炎症性不妊症(2)男女の妊娠力に影響する炎症性疾患を改善する食事

2023/05/30/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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抗炎症食は妊孕性を改善できるか

炎症性不妊症って何?妊活をサポートする食事と食品に関する最新研究報告』からの続きです。

体内炎症を予防改善するような食事によって、体内炎症を抑えることができれば、妊孕性は改善するのでしょうか。

「可能です。」

と、シュメーリング医師はおっしゃっています。

妊孕性改善のための食事指導を受けた女性の排卵周期が安定し、妊娠の可能性が高くなったことが既に、数十年前に観察されています。

また、雑誌『栄養素(Nutrients)』に2022年に掲載された複数の論文のレビューでも、抗炎症食が不妊症の人々にとっての有力な希望になることが示唆されています。

そこに紹介されていた、様々な炎症性婦人科系疾患の改善に効果を示した食品/食事と、男性の精子の質の改善に効果を示した食品/食事について、ご紹介します。

生理周期・生理痛の改善と食事

定期的で正常な月経周期は、妊孕性の中心的な役割をもっています。

一方で、不規則な月経周期や長すぎる/短すぎる月経周期は、無排卵月経や様々な婦人科系疾患がある可能性があり、妊孕性を大幅に低下させることが示されています。

そして、多くの研究によって、食事を改善することが月経周期の正常化や痛みの改善にとって有効な方法であることが支持されています。

実際、ソフィアウッズ・インスティテュートのプライベート・ヘルスコーチング・プログラムのクライアントさん達は、プログラムを通して、重い生理痛/PMSから解放されていますので、私の実体験からも支持できます。ご参考まで『ケース報告|初めて鎮痛剤なしで生理を過ごせた女性』をご覧ださい。

野菜と果物とオリーブオイル

スペインの女子大学生311人を対象に行われた横断研究では、地元スペイン料理と食材(地中海式食事法)を習慣的に食べる度合いが高い女性と比較して、低い女性は、月経周期が長くなる傾向があり、オリーブオイルを毎日使用している女性は、経血過多にならない傾向があることが報告されています。

更に、観察研究のシステマチック・レビューは、果物と野菜の摂取量が原発性月経困難症と月経痛の低下/改善と関係していることを報告しています。

魚とオメガ3不飽和脂肪酸

炎症に関与している生理活性物質のプロスタグランジン(PGF2-αやPGE2など)は、子宮内膜組織へ血流を促す役割を担っていて、局所的な低酸素と平滑筋の収縮を司り、結果、月経血を生じさせます。

魚由来あるいは植物性のα-リノレン酸から変換される抗炎症成分(オメガ-3脂肪酸のEPAとDHA) は、血中のプロスタグランジンを減少させることによって、月経痛と月経困難症を改善できると考えられています。

生理痛やPMSを抱えている人は、野菜と果物、魚を食事に増やすことから始めてはいかがでしょうか。また、『生理痛・PMSに統合食養学的アプローチ』もご参照ください。

子宮内膜症の改善と食事

子宮内膜症は、エストロゲン過剰による慢性炎症と定義されている、最も一般的な婦人科疾患の1つです。生理がある年齢の女性の6~12%が罹患し、不妊症の女性の35~45%が罹患している、妊孕性に影響を与える疾患です。

子宮内膜症では、プロゲステロン(抗炎症特性を持つ女性ホルモン)が減少することで子宮内膜が破壊され、受精卵を着床させるために増殖・肥厚しなければならない子宮内膜の脱落膜化と呼ばれるプロセスが阻害され妊娠が妨げられます。

抗炎症性成分を含んだ食事は、炎症と酸化ストレスを改善し、子宮内膜症の全ての症状と痛みを改善できると考えられれています。

エキストラヴァージン・オリーブオイル

子宮内膜症の改善にとって、食事の有効性を調べた臨床研究(ヒトを対象とした研究)と動物実験のシステマチック・レビューは、エキストラヴァージン・オリーブオイルが、炎症や疼痛管理を含め、子宮内膜症にプラスの効果を及ぼすことが示されています。こうした効果は、非ステロイド性抗炎症剤イブプロフェンと構造的に類似した成分オレオカンタールの作用によって生じると考えられています。(詳しいオリーブの機能については『オリーブ』と『オリーブオイル』をご参照ください。)

だからと言って、イブプロフェンが子宮内膜症を治してくれるかと言えば、それは違います。イブプロフェンの危険性については『イブプロフェン』をご確認ください。

ビタミンE&C

他の研究では、抗酸化ビタミンのビタミンEとCによって、子宮内膜症による炎症と酸化ストレスが減少することが示されています。脂質過酸化を改善し、抗酸化作用とフリーラジカル除去を促進することによると考えられています。

ただし、ビタミンEとCをサプリメントで摂取する際には注意が必要です。詳しくは『ビタミンE』『ビタミンC』をご確認いただくと共に、これらビタミンを多く含む食品を食べることをお勧めします。

ご参考まで、ビタミンCとビタミンEの両方を1日の必要量の10%以上を含んでいる果物を調べてみました。すると厚生労働省の食品成分表に登録のある果物の中では、上の画像の18種類だけでした。

クロレラ

これは、ソフィアウッズ・インスティテュートが独自に入手した情報ですが、緑藻のクロレラが、子宮内膜症の女性の子宮と膣内の共生細菌の顔ぶれ改善をすることで、子宮内膜症を改善する可能性が報告されています。詳しくは、『クロレラ』をご確認ください。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の改善と食事

PCOSを発症している人の75%が何等かの妊娠出産に関する問題を報告しています。難治と言われるPCOSを発症している女性にとって妊活は、無力感、ストレス、不安を伴う大きな負担となります。

PCOSの女性には、軽度の体内炎症があるのが一般的です。特に、C反応性タンパク質(CRP)の値が高いことが判明しています。こうした高い炎症状態が、PCOSが不妊症を起こす一因となっている可能性があるため、治療の選択肢として抗炎症食が提案されています。

抗炎症食(運動の有無に関係なく)は、体内炎症を直接減少させることで、PCOSによる循環器系と内分泌系の改善と共に、妊孕性を改善することが、閉経前の18,555人の女性を対象とした前向き研究によって裏付けられています。

全粒穀類と食物繊維

過体重、肥満症、そしてPCOS関連不妊症をもっている米国人女性の食事調査をした横断研究では、全粒穀物と食物繊維の食事摂取量の不足が顕著であることが報告されています。

炭水化物を含む食事中のブドウ糖の摂取を減らし抗炎症食を取り入れることによって、排卵性不妊症が予防されることが示されています。また、抗炎症食による体重減少と脂肪減少が間接的に、妊孕性の改善に有益な効果をもたらしている可能性があるとのことです。

メトホルミン(糖尿病治療薬)

近年実施されたランダム化比較試験では、PCOS を有する過体重の150人の女性を対象に、抗炎症食の妊孕性に対する効果を調査しています。被験者は12週間、次のどちらかを実施します。

  1. 抗炎症食と運動
  2. 抗炎症食と運動とメトホルミンの服用

抗炎症食と運動を実施したグループでは、7%の体重減少と併せて、月経周期と自然妊娠が向上したことが報告されています。体重減少はメトホルミンを摂取したグループと同等でした。

また、PCOSの女性76人を対象とした別のランダム化比較試験は、妊娠前と妊娠中におけるメトホルミン服用とカロリー制限のない低GI食が流産を40%から20%に減少させたとし、メトホルミンの使用の有効性を支持しています。

過体重・肥満症を伴う多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の人には、抗炎症食と運動に加えてメトホルミンの処方が効果的だと考えられますが、過体重や肥満症のないPCOSの人は、抗炎症食と運動で十分なようですね。

不妊治療の成功と食事

体内の炎症性物質(C反応性タンパク質、CRP)が低いほど、体外受精において胚移植・卵母細胞採取率が高いことが判明しています。

体外受精の流れ|卵巣刺激(排卵誘発)⇒ 卵/精子採取 ⇒ 媒精 ⇒ 胚培養 ⇒ 胚移植

しかし、細胞質内精子注入法(ICSI)や体外受精(IVF)などの不妊治療を受けている女性の妊娠前の食事を調査した研究が複数ありましたが、ICSIを受けている女性と食事との関係を調査した研究結果には、一貫性はみられませんでした

野菜と果物と全粒穀類と魚

ICSI を受けている41組のカップルの前向きコホート研究では、妊娠前の母親の野菜摂取不足が胚の質の劣化と関係していること、そして、BMI 25以上の女性では、その影響が2倍になることが報告されています。

また、ICSIを受けている269人の患者から回収された2,659個の胚の観察研究は、全粒穀類、野菜、果物の摂取が胚の質にプラスの影響を与えることが報告されています。

妊娠前の食事が胚の成長へ与える影響を調査するために、ICSIを伴わない体外受精(IVF)を受けている111のカップルを対象に行われたランダム化比較試験は、オメガ3脂肪酸とビタミンDを豊富に含む飲料の毎日の摂取とオリーブオイルの追加摂取を6週間続けた結果、胚の質の向上を示す胚の卵割率(受精卵の細胞分裂の割合)が有意に変化したと報告しています。

ほとんどの魚には、オメガ3不飽和脂肪酸とビタミンDが多く含まれています。

一方で、2,067個の胚移植を伴う2,229人の女性からのデータを含む前向きコホート研究に対する、2021年に行われたシステマチック・レビューとメタ分析は、野菜、果物、全粒穀類、豆類、魚を多く摂取する食事は、ICSIの有無とは無関係に、体外受精(IVF)による医療的妊娠と生児出生に、有意な関係がなかったことを報告しています。

地中海式食事法と妊孕性

抗炎症性の食事と言われる地中海式食事法(メディトレーニアン・ダイエット)と体外受精の成功に関する多くの調査結果にも一貫性がありませんでした

効果があるとした研究

初めて体外受精を受ける肥満症ではない244人の女性(22~41歳)を対象とした前向きコホート研究では、地中海式食事法の習慣化が高いほど、医療的妊娠と生児出産の確率が約2.7倍になることが報告されています。

また、合計で608回の不妊治療を受けた357人の肥満症ではない女性の前向きコホート研究では、地中海式食事法の習慣化が低いグループと比較して、習慣化が高いグループの医療的妊娠と生児出産の確率が高いことが報告されています。

同様に、体外受精を開始しようとしている700人の中国人女性を対象とした観察研究では、地中海式食事法の習慣化が高いほど、胚の採取数が多いことが明らかになりました。

効果がないとした研究

一方で、474 人のイタリア人女性(27~45歳、平均36.6歳)を対象とした研究では、地中海式食事法の習慣化の度合いと、医療的妊娠、生児出産、卵母細胞採取、胚の質などの体外受精の成功との間に関連性がないと報告しています。

また、ロッテルダムの妊娠前コホート研究の縦断的分析(予測研究)は、母親の食習慣とは無関係に、体外受精/ICSIによる妊娠と自然妊娠の両方において、妊娠前後の父親の食習慣も、胚の成長との有意な関係性は見られなかったと報告しています。

男性の不妊症

精子の特質異常は、男性不妊症の30~40%、そして、不妊治療を必要とする症例の約30%を占める男性不妊の一因です。また、酸化ストレスが、精子と精子形成における生理機能を変容させ、男性の妊孕性に影響を与えることが示されています。

更に、疫学研究によって、不妊症の男性は、男性生殖器に慢性炎症を起こしていることが多く、妊孕性の問題の悪化につながっていることが示されています。

そのため、妊娠における父親の栄養状態に関する研究の多くは、主に精子の質の改善に焦点が当てられています。

精子の質の改善と食事

体重増加に伴う全身の脂肪増加は、体内炎症や酸化ストレスを高める炎症誘発性サイトカインと活性酸素種を増加させます。西洋食は、体内の酸化ストレスを増加させることで、体重増加とインスリン抵抗性を悪化させ、精子の質の低下と不妊症を起こすと考えられています。

そのため、抗炎症食によって父親の体内炎症を減少させることは、精子の質を改善し、その結果、妊孕性を改善する可能性があると考えられています。

実際、抗炎症食の習慣化が、次の指標による良質な精子の状態と一貫していることを示す証拠が増え続けています。

  • 精子濃度
  • 総精子数
  • 精子の形態
  • 精子の運動性

亜鉛、セレン、オメガ3不飽和脂肪酸、CoQ10

ランダム比較試験のシステマチック・レビューとメタ分析は、亜鉛、セレン、オメガ3不飽和脂肪酸、CoQ10が精子の濃度と運動性を有意に向上させ、特に、オメガ3不飽和脂肪酸とCoQ10は総精子数も増加させ、男性の妊孕性に役立つ可能性があることを報告しています。

CoQ10が有機過酸化物質の形成を阻害し、精液中の精子細胞の酸化ストレスを軽減した結果と考えられています。

また、精子による受精の成功は、精子膜の脂質組成に依存していますが、オメガ3不飽和脂肪酸には、精子膜の組成に影響する抗炎症作用と抗酸化作用があり、脂質形成にとっては、オメガ3不飽和脂肪酸の濃度が影響していると考えられています。

それぞれの栄養素を多く含む食品は、下のリンク内をご確認ください。

地中海式食事法と精子の質

観察研究の包括的なシステマチック・レビューは、地中海式食事法に類似した食習慣、具体的には、次の食品を多く食べる食習慣と精子の質と数に正の相関があることを示しています。

  • 果物と野菜
  • 全粒穀物
  • 魚/魚介類
  • 家禽(鳥類の肉)
  • 低脂肪乳製品

西洋食と精子の質

一方で、次の食品と西洋食と、精子の質と妊孕性の低下との関連も示されています。

  • 加工肉(ハム/ソーセージ)
  • ジャガイモ
  • 全脂肪乳製品
  • コーヒー
  • アルコール
  • 砂糖入り飲料

若いデンマーク人男性2,935人の食習慣と精巣機能を調査した横断研究は、ベジタリアン的な食習慣の男性と比較して、西洋食の習慣化が高いほど、総じて精子の質が低いと報告しています。

一方で、スペインの209人の健康な男子大学生(18~23歳)を対象とした横断分析は、炎症誘発性の食習慣(正のDIIスコア)は、精子の段階的運動性と総運動性の両方に影響しましたが、 精子の総数と形態との関係は見られませんでした。また、中国の病院で行われた症例対照研究では、DIIスコアと精子の運動性との間に関連性は観察されていません

食事以外で体内の炎症を予防する方法

体内炎症を予防・改善する方法として、ハーバード大学のシュメーリング医師は次の方法も勧めています。

ベッドのマットレスを変える

寝返りができるベッドですか?

就寝中、自由に寝がえりができることがストレスの解消に重要です。

たった一晩の睡眠障害でも体内に炎症を起こす可能性があります。詳しくは『睡眠不足』をご覧いただくとして、もし熟睡できない原因が、今使っているベッドにあるのなら、投資する価値がありますね。

フロスを使って歯を磨く

たぶん、皆さんの多くは、既に、1日2回以上歯を磨きいていると思います。

では、フロスはどうでしょうか。少なくとも1日1回フロス(または歯間ブラシ)をしていますか?

歯肉炎も炎症です。歯肉炎を起こす菌が、心臓、肺、脳にまで移動し、様々な病気の原因となっていることは多くの研究によって示されています。

散歩(有酸素運動)

有酸素運動が、炎症を促進する物質を含む体脂肪を減らすのに役立つだけでなく、

「炎症を抑えるホルモンを増加させる可能性があります」

と、シュメーリング医師はおっしゃっています。

運動が苦手という方は、『運動好きじゃない人を運動好きにさせる意外な方法』が参考になるかもしれません。

ストレスと仲良くなる

慢性ストレスは炎症を促進し、関節リウマチ、心血管疾患、うつ病、炎症性腸疾患など、いくつかの慢性炎症に関与しています。(『血圧とコレステロールが気になる人はヨガ』もご参照ください。)

上手にストレスを解消して、体内炎症を予防・改善するために深呼吸、瞑想、ヨガなどを試してみてはいかがでしょうか。もちろん、これらに限定しません。

あなたがストレスと仲良くなれる方法であれば何でも構わないんです。

ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースでもストレスを仲良くなる方法について教えています。

<<『炎症性不妊症って何?妊活をサポートする食事と食品に関する最新研究報告

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

今回ご紹介した研究は、主に不妊の原因となる疾患や症状、例えば、生理周期や月経困難症、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、そして精子の質が、どのような食事によって改善できるかを調べたもので、直接的に妊孕性が向上することを結論づけるものではありません。

しかし、食事を含むライフスタイルの改善は、不妊治療を受けるよりも、ずっと安価で体と心への負担も少なく、容易に取り入れることができます

妊娠への直接的な効果が未確定だったとしても、体内炎症を予防改善することは確かですし、私達はどうせ1日3食食べるのですから、その食事が、妊活を後押ししてくれるかもしれないものであった方が安心ではないでしょうか。

そしてもしおひとりで食事改善に取り組むことに難しさや不安を感じるのでしたら、ヘルスコーチと一度話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング