30歳で子宮頸がんとなり、その後、35歳で子宮体がんを発症した女優の原千晶さんの主治医を務めていらっしゃる東京慈恵会医科大学の落合教授のお話を聴きに行ってきました。
なおグラフの数値は、講演の中で、落合教授から提供されたものです。また、原千晶さんが主催されている婦人科系の癌を発症された女性をサポートするよつばの会もご覧くださいね。
子宮の部位って知っていますか?
子宮は洋ナシを逆さにしたような形をしていて、上の大きい丸い部分を子宮体部、下の丸い部分を子宮頚部と呼びます。子宮体部から卵管が出て卵巣につながっています。そして、子宮頚部の下から膣につながっています。子宮体部の内側の膜を子宮内膜と呼び、そこにできる癌が、子宮体がんです。前兆としては子宮内膜炎や子宮内膜症など、子宮内膜の異常増殖(異常に厚くなる)による病気があげられます。
発症の傾向
子宮頸がんについては、10代の女性にワクチンを義務づけるという議論でご存じの方も多いと思いますが、20代後半から30代後半にかけて発症率のピークを迎える癌です。一方で、子宮体がんは、30歳頃からも発症しますが、ピークは50歳から60歳頃です。そして、年齢に関係なく、増加傾向にある癌でもあります。
初期(I期)に発見される人が約70%で、生存率は平均して70-78%と言われています。78人に1人が発症し、444人に一人が死亡する確率です。
このグラフは日本人女性の婦人科がんの発症人数を比較した数値です。やはり乳がんが最も多いのですが、子宮体がんの発症人数が卵巣がんよりも多いことにも気がついてくださいね。
死亡率でみると、やはり乳がんが最も高いのですが、5年生存率でみても、乳がんが最も高く、早期発見が生死を分ける癌であることが判ります。
また、卵巣がんの死亡率は、子宮体がんの倍以上ある上に、5年生存率も他の婦人科系のがんと比較し最も低く、一度、発症してしまうと予後が非常に難しい癌であることが判ります。
一方、子宮体がんは、死亡率も他の婦人科がんとの比較では低く、5年生存率も80%あります。ちゃんと医師の診断を受け適切な治療を受ければ、完治する可能性の高い癌であることが判ります。
子宮体がんの見分け方
子宮体がんの症状には、不正出血、おりものの異常、下腹部の痛みなど、大抵の女性が、一度や二度経験したことがある症状です。加え、子宮体がんの発症ピークが50歳以降と、更年期と重なるため、更年期症状の一つぐらいに考え、特に、疑問も不安も感じられないまま放置されてしまう危険を含んでいる癌でもあります。
子宮体がんが原因で起こる不正出血の症状には、閉経期の不正出血と類似していたり、必ずしも病的でない、今までに経験したのと同じような出血も含まれますから要注意です。
なお、不正出血の原因には、子宮以外からの出血、ホルモンの異常、炎症(膣炎、子宮頚管炎、子宮内膜炎)、子宮頚管ポリープ、腫瘍、がん等、様々ですから、自己診断は危険です。
子宮体がんを発症させるリスク要因
- 肥満、高血圧、糖尿病
- 不妊(卵巣ホルモンの分泌不足)
- 月経不順
- 妊娠・出産経験がない、あるいは、少ない
- 卵巣機能不全、多のう胞性卵巣症候群
- エストロゲン製剤(ホルモン充填療法)の使用
なお、子宮筋腫が癌化することは、ほとんどないそうです。
子宮内膜異常が起こる原因
ひとつは、タイプ1と呼ばれるエストロゲン依存症によって引き起こされるもので、内因性と外因性の2パターンに分かれます。内因性のエストロゲン依存症は、肥満、高コレステロールや糖尿病が原因となっているケースと、卵巣にエストロゲンを過剰分泌する腫瘍ができる、多のう胞性卵巣症候群と呼ばれるものが原因となっているケースがあります。
外因性のエストロゲン依存症は、ホルモン充填療法などによって、エストロゲンを摂取することで起きるケースです。あるいは、大豆製品の食べ過ぎなどによっても起こるとするケースも報告されています。
もうひとつは、タイプ2と呼ばれるエストロゲン非依存症によって引き起こされるもので、やせ型で高齢の女性に多く、委縮内膜の悪性転換によるものと考えられています。
タイプ1によって子宮体がんを発症した人の5年生存率は86%、タイプ2によって発症した人は59%と、エストロゲン依存でないケースの生存率はかなり低めです。
治療法
基本は、手術で病巣を摘出する方法がとられています。特に、エストロゲン依存症によって発症している場合には、子宮を全摘する方法がとられます。以前は、卵巣もいっしょに全摘していたそうですが、卵巣を摘出することで予後のホルモンバランスが崩れることが多かったため、近年では、子宮と卵管のみを切除し、卵巣を温存する方法がとられているそうです。
その他、癌の進行度合いによっては、予後のケアとして、化学療法や放射線療法もとられることがあるそうです。
予防法
- 肥満の予防
- 緑黄色野菜の摂取
- 月経周期の管理
- ピル(経口避妊薬)の使用
- 閉経後のホルモン充填療法の活用については慎重に
ヘルスコーチから予防法への補足アドバイス
落合先生は、予防法として緑黄色野菜の摂取をあげられていますが、例えばインドール3カルビノール(I3C)と呼ばれる物資や3.3ジインドリルメタン(DIM)と呼ばれる物資、どちらも乳がん、子宮頸がん、前立腺がんの予防薬として研究が進められている物質ですが、この物資がどこから発見されたのかと言えば、ブロッコリーや小松菜などのアブラナ科の野菜(緑黄色野菜)からです。 物質としてだけでなく、野菜として白菜やチンゲン菜やカブも、乳がんに関係する遺伝子の異常を予防し保護する効果があるという報告があります。
また、RNFとよばれる遺伝子修復をする遺伝子グループは、緑黄色野菜の摂取によって活性化するという報告もあります。 あるいは、きのこなどの菌類が乳がん発症リスクを64%低減し、玉ねぎやねぎの摂取が、大腸がんを56%、卵巣がんを73%、エストロゲン系のがんを88%、前立腺がんを71%、胃がんを50%減少させたとする報告もあります。
乳製品や動物性タンパク質に多く含まれるIGF-1と呼ばれるインシュリンに類似した成長因子が私達の寿命を縮め、乳がん発症リスクを2倍にし、前立腺がんや大腸がんの発症率を高め、癌の転移を促進させるという報告もあります。
更年期の症状も、エストロゲンそのものや大豆に頼らずとも、サフランや山芋、百合根、ゴボウなどの食べ物を増やすことで改善できると東洋医学も言っています。
食事やライフスタイルの改善でできる癌予防はとても多いのです。
参考:
コラム『食べることで癌を餓死させる方法』
コラム『乳がん予防に効く野菜』
コラム『乳がんの自己検診方法』