ソフィアウッズ・インスティテュートの公式ブログ「図書室」

健康と幸せを手に入れるホリスティック・ヘルスコーチの食事法

あなたの細胞が、がん細胞の協力者となってしまう仕組みと、そうさせない方法

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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がん細胞は、決して単独で生きているのではない」という論文がサイエンス誌『ネイチャー』に掲載され、細胞の代謝に働きかける治療を平行して行うことで、免疫療法の効果を高められる可能性について述べられていました。

がん細胞の代謝は複雑です。

でも、がん細胞がいったいどうやって栄養を得て成長していくのか、その仕組みを少しでも理解することで、予防のために私達ができる食事やライフスタイルへの間接的な示唆になれば嬉しいです。

非常に長い論文でしたので私の興味をひいた部分だけ、かいつまんでお伝えします(笑)(と、言ってもかなり長いです・・)

(出典は、最後に参考文献として掲載しています)

がん細胞は、必ずしも快適な環境で成長、増殖、転移をしているのではない

原発性の固形腫瘍(がん細胞)は、健康な細胞に囲まれた環境で発生します。腫瘍微小環境(TME)と呼ばれる必ずしもがん細胞にとって友好的ではない隣接細胞達との関係を変容させ、免疫細胞による監視から逃れながら成長と転移を行わなければなりません。

註:腫瘍微小環境(TME:tumor microenvironments)|がん細胞(腫瘍)を囲む微小環境のこと。正常細胞(免疫細胞、線維芽細胞、リンパ球など)、生体分子、細胞外マトリックス、血管などから構成される。 微小環境から腫瘍が栄養の供給を受けるなど、腫瘍と微小環境は相互に影響を及ぼし合っており、微小環境が腫瘍の縮小や増殖にも影響を及ぼすと考えられている

がん関連死のほとんどは、原発がん細胞が、遠隔臓器へ転移し拡散されることによって起きていますが、実は、遠隔臓器への転移には多くの段階を必要とし、非常に非効率なプロセスを経て、がん細胞はやっているのだそうです。

まず成長に必要な成分の合成と活動に必要な栄養素を最大限に活用するために、がん細胞は各環境に合った代謝的進化をします。そして、がん細胞自身に留まらず、隣接する細胞(間質細胞)の代謝まで急速に変容させ、自分にとって快適な環境を創り出していきます。

註:間質細胞|臓器の結合組織の細胞。 間質細胞は、子宮粘膜(子宮内膜)、前立腺、骨髄前駆細胞、卵巣だけでなく、造血系などにも関連している。実質細胞を支える細胞である。

局所がん細胞は特殊な代謝をする

がん細胞は、発生した臓器ごとに特殊な代謝手段を用います。

1. ヒト非小細胞肺がん(NSCLC)の例

ヒト非小細胞肺がん細胞は、乳酸ブドウ糖の両方を活用します。

  • 血管新生(がん細胞と血管をつなぐ新しい血管の発生)が良好で血管から直接多くの栄養が利用できる場合には、様々な栄養素を利用
  • 血管からの供給が少ない場合には、ブドウ糖(グルコース)を利用

しかし

  • ミトコンドリアの乳酸脱水素酵素を活性させて、乳酸を直接TCAサイクル(エネルギーを造り出す回路)に利用できるように進化した後は、ブドウ糖よりも乳酸を好む

と言った特徴があるそうです。

註:
・TCAサイクル(回路)|人間の体の中でエネルギーを作り出していく回路。体のエネルギー工場
・乳酸脱水素酵素(LDH)|ほぼすべての生物の細胞質に存在する酵素。糖が増えれば乳酸を生成する方向の反応が進む。解糖系のバランスを取る重要な酵素。

腫瘍区画内のがん細胞たちの「代謝共生関係」

註:腫瘍区画|筋肉なら筋肉、骨なら骨の中に腫瘍が収まっているか、出ているかということで、これにより手術の適応を判断する。

同じ場所にいるがん細胞同士が食べ物を分け合っていることが次第に判ってきています。

1. 乳酸シャトル

  1. 酸素の少ない低酸素環境にいるがん細胞が、酸素を使わずにブドウ糖を分解(嫌気性解糖)消化して、乳酸を造ります。
  2. 次に、造られた乳酸は、隣接する有酸素環境にいるがん細胞に供給され、TCAサイクルを回す(エネルギーを創り出す)ための燃料として利用されます。

なんということでしょう!

低酸素環境にいるがん細胞が、有酸素環境にいるがん細胞が元気に成長・増殖できるように栄養素(乳酸)を製造供給して、サポートしているなんて!

2. アミノ酸

また、腫瘍区画の端いるがん細胞が、中心部のがん細胞へ、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、アスパルテートなどのアミノ酸の供給をしていると考えられています。

巣の中心にいる女王のために餌を運ぶ、まるで働きアリのようながん細胞がいるんですねぇ。あるいは、特殊詐欺グループのように、末端の受け子のお金が、グループの中心にいる首魁に流れるかのようです。

3. すい臓がんと乳がんの例

抗血管新生療法(がん細胞が血管とつながれないようにする化学療法)によって急性低酸素症が起こると、低酸素環境下のすい臓がん細胞と乳がん細胞は乳酸を過剰に造り始め、血管に近接する仲間のがん細胞へその乳酸を提供し、彼等の成長と増殖を助けるのだそうです。

そのため、治療効果が得られなかった事例が報告されています。

同様の代謝共生関係が、肺がん大腸がんでも報告されており、がん細胞全般に及ぶ機能ではないかと懸念されています。

マインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースでは、血管新生を阻害する効果が報告されている食品についてお伝えしていますが、血管新生を阻害する方法は、がん予防や初期段階には役に立つものの、ある程度、進行してしまったがんには、あまり役に立たないのかもしれませんね・・。

乳酸の隠れた役割?

血管とつながり、十分に酸素を取り入れることができる環境にいるがん細胞は、乳酸を含め、ブドウ糖や他の栄養素を簡単に取り入れることができるため、低酸素環境にいるがん細胞が造る乳酸が、どの程度、実際にがん細胞の成長と転移に貢献しているのかは、不明です。

もしかしたら乳酸には何か他に特殊な働きがあるのかもしれません。しかしそれについては、まだ解明されていないのだそうです。

有酸素環境にいるがん細胞が、低酸素環境のがん細胞のために供給する栄養

乳酸シャトルは、低酸素環境のがん細胞が、有酸素環境のがん細胞のために乳酸を製造し提供する行為ですが、その逆もがん細胞はやっているそうです。

1. 不飽和脂肪酸

低酸素の環境にいるがん細胞は、多くの不飽和脂肪酸を取り込むことで脂質恒常性を維持します。

それを支えるために、有酸素環境にいるがん細胞が脂肪酸を合成し、低酸素環境にいるがん細胞に与えている可能性が示唆されています。

2. 酢酸

ヒト神経膠芽腫にとって、酢酸はエネルギー基質のひとつです。有酸素環境にいる神経膠芽腫細胞が、低酸素環境にいるがん細胞のために、酢酸塩をピルビン酸から合成している可能性が示唆されています。

3. アラニン(アミノ酸)

有酸素環境にいる、すい管腺がん細胞は、低酸素環境にいるがん細胞に主な炭素源の1つであるアラニンを提供しています。

4. グルタミン酸(アミノ酸)

グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)を介したアンモニアの代謝リサイクルは、乳がん細胞群をサポートすることが示されています。GDHを造ることができる乳がん細胞が、アンモニアを利用して、隣接する乳がん細胞のために、グルタミン酸を高濃度で合成している可能性があることが報告されています。

こうした、がん細胞同士の栄養素の与え合い(代謝交流)が、がんの成長と医療効果に大きな影響を与えています。

がん細胞同士の栄養素の与え合いを仲介する「がん関連線維芽細胞」

がん関連線維芽細胞(CAF)は、がんの発生、進行、転移の経過を決める重要な細胞と細胞をつなぐ細胞(間質細胞)の構成員です。

長期間に渡りストレスを受け続けた正常な線維芽細胞は、増殖率と生存能力を向上させ、がん関連線維芽細胞として代謝的に再プログラミングされていきます。

健康な細胞に不要なストレスを与えてはいけませんね。

がん細胞とがん関連線維芽細胞は様々な手段を用いて協力し合っている

前述した乳酸シャトルもそのひとつです。

低酸素環境下にいるがん細胞自身だけでなく、がん関連線維芽細胞も、低酸素環境下ではブドウ糖を代謝して乳酸を造ります。乳酸は、有酸素環境にいるがん細胞に取り込まれ利用されます。

しかし、動物の体内には多くの乳酸や他の栄養素が存在しているので、がん関連線維芽細胞が造った乳酸は、がん細胞の代謝と成長へ部分的に貢献しているにすぎないと考えられています。

また、がん関連線維芽細胞は、がん細胞へ乳酸を提供するだけの存在ではなく、その逆も存在すること、そして、どの臓器のがん細胞との協働かによって、協力の方向性や造り出す栄養素が異なることも報告されています。

1. 前立腺

前立腺がん細胞周辺では、酸素や栄養素が不足すると、グルコーストランスポーター(ブドウ糖を運ぶタンパク質)やモノカルボキシレートトランスポーター(乳酸を運ぶタンパク質)が活発に動き出します。

  1. 前立腺がん関連線維芽細胞は、ブドウ糖の取り込みを増やし、乳酸を多く造るようになります。
  2. 前立腺がん細胞では、ブドウ糖の取り込みが減り、前立腺がん関連線維芽細胞が造った乳酸を取り込み、有酸素環境での代謝に向けて再プログラミングが行われます。

それだけでなく、前立腺がん関連線維芽細胞は、アミノ酸、脂肪酸、TCAサイクルの代謝物など、幅広い物質の小胞体(エキソソーム)をがん細胞のために放出します。

註:エキソソーム|細胞から分泌される脂質二重膜からなる膜結合性の細胞外小胞

2. 乳房と大腸

乳房と大腸のがん細胞は、ブドウ糖を消費し、乳酸を周囲の線維芽細胞に提供します。

3. すい臓

すい臓のがん関連線維芽細胞は、ブドウ糖の代謝が悪く、がん細胞のために乳酸を造るよりも、がん細胞から乳酸をもらっている方が多い傾向がみられます。

そのお返しに、アミノ酸、脂肪酸、TCAサイクルの代謝物など、幅広い物質の小胞体(エキソソーム)をがん細胞のために提供します。

4. すい管腺

ブドウ糖とグルタミン酸は、すい管腺がん細胞にとって不可欠な栄養素です。しかし栄養が限定的な環境下では、すいがん関連線維芽細胞の主な型である、すい星細胞(PSC)が、強力なオートファジー作用(不要タンパク質の分解・再利用)によってアミノ酸アラニンを造ります。このアラニンが、すい管腺がん細胞の主な炭素源となり、ブドウ糖とグルタミン酸の不足を補います。

また、栄養が限定的な環境下で、すい星細胞はコラーゲン由来のプロリンの供給も行っており、すい管腺がん細胞の代謝と成長をサポートし、生存率を向上させています。

更に、すい星細胞は、リゾホスファチジルコリンを分泌して、すい管腺がん細胞が、細胞膜を構成する主要成分であるホスファチジルコリンを合成したり、動脈硬化などを誘引するリゾホスファチジン酸を作る助けもしています。

註:
・リゾホスファチジルコリン(LPC)|脂肪酸が1つしか結合していないホスファチジルコリン。動脈硬化巣や炎症組織において増加している
・ホスファチジルコリン|レシチンの別名。リン脂質と呼ばれる脂質の一種。私達の脳や神経組織などに多く含まれ、細胞膜を構成する主要成分。神経伝達物質のアセチルコリンの素。学習や記憶、睡眠などに関わる。
・リゾホスファチジン酸(LPA)|リン脂質誘導体。ホスファチジン酸合成の中間生成物。その代謝異常ががん悪性化,動脈硬化や線維症などの病態の誘因と推定されている。

5. 卵巣

卵巣のがん関連線維芽細胞も、ブドウ糖の代謝が悪く、乳酸を造るよりも、もらっている方が多い傾向がみられます。

そのお返しとして、栄養が乏しい環境下で、卵巣がん関連線維芽細胞は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)とアスパラギン酸を使用してがん細胞のためにグルタミン酸を合成します。

卵巣がん関連線維芽細胞は、卵巣がん細胞がグリコーゲンを分解することを助け、それがブドウ糖の代謝に利用され、増殖と浸潤の進行を支えます。

この仕組みを利用した、グルタミン合成酵素とグルタミナーゼの両方を標的とした治療が卵巣がんの成長と転移を大幅に減少させたことが報告されています。

・分岐鎖アミノ酸(BCAA)|運動時の筋肉でエネルギー源となる必須アミノ酸、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称。枝わかれするような分子構造をしている。
・グルタミナーゼ|グルタミンからグルタミン酸を産生する酵素

6. 肺

肺のがん関連線維芽細胞は、オートファジーを利用して、ジペプチドをどんどん分泌し、がん細胞へ提供します。

すでにかなり長い話になってしまっていますが、がん細胞への影響供給の仕組みはまだまだ続きます。

脂肪細胞は、がん細胞と協働する

肥満症は、様々ながんの発症リスクを高め、悪性化を引き起こします。現在では、肥満症の脂肪細胞と脂肪組織が、がん発症リスクを高める直接的な原因であることが判っています。

脂肪は、がん細胞の

  • 成長に必要な成分やエネルギーの合成
  • 細胞膜の恒常性の維持

に必要です。

つまり、がん細胞の増殖には、脂肪が不可欠なんです。その脂肪を脂肪細胞が、がん細胞に提供してしまうのです。

酸素が不足している環境(低酸素環境)では、がん関連線維芽細胞が、小胞体(エキソソーム)を使って脂肪をがん細胞に届けます。

また、がん細胞が細胞の外から必要な栄養を得らえるように、大きな分子が細胞膜を通り抜けられるようにしてくれるエンドサイトーシス経路と呼ばれる経路が関与している可能性が高いと考えられています。

註:エンドサイトーシス (endocytosis) |細胞が細胞外の物質を取り込む過程の1つ。細胞に必要な物質に極性があったり、大きな分子である場合、細胞膜を通り抜ける事ができないため、エンドサイトーシスにより細胞内に輸送される。取り込む物質の種類やその機構の違いから、食作用(しょくさよう、phagocytosis)と、飲作用(いんさよう、pinocytosis)とに大別される。

1. 乳がんの例

乳がん細胞に隣接した脂肪細胞は、乳がん細胞に脂肪酸を提供します。

2. 卵巣がんの例

卵巣がんに隣接したヒト大網脂肪細胞は、卵巣がんに脂肪酸の吸収を促し、

  • コレステロールと脂肪などを貯蔵するための小器官(脂肪滴)
  • がん細胞の成長を促進させるCD36(脂肪酸トランスロカーゼ)

を大量に発生させます。

註:CD36(脂肪酸トランスロカーゼ)|細胞外から脂肪酸を取り込む輸送体。

卵巣の脂肪細胞だけでなく、間質性脂肪細胞も、アルギニンの代謝を通して、卵巣がん細胞と連絡を取っていることが示されています。

  1. 卵巣がん細胞は、誘導型一酸化窒素合成酵素を用いてアルギニンを代謝し、一酸化窒素とシトルリンを造ります。
  2. 一酸化窒素は、ブドウ糖の代謝に利用され、がん細胞の増殖を促進します。
  3. シトルリンは放出されて間質性脂肪細胞が受け取り、アルギニンに再変換します。
  4. アルギニンは再び放出され、それをがん細胞が受け取り、一酸化窒素とシトルリンを造ります。
  5. その繰り返しです。

これを共生代謝ループと呼ぶそうです。

素晴らしくエコなリサイクルの協働作業ですが、ありがたくないですね。

免疫細胞とがん細胞による栄養の奪い合い

免疫細胞とがん細胞の両方にとって必要不可欠な栄養素があります。そうした栄養素は両者の奪い合いとなります。

そのため、これらの栄養素をそのまま直接、摂取したのでは、免疫細胞だけでなく、がん細胞にも資してしまうかもしれない危険性があります。

それががんの食事療法の難しいところ…

この続きと、

がん細胞の成長と増殖を難しくさせる体内環境を作るには

  1. がん細胞の成長と進行速度に影響する要因
  2. 細胞をグレさせないためには
  3. 適度な脂肪細胞は良い働きをしている
  4. がん細胞の代謝的進化の方向性を決める要因
  5. がんと診断されたら、○○を減らすと免疫療法の効果が高まる

については、

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Author: Chise

森智世(もりちせ) | 公認 統合食養ヘルスコーチ(Certified Integrative Nutrition Health Coach) / ソフィアウッズ・インスティテュート代表 / 米国代替医療協会(AADP) 公認ホリスティック・ヘルスコーチ / 女子栄養大学 食生活指導士 / 国際ヘルスコーチ協会 公認国際ヘルスコーチ/ 経営学修士(MBA)| ひとりひとりのバイオ個性に着目したポストモダンでホリスティックな食事法を推奨し、マインド・ボディ・コネクション(心と体のつながり)を食を通して実現します。また、私達を取り巻くすべての環境 - 人間関係、仕事などの社会環境、自然環境、体内環境(マイクロバイオーム) - を考慮するボディ・エコロジストです。長期に渡り過ごした米国やヨーロッパの情報も、判りやすく解説を入れて配信していきます。厚生労働省「健康寿命をのばそう」プロジェクトメンバー / 目黒区男女平等共同参画審議会委員 / 日経ウーマンオンライン連載コラム『ホリスティック美女講座』執筆。食事法や健康などご相談のある方やヘルスコーチングを受けてみたい方は初回コンサルテーション(無料)にお申し込みくださいね!

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