あなたの不調は大腸と小腸どっちが原因?|大腸と小腸で必要な栄養は違う(大腸編)

2021/11/02/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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小腸編からの復習

権威あるサイエンス専門誌『セル(細胞)』に腸内にいる免疫細胞の一種マクロファージと、腸内環境についての論文が掲載されていました。

その論文には、食事と腸内の共生細菌に焦点を当て、大腸と小腸のマクロファージの機能性(挙動)への影響の違いを明確にすること、理想的には特定の腸内マクロファージ集団および/またはその機能に働きかけるユニークな治療法につながることを期待していると書かれていました。

元の論文はとても長いのですが、腸内の免疫細胞(マクロファージ)の働きについて詳しくまとめられています。ご関心のある方は、最後に参考文献としてリンクを掲載していますので、ご参照ください。

ヘルスコーチとしては、腸内の免疫細胞と共生細菌と食事との関係には大きな関心をもっています。そのため、腸内環境の改善のための食事を考える上で、少なくとも現在判っていることを整理したいと思い、食事に関する部分だけ読んでみました。

とても興味深かったので、難しいことはさておき、超簡単にした内容を小腸編と大腸編に分けて皆さんにお伝えします。

大腸と小腸の環境は全然違う

小腸と大腸は、長さや形状が大きく異なっているのに、それぞれに生息しているマクロファージの特徴や機能について、直接比較した研究は、あまり多くありません。少ない研究の中から判ったことは、哺乳類の腸内細菌の環境は、小腸から大腸へと腸管に沿って大きく変化していくということです。

  • 腸内細菌の量
  • 腸粘膜の厚さ
  • 酸性度

は、小腸から大腸に向かって増加していきます。

免疫細胞の行動に食事が大きく影響

消化管は、食物消化・吸収の中心です。ヒトが食品から直接吸収できない栄養素は、腸内細菌が分解してくれます。そして、免疫細胞の6割以上が腸内に住んでいます。

腸内細菌と食事の関係については、ここ数年の注目のテーマですが、腸内の免疫細胞にとっても食事は非常に重要な役割を果たしています。

腸内の免疫細胞の中には、腸の内容物から直接、栄養を吸収できるものもいるかもしれませんが、多くは、腸粘膜(粘膜固有層)を通して栄養を吸収します。

免疫細胞が活用できる腸内の栄養の量は

  • 食事の量
  • 腸の代謝・処理・分解能力
  • 体内吸収力と速度(腸内での欠乏の速さ)

によって変わります。

そして、免疫細胞の機能の善し悪しは

  • 食事から取り込まれた栄養素の質と量
  • 腸内細菌による代謝物(二次代謝産物)
  • 腸内細菌自体

から大きな影響を受けます。

免疫細胞が腸内の特定場所に集中しているのは、特定の栄養素がそこに集中しているからだと考えられています。

大腸に課題があると思われる人とは

大腸には、腸内細菌が密集しています。大腸の腸内細菌達は、宿主との共生関係を維持し、小腸で吸収されなかった栄養素を分解する役割を担っています。そして、もう1つの重要な役割は、水分吸収です。主に大腸の中央に近い場所で行われています。

腫瘍や炎症性疾患がある人、お肌や髪などが乾燥しやすい人は、もしかしたら大腸に課題があるのかもしれません。

大腸内の免疫力には短鎖脂肪酸と胆汁酸

大腸内の免疫力に大きな影響を与える主要なプレーヤーは、胆汁酸と腸内細菌が造る短鎖脂肪酸です。

短鎖脂肪酸・酪酸の役割

大腸の上部と体を横断する箇所に、短鎖脂肪酸が最も多く存在しています。短鎖脂肪酸は、大腸の腸内細菌が難消化性食物繊維を発酵させることによって造られ、免疫細胞が正常に機能するための重要な影響力を持っています。

大腸の免疫細胞だけが短鎖脂肪酸を利用します

大腸の腸内細菌が造る短鎖脂肪酸のひとつ酪酸は、宿主-腸内細菌-栄養素間のコミュニケーションの統合にとって重要な役割を果たしています。

免疫機能障害による炎症性疾患を予防

酪酸は、高脂血症を改善する作用をもっている腸内免疫細胞の受容体(GPR109a受容体)を活性化して、炎症を抑制するサイトカイン(IL-10)を造ります。実際、短鎖脂肪酸の低下が、いくつかの炎症性疾患に関連していることが判明しています。

更に、抗生物質の投与によって腸内細菌が死に、腸内に短鎖脂肪酸が欠乏すると、大腸内の免疫細胞(マクロファージ)が過活動になり、炎症性細胞(Th1細胞)の反応が増加し続け、長期に渡って、腸内毒素症(腸内細菌叢の崩壊による疾患)が起こることが報告されています。

一方で、抗生物質の投与に併せて、酪酸を摂取すると、抗生物質による免疫機能障害が予防されたことも報告されています。

免疫細胞に抗菌・抗がん作用を学習させる

酪酸が、腫瘍の増殖に関係している酵素(ヒストン脱アセチル化酵素3、HDAC3)を阻害し、腸内の免疫細胞(マクロファージ)に抗菌・抗がん作用をプログラムすることが報告されています。

食事に短鎖脂肪酸を加えることで、特定の疾患に関係しているマクロファージの挙動を調節し、疾患治療となるかもしれないと研究者は述べています。

短鎖脂肪酸を多く含む食品

短鎖脂肪酸を直接多く含む食品は、乳脂肪です。腸内細菌のために食べるなら、抗生物質やホルモン剤が与えられずに育った乳牛から絞ったミルクで造られた、グラスフェッドのバター、チーズ、ギー等がお勧めです。

ギーについては『ギーは適切に用いれば薬になるが、誤った使い方をすれば毒にしかならない』をご参照ください。

水溶性食物繊維が多い食品

私達の腸内細菌は、水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)が豊富な食品から短鎖脂肪酸を造ることができます。

海藻類(のり、わかめ、海藻)はどれも大量に水溶性食物繊維を含んでいます

海藻類以外ではこちらをご参考まで

胆汁酸の役割

大腸内のもう1つの主要なプレーヤーは、コレステロールを原料に肝臓から分泌され、脂肪の消化に使用される胆汁酸です。胆汁酸の大半は回腸の上皮細胞で再吸収され、門脈を通って肝臓に戻されます(腸肝循環)。

胆汁酸の量は一定に保たれている

体内の胆汁酸は一定量に保たれるように調整されています。排便などによって約5%の胆汁酸が失われ、その度に新しい胆汁酸が造られ補充されます。具体的には、肝臓と回腸にあるFXR(ファルネソイド受容体X)とよばれる受容体が、胆汁酸量を感知し、胆汁酸の腸肝循環の恒常性を保っています。

胆汁酸の形成には、腸内細菌の存在が不可欠であることが判っています。また、胆汁酸は、腸内細菌によって一次胆汁酸から二次胆汁酸に変換されます。メタゲノミクスとメタボロミクスを組み合わせたアプローチによって、胆汁酸変換に関与している腸内細菌が特定されています。

二次胆汁酸は適度な量の時は炎症を抑えるシグナルとして働きますが、過剰になると大腸がんを誘発すると考えられています。具体的には、二次胆汁酸のひとつデオキシコール酸が多くなるほど、腸内のマクロファージは炎症を誘発するようになります。

  • メタゲノミクス|環境サンプルから直接回収したゲノムを扱う微生物学・ウイルス学の研究分野
  • メタボロミクス|生命活動によって生じる代謝物を網羅的に解析することで生命現象を明らかにしようとする研究分野

胆汁酸の量は腸疾患と関係がある

炎症性腸疾患(IBD)患者の胆汁酸の調査によると、胆汁酸の量によって消化管の免疫細胞の活動が異なることが示唆されています。例えば、大腸内で胆汁酸が過剰になると、下痢性の疾患が起こることが判っています。

また、次の特徴があることも報告されています。

  • クローン病患者の胆汁酸の貯蔵量は、健常者と比較し少ないが、潰瘍性大腸炎患者の胆汁酸量は、健常者と変わりない
  • クローン病と潰瘍性大腸炎の両方の患者の糞便と新鮮な胆汁酸の中の一次非抱合型胆汁酸の割合は、健常者のものと比較し増加している

炎症が起こった結果として胆汁酸量が変化したのか、または、胆汁酸量が変化した結果として疾患が起こったのかの因果関係はまだ判っていません。ただ、免疫細胞の異常な挙動と関係していると考えられています。

クローン病患者ではFXR受容体が減少

胆汁酸を感知して腸内細菌と宿主の免疫機能と代謝機能を結びつける役割を担っているFXR受容体は、細菌やウイルスからの防御で働く免疫細胞(単球)の自然免疫分子(TLR 9)によってコントロールされていてます。

そのFXR受容体がクローン病患者では減少していることが報告されています。また、FXR受容体を欠損させたマウスでは、大腸の恒常性が異常になり、大腸炎の進行が加速することが判っています。

TGR5受容体の活性化で炎症が抑制される

胆汁酸を介して腸内のマクロファージ(免疫細胞)の様々な異なる機能に関与していると考えられているTGR5受容体は、マクロファージ上に発現する二次胆汁酸受容体で、大腸に最も多く存在しています。

タウロリトコール酸は、TGR5受容体と同じ働きをする物質ですが、試験管試験では、リポ多糖だけよりも、リポ多糖とタウロリトコール酸を用いることで、炎症誘発性のマクロファージの挙動をプログラムし直すことができたと報告されています。

TGR5受容体を活性化することによって、マクロファージの挙動を、抗炎症性サイトカイン(IL-10)を産生するようにシフトさせることができることから、研究者は、胆汁酸は、暴走した免疫細胞(マクロファージ)を鎮めるなど、免疫機能の調節に関与していると述べています。

胆汁酸を健康に保つには

食事と胆汁酸の詳しい関係については、『脂肪燃焼に使血な胆汁酸をたくさん作ってくれる野菜は?』と『あなたのう〇ちゃん、不快な臭いがしませんか?』をご参照ください。

リポ多糖の多い食品

リポ多糖は、ヌメリのある野菜に多く含まれています。海藻類や明日葉、モロヘイヤ、オクラ、キノコ類などに多く含まれています。

上の表は、東洋医学に沿って「「腎」を健康に保つ」とタイトルしていますが、リポ多糖の多い食品と同じです。

タウリンの多い食品

タウロリトコール酸は、タウリンの化合物です。そのためタウロリトコール酸を直接食事から摂ることは難しくても、タウリンを含む食品を食べることは可能です。

タウリンは、貝類、甲殻類、軟体類、魚の血合いなどに多く含まれています。

タウリンは水溶性なので茹でたりせずに生のままか焼いて食べる、あるいは、汁ごと食べられるお料理にすることをお勧めします。

大腸と小腸に良い共通食材は?

こうしてみてくると、海藻類と魚が、大腸にも小腸にも良さそうだということがわかります。

腸内環境を整えるのは、発酵食品だけではないということですね。

ご自分の抱える不調が、大腸由来なのか、小腸由来なのか、それによって積極的に食べたい食品が異なることなど理解していただけたなら嬉しいです。

統合食養学は、ミクロ栄養素(サプリメント)ではなく、食品を食べること、食事をすることが重要だと考える栄養学です。是非、今回ご紹介した食品をお食事の中に増やす工夫をしてくださいね。

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参考文献

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング