「肉は発がん性物質」とWHOが分類した意味|ヴィーガンになれば良いのか?

2016/01/20/

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バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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2015年10月26日に WHO(世界保健機関)の外部団体である国際がん研究機関IARC: The International Agency for Research on Cancer)によって『IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat(Press Release#240)』(直訳: 『赤肉と加工肉の摂取について評価』)が発表されました。

その中では、WHO(IARC)が、赤肉を「おそらく発がん性がある」加工肉を「発がん性がある」に分類したことが示されていました。

IARCの発表の後、「今まで通り肉を食べても良い。まったく心配する必要はない。」という意見や「やっぱり肉は食べない方が良い。」という意見を含め、両極端な意見が飛び交いました。

そんな中、2016年1月16日に読売新聞社主催で「読売医療サロン」が開催されました。

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学の佐々木敏教授が、WHOの「お肉は発がん性」発表についても講義をしてくださいました。

今回は、佐々木先生のご説明を踏まえ、国際がん研究機関(IARC)の発表内容の意味やQ&A情報、その基になっている科学的証拠の読み解き方など、客観的事実をお伝えします。

佐々木先生も「是非多くの人達に教えてあげてください」とおっしゃっていました。

その上で、どう食べるか、食べないかはあなた次第です。

WHO(IARC)の発表の対象となった赤肉とは?

ちなみに、「赤肉」とは、日本人が考える脂肪分の少ない赤身肉のことではないのでご注意ください。

赤肉は4つ足動物の肉のこと

分類の対象となった赤肉(レッドミート)とは、哺乳動物の肉と定義されています。具体的には、牛、豚、羊、やぎ、馬、熊、ウサギなど、4つ足動物の肉のことです。

鶏や鴨や鳩などの鳥類や魚類は、哺乳類ではありませんし、4つ足でもありませんから、今回の分類の対象となった「赤肉」ではありません。

ちなみに、鳥類や魚類の肉は白肉(ホワイトミート)と呼ばれます。

IARC の発がん性評価の分類

国際がん研究機関(IARC)は、発がん性の確かさを次の5段階に分類しています。

  1. グループ1:  発がん性がある
  2. グループ2A恐らく発がん性がある
  3. グループ2B: 発がん性の恐れある
  4. グループ3:    発がん性を分類できない
  5. グループ4:    恐らく発がん性はない

IARCは、食品の発がん性を「確かさ」で評価し分類しています。発がん性の「強さ」ではありません。

「確かさ」で分類するとは?

では、発がん性の「確かさ」と「強さ」とは、どう違うのでしょうか。

例えば、下のグラフをご覧ください。

縦軸は、「がんを起こしたり防いだりする強さ」を表しています。

  • 数値が大きいほど、がんを起こす強さが強い
  • 数値がマイナスの場合は、がん予防効果が高い

グラフのひとつひとつの点は、同じ食品に関する個別の研究結果を示しています。

食品Aに関する複数の科学的研究の成果の平均値は 0.55で、標準偏差(バラつき)が±0.16あることを示しています。

食品Bに関する研究の成果の平均値は 1.03で、標準偏差は±1.2です。

つまり、上のグラフからは次のことが判ります。

  • がんを起こす「確かさ」は、食品Aの方が高い(標準偏差 0.16 > 1.2)
  • がんを起こす「強さ」は、食品Bの方が高い(平均値 0.55 < 1.03)

赤肉と加工肉の評価の意味すること

あらためて、今回発表された国際がん研究機関(IARC)の、「赤肉」の分類を見てみましょう。

  • 赤肉|グループ 2A
  • 赤肉の加工肉|グループ 1

つまり、哺乳類の肉ががんを起こす確かさは「おそらく」、哺乳類の肉を加工した食品(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)が、がんを起こす確かさは「確実」ということになります。

加工肉|グループ1(発がん性がある)

加工肉が分類された「グループ1」には、次の物質や食品も分類されています。

  • ヒ素
  • ダイオキシン
  • アルコール(飲料)
  • タバコ

これは、加工肉が、ヒ素やダイオキシンと同じくらい確実にがんを起こすことを意味しています。

しかし、IARCは強さで評価しませんから、ハムやソーセージがヒ素やダイオキシンと同じくらいの強さで、がんを起こすことを意味しているわけではありません。

赤肉|グループ2A(恐らく発がん性がある)

赤肉が分類された「グループ2A」は、疫学研究の蓄積により、次の様な物質や食品などが分類されているグループです。

  • がんとの正の相関関係が高い証拠、かつ、強い機構的証拠(strong mechanistic evidence、因果関係に関する証拠が存在している
  • しかし、他の要因による影響が全て排除されていない

つまり、がんが、赤肉を食べること以外の原因で起きる可能性は否定できないものの、赤肉を食べる量が多い人ほどがんの発症率が高く、赤肉が原因しているという証拠やそのメカニズムも明らかになっているということを意味しています。

今回の発表の対象となった疾患

今回の発がん性分類の対象となった疾患は「がん」のみで、次の種類が主に調査されています。

  • 主に大腸がん
  • すい臓がん
  • 前立腺がん
  • 主に大腸がん
  • 胃がん

食べて安全な量はあるのか?

じゃぁ、どれくらいなら食べても良いのでしょうか。どれくらい食べたらがんを発症させてしまうのでしょうか。

例えば、ヒ素なら一口で十分です。でも、ソーセージは何本までなら食べても良いのでしょうか?

大腸がんの相対的な発症率

縦軸の「大腸がんの相対的な発症率(相対危険)」は、まったく赤肉や白肉を食べない人のがん発症率を1.0として、一日あたり何グラム食べると(横軸)、発症率が何倍になるかを示したものです。

このグラフで見ると、一日100gの赤肉を食べている人の大腸がんの発症率は、食べない人の1.25倍ということになります。リスクが25%上昇することを示しています。

グラフを見ると、食べる量が増えるごとにリスクも右肩上がりに上昇することが分かります。

上のような研究が他にも多く実施されており、そうした多くの研究結果を分析し、国際がん研究機関(IARC)は、赤肉と加工肉の摂取量とがんの発症率との関係について、次の様に回答しています。

赤肉 100g ごとに、大腸がん発症リスクが約 17% 増加する”

加工肉50g ごとに、リスクが約 18%上昇する”

このIARC/WHOによる発表の後、世の中では次のような発言が目立ちました。

「赤肉は100gまでなら大丈夫」
「加工肉も50gまでなら大丈夫」
「日本人は毎日それほど食べていないから、今まで通り食べていても大丈夫」

が、それはまったくの誤解です。科学的な情報を正しく理解できていないことを表している発言です。

IARCの説明は、次のグラフが示すように、赤肉と加工肉のリスクの上昇速度(直線の傾き)を説明しているだけの文章です。

赤肉なら100gまで大丈夫ということを述べているのではありません。加工肉についても同じです。

また、WHOは、何グラムまでなら大丈夫と言えるほどの科学的なデータはまだ無いとも述べています。

白肉(鳥肉・魚肉)とがんリスクについても、十分な研究が行われていないので、リスクの変化については不明としています。

赤肉と加工肉が発がん性である理由

赤肉と加工肉が発がん性をもってしまう仕組みについても、未だ不明とWHOは発表しています。

ただ、次の要因が原因ではないかとIARCは述べています。

  • 赤肉の処理方法調理方法
  • 加工肉の加工過程で使用される食品添加物、例えば、既に発がん性が認められている発色剤の亜硝酸ナトリウム多環芳香族炭化水素など

1. 多環芳香族炭化水素

多環芳香族炭化水素は、EUでは10年ほど前から、米国では3年前から、発がん性物質として使用が規制されている、あるいは全廃されている物質です。

しかし、日本やその他の国々では規制や基準がありません

昨年、経産省が日本での規制基準を作成するために実施した諸外国の実態調査の結果はこちらです。日本のハムソーセージは、欧米のハムソーセージよりも非常に危険だということではないでしょうか・・

日本人女性の死因の第一位は大腸がんですし。

2. 調理方法

がんリスクを高める調理法として、高温調理直火調理をIARCは挙げています。

特に、バーベキュー鉄板で焼く方法がヤバイようです。その過程で、発がん性の多環芳香族炭化水素複素環式芳香族アミンが発生することを理由に挙げています。

でも、茹でたり、蒸したりする方法については、十分な研究がなされていないので判らないとのことです。

ソフィアウッズ・インスティテュート私見:

個人的には、食品添加物を一切使用せずに家で作ったソーセージを低温調理法(75度で長時間調理)で茹でて食べたら、比較的、大丈夫なんじゃないかと思っています。もちろん、リスクはゼロにはなりません。でも、お肉のもつメリットを得ながら、リスクを相対的に低くすることは可能ではないかと考えています。

3. 生肉なら大丈夫なのか?

生肉と発がんリスクについて十分な研究がなされていないので、国際がん研究機関(IARC)は、「何とも言えない」としている一方で、生肉の場合、がん以前に、食中毒などの感染症にかかる危険が高いので要注意としています。

IARC/WHOによる今回の発表の後、世の中では次のような発言も目立ちました。

「私は野菜たくさん食べてるから、がんにはならない」
「ベジタリアン/ヴィーガンになれば、がんにはならない」

本当でしょうか?

確かに、上のグラフで観るように、野菜や果物や魚(右端)にはがん予防の効果があることが分ります。

でも、飲酒(左端)は、赤肉よりもがんリスクが高い行為であることも分かります。

冒頭で既にお伝えした通り、アルコールは、加工肉と同じIARCの「グループ1」に分類されている発がん性物質です。

そしてこのグラフからは、「確かさ」だけでなく、加工肉よりも「強さ」も大きいことが分かります。

お野菜と果物によるがん予防効果をチャラにして余りあるのが飲酒です。ダントツです。

つまり・・・

肉食の酒飲みは完全アウト
ですが・・・
ヴィーガンの酒飲みも同じくらいアウト

お肉について大騒ぎする前に、飲酒について考え直した方が、がん予防としては効果的ではないでしょうか。

アルコールが腸内菌の共生バランスを失調させたり、腸内毒素症を起こすことが明らかにされています。その結果、免疫力が低下し様々な病気の原因になる仕組みも解明されています。

飲酒とがんとの関係については、次の記事も参考にしてくださいね。

2. 運動が最も効果的

運動に大きながん予防効果があるということも、グラフから判ります。

がん予防という意味では、食事だけでなく、禁酒禁煙運動が非常に重要ということではないでしょうか。

米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校は、大腸がんステージIIIの患者1,011人を対象に前向きコホート研究を実施しています。

その結果が2022年に公表されましたが、ステージⅢの大腸がんと診断された後は、赤肉や赤肉の加工食品を食べても、食べなくても、再発と死亡リスクには影響がないことが示されています。

大腸がん予防のためには、肉類を食べ過ぎることは控えた方が良さそうですが、第3ステージ以降の大腸がんと診断されたら、もはや多少お肉を控えたところで、生存率は高くならないという悲しい現実です。

言い換えれば、もう思いっきり、好きなようにお肉を食べて構わないということ

皮肉な現実ですね・・・・・お肉だけに

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献:

グラフの元データ

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング