
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
バクテリアとウイルスは違う

上の図で見ていただくように、ウイルスとバクテリアは異なります。
ウイルスによって発生する病気(インフルエンザや風邪など)とバクテリアによって発生する病気に用いられるべき医薬品や治療法は、異なります。
例えば、抗生物質は、感染症の治療のため、病原菌(バクテリア)を殺すために使われる医薬品です。ウイルスを不活化させることはできません。(ウイルスは生物ではないので”殺す”のではなく”不活化”と表現します)
1. 抗生物質は善玉菌を殺す
抗生物質は、病原菌だけでなく、ざっくりと言えば、バクテリア(菌類)ならほぼ何でも殺せる薬です。そのため、感染症治療のために抗生物質を飲むと、病原菌だけでなく、あなたの腸内の常在「菌」、それが善玉「菌」であっても死滅させてしまうことは、もう何十年も前から知られている事実です。
そのため、抗生物質でなければ治せない病気(感染症)以外の治療には、抗生物質を処方しないよう厚生労働省は10年以上前から全国の医師に通達しています。
2. インフルエンザに抗生物質を処方する医者がまだ多い
しかし、未だに多くの医師が風邪やインフルエンザなどのウイルス性の疾患に対して抗生物質を処方していることが、2025年7月のJAMA Health Forumに発表された、筑波大学社会医学研究グループ公共健康政策研究室による日本全国調査によって明らかにされました。
抗生物質があなたの風邪やインフルエンザを治すことはありません。一方で、確実にあなたの腸内細菌にダメージを与えます。
でも、今回は、抗生物質の話ではありません。
あなたの腸内細菌にダメージを与える、抗生物質以外の薬の話をします。
腸内細菌にダメージを与える医薬品

抗生物質以外の多くの薬が腸内細菌にダメージを与えます。
抗生物質以外の薬剤が腸内細菌にダメージを及ぼすことについては、どのような薬剤による影響が大きいのかをまとめた記事を、2018年に『IN YOU』に寄稿しました。詳しくは『数多くの医薬品が腸内細菌にダメージを与えている』(クリックするとIN YOUのページが開きます)をご確認ください。
そして、2025年8月に、抗生物質以外の薬がどのようにして腸内細菌(常在菌)にダメージを与え、それがあなたの健康にどのような仕組みで影響を及ぼすのかが、新たに明らかにされ科学専門誌『ネイチャー』に発表されました。
今回は、その論文を和訳要約してお伝えします。
なお、裏付けとなる研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています。
医薬品で感染症になる?
あなたと共生している常在菌たち(マイクロバイオーム)は、病原菌があなたの体内に侵入することを阻害する重要な役割を担っています。
抗生物質が、このコミュニティを阻害することはよく知られていますが、抗生物質以外の薬剤も、常在菌が病原菌を排除する力に影響を及ぼします。
集団レベルのメタゲノム研究と大規模コホートの疫学解析によって、次の要因同士の関連が明らかにされています。
薬の使用が多ければ、病原菌の増加が早く、
それに伴い、消化器官の感染症の症状が加速し、
炎症が増強され症状が重くなる
つまり、薬を飲む頻度や量が多いと感染症にかかりやすくなり、かつ、重症化しやすい・・・
そんな皮肉なことって本当にあるのでしょうか!?
病原菌の増殖を促進する薬

2018年にIN YOUに寄稿した記事では、主に次の医薬品が腸内細菌にダメージを与え、病原菌の増殖を誘発するとお伝えしました。
- 抗糖尿病薬
- 代謝拮抗剤(抗がん剤、免疫抑制剤など)
- 非定型抗精神病薬(統合失調症治療薬など)
- カルシウムチャネル阻害薬(降圧剤、狭心症薬など)
今回の研究でも病原菌の増殖を促進する薬は幅広い治療薬カテゴリーに存在していることが示され、特に、次の医薬品グループに多く存在していることが明らかにされました。
- 抗喘息薬
- 抗精神病薬
- 抗真菌薬
- 抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬など)
- 選択的エストロゲン受容体モジュレーター
- など
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)とは、エストロゲン受容体に結合して作用する薬の一種です。例えば、骨に対してはエストロゲン作用があり骨密度を増加させますが、乳房や子宮に対してはエストロゲン作用を阻害し、乳がんや子宮体がんのリスクを低減するように作用する薬です。
閉経後の骨粗しょう症の改善や乳がん・子宮体がんの術後の治療に用いられる薬です。
もちろんこれらの薬剤には、抗生物質のような広範な抗菌作用はありません。腸内の常在菌に変化を引き起こすことで、病原菌の侵入を阻害する常在菌の力が弱体化すると考えられています。
殲滅(せんめつ)ではなく、力を削ぐ
病原菌の増殖に影響を与える要因
病原菌がどれくらい増殖するかは、薬剤によってどの常在菌がどれくらい影響を受けるかに因ります。
例えば、次の2つの条件によって、病原菌の増殖に違いが生じます。
- 常在菌と病原菌との間の薬剤感受性の違い
- 限られた基質(栄養など)を利用する能力の違い
つまり、どちらの方が医薬品の成分に強いか弱いか、どちらの方が栄養争奪戦に強いかどうかによって決まるということです。
常在菌と病原菌の薬剤耐性

抗生物質以外で試験した53種類の薬剤のうち、28%の薬剤に対して、病原菌は常在菌よりも耐性が高く、投与した後でも増殖が促進されることが観察されました。
しかも、多くの医薬品が病原菌の増殖を抑制するのではなく、増殖を促進することが判明しました。
一方で、常在菌は病原菌よりも薬剤感受性が高く、薬剤からの影響を受けやすいことが判明し、実際、薬剤が常在菌コミュニティに及ぼす影響は、概ね、破壊的でした。
常在菌に及ぼす変化とは
抗生物質以外の薬剤によって引き起こされる常在菌への変化は、次のいずれかの方法で病原菌の増殖を促進することが明らかになりました。
1. 一部の常在菌を死滅させるか増殖を阻害
一部の常在菌の溶解を引き起こし、死滅させたり、増殖を阻害することで、常在菌の総コミュニティ(バイオマス)が減少し、病原菌の増殖を可能にします。
一部の常在菌が溶解・死滅することで、常在菌が造り出すフマル酸や短鎖脂肪酸やバクテリオシンなど、病原菌に対する抗菌活性や毒性をもつ物質が減少することで、病原菌の増殖が起こると考えられます。

2. 常在菌の多様性や構成を変化
常在菌の総コミュニティには影響を与えないものの、常在菌の多様性や構成を変化させることで、常在菌を病原菌の増殖に抵抗できない状態にし、病原菌の増殖を可能にします。
薬剤ごとの異なる化合物は、常在菌コミュニティの構成と遺伝子発現パターンに異なる変化をもたらしましたが、病原菌に対抗する力は、同じように低下しました。
3. 栄養資源の獲得競争の減少
病原菌と同じ栄養素を取り合う常在菌だけが選択的に標的とされることが判明しました。そのため、栄養の獲得競争がなくなり(病原菌による栄養の独り占めが可能になり)、病原菌の増殖を可能にします。
病原菌と同じ栄養素を取り合う常在菌だけが選択的に標的とされてしまう理由には、薬剤による次のような作用を通して起こると考えられています。
- 常在菌の構造やプロセスへの直接的な干渉
- 栄養素の隔離
- 宿主の生理学的変化
その結果、常在菌と病原菌との間の栄養競争が変化し、常在菌コミュニティが病原菌に効果的に対応する能力が低下してしまうと考えられています。
全ての医薬品は潜伏病原菌を増やす!?
この研究によって、冒頭でご紹介した医薬品にとどまらず、抗生物質以外の医薬品は、大なり小なり、あなたの健康に次のような影響を与えることが明らかにされました。
- 抗生物質同様に常在菌コミュニティの多様性を減少させる
- 病原菌に対する抵抗性を低下させる
- 病原菌の増殖を促進させる
医薬品で感染症リスクが上昇するというのは、皮肉な話です。
ただし、研究者は次のようにも述べています。
抗生物質以外の医薬品による常在菌への影響は、
一般的に軽微である
つまり、常在菌コミュニティを破壊し、実際に感染症が起るためには、医薬品を高用量で投与・服用するか、長期間に渡る使用が必要なのです。
具体的には、高血糖や高血圧、がんの再発予防や骨粗鬆症改善など、何年にもわたって薬を飲み続けていると感染症にかかりやすくなると言えます。PMSや生理痛で定期的に何年にもわたって服用し続ける鎮痛剤も同じです。

研究者は次のようにも述べています。
長期的慢性的な医薬品の服用によって起こる常在菌コミュニティの破壊は、
病原菌が日和見菌として潜伏する可能性があることを意味する
つまり、いつ発症してもおかしくない「感染症予備軍」になるということです。
繰り返しますが、病気や不調を治すために服用する薬によって、新たな病気(感染症)にかかりやすくなるというのは、なんとも皮肉な話です。
今、その薬を服用しなければ命に係わるような病気ならば、迷わずその薬を飲んでいただきたいと思いますが、生活習慣に起因する慢性疾患で、日常的に数年間にわたって薬を飲み続けているのなら、早期に食事とライフスタイル(生活習慣)を改善し、その薬を減らせる、あるいは止められる状態に戻すことが重要です。
それができれば、ドミノ倒しのように病気のデパートにならずに済みます。
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参考文献
- “Non-antibiotics disrupt colonization resistance against enteropathogens.”, Grießhammer, A., de la Cuesta-Zuluaga, J., Müller, P. et al., Nature 644, 497–505 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09217-2
- “Primary Care Physician Characteristics and Low-Value Care Provision in Japan.“, Miyawaki A, Mafi JN, Abe K, Klomhaus A, Goto R, Kitajima K, Sato D, Tsugawa Y. , JAMA Health Forum. 2025 Jun 7;6(6):e251430. doi: 10.1001/jamahealthforum.2025.1430. PMID: 40478554; PMCID: PMC12144622.
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング


