バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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プロバイオティクスで菌血症
今では、プロビオティクス/プロバイオティクスのサプリメントや錠剤は、さまざまな場面で用いられるようになっています。
- 腸内環境を整えるため
- 免疫を調整するため
- 便秘や下痢の改善のため
- 胃の調子を整えるため
- コロナ感染症の症状緩和のため
- 入院患者や手術前後の患者の免疫力回復のため
などなど
日本や他のアジアの国々で用いられているプロバイオティクスのサプリメントのほとんどは、大人の約10%~20%に存在する常在菌のひとつ、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)属の菌で作られています。
日本では、主にクロストリジウム・ブチリカム菌のミヤイリ588株(CBM588)が整腸剤/酪酸製剤として、医薬品としての認可を受け長年使用されています。
しかし、プロバイオティクスのサプリメントや錠剤を服用している人、特にCBM588株のサプリメントでは、時々、菌血症の症状が起こることが報告されています。
なお、裏付けとなる研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています。
菌血症とは?
菌血症とは、血液中に細菌が存在している状態のことです。今回のケースで言えば、プロバイオティクスとして飲んだ菌が血液中に入り込んでしまった状態です。
血が出るような歯磨きなどによっても菌が血液中に入り込むことがありますが、そうした稀な行為で入り込む菌は少量なので、免疫細胞の働きによって血液中から速やかに排除されるので、慢性的な菌血症を起こすことはめったにありません。
今回、大阪大学大学院感染制御学寄附講座准教授の佐田竜一医師の研究グループは、クロストリジウム・ブチリカム菌による菌血症の有病率や特徴、細菌学的・遺伝的な仕組みを解明するために同大学病院で発生した症例を解析しました。
2011年9月から2023年2月までに大阪大学病院に入院した患者を調査し、血液中の細菌の全ゲノム配列解析を行っています。
血液培養で細菌陽性となった6,576人の患者のうち5人(0.08%)が酪酸菌血症であることが判明し、ゲノム配列解析の結果、同定されたクロストリジウム・ブチリカム菌血症を起こした菌株の全てが、プロバイオティック製剤から発生していることが確認されました。
そのことを佐多医師らは、2024年2月27日に学術雑誌『Emerging infectious Diseases(新興感染症)』にて報告しています。
菌血症の症状
歯医者さんで治療を受けた時とか歯磨きで血がでた時などで起こる菌血症は、通常は一時的なものなので、症状は起こりません。
慢性的な菌血症の場合には、次のような症状が現れます。
- 発熱
- 心拍数の上昇
- 悪寒戦慄(寒気とふるえ)
- 呼吸数の増加
- 低血圧
- 消化管症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢など)
- 錯乱
風邪やインフルエンザの症状に似ていますね。プロバイオティクスを服用している人で、風邪のような症状が起きた時には、もしかしたら菌血症なのかもしれません。
錯乱は、敗血症または敗血症性ショックが起きている時に起きます。
敗血症は、 菌血症や他の感染症で起こる重篤な全身性の反応と主要な臓器に機能不全の両方が起きている状態です。敗血症性ショックは、敗血症のために生命を脅かすほどの血圧の低下と臓器不全が起きている状態を指します。
菌血症で感染症を起こしやすい人
繰り返しになりますが、免疫機能が適切に働いている時には、日常生活の中で起こる菌血症が感染症に至ることはめったにありません。
しかし、免疫機能が低下していると、免疫細胞によって細菌が除去されず、長期にわたって体内に存在し、増殖することがあります。そうなれば、菌血症が引き金となって他の感染症や敗血症が起こる可能性が高まります。
上で紹介した大阪大学病院における研究では、血液培養で菌血症陽性だった人たちは次の通りでした。
- 免疫不全状態だった人が4名
- 移植手術を受けた人が2名
- 食道がんと胃がんの化学療法を受けていた人が1名
- 皮膚筋炎の免疫抑制療法を受けていた人が1名
- CVC/PICC留置が3名
- 人工透析を受けていた人が2名
また、解析の結果、クロストリジウム・ブチリカム菌の菌血症陽性となった5名全員が入院中に菌血症を発症していました。
全員が入院の1週間以上前にプロバイオティクス製剤を処方され、5名中4名が、CBM588株を服用し、残りの1名はクロストリジウム・ブチリカム菌の他の株のサプリメントを服用していました。
消化器官疾患・免疫機能低下の時は避ける
佐田医師は、次のように結論しています。
「クロストリジウム・ブチリカム菌血症の発症率は、0.08%と低かったが、いずれもCBM588株由来だった。先行研究で消化器疾患や腹腔内手術とクロストリジウム・ブチリカム菌血症との関連が指摘されており、われわれの研究でも同様の知見が示されたことから、こうした患者や免疫抑制例に対するプロバイオティクスの漫然とした処方は避けるべきだ」
免疫力が低下している人や消化器官の病気や不調がある人への処方は避けた方が良いというのは、消化器官の不調の改善や免疫力向上のためにプロバイオティクスのサプリメントを飲もうと考える人が多いことを考えると、あまりに皮肉な結果ではないでしょうか。
菌血症を起こしやすいその他の要因
また、次のような治療を受けている場合にも、菌が血流中に溜まりやすいことが分っています。
- 静脈内のカテーテル
- 人工関節
- 人工心臓弁
など
体内に設置された人工物に、細菌がひっかかり、蓄積し、付着し続け、連続的または周期的に血流へ細菌を放出し続けることが明らかにされています。
そのため、こうした治療を受けたことのある人は、プロバイオティクスのサプリメントは止めておいた方が良いでしょう。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
今回の研究は、クロストリジウム・ブチリカム属に含まれる菌株、あくまでもひとつの菌株だけを含むサプリメント/錠剤のお話です。
個体は孤立して存在しているのではなく環境全てとつながっている
腸内には、クロストリジウム・ブチリカム菌以外にもさまざま多様な善玉菌が住んでいます。クロストリジウム・ブチリカム菌以外の善玉菌は、意味もなく腸内にいるわけではありません。腸内細菌らは、相互作用しながら、お互いにシナジーを生みながらそこに存在し働いています。
体はホリスティックな存在なのだと理解することが重要です。
ひとつひとつの菌の機能を独立したもののように扱うのではなく、腸内環境全てとつながった存在だと考えれば、クロストリジウム・ブチリカム菌だけを増やすことで、さまざまな問題が起こることは当然のことのように思います。
過ぎたるは及ばざるがごとし
また、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」だと私は思います。
どんなに良い働きをしてくれる菌も、ただ1つそれだけを摂り続けたら、体内の他の善玉菌とのバランスは壊れます。
バランスが壊れてひとつだけが多くなり過ぎれば、菌血症にもなるでしょうし、他の善玉菌の働きを阻害して返って総合的な免疫力を損ねて悪い結果を招いてしまいかねないことも、簡単に想像できます。
菌のことは菌の自治に任せる
腸内にいる常在菌同士の力関係やバランスは、彼ら同士で解決してもらうのが最適です。私たちが良いと思う1つの菌だけを無理やりに押し付ければ、彼らの社会を壊してしまうことになるということも今回の研究は示しているように思うのです。
もちろん、腸内環境が大きく悪い方へ傾き過ぎてしまっている大腸炎やC.ディフィシル菌感染症やがんなどの疾患において、人為的に腸内細菌の顔ぶれを総入れ替えすることの有効性は確認されています。でも、その際に行われる有効な治療は、腸内細菌の「総入れ替え」です。ただひとつの菌だけを増やすことではありません。
サプリメントではなくホールフード
ポン!と口に放り込めば済むサプリメントは楽かもしれません。でも、やはりそこには深い落とし穴があります。
発酵食品には、さまざまな善玉菌が存在しています。クロストリジウム・ブチリカム菌だけではありません。
腸内環境の改善や免疫力の向上のために、善玉菌を体内で増やしたいと思うのなら、ヘルスコーチとしては、さまざまな発酵食品を積極的に食べたり、体内に既にいる善玉菌を増やすために、彼らが好むオリゴ糖や食物繊維豊富な食品を食事に加えることをお勧めしたいです。
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参考文献:
- “Clostridium butyricum Bacteremia Associated with Probiotic Use, Japan”, Ryuichi Minoda Sada, Hiroo Matsuo, Daisuke Motooka, Satoshi Kutsuna, Shigeto Hamaguchi, Go Yamamoto, Akiko Ueda, Emerg Infect Dis, 2024 Feb 27;30(4), doi: 10.3201/eid3004.231633, PMID: 38413242
- “Probiotic-related Clostridium butyricum bacteremia: a case report and literature review” Kazuhiro Ishikawa, Ryo Hasegawa, Koko Shibutani, Yumiko Mikami, Fujimi Kawai, Takahiro Matsuo, Yuki Uehara, Nobuyoshi Mori, Anaerobe, 2023 Oct:83:102770. doi: 10.1016/j.anaerobe.2023.102770. Epub 2023 Aug 5, PMID: 37544356
- 「プロバイオティクスが菌血症に関連」、服部美咲、2024年03月05日、メディカルトリビューン
- 「菌血症」、Joseph D Forrester , MD, MSc, Stanford University、2021年 9月、16. 感染症、MDSマニュアル家庭版
- 「クロストリジウム・ブチリカム」、岡健太郎、高橋志達、用語集、公益財団法人腸内細菌学会
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング