バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
背は高い方が良いに決まっている
昔から、俳優さんやモデルさん達は、男性も女性も背が高い方が美しいとされてきました。
8頭身美人なんて言葉もあります。
今でこそ、様々な体型のモデルさんが注目される時代になりましたが、それでもやはり”スーパーモデル”と言われるモデルさん達に”おちびさん”はいません。
私は、その”おちびさん”です。生まれた時から小さくて、「背の順」で一番前でなかったことはありません。今も152cm(5フィート)しかありません。”標準”サイズのお洋服は大抵、丈が長すぎてお直しせずには着られません。
米国に住んでいた10代の頃、男子から「shrimp(ちび)」と言われ、英語の悪口をひとつ覚えました(笑)
だから、背は高い方が良いに決まっている(笑)と、今でも思っています。
すると今年(2022年)の『PLOS Genetics』6月号に身長と病気との関係を調べた論文が掲載されていました。面白いと思いましたので、他にも身長と病気との関係について調べた研究はないか探してみることにしました。
案外あったのでご紹介します。
裏付けとなる研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています。
身長はDNA配列変異体によって80%決まる
科学者は、身長の高さは、DNA配列変異体によって約80%が決定されると推定しています。
遺伝子変異体(ポリジェニック遺伝と呼ばれる遺伝パターン)は両親から受け継がれるため、子供は親と同じくらいの身長に成長します。一方で、変異体の組み合わせによって兄弟姉妹の身長にばらつきが生じます。
また、身長は複数の遺伝子変異体によって決定されるだけでなく、様々なエピジェネティクス要因(環境や食事やライフスタイルなど)によって影響を受けるため、身長を正確に予測することは困難なのだそうです。
身長が決まる生物学的メカニズムは、まだ完全には理解されていないのだそうです。
追記:2022年10月
こんな記事を書いた途端の10月、『ネイチャー』にヒトの身長を40%~50%の確率で予測できるSNP(遺伝子多型)を特定したという論文が掲載されました。
多様な人種に属する450万人のゲノム解析の結果だそうです。
でも、SNPによって50%予測できたとしても、残り50%はエピジェネティクス要因ですから、やはり50/50・・・身長を予測するのはまだまだ難しそうですね。
身長に影響を与えるエピジェネティクス要因
ただ、様々なエピジェネティクス要因の中でも、特に身長に影響を与える要因が、既に複数明らかにされています。
- 妊娠中の母親の栄養状態
- 母親の喫煙や有害物質への曝露の有無など
- 誕生後の栄養状態やホルモンバランス
- 親の社会的状況(収入・教育・職業)
- 医療へのアクセスのしやすさ
- 生活環境
- 感染症の有無
などです。
母親の健康状態に関係する事柄が2つもあり、また胎児・乳幼児期の栄養状態が多く挙げられています。
栄養不良や感染症のある子供、または医療を十分に受けられていない子供と比較して、栄養状態が良好で健康な活動的な子供は成人になった時の身長が高くなる可能性があること、親の収入、教育、職業などの社会経済的要因が子供の身長に影響を与える可能性があることなどが示されています。
また、民族ごとに平均的な身長に違いがあると考えられてきましたが、移民家族に関する研究は、食糧事情や医療や雇用機会が良好な国に移住すると、次世代の身長に大きな影響が現れることを示しています。これは、民族間の身長の違いは、必ずしもすべてが遺伝によるものではないこと、非遺伝的な要因によっても影響を受けていることを示しています。
確かに最近では、日本の俳優さんやスポーツ選手が海外の方々の中で見劣りすることも少なくなりましたね。
病気と身長の関係
身長と病気との間に相関関係があることを示した研究が多くありました。因果関係ではありません。
どちらにしても残念なのは、成人になってからの身長は、意志ではほぼ変えられないということです。
米国で行われた調査
米国国民30万人以上のデータを調査した研究の結果が、今年(2022年)の『PLOS Genetics』6月号に掲載されました。米国の非ヒスパニック系白人成人200,000人超と非ヒスパニック系黒人成人50,000人超の臨床データを用いて、身長に関係している3,290の遺伝子変異について行われた調査です。
この調査対象者となった米国人男性の平均身長は5’9”(5フィート9インチ、約180cm)、米国人女性の平均身長は5’4”(5フィート4インチ、約164.5cm)でした。それを超えていると「背が高い」、それ未満なら「背が低い」としています。全ての調査対象者の平均身長は、5フィート6インチ(約170.5cm)でした。
結果、平均身長の人と比較して次の傾向があると報告されています。
成人身長が高いほどリスクが低下した疾患
- 内分泌系疾患(糖尿病など)
- 代謝系疾患(高脂血症、高コレステロール症など)
2019年にドイツで発表された調査でも、背の高い人ほどII型糖尿病(内分泌系/代謝系疾患)になるリスクが低いことが報告されています。特に、足の長さが重要なのだそうです。
成人身長が高いほどリスクが上昇した疾患
- 循環器系疾患(下肢静脈瘤、心房細動など)
- 神経系疾患(神経症など)
- 皮膚疾患
- 筋骨系疾患
背が高い人ほど心筋を含む筋肉系の病気になりやすいということでしょうか。
成人身長が低いほどリスクが上昇した疾患
身長が5フィート8インチ(約177cm)以上の人よりも5フィート3インチ(約161.5cm)未満の人は、冠状動脈性心疾患を発症する可能性が50%高くなるものの、5フィート(約152.5cm)以下の人は、血栓ができる確率が最も低いと報告されています。
背が低いと動脈硬化になりやすく、冠動脈の血流が悪くなり心疾患を起こす可能性が高いということのようですが・・・、背がものすごく低い場合には返って血栓ができにくくなるということでしょうか・・。不思議です。
英国で行われた調査
英国で行われた、417,434人の白人を対象とした研究は、疫学調査と遺伝子調査の両方を用いて身長と50の疾患との関係を分析し、身長と有意な関係が認められた疾患について報告しています。その結果は次の通りです。( )内の数字は順に、疫学調査、遺伝子調査の結果です。
成人身長が高いほどリスクが低下した疾患
- 冠状動脈疾患と呼吸器疾患による死亡(0.8倍、0.86倍)
- 高血圧(0.83倍、0.88倍)
- 逆流性食道炎(0.85倍、0.94倍)
- 横隔膜ヘルニア(0.81倍、0.91倍)
背が高い人ほど、高血圧や逆流性食道炎になりにくいことを示しています。背が高い人は高血圧になりにくいという、米国の調査と同じですね。
成人身長が高いほどリスクが上昇した疾患
- 心房線維化(1.42倍、1.33倍)
- 静脈血栓塞栓症(1.18倍、1.15倍)
- 椎間板障害(1.15倍、1.14倍)
- 股関節骨折(1.19倍、1.27倍)
- 血管炎(1.15倍、1.20倍)
- がん全体(1.09倍、1.06倍)
- 乳がん(1.08倍、1.07倍)
背が高い人は血栓ができやすく、腰痛があり、股関節骨折しやすいことを示しています。若干、がんも背が高い人の方が発症しやすいことを示しています。背が高い人の方が心筋の病気になりやすいというのは、米国の調査と同じですね。
インドで発表された調査
2013年に『インド心臓ジャーナル(Indian Heart Journal)』に発表された研究は、背の低い人は、心疾患をほとんど起こさないことを示す研究が多く存在していると述べています。心筋梗塞(冠状動脈疾患)は背の低い人に多いとした米国の調査とは異なる結果です。
背の低い人の生物学的特徴
- テロメアの短縮が少ない(寿命が長い)
- DNA損傷が少ない(がんになりにくい)
- 心房細動が少ない
- 心臓の拍動機能性が高い(心筋の活動良好)
- 血管内プラーク蓄積が少ない(動脈硬化が少ない)
- 左心室肥大が少ない(高血圧ではない)
- 血液検査結果が良好
など
背の高い人と比較して、背の低い人は上の様な生物学的メカニズムが有利に働いているとのことです。がんについては、英国の調査と同じ結果ですね。
背が低い方が寿命が長い?
寿命について更に調べてみると、背が低い人の方が寿命が長いことを報告する研究がドイツ、オランダ、米国など、様々な国からなされていました。
少なくとも欧米系の民族(アングロサクソン・ゲルマン系民族)あるいは、欧米の生活環境に暮らしている人については、背が高い人よりも背が低い人の方が寿命が長いと言えそうですね。
女性と身長
英国の研究では、背の高い女性は乳がんリスクが高いことが示されましたが、別の研究では、背の高い女性は、卵巣がんによる死亡リスクが高いことが報告されています。
また、背の高い女性には喘息の人が有意に多いそうです。
つまり、背の低い女性と比較して、背が高い女性は乳がんと喘息になりやすく、卵巣がんによる死亡リスクも高いということになります。
日本でも身長と寿命との関係が調査されていました。それによると日本人では、背の高い女性よりも背の低い女性の方が、約1.7倍も寿命が長いとのことでした。しかし、日本人男性ではそうした相関は見られなかったとのことです。
また、日本の『科学的根拠に基づく乳がん治療ガイドライン2 2015年版』においても、乳がんの発症リスクがかなり高い要因のひとつに「背が高い」ことが含まれています。
少なくとも、乳がんリスクについては、私は背が低くて良かったと思っていいのでしょうか・・?
男性と身長
上述した米国の研究では、背の低い男性は、前立腺がんになるリスクが低いことが示されています。
約500人を調べた別の調査では、身長が5フィート7インチ(約173.7cm)未満の男性と比較して、6フィート(約183cm)以上の男性は、認知症またはアルツハイマー病を発症するリスクが約60%低いと報告しています。女性についても同様のことが示されましたが、統計的に有意ではありませんでした。
つまり、背が高い男性は認知症になりにくく、背が低い男性は前立腺がんになりにくいということでしょうか。
この情報とどう向き合えば良いのか
今回のこの情報を真に受けないことが重要です。
自分でこのブログ記事を書いておいて恐縮ですが、冒頭で述べた通り、身長と病気との関係は複雑で、まだ科学的に確固たる結論が出ている事柄ではないのです。
今回紹介した調査の結果には同じものもあれば、逆の結果を報告しているものもあります。
そして多くが欧米人を対象に調査されたものです。日本人の私達とは、遺伝的な構成が異なるだけでなく、生活習慣、食習慣、文化的背景、生活環境など多くのことが異なります。
今回の情報をそのまま鵜呑みにしてしまうことは、あまりに危険です。
特に、良い結果を鵜呑みにして油断したりしないこと、そして、悪い結果を鵜呑みにして落ち込んだりしないことが重要です。
病気は多くのリスク要因の総合的な結果として起こります。身長はそのひとつに過ぎません。病気と関係のある生活習慣要因や環境要因はたくさんあります。そして、身長は変えることができませんが、生活習慣や環境は改善する意志さえあれば、いくらでも変えることができます。
だから、例えば、背が低いからと言って、出産授乳経験のない私が、乳がんにかからないなどと思ってはいけない(出産授乳経験がないことも乳がんのリスク要因です)と、いうことです。
ただ公認ヘルスコーチとしては、自分のリスクを知っておくことで、身長は変えられなくても、他の生活要因を改善することで総合的にリスクをコントロールすることができれば良いのだと考えます。
皆さんも、今回の情報に一喜一憂することなく、ただ、面白い情報だなぁ~くらいに思っていただければ十分です。
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参考文献
- “A multi-population phenome-wide association study of genetically-predicted height in the Million Veteran Program”, Sridharan Raghavan, Jie Huang, Catherine Tcheandjieu, Jennifer E. Huffman, Elizabeth Litkowski, Chang Liu, Yuk-Lam A. Ho, PLOS x, June 2, 2022, https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1010193
- “Is height determined by genetics?”, MedlinePlus, National Library of Medicine, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health
- “Adult height and risk of 50 diseases: a combined epidemiological and genetic analysis”, Florence Y. Lai, Mintu Nath, Stephen E. Hamby, John R. Thompson, Christopher P. Nelson & Nilesh J. Samani, BMC Medicine, volume 16, Article number: 187, 25 October 2018
- “Shorter height is related to lower cardiovascular disease risk – A narrative review”, Thomas T. Samaras, Indian Heart J. 2013 Jan; 65(1): 66–71, doi: 10.1016/j.ihj.2012.12.016, PMCID: PMC3861069, PMID: 23438615
- “Associations of short stature and components of height with incidence of type 2 diabetes: mediating effects of cardiometabolic risk factors”, Clemens Wittenbecher, Olga Kuxhaus, Heiner Boeing, Norbert Stefan, Matthias B Schulze, Diabetologia, 2019 Dec;62(12):2211-2221. doi: 10.1007/s00125-019-04978-8. Epub 2019 Sep 9, PMID: 31501920, PMCID: PMC6861343
- “Anthropometric characteristics and ovarian cancer risk and survival”, Albina N Minlikeeva, Kirsten B Moysich, Paul C Mayor, John L Etter, Rikki A Cannioto, Roberta B Ness, Kristen Starbuck, Robert P Edwards, Brahm H Segal, Sashikant Lele, Kunle Odunsi, Brenda Diergaarde, Francesmary Modugno, Cancer Causes Control, 2018 Feb;29(2):201-212. doi: 10.1007/s10552-017-0997-5. Epub 2018 Jan 11, PMID: 29327114, PMCID: PMC5796836
- “Inverse Association Between Height-Increasing Alleles and Extreme Longevity in Japanese Women”, Kumpei Tanisawa, Nobuyoshi Hirose, Yasumichi Arai, Hiroshi Shimokata, Yoshiji Yamada, Hisashi Kawai, Motonaga Kojima, Shuichi Obuchi, Hirohiko Hirano, Hiroyuki Suzuki, Yoshinori Fujiwara, Yu Taniguchi, Shoji Shinkai, Kazushige Ihara, Maki Sugaya, Mitsuru Higuchi, Tomio Arai, Seijiro Mori, Motoji Sawabe, Noriko Sato, Masaaki Muramatsu, Masashi Tanaka, J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 2018 Apr 17;73(5):588-595. doi: 10.1093/gerona/glx155, PMID: 28958036
2022年10月追記分:
- “A saturated map of common genetic variants associated with human height“, Yengo, L., Vedantam, S., Marouli, E. et al. Nature 610, 704–712 (2022). https://doi.org/10.1038/s41586-022-05275-y
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング