グルテンフリーで体調が良くなるは思い込み現象？とグルテンフリー食品の落し穴

2016/11/10/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表　公認統合食養ヘルスコーチ（CINHC）、公認国際ヘルスコーチ（CIHC）の森ちせです。

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シリアック病をもっている人にとってグルテンは忌避食品

ここ数年、欧米を中心にグルテンフリーの食事の人気が爆発的に伸びました。そして、日本でもグルテンを抜くことで健康になれるといったコマーシャルや商品や健康指導が行われるようになりました。

グルテンは、シリアック病をもっている人にとっては、忌避食品です。（シリアック病については『シリアック病・グルテン不耐症ってご存じですか？』を確認ください。）

シリアック病をもっていない人は、グルテンを食べたところで、大腸炎を起こしたり、様々な体調不良を起こすことはないと、医学的には言われています。

でも、シリアック病ではないものの、グルテンに対する耐性がない／過敏症だとする人達が爆発的に増加し、また、「グルテンを抜くことで体調が良い」と主張する人達が増加していることも事実です。

なお、裏付けとなる研究論文は最後に参考文献として一覧にしています。

グルテンで不調が起こるという人のほとんどは自己診断

「グルテンを抜くことで体調が良い」という主張が本当なのか、単に「そう思い込んでいるだけ」なのかを調べた研究はありますが、少ないです。

少ない理由として、研究者は次の理由を挙げています。

「シリアック病でないものの、
グルテン不耐症／過敏症（NCGS）がある
という人のほとんどは、自己診断です。

自己判断でグルテン・フリーの食事法を実践しており、
医療機関で正式な診断を受けた人はほとんどいません」

病院を受診してくれないので、そもそも調査できないという問題があるようです。

グルテンフリーは思い込み現象？

グルテンが入っていると思い込むと

2011年にグルテン不耐症／過敏症があると自己申告した34人を対象に行われた研究があります。

グルテンフリーの食事を２週間提供した後、被験者をランダムに次の２つのグループに分けます。

  1. 小麦のパン＆マフィン
  2. グルテンフリーのパン＆マフィン

しかし、被験者には、どちらの食事が提供されているかを知らせません。また、食事を配膳するスタッフもどちらを配っているのか知りません。つまり二重盲試験が行われました。

パンとマフィンという形状から「グルテンが入っている」と被験者が思い込むことは簡単です。

実際には、少数の被験者のみにグルテン入りの食事が提供され、被験者のほとんどにグルテンフリーの食事が提供されたのにも関わらず、１週間後には、ほとんどの被験者が体調を崩し始めたことが報告されています。

研究者は、

グルテンを食べると体調が悪くなると
言っている人のほとんどは、
「思い込み」の可能性がある

と述べています。

グルテンが入っていないと思い込むと

2012年イタリアで、920人のシリアック病ではないグルテン不耐症／過敏症（NCGS）の人達を対象に行われた研究です。

この調査では、小麦粉かグルテン・フリーの粉のどちらかが入っているカプセルが使われました。

カプセルなので、その形状からどちらが渡されているか知ることはできません。今回も二重盲試験が行われました。

結果、被験者の3分の2に次の症状が現れたことが報告されています。

  • グルテンフリーを渡されているのに症状が悪化
  • 小麦粉を渡されているのに症状が改善

グルテンフリー効果の３分の２は思い込み

上記した調査の結果からは、グルテン不耐症／過敏症だと自己申告している人の３分の２は、そう思い込んでいるだけということになります。

あるいは、グルテンフリーで体調が改善したように思い込んでいるだけということになります。

そして、残りの３分の１の人は、確かに、小麦過敏症（NCWS）が存在する可能性を示したことになると研究者は述べています。

ただし、ここで示されたのは、小麦過敏症の存在であって、グルテン不耐症／過敏症ではないことに注意が必要です。

小麦過敏症

過敏性大腸症候群（IBS）を伴う、シリアック病ではない小麦過敏症（NCWS）の人達を、次の２つのグループに分けています。

  1. 小麦にだけ反応するグループ
  2. 他の食物アレルギーももっているグループ

そして、それぞれの血液成分などを、次の２つの患者の血液成分と比較した研究がありました。

  • 過敏性大腸症候群（IBS）の患者
  • シリアック病の患者

小麦過敏症の臨床的特徴

  • 抗グリアジン抗体-IgA＆IgGが通常よりも多い（遅延型アレルギーの特徴）
  • 血球計算において好塩基球の活性が通常よりも高い（感染症、アレルギー、リュウマチ、悪性腫瘍、呼吸疾患、アトピーなどの特徴）
  • 組織学的には、小麦過敏症の患者の十二指腸と大腸の粘膜には、好酸球浸潤が見られる

総合的には

  • 小麦だけに反応する小麦過敏症の人の臨床的特徴は、シリアック病患者に近い
  • 他の食物アレルギーももっている小麦過敏症の人の臨床的特徴は、小麦アレルギー患者に近い

とのことです。

グルテン不耐症／過敏症だと自己判断している人で、他の食物アレルギーも持っているのなら、グルテン過敏症ではなく、小麦アレルギーかもしれません。病院でアレルギー検査をしてみてはどうでしょうか。

グルテンフリー食品の注意点

グルテンフリーとヘルシーは違う

「グルテンフリー」と書かれた食品の全てが健康的であるとは限りません。

小麦からグルテンを抜くために使用された薬品の残留やグルテンの食感を再現するために使用された添加物の存在が心配です。グルテンの食感のためにオイルや食物繊維の少ないでんぷんが使用されていることが多いです。

また、小麦ではなく、米粉や芋のでんぷんが使用されている場合にも、食物繊維の量はあまり多くありません。

ビタミンB群と鉄分不足

小麦からグルテンを抜く過程で、ビタミンB群と鉄分が失われることが指摘されています。

グルテンを抜いた小麦を使ったり、グルテンフリーの小麦を使った食品を購入している場合には、他の食品からそうした栄養素を補足できるようにしましょう。

卵白の過剰摂取

グルテンフリーの食品には、グルテンの食感を再現するために卵白が多用されていることが多いです。卵白は卵アレルギーの原因物質を含んでいますから、卵アレルギーを持っている人は要注意です。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

グルテン不耐症／過敏症（NCGS）は、本当に存在するのだと思います。

ただ、グルテン・フリーで体調が改善したと主張する人達のほとんどは、「思い込み」だということも本当なのだと思います。

もちろん、当人が「体調がよくなった」と感じるのであれば、それは当人にとっての真実です。

ただ「思い込み」に振り回されて、神経質なほどにグルテンを避けるような生活はあまりに窮屈ではないでしょうか。

グルテンフリーで体調が改善したと感じる人は、自己判断せずに医療機関でちゃんと診断してもらうことが重要です。もし本当にシリアック病ならば、ちゃんと治療をしなければなりません。

また、「グルテンフリーって素敵／カッコいい／セレブっぽい」というような、アイデンティティ迷走から「グルテンを抜くと体調が良い」と主張しているような場合には、摂食障害の入り口にいるか、既に摂食障害を起こしている可能性があります。

食事は、あなたの心と体のためにあるべきです。

食事に振り回されるのは本末転倒です。

グルテンとの上手な付き合い方については、『今更ですが、グルテン極悪説をどう思いますか？』をご覧ください。健康な人にとっては、全てのグルテンが悪いわけではないんですよ。避けるべきもの、大丈夫なものがあります。

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参考文献：

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング