甲状腺機能低下症|(2)統合食養学アプローチによる基本の食事と考え方

2015/10/27/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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ヒスタミンの過剰蓄積によって橋本病の症状が起こる

甲状腺機能低下症について、4回のシリーズでお伝えしています。

甲状腺機能低下症|(1)こんな症状ありませんか?』は、甲状腺機能低下症の症状、検査、診断などについてお伝えしました。第二回目の今回は、その症状の改善と予防に科学的に効果のあると報告のある食事や食品について紹介します。

その前に、自己免疫疾患による甲状腺機能低下症(橋本病)について、追加したいことがあります。橋本病の症状が、ヒスタミンの過剰蓄積によって起こる場合があることについてです。

体内のヒスタミンの過剰が、SIBO(サイボ、小腸内細菌過剰繁殖)遺伝子異常で起こっている場合には、自己免疫疾患による甲状腺機能低下症のような症状が現れます。

ヒスタミンとは

多くの食品に普通に含まれている酸化物質です。

また、私達の免疫システムが、有害物質を排除するための免疫反応のひとつとして分泌する炎症性物質です。そのため、ヒスタミンはアレルギーと関連付けて考えられることが多い物質ですが、免疫システムが正常に働いていれば、私達の体はそれをちゃんと分解する仕組みももっています

ヒスタミンは決して悪いものではなく、神経伝達物質として働き、消化酵素の分泌を促す働きをもっています

ただ、過剰に分泌されたり、免疫システムの不調が原因で分解されずに蓄積されてしまうことで、様々な問題を起こします。

ヒスタミンの過剰分泌の原因は主に腸内環境にある

腸内環境が原因となる理由には次の2つがあります。

  • SIBO(サイボ、小腸内細菌過剰繁殖)
  • 遺伝子異常(ヒスタミンを分解する酵素DAOを造れない)

註:SIBOとは、通常大腸にいるべき菌が、小腸や十二指腸で繁殖してしまっている病気で、現時点では抗生物質も乳酸菌治療も決定的な効果はないと言われています。

(1)橋本病と診断された場合

是非、次の検査をしてください。それによって食事法が異なるからです。

  • SIBO検査
  • DAO(ジアミンオキシダーゼ)に関する遺伝子がホモ接合型でないかの遺伝子検査

例えば、通常なら腸内環境を整えるために発酵食品を食べることを勧めますが、SIBOやDAO遺伝子異常を持っている場合は、甲状腺機能低下症を悪化させてしまいます。なぜなら、発酵食品は、ヒスタミンの多い食品だからです。

甲状腺機能低下症の人の栄養状態の特徴

(1)栄養失調

甲状腺機能低下症の人に特徴的なことは、栄養失調に陥ることが多いということです。

甲状腺機能が不全になると、次のような様々な体内酵素の分泌が低下します。

  • 胃酸
  • 消化酵素
  • エネルギー代謝酵素

それにより、体内で栄養素を吸収する力が弱くなるため栄養失調に陥りやすくなります。

消化吸収機能だけでなく、

(2)解毒力の低下

解毒をつかさどっている肝機能が低下します。

便秘になりやすくなったり、有害な物質の体内蓄積が起こります。

(3)情緒に関係するホルモンの低下

情緒と関係する他のホルモンの生成・分泌が低下することで、

  • うつ
  • 感情の起伏が激しくなる
  • イライラする

など、情緒・心の健康にとっても大きな影響が表れてきます。

甲状腺機能低下症の食事の基本的な考え方

  • 栄養素の吸収を行い、幸福ホルモンの90%を造っている腸内の環境を整える
  • 消化吸収の妨げになる食品や食べ合わせを避ける
  • ホルモンの材料となり、代謝を高める食品を積極的に食べる
  • 栽培や飼育にホルモン剤や抗生物質、農薬などが使用されていない自然食品を選ぶ

甲状腺機能低下症のための食事法

甲状腺

1. 良質な油を摂る

善玉コレステロールは、ホルモンの材料になります。

善玉コレステロールが不足すれば、必要なホルモンが体内で生成されなくなってしまいます。善玉コレステロールが豊富な良質な脂肪をしっかり摂ることが大切です。

善玉コレステロールの素となる良質な脂肪は、次の食品から摂ることができます。

  • オリーブ油
  • アボカド
  • 亜麻仁油
  • ナッツ&シーズ
  • ココナッツオイル
  • 抗生物質やホルモン剤が投与されずに育った動物のお肉や卵など

フラックスシードオイル(亜麻仁油)に豊富に含まれているオメガ3不飽和脂肪酸が、甲状腺機能低下による症状の改善に効果があるとする報告があります。

(1)SIBOがある場合

ココナッツオイルが、SIBOの改善に効果があると言われています。(科学的な裏付けは弱い)『キッチンの主役にすべきオイルはどっち:オリーブオイル?ココナッツオイル?

2.トランス脂肪酸の多い油を避ける

トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング、植物油脂)は食品ではありません。詳しいトランス脂肪酸の害については『マーガリンや植物油脂ってそんなに体に悪いの?』をご確認ください。

低脂肪食品や無脂肪にした食品も、ホルモンバランスにとって何の役にも立ちません。

3. 魚介類(特に鰹)、豚肉、鶏肉、ナッツ類(チロシン)

チロシン甲状腺ホルモンの材料です。具体的には、遊離T4をT3に変換するために必要な成分です。(T4、T3については、『甲状腺機能低下症|(1)こんな症状ありませんか?』を参照ください。)

チロシンは、アミノ酸の一種で、体内でフェニルアラニンというアミノ酸から合成することができます。

チロシンもフェニルアラニンも乳製品、豆類(特に大豆)、魚介類(特に鰹)、豚肉、鶏肉、ナッツ類に多く含まれています。

乳製品と豆類については、甲状腺に問題をもっている人にとっては注意が必要な食品ですから、詳細を後述します。

(1)甲状腺機能低下症の場合

しっかりとチロシンを多く含む食品を食べて甲状腺ホルモンが正常に造られるようにすることが大切です。

(2)甲状腺機能亢進症の場合

チロシンが多く含まれる食品は控えることが大切です。

4. 大豆は発酵させてから食べる

大豆には、イソフラボンと呼ばれるエストロゲン様の成分(植物エストロゲン)が含まれており、それがゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)として、甲状腺ホルモンのフィードバック機能をブロックしてしまうことが報告されています。

しかし発酵された大豆製品、例えば、醤油、味噌、納豆、テンペなどは、ゴイトロゲンが失われているので安心です。

つまり、豆腐や豆乳や大豆そのものは避けるようにしましょう。

(1)SIBOやDAO遺伝子異常がある橋本病の場合

大豆はヒスタミンの多い食品ですから、発酵・未発酵に依らず、避けることをお勧めします。

ゴイトロゲンについては、次回、野菜のところで詳しく説明します。

5.その他豆類、豚肉、魚卵、魚類(ビタミンB群)

豆類や豚肉、魚卵、魚類に多く含まれているビタミンB群は、エネルギー代謝と深く関わりがあります。甲状腺ホルモンの不足による代謝の低下を補ってくれますので、積極的に食べてほしい食品群です。

ビタミンB12は魚介類に多いビタミンです。

(1)DAO遺伝子異常がある場合

ビタミンB6やB12はヒスタミンの分解を促進してくれます。是非、豆類やナッツ類、シーズ類を多く召し上がるようにしてください。

ただし、ナッツとシーズの食べ方は、必ず、後述を参照してください。

ビタミンB群については、『意外と知られていないビタミンB群の正しい摂り方』をご参照ください。

(2)SIBOがある場合

豆類・ナッツ・シーズ以外の食品からビタミンB群を摂るようにしてください。

(3)DAO遺伝子異常またはSIBOのある橋本病のヴィーガンの場合

動物性食品以外のビタミンB12源は海藻だけなので、サプリメント等でビタミンB12を摂ることをお勧めします。

海藻についてはシリーズ第3回で詳細をお伝えします。

6.カゼインを含む乳製品を避ける

(1)橋本病の場合

牛乳|含まれているカゼインと呼ばれるタンパク質の消化分解が上手くできないと言われています。それは、ローミルクであっても同じです。そのため、牛のミルク、それを使用した乳製品は避けた方が良いでしょう。

カゼインは、様々な自己免疫疾患との関係性が報告されている物質ですから、甲状腺に問題が無い人も注意が必要です。

ラクダのミルク|カゼインを含んでいないため、問題はないだろうと言われています。

日本でラクダのミルクを探すのも難しいので、ミルクを飲まなくても他にタンパク源もカルシウム源もありますから特に飲む必要はありません。

ヤギ羊のミルク|牛乳と類似したタンパク質の構造をもっています。しかし、健康な人に害があるとする報告はありません。しかし、橋本病の人は避けた方が無難でしょう。

健康な人が牛乳の代替品として飲んでも良いとは思います。

7. 全粒穀類(玄米、雑穀)を食べる

低炭水化物ダイエット、炭水化物抜きダイエットは、T3濃度を低下させ、甲状腺機能を不全にすることが報告されています。

精白された単純な炭水化物(白米、白い小麦粉、うどん、パスタ、白砂糖)を避け、精白されていない複雑な炭水化物(玄米、雑穀、全粒粉、豆類、芋類)を多く食べるようにしましょう。

(1)橋本病など自己免疫疾患の場合

低炭水化物ダイエットによって体調が改善する人もたまにいます。

でも一般的には、橋本病の患者の多くは、胃酸などの消化酵素の分泌が低下しているので、タンパク質が効率よく消化できません。そのため、タンパク質よりも消化の良い炭水化物を多く摂るようにすることで、体に必要なエネルギーが得られ、慢性的な疲労感が改善すると考えられています。

グルテンについて

橋本病の人は、シリアック病かどうかに関わらず、グルテンを抜いた食事が症状の改善に効果があります

グルテンは、小麦、大麦、ライ麦などに含まれているタンパク質の一種で、うどんのコシやパンのモチモチ感をだす成分です。

エイミー・マイヤーズ医学博士が診断した橋本病患者のうち、シリアック病をもっていた人は、10%だったのにも関わらず、90%の人がグルテンフリー食事療法の後、体調が改善したと報告されています。

8.アーモンドなどのナッツ類は皮をむく

アーモンドやその他ナッツにある薄い皮ゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)が含まれていると考えられています。

そのため、ナッツ類を食べる際には、薄皮をむいて中身だけを食べるようにしてください。

甲状腺機能低下症の人にナッツアレルギーの人が多いという報告もあり、偶然ではないように思います。

9. 腸内環境を整える

腸内細菌は、体内の栄養吸収と代謝に大きな影響をもっています。そして私達の体と心に必要なホルモンを造り、ビタミンをも造っています。また、免疫細胞の60%は腸内にあります。

自己免疫疾患についても共生細菌との関連性が示唆されています。

未だ因果関係を証明するまでには至っていないものの、そうした他の病気との関連性や示唆される因果関係から、甲状腺機能低下症、特に、自己免疫疾患による橋本病などにおいて、腸内細菌が果たす役割は大きいように思います。

腸内細菌のエサとなる食物繊維の多い野菜や果物、腸内細菌を増やす発酵食品を食事の中に積極的に摂り入れていく価値はあるように思います。食事と腸内細菌については『腸内細菌の構成は遺伝と食事のどっちできまる?』をご参照ください。

ただし、

(1)橋本病の場合

SIBOやDAO遺伝子異常がないことを必ず確認してください。

(2)SIBOやDAO遺伝子異常がある場合

発酵食品を避け、代りに、ハチミツ(マヌカハニー)や水溶性食物繊維を多く含む食品を(果物と野菜)召し上がるようにしてください。

おまけ:ヒスタミンの多い食品

  • 発酵食品全般
    • 発酵乳製品:チーズ、ヨーグルト、ケフィアなど含む
    • お酢(酢で漬けたピクルスを含む)
    • 味噌、醤油、納豆など
  • スモーク肉類(ハム、ソーセージなど)
  • 大豆と大豆製品(豆腐、豆乳など)
  • 柑橘類
  • ドライフルーツ(特に、アプリコット、チェリー、クランベリー、プルーン、レイズン、デイツ等)
  • トマト、トマト製品(トマトソース、ケチャップなど)
  • ホウレン草
  • 食品添加物全般
  • チョコレート
  • クローブ、シナモン、チリなど

>>『甲状腺機能低下症の予防と改善(3)- 食事(つづき)

<<『甲状腺機能低下症|(1)こんな症状ありませんか?

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング