副作用は次の通りです。

  • 吐き気/嘔吐
  • 腹部不快感
  • 下痢
  • かぶれ
  • 高カリウム血症

など

腸溶性塩化カリウム(胃で溶けずに腸で溶けるカプセルに入ったカリウム)のサプリメントの使用後に腸潰瘍が報告されています。

中でも最も心配しなくてはならないのは、高カリウム血症です。

カリウム過剰摂取の副作用

血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態を高カリウム血症と呼びます。具体的には、腎臓のカリウムを排出する能力を超えて、体内にカリウムが蓄積した状態を指します。

高カリウム血症を起こしやすい人

普段、カリウム豊富な野菜や果物を十分に食べていない人(慢性的にカリウムが不足している人)が、サプリメントなどから突然18gを超えるカリウムを服用すると、腎機能が正常な人でも、重度の高カリウム血症を起こします

  • 急性または慢性腎不全
  • カリウム保持性の利尿薬の服用
  • 低アルドステロン症

など

また、赤血球の破裂(溶血)またはケガや重度の火傷による臓器の損傷などによって、細胞内のカリウムが血管に流出することでも起きます。

高カリウム血症の症状

高カリウム血症の症状には、次の様なものがあります。

  • 手足のうずき
  • 筋力低下
  • 一時的な麻痺
  • 不整脈
  • 心停止

など

高カリウム血症リスクを高める医薬品

次の医薬品を服用している人は、カリウムのサプリメントを併用すると高カリウム血症を起こす可能性が高くなります。

  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤|カプトプリル(カプトプリル)、エナラプリル(バソテック)、フォシノプリル(モノプリル)、ラミプリル(アルタス)
  • アンジオテンシン受容体遮断薬|ロサルタン(コザール)、バルサルタン(ディオバン)、イルベサルタン(アバプロ)、カンデサルタン(アタカンド)
  • 抗凝固剤|ヘパリン
  • 降圧剤|β遮断薬、α遮断薬
  • 抗感染薬|トリメトプリム-スルファメトキサゾール、ペンタミジン
  • 強心配糖体|ジギタリス
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)|インドメタシン、イブプロフェン、ケトロラク
  • カリウム保持性利尿薬|スピロノラクトン(アルダクトン)、トリアムテレン(ジレニウム)、アミロライド(ミダモール)

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

やっぱりカリウムは自然食品から摂るのが一番安全で安心ですね。

安易にサプリメントに頼ることなく、野菜や果物をしっかり食べるようにすることで健康は維持されます。

特に、今まで野菜や果物をあまりしっかり食べてこなかった人は、カリウムのサプリメントで安易にカリウム不足を補おうと考えてはいけません。上述した通り、高カリウム血症を起こしてしまいかねません。食事で改善するのが一番確実で安全です。

また、生活習慣病予防や改善の目的でサプリメントを活用したいと考えている人は、まずはお医者様に相談し必要な安全量を見極めてもらってください。

もしおひとりで食事を改善することに不安がある人は、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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