「赤ワインは体に良い」は本当?~フレンチ・パラドックスに異議あり!お酒は50を過ぎてから楽しみましょう!

2019/10/03/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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2014年12月1日

フレンチ・パラドックス?

 ヌーボーも解禁され、これからクリスマス、忘年会シーズン。お酒が美味しい季節ですね。別に、お酒はいつ飲んでも一年中美味しいわと、いう人もいるとは思いますが。

 特に、赤ワインは、その赤色に含まれているポリフェノール、具体的にはレスベラトールと呼ばれる抗酸化物質が、アンチエイジングに効くと10年くらい前に話題となって以来、女性ファンを増やしてきた飲み物です。

 ワインの健康への効能が知られることとなった調査は『French Paradox(フレンチ・パラドックス、フランスの逆説)』と呼ばれるもので、今から約25年も前、1990年代に発表された論文です。

 当時、動脈硬化や心疾患リスクを高めると言われていた飽和脂肪酸の多い、チーズやバターなどの乳製品を日常的に食べる習慣にあるのにもかかわらず、フランス人が他の欧州諸国の人々と比較し、悪玉コレステロール値が低く、心疾患・脳卒中にかかる人口が少なかったことに由来しています。フランス人の食生活が他の欧州諸国と異なる点は、欧州1位のワインの消費量です。そのため、飽和脂肪酸の悪影響からフランス人を守っているのは、ワインに違いないということとなり、ワインが心疾患につながる成人病予防になるという認識が広がったものです。

 その後、赤ぶどうに含まれているレスベラトールというポリフェノールに抗酸化作用があることが発見され、赤ワインがより注目されることとなったのです。

赤ワインの不都合な真実

 しかし、ここへきて、赤ワイン信仰者には、不都合な真実が次々と発表されてきています。

(1)心疾患リスクの低減効果はワインだけに限らない

 以前からWHO(世界保健機構)が、アルコールはどんなものでも、平均して、60以上の病気を引き起こすと警告していますが、アルコールが健康に及ぼす影響は、病気の種類によって異なります。

図『アルコール消費と生活習慣病等のリスク』

 上の図は厚生労働省のホームページに掲載されている「アルコール消費と生活習慣病等のリスク」というグラフですが、これによれば、確かに『フレンチ・パラドックス』の中で、ワインに効果があると言われた心疾患や脳梗塞は、適度な量のお酒なら、発症リスクが低下することが判ります(図(c))。でも、それは、ワインに限ったことではなく、他のアルコールによっても同じことが言えるわけです。

 それに、最近の研究によって、乳製品由来の飽和脂肪酸は心疾患リスクの真犯人ではないことが判っています。冤罪だったんです。真犯人は、動物肉由来の飽和脂肪酸とトランス脂肪酸(=マーガリン、植物性油脂、ショートニングなど)であることが報告されています。つまり、フレンチ・パラドックス自体が存在していなかったことになります。(注:植物性油脂と植物油はまったく異なるものなので混同しないでね)

(2)がんリスクは飲酒量に比例して上昇する

 心疾患や脳梗塞のリスクは、適度な飲酒で低減できても、脂質異常症などの肥満症や乳がんなどのがん(図(a))は、アルコールを飲んだ分だけ、発症リスクも高くなります。そして、肝硬変(図(b))は、ある程度の酒量までは、発症リスクが高くないものの、一定量を超えた途端にリスクが跳ね上がる、油断した頃にやってくる病気だということが判ります。

 乳がんは、女性に最も多いがんです。その原因は、女性ホルモンの影響や運動不足、肥満などが知られていますが、アルコールもそのひとつです。図の通り、飲酒量に比例して乳がんのリスクは、直線的に上がります。女性に多い骨粗鬆症も、多量の飲酒によって、骨密度が減少することが判っています。ワインだからと言って、そのリスクが低くなるという報告は、いまのところ、どこからもありません。

ベジ系50代以上の女性は例外

 ただ、葉酸を十分に摂取している(野菜を多く食べている)50歳以上の女性は、適度なお酒であれば、乳がんリスクが高くならないことが最近のハーバード大学の研究で報告されています。そうした女性は健康寿命も長いという報告もあります。お酒は“ベジ系アラフィフ”の女性になってからのお楽しみということですね。

 赤ワイン信仰者にとって不都合な真実、まだまだ続きます。

(3)赤ワインのレスベラトールには効能はない

 『In Vino, Veritus (インヴィノ・ヴェリタス、真実はワインの中に)』と呼ばれる研究の成果が、今年(2014年)9月の欧州心臓病学会で発表されました。

 結論は、「適量のワインを飲み、運動習慣のある人にのみコレステロール値の改善が認められ、運動習慣のない人には効果が認められなかった。また、赤か白かで、効果に有意な差はみられなかった」とされています。

 「適量」とは、1週間に男性はグラス2杯、女性は1杯までのワイン、「運動習慣」とは、週に2回以上の運動を行うことと定義されています。また、この研究で使用された赤ワインは、白ワインの10倍以上の抗酸化物質、6倍以上のレスベラトールが含まれているものでしたが、にもかかわらず、赤と白の効果に差が見られなかったということは、ワインになってしまうと、レスベラトール等の抗酸化物質は効能を失ってしまうということですね。レスベラトールを摂るなら赤ブドウジュースにしましょう。

(4)8割以上のワインから危険成分を検出

 フランス産のEU域内用と輸出用の8割以上のワインと、全てのワイン系スピリットから1種類以上のフタル酸エステルが検出されたと今年(2014年)8月に報告されています(参考文献12)。これは、ワインの効能云々ということ以前に、危険な話です。

 フタル酸エステルは、プラスチック製品やコーティング剤、ペンキなどに、その耐熱性や柔軟性を高めるために添加される化学物質で、化粧品や香水、マニキュア、サプリメントの凝固剤としても使用されています。フタル酸エステルは、私達のホルモンと非常に組成が似ていることから、体内に入ると、ホルモンのような作用を起こしてしまい、特に、生殖機能に対して異常を起こすことが知られています。

 フタル酸エステルには、いくつかの種類がありますが、今回の調査で4種類のフタル酸エステルがワインから検出され、1つは既にEUで使用が禁止されているものであり、他の3つについても、来年(2015年)1月から使用禁止が決定されている添加剤です。

 では、食品に使用することが禁止されているはずの物質がなぜ混入してしまったのでしょうか。

 醸造に使用する大桶、ホースやバケツ、発酵用の大樽のコーティング剤として長年使用されてきたフタル酸エステルが年月を経ることで、ワインやスピリットに徐々に溶け出していると考えられています。フタル酸エステルは、エタノール(アルコール成分)と親和性が高い(よく溶ける)ため、アルコール度数の高いスピリットから、より多くのフタル酸エステルが検出されたのです。

EUのオーガニック・ワイン基準には設備基準がない

 2013年7月に発表されたEUのオーガニック・ワイン基準(2012年以降のワインから適用)の中では、原料となるブドウが有機栽培であることや、醸造の過程で使用する二酸化硫黄などの添加剤の量を制限しているものの、醸造設備の素材についての規定はありません。そのため、いくらEUからオーガニック認定を受けたワインであっても、その醸造の過程で使用する設備が老朽化していれば、危険物質が混入している可能性は確実です。残念なことに、今のところ、私達消費者が、設備の質について客観的に確認できる方法はありません。

 これはフランス産のワインに限らず、醸造酒全般、特に、老舗の蔵で造られるプレミアム品であればあるほど、施設の老朽化が推察されることから、同様のリスクが懸念されることのように思います。

「酒は百薬の長」は嘘か?

 では、フタル酸エステルの混入問題は別にして、お酒は、百害あって一利なしの飲み物だったのでしょうか。唯一健康に良いと言われてきたワインにまで裏切られたら、後は、何を飲めば良いと言うのでしょう。お酒は適量であれば、薬になる、「酒は百薬の長」と、古代から言われてきたことは、嘘だったのでしょうか。

ここで大切なのは、「酒」が意味しているものです。少なくとも古来の酒は、蒸留酒でも醸造酒でもありません。発酵酒です

 ギリシャ神話にでてくる、神々の飲み物「ネクター」は、生ハチミツに水を加えて発酵させただけのものです。日本酒も同じです。もともとは穀類をつぶして水と混ぜ発酵させただけのものでした。そして古代ギリシャ人が神々にネクターを供えたように、日本人もまた、お酒を八百万(やおよろず)の神々に奉納してきました。ワインも、もともとは果物の搾り汁をそのまま発酵させただけのものです。そしてキリスト教に代表されるように、宗教儀式と密接に関係して用いられてきた飲み物です。

 生ハチミツにしても、穀類にしても、果物にしても、発酵という作用によって、まったく違った次元の飲み物が生まれます。そうした過程に古代の人々は、超人的な力、神をみたのでしょうね。また、自然に任せ発酵させて造るこれらの古代酒は、大量には造れませんから、祝いの席など、特別な機会にだけ許された神聖な飲み物でした。そして、その飲み物を飲むことで、自らもまた、神に近い存在になれるような気分、つまり、「酔い」が、特別な体験であったことは想像できます。

 つまり、「百薬の長」となる酒とは、年に何回かだけ、適量、皆で飲む発酵飲料だったということです。

 味を均一にするために菌やカビを人工的に改良し、様々な香料を添加し、大量生産された現代のアルコールには、冒頭で述べたWHOの警告通り、発酵飲料としての効能は期待できません。そして、毎日、何杯も飲むようでは、やはり百害あって一利なしです。

 「なぜキリストは、水をワインに変えたのか?」「ワインの方がビールに変えるより簡単だったから」というジョークがあります。単なるジョークですが、人間が手を加えて加工すればするほど、アルコールは神の手を離れ、神がかった効能は失われ、属人的な「酔い」だけが残るという示唆に、私には聞こえてしまいます。

 もちろん、人生の楽しみとしてのお酒を否定するつもりは、まったくありません。

 ただ、赤ワインであろうとなかろうと、市販のアルコールに、期待するほどの健康効果はないということを認識した上で、この季節、人生の楽しみが、人生の悲劇になるような飲み方だけはご注意くださいね。

 あるいは、“ベジ系アラフィフ”女子になるまで、待ちましょう。

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【参考文献】

  1. Fats and Cholesterol: Out with the Bad, In with the Good”, School of Public Health, Harvard University
  2. The French paradox: lessons for other countries”, Jean Ferrieres, Jan 2004; 90(1): 107-111.
  3. Resveratrol May Not Be The Elixir In Red Wine And Chocolate”, ALASTAIR BLAND, May 13, 2014
  4. Wine and Exercise: A Promising Combination”, JAMES HAMBLIN, SEP 3 2014
  5. 飲酒量と健康リスク」, eヘルスネット, 厚生労働省
  6. 女性の飲酒と健康」, eヘルスネット, 厚生労働省
  7. Wine, Women and Health”, Margie King, June 9th 2013
  8. In Vino Veritas (IVV) Study: Randomized trial comparing long-term effects of red and white wines on markers of atherosclerosis and oxidative stress”, Milos Taborsky
  9. Wine, alcohol, platelets, and the French paradox for coronary heart disease“, Renaud S, de Lorgeril M., Lancet. 1992 Jun 20;339(8808):1523-6
  10. Saturated Fats Don’t Cause Heart Disease”, AUSTIN PERLMUTTER, MARCH 19, 2014
  11. Saturated fats and heart disease link ‘unproven’”, 18 Mar 2014, Chowdhury R, et al., Annals of Internal Medicine
  12. Contamination of wines and spirits by phthalates: types of contaminants present, contamination sources and means of prevention”, Chatonnet P, Boutou S, Plana A., Food Addit Contam Part A Chem Anal Control Expo Risk Assess. 2014 Sep;31(9):1605-15. doi: 10.1080/19440049.2014.941947. Epub 2014 Aug 7.
  13. EU rules for organic wine production”, IFOAM, Jul 2013
  14. Cooked”, Michael Pollan, 2014

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング