がん細胞の協力者を体内に作ってしまう仕組みとそうさせない方法

2020/11/17/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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がん細胞には内部協力者がいる

がん細胞は、決して単独で生きているのではない」という論文がサイエンス誌『ネイチャー』に掲載され、細胞の栄養利用に働きかける食事療法を平行して行うことで、免疫療法の効果を高められる可能性について述べられていました。

がん細胞の代謝(栄養素の消化・分解)は複雑です。

しかし、がん細胞がいったいどうやって栄養を得て成長していくのか、その仕組みを少しでも理解することで、予防のために私達ができる食事やライフスタイルへの間接的な示唆になれば嬉しいです。

非常に長い論文でしたので私の興味をひいた部分だけ、かいつまんでお伝えします(笑)(と、言ってもかなり長いです・・)

出典は、最後に参考文献として掲載しています。

当初がん細胞の環境は必ずしも快適ではない

がん細胞は、必ずしも快適な環境で成長、増殖、転移をしているのではありません。

原発性の固形がんは、健康な細胞に囲まれた環境で発生します。腫瘍微小環境(TME)と呼ばれる必ずしもがん細胞に対して友好的ではない隣接した細胞達との関係を、自分にとって都合の良い方向へ変えながら、免疫細胞による監視から逃れながら、成長と転移を行わなければなりません。

註:腫瘍微小環境(TME:tumor microenvironments)|がん細胞(腫瘍)を囲む微小環境のこと。正常細胞(免疫細胞、線維芽細胞、リンパ球など)、生体分子、細胞外マトリックス、血管などから構成される。 微小環境から腫瘍が栄養の供給を受けるなど、腫瘍と微小環境は相互に影響を及ぼし合っており、微小環境が腫瘍の縮小や増殖にも影響を及ぼすと考えられている

がんの転移はがんにとっては非常に非効率なプロセス

がん関連死のほとんどは、原発がん細胞が、遠隔臓器へ転移し拡散されることによって起きています。でも実は、遠隔臓器への転移は多くの段階を必要とし、非常に非効率なプロセスなんです。

成長に必要な栄養分の合成と活用を最大限にするために、がん細胞は次のような戦略をとり、自分にとって快適な環境を創り出していきます。

  1. 発生した臓器(発生した環境)に適合するように、栄養利用の方法(代謝)を進化させる
  2. 隣接する細胞(間質細胞)の代謝を変化させる

註:間質細胞|臓器の結合組織の細胞。 間質細胞は、子宮粘膜(子宮内膜)、前立腺、骨髄前駆細胞、卵巣だけでなく、造血系などにも関連している。実質細胞を支える細胞である。

このプロセスの早い段階で、がん細胞の活動を阻止できれば、私達は転移を免れることができます。

早期発見、大事ですね。

局所がん細胞は特殊な代謝をする

がん細胞は、発生した臓器ごとに特殊な代謝手段を用います。

1. ヒト非小細胞肺がん(NSCLC)の例

ヒト非小細胞肺がん細胞は、乳酸ブドウ糖の両方を活用します。

  • 血管から直接多くの栄養が利用できる場合|様々な栄養素を利用
  • 血管からの供給が少ない場合|ブドウ糖(グルコース)を利用

しかし、ヒト非小細胞肺がん細胞は、乳酸を直接利用できるように進化することができ、進化後は、ブドウ糖よりも乳酸を好むと、言った特徴があるそうです。

腫瘍区画内の共生関係

腫瘍区画とは、ぶっちゃけ、がん細胞の「縄張り」のようなものです。その縄張りの中にいるがん細胞同士は、食べ物を分け合っていることが次第に判ってきています。

註:腫瘍区画|筋肉なら筋肉、骨なら骨の中に腫瘍が収まっているか、出ているかということで、これにより手術の適応を判断する。

低酸素のがん細胞から有酸素のがん細胞へ

1. 乳酸シャトル

低酸素環境にいるがん細胞は、有酸素環境にいるがん細胞が元気に成長・増殖できるように栄養(乳酸)を製造して供給し、サポートしています。

  1. 酸素の少ない低酸素環境にいるがん細胞は、酸素を使わずにブドウ糖を分解(嫌気性解糖)消化して、乳酸を造ります。
  2. 造られた乳酸は、隣接する有酸素環境にいるがん細胞に供給され、TCAサイクルを回す(エネルギーを創り出す)ための燃料として利用されます。

2. アミノ酸

腫瘍区画の端いるがん細胞は、中心部のがん細胞へ、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、アスパルテートなどのアミノ酸の供給をしていると考えられています。

巣の中心にいる女王のために餌を運ぶ、まるで働きアリのようながん細胞がいるんですね。あるいは、特殊詐欺グループのように、搾取金が末端の受け子からグループの中心にいる首魁に流れるかのようです。

抗血管新生療法による治療効果が得られない理由

抗血管新生療法(がん細胞が血管とつながれないようにする化学療法)によって細胞内の酸素が欠乏し急性低酸素症が起こります。すると、低酸素環境下のがん細胞は、酸素を使わずにブドウ糖から乳酸を造り始め、血管に近接する仲間のがん細胞へその乳酸を提供し、彼等の成長と増殖を助けるのだそうです。

より生き延びる可能性のあるがん細胞へ栄養を届ける・・がん細胞でなければ、ある意味、素晴らしい精神とも言えますが、このがん細胞同士の協働関係によって、抗血管新生療法による治療効果が得られなかった事例がすい臓がん、乳がん、肺がん、大腸がんで報告されており、がん細胞全般に及ぶ機能ではないかと懸念されています。

血管新生を阻害する方法は、がん予防や初期段階には役に立つものの、ある程度、進行してしまったがんには、あまり役に立たないのかもしれません。

乳酸には隠れた役割があるのかもしれない

血管と既につながっていて、十分に酸素や栄養素を取り入れることができるがん細胞は、何も低酸素環境にいるがん細胞から乳酸をもらわなくても生き延びられるはずです。そのため、上で紹介した低酸素環境にいるがん細胞が造る乳酸が、どの程度、実際にがん細胞の成長と転移に貢献しているのか、疑問が残ります。

そのため、乳酸には何か他に特殊な働きがあるのかもしれないと考えられています。しかし、まだ詳細は解明されていません。

有酸素のがん細胞から低酸素のがん細胞へ

1. 不飽和脂肪酸

有酸素環境にいるがん細胞は脂肪酸を合成し、低酸素環境にいるがん細胞に与えている可能性が示唆されています。

低酸素の環境にいるがん細胞は、多くの不飽和脂肪酸を取り込むことで脂質恒常性を維持します。

2. 酢酸

有酸素環境にいるがん細胞は、低酸素環境にいるがん細胞のために、酢酸塩をピルビン酸から合成している可能性が示唆されています。

ヒト神経膠芽腫で確認されており、ヒト神経膠芽腫にとって酢酸はエネルギー基質のひとつです。

3. アラニン(アミノ酸)

有酸素環境にいるがん細胞は、低酸素環境にいるがん細胞に主な炭素源の1つであるアラニンを提供していることが、すい管腺がん細胞で確認されています。

4. グルタミン(アミノ酸)

グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)を造ることができるがん細胞は、アンモニアを利用して、隣接するがん細胞のためにグルタミンを高濃度で合成している可能性があることが報告されています。

グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)を介したアンモニアの代謝リサイクルは、乳がん細胞群をサポートすることが確認されています。

こうした、がん細胞同士の栄養素の与え合いが、がんの成長と医療効果に大きな影響を与えています。

がん細胞同士の栄養仲介者

がん関連線維芽細胞(CAF)は、がんの発生、進行、転移の経過を決める重要な、細胞と細胞をつなぐ細胞(間質細胞)の構成員です。

がん関連線維芽細胞(CAF)は、正常な線維芽細胞が長期間に渡りストレスを受け続けた結果、再プログラミングされがん関連線維芽細胞として、がん細胞の縄張り内で各構成員を仲介する役割を果たすようになったものです。

まるでストレスを受けてヘロヘロになっている人の心のすき間に言葉巧みに入り込み洗脳し、いつの間にか構成員にするどこかの宗教団体の様です。

やっぱり健康な細胞に不要なストレスを与えてはいけませんね。

がん関連線維芽細胞のサービスは客ごとに柔軟

がん関連線維芽細胞(CAF)のサービス内容は、客の好み(がん細胞の種類)によって柔軟に変わります。

前述した乳酸シャトルもそのひとつです。

がん関連線維芽細胞も、低酸素環境下ではブドウ糖から乳酸を造り、有酸素環境にいるがん細胞のために働いています。しかし、逆にがん細胞から乳酸を受け取ることもあるようです。

がん関連線維芽細胞の役割については次のことが判っています。

  • がん細胞へ乳酸を提供するだけの存在ではない
  • どの臓器のがん細胞かに合わせて、協力の方向性や造り出す栄養素を変えられる

1. 前立腺

前立腺がん細胞周辺では、酸素や栄養素が不足すると、グルコーストランスポーター(ブドウ糖を運ぶタンパク質)やモノカルボキシレートトランスポーター(乳酸を運ぶタンパク質)が活発に動き出します。

  1. 前立腺がん関連線維芽細胞は、ブドウ糖の取り込みを増やし、乳酸を多く造るようになります。
  2. 前立腺がん細胞では、ブドウ糖の取り込みが減り、前立腺がん関連線維芽細胞が造った乳酸を取り込み、有酸素環境での代謝に向けて再プログラミングが行われます。

それだけでなく、前立腺がん関連線維芽細胞は、アミノ酸、脂肪酸、TCAサイクルの代謝物など、幅広い物質の小胞体(エキソソーム)をがん細胞のために造ります。

註:エキソソーム|細胞から分泌される脂質二重膜からなる膜結合性の細胞外小胞

2. 乳房と大腸

乳房と大腸のがん細胞は、ブドウ糖を消費し、乳酸を周囲の線維芽細胞に提供しています。

3. すい臓

すい臓のがん関連線維芽細胞は、ブドウ糖の代謝が悪く、がん細胞のために乳酸を造るよりも、がん細胞から乳酸をもらっている方が多い傾向がみられます。

そのお返しに、アミノ酸、脂肪酸、TCAサイクルの代謝物など、幅広い物質の小胞体(エキソソーム)をがん細胞のために提供します。

4. すい管腺

すい管腺がん細胞にとって、ブドウ糖とグルタミン酸は不可欠な栄養素です。そのため、栄養が不足すると、すいがん関連線維芽細胞は、次の働きをして、すい管腺がん細胞を助けています。

  1. オートファジー(不要タンパク質の分解・再利用)によるアラニン(アミノ酸)の産生|アラニンは、すい管腺がん細胞の主な炭素源となり、ブドウ糖とグルタミン酸不足を補います。
  2. コラーゲン由来のプロリンの供給|すい管腺がん細胞の代謝と成長をサポートし、生存率を向上させます。
  3. リゾホスファチジルコリンの分泌|すい管腺がん細胞の細胞膜を構成する主要成分であるホスファチジルコリンの合成や、動脈硬化などを誘引するリゾホスファチジン酸の産生に活用されます。

  • リゾホスファチジルコリン(LPC)|脂肪酸が1つしか結合していないホスファチジルコリン。動脈硬化巣や炎症組織において増加している
  • ホスファチジルコリン|レシチンの別名。リン脂質と呼ばれる脂質の一種。私達の脳や神経組織などに多く含まれ、細胞膜を構成する主要成分。神経伝達物質のアセチルコリンの素。学習や記憶、睡眠などに関わる。
  • リゾホスファチジン酸(LPA)|リン脂質誘導体。ホスファチジン酸合成の中間生成物。その代謝異常ががん悪性化,動脈硬化や線維症などの病態の誘因と推定されている。

5. 卵巣

卵巣がん関連線維芽細胞は、ブドウ糖の代謝が悪いため、乳酸を造るよりも、もらっている方が多い傾向がみられます。そのお返しとして、栄養が不足した環境では、卵巣がんのために、次の働きをしています。

  1. 分岐鎖アミノ酸(BCAA)とアスパラギン酸を用いてグルタミン酸を合成
  2. 卵巣がん細胞のグリコーゲン分解を補助|ブドウ糖の代謝に利用され、増殖と浸潤の進行を支えます。

この仕組みを利用した、グルタミン合成酵素とグルタミナーゼの両方を標的とした治療が卵巣がんの成長と転移を大幅に減少させたことが報告されています。

・分岐鎖アミノ酸(BCAA)|運動時の筋肉でエネルギー源となる必須アミノ酸、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称。枝わかれするような分子構造をしている。
・グルタミナーゼ|グルタミンからグルタミン酸を産生する酵素

6. 肺

肺がん関連線維芽細胞は、オートファジーを利用して、ジペプチドを分泌しがん細胞へ提供します。

既にかなり長い話になってしまっていますが、がん細胞への栄養供給の仕組みはまだまだ続きます。

脂肪細胞はがん細胞と協働する

肥満症は、様々ながんの発症リスクを高め、悪性化を引き起こします。現在では、肥満症の脂肪細胞と脂肪組織が、がん発症リスクを高める直接的な原因であることが判っています。

脂肪は、がん細胞によって次のように活用されています。

  • 成長に必要な成分やエネルギーの合成
  • 細胞膜の恒常性の維持

つまり、がん細胞の増殖には、脂肪が不可欠なんです。その脂肪を脂肪細胞が、がん細胞に提供してしまうのです。

酸素が不足している環境(低酸素環境)では、がん関連線維芽細胞が、小胞体(エキソソーム)を使って脂肪をがん細胞に届けます。

1. 乳がんの例

乳がん細胞に隣接した脂肪細胞は、乳がん細胞に脂肪酸を提供します。

2. 卵巣がんの例

卵巣がんに隣接したヒト大網脂肪細胞は、卵巣がんに脂肪酸の吸収を促し、次の物質を大量に発生させます。

  • コレステロールと脂肪などを貯蔵するための小器官(脂肪滴)
  • がん細胞の成長を促進させるCD36(脂肪酸トランスロカーゼ)

註:CD36(脂肪酸トランスロカーゼ)|細胞外から脂肪酸を取り込む輸送体。

卵巣の脂肪細胞だけでなく、間質性脂肪細胞も、アルギニンの代謝を通して卵巣がん細胞と連絡を取っていることが示されています。

  1. 卵巣がん細胞は、誘導型一酸化窒素合成酵素を用いてアルギニンを代謝し、一酸化窒素とシトルリンを造ります。
  2. 一酸化窒素は、ブドウ糖の代謝に利用され、がん細胞の増殖を促進します。
  3. シトルリンは放出されて間質性脂肪細胞が受け取り、アルギニンに再変換します。
  4. アルギニンは再び放出され、それをがん細胞が受け取り、一酸化窒素とシトルリンを造ります。
  5. その繰り返しです。

これを共生代謝ループと呼ぶそうです。

素晴らしくエコなリサイクルの協働作業ですが、ありがたくないですね。

免疫細胞とがん細胞の栄養の奪い合い

免疫細胞とがん細胞の両方にとって必要不可欠な栄養素があります。そうした栄養素は両者の奪い合いとなります。

そのため、これらの栄養素をそのまま直接、摂取したのでは、免疫細胞だけでなく、がん細胞にも資してしまうかもしれない危険性があります。

それががんの食事療法の難しいところです。

それを考えると、これまで様々な研究によって、がんに効果的に働くと報告のある食品はとても貴重ですね。

1. ブドウ糖

ブドウ糖がどれだけ存在しているかが、細胞の代謝と成長に大きな影響を与えます。

がん細胞によるブドウ糖の消費量が増えると、がん細胞以外の細胞が利用できるブドウ糖の量が減ります。

体内に潜伏している免疫細胞にとっては、栄養不足/エネルギー不足の環境となります。

メラノーマ(悪性皮膚がん)の例

免疫T細胞は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)を使って、細胞のカルシウムイオンポンプ(細胞死に関する機能)の調節を行っています。

註:ホスホエノールピルビン酸(PEP)|生化学的に重要な有機化合物の一つ

しかし、メラノーマがブドウ糖を大量に消費してしまうと、免疫T細胞に必要なブドウ糖の量が制限され、PEPを十分に作ることができなくなってしまいます。PEPが減少すれば、細胞死を調節するシグナル伝達が滞り、メラノーマの成長を許してしまうことになります。

実際、メラノーマの治療において、免疫T細胞の数を増やすよりも、メラノーマによるブドウ糖の吸収を阻害し、免疫T細胞に直接ブドウ糖を供給する方が、免疫キラーT細胞の機能を回復させるために有効であることが報告されています。

私達にできることは、不必要なブドウ糖をできるだけ体内に入れないようにすることですね。

2. アルギニン(アミノ酸)

一般的に、がん細胞では、細胞外からもたらされるアルギニンへの依存度が高いことが観察されています。

がんの種類の中には、尿素サイクル酵素アルギニノコハク酸合成酵素(ASS1)をもっていないために、自前でアルギニンが合成できず、外からの供給のみに依存している種もいくつかあるそうです。

がん細胞だけでなく、アルギニンは、エフェクター免疫T細胞にも大きな影響を与えます。

註:エフェクターT細胞|胸腺の外に出て全身を循環しながら、病原体(細菌・ウイルス・寄生虫・真菌など)の排除に最適な免疫反応を誘導する。ヘルパーT細胞が、分化したもの。

アルギニンが十分にある時は、免疫細胞全体に代謝変化が起こり、中央記憶の様な細胞の生成が促進されます。

アルギニンが不足している時は、アミノ酸欠乏によって、免疫T細胞のエフェクター機能が弱まり、病原体ごとの専門部隊を造ることができなくなってしまいます。

免疫T細胞のエフェクター機能を活性化し専門の精鋭部隊として活躍してもらうために、アルギニン不足の解消と、アルギニンの充填療法が、有効な治療法として注目されています。

アルギニン豊富な食品

豚肉(ゼラチン)、大豆と大豆製品、ナッツ類とシーズ類、煮干しや鰹節、卵白

3. トリプトファン(必須アミノ酸)

トリプトファンは、セロトニン経路と呼ばれる代謝経で代謝されると、セロトニン(幸せと覚醒のホルモン)やメラトニン(睡眠と認知機能保護のホルモン)になりますが、キヌレニン経路と呼ばれる代謝経路に入ってしまうと、私達の脳内で、キノリン酸と呼ばれる神経毒になります。

キヌレニン経路で起こるトリプトファンの分解過程で、最初に発生する酵素が、がん細胞とマクロファージ(免疫細胞)の両方で多く見つかっていることから、アルギニンと同様に、トリプトファンは、がん細胞と免疫細胞の両方にとって必要なアミノ酸であることが判明しています。

キヌレニン経路によって最終的に作られるキヌレニンは、免疫抑制代謝物であり、制御性免疫T細胞(免疫T細胞の働きにブレーキをかける細胞)の発生を促します。

そのことから、現在、免疫チェックポイント阻害剤を用いた臨床研究において、トリプトファンの分解を抑制する薬剤の併用試験が行われています。

トリプトファンがキヌレニン経路で代謝されないよう脳を保護する食品については、『あなたが夜よく眠れない意外な理由・放置しておくと怖~いことに』をご参照ください。

幸せホルモン”セロトニン”を造るアミノ酸トリプトファンの多い食品

註:制御性免疫T細胞|免疫応答の抑制的制御(免疫寛容)を司るT細胞の一種。 免疫応答機構の過剰な免疫応答を抑制するためのブレーキ(負の制御機構)や、免疫の恒常性維持で重要な役割を果たす。

4. セリン(アミノ酸)

セリンは必須アミノ酸ではありませんので、私達はセリン合成経路(SSP)によって、セリンを自前で造ることができます

多くのがん細胞は、セリンを自前で造るよりも、外から摂取したセリンを選択的に消費しますが、乳がんメラノーマなどの特定のがんは、例えセリンが外から与えられても、セリン合成酵素の遺伝子を増幅させて自前で造るセリンを好みます。

免疫T細胞の拡張とエフェクター(分化)機能にとっては、外から得られるセリンは重要です。

と、いうことは、乳がんとメラノーマの場合には、免疫細胞のために食事からセリンを提供しても大丈夫と理解して良いのかしら?

セリンの豊富な食品

卵白、大豆や大豆製品、煮干しや鰹節など干した魚類、小麦タンパクに多く含まれています。

5. メチオニン(アミノ酸)

メチオニンは、タンパク質合成に関与し、すべてのメチル化反応でメチル基供与体(SAM)を生成する必須アミノ酸です。

註:S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)|メチル基供与体として作用

がん細胞は、メチオニンを分解し利用します。メチオニンの分解に関与している酵素は、がん細胞で過剰発現するがん遺伝子として同定されています。

免疫T細胞は、活性化すると、SAMの貯蔵量を維持するためにメチオニンを急速に取り込もうとします。その際、メチオニンが不足していると、ヘルパー免疫T細胞の増殖とサイトカインの産生に関与している主な遺伝子の発現が抑制されてしまいます。

つまり、がん細胞がメチオニンを消費してしまうと、免疫T細胞の活性と分化(専門部隊化)に影響が生じるのです。

異なる細胞環境をもっている、異なる臓器への転移をがん細胞がどのように可能しているのかについては、論文の後半に各臓器ごとの事例を用いて述べられています。

ただあまりに長いので今回は、ここまで(笑)

がん細胞の成長と増殖を難しくさせる体内環境を作るには >>

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ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング