炎症性腸疾患(IBD)や大腸がんを予防改善する糖鎖|食事から摂る方法

2022/04/14/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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2022年1月号の『ネイチャー』誌に掲載された腸粘膜に関する論文が非常に興味深かったので、わたしの興味を引いた部分についてのみ和訳・要約して、第一部『炎症性腸疾患(IBD)や大腸がんを予防改善する糖鎖|その役割』として、お伝えしました。

健康的な腸粘膜の維持のためにできることをお伝えします。

感染症や、免疫性疾患、代謝性疾患や代謝障害の治療や改善に効果があると期待されているムチン分解菌は、次のような菌です。

  • 乳酸菌
  • ビフィズス菌属
  • バクテロイデス菌属
  • A.ムシニフィラ菌属
  • など

これらの菌を生きたまま直接、腸内に届けます。

さまざまな発酵食品を食事に加えることで、こうした善玉菌を腸に届けることができます。

ただし、市販されているヨーグルトやスーパーの常温の棚に並べられている味噌などの発酵食品には、生きた菌は含まれていません。殺菌された後に販売されていますので、当然、善玉菌も死んでいます。

死んだ菌は、生きた菌の餌になるので、無駄にはなりませんが、生きた菌を腸に届けるという目的の達成はできません。

2. プロバイオティクス

上記した菌を含むサプリメントのことをプロバイオティクスと呼ばれることがあります。一部の研究者によってサプリメントに大きな期待が寄せられています。

上記した菌を患者の腸内に移植する治療にも期待が寄せられています。

既に、炎症性の腸疾患を発症している場合には、善玉菌の移植が有効であるケースが報告されています。

善玉菌を腸内に直接届けるのではなく、善玉菌が好む餌を与えることで自己増殖させる方法です。

善玉菌の餌は、プレバイオティクスと呼ばれます。

腸内の善玉菌を健康に保ち増やすプレバイオティクスとして、糖鎖に注目が集まっています。

1. 母乳オリゴ糖

母乳に含まれているオリゴ糖=母乳オリゴ糖も糖鎖です。

母乳オリゴ糖(母乳糖鎖)には次のような種類があります。

  • シアリルラクト-N-テトラオース
  • シアル化ガラクトオリゴ糖
  • シアリルラクト-N-テトラオース
  • 2′-フコシルラクトース
  • など

これらは、第1部でご紹介した免疫機能向上や疾患予防の機能をもつシアル化母乳オリゴ糖フコース化オリゴ糖です。

実際、腸の健康と多くの疾患の予防にとって重要な役割を果たしている腸内細菌を、効果的に健康に保つためのプレバイオティクスとして、母乳オリゴ糖と血液型抗原が有望であることが報告されています。

母乳糖鎖を食事に加えることで、腸粘粘膜層に重大な欠陥をもつ炎症性腸疾患(IBD)や代謝性疾患/障害が改善されると期待されています。

また、母乳糖鎖を乳児用調製粉乳に混ぜることで、乳児の壊死性腸炎(NEC)などの症状を軽減できることが示されています。

しかし、乳児でない限り、母乳糖鎖を豊富に含む母乳を大人が飲むわけにもいきません。そのため、サプリメントとして販売されている母乳糖鎖を活用することになります。

2. 合成糖鎖(要注意)

母乳糖鎖のように天然に存在するオリゴ糖鎖の活用には難しさがあることから、合成糖鎖の活用(機能性食品の開発)が提案されています。

合成糖鎖がプレバイオティクスとして機能するならば、天然の糖鎖と同様に次の作用が現われるとする仮説があります。

  • 粘膜量とバリア機能の向上
  • 病原菌による感染の予防
  • 粘膜の健康維持
  • 宿主の有益な免疫反応と代謝反応の誘発

更に、乳児用調製粉乳に合成糖鎖を添加することによって、母乳と同様に乳児の腸に善玉菌のコロニーを形成する有益な糖鎖分解菌の増殖を促し、腸内細菌ネットワークを造り、粘膜の健康が維持され、その後の人生にとって有益な結果をもたらすことが期待されています。

ただしこれは、あくまでも仮設段階の話です。まだ実証されているわけではありません。

ちなみに次のオリゴ糖は、既に人工甘味料として販売されている天然には存在しない合成糖鎖です。

  • 乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)|乳糖と果糖から造る合成オリゴ糖
  • αオリゴ糖|でんぶんから造る合成オリゴ糖、無味無臭

統合食養学のヘルスコーチとしては、合成されたものに頼ることはお勧めしたくありません。注意喚起として、この情報をお伝えしています

3. 難消化性オリゴ糖

母乳以外にもプレバイオティクスとなるオリゴ糖鎖は、さまざまな炭水化物に含まれています。

複雑な炭水化物に含まれているオリゴ糖には、消化性オリゴ糖と難消化性オリゴ糖がありますが、プレバイオティクスとなるのは、難消化性オリゴ糖です。

難消化性オリゴ糖は、消化酵素では消化されず大腸にまで届き、善玉菌によって分解されます。

天然に存在する難消化性オリゴ糖とそれを多く含む主な食品には次の様なものがあります。

ラフィノースを多く含む大豆には、単糖が4つもつながった四糖類のスタキオースなど天然では珍しいオリゴ糖も含まれています。

文部科学省の食品成分表には、残念なことに詳しいオリゴ糖の登録がありません。海外の研究論文の中に、32の果物と41の野菜を対象に、ラフィノースとフラクトオリゴ糖の含有量を分析した研究がありましたので、含有量トップ10の食品について表にしました。

ただし和の野菜、例えば、ゴボウや大豆などは、残念ながら調査対象になっていなかったので表に含まれていません。

4. 食物繊維

食物繊維は、代表的なプレバイオティクスです。

実際、食事に含まれるブドウ糖や果糖などの単糖類と食物繊維の比率は、ムチン分解菌の量と活動力に影響を及ぼします。

食物繊維の量が少なくなると、腸炎のリスクが高くなります。

長期間に渡って、野菜や海藻類などの食物繊維豊富な食品の少ない食事、白米・白砂糖・白小麦などの多い高糖質の食事を続けていると、次の様な連鎖が起こります。

腸粘膜を分解する菌が増加 ⇒ 粘膜の組成が変わり厚みが減少 ⇒
⇒ 腸のバリア機能の弱体化 ⇒ 

その結果、次の炎症性腸疾患リスクが上昇します。

  • 壊死性腸炎(NEC)
  • 炎症性腸疾患(IBD)
  • 大腸がん

更に、炎症性の腸内細菌が活性化し、腸粘膜の量と糖鎖の構造に好ましくない変化を起こすようになります。その結果、炎症が悪化するという悪循環が起こります。

マウスを用いた実験でも次の関係性があることが確認されています。

  • 単糖類に偏った餌・・・腸内細菌が変化し疾病リスクが高くなり、大腸炎リスク上昇
  • 食物繊維が少ない餌・・・腸内細菌が変化し粘膜の欠陥が発生

言い換えれば、食物繊維をたくさん食べれば、上記したような疾患を予防できるということではないでしょうか。

腸粘膜の機能性成分を食べる

腸粘膜を健康に保つ方法として、粘膜の主成分であるムチン糖鎖を用いた研究も進められています。

1. ムチン糖鎖

ムチン糖鎖を食事から摂ることの効果はさまざまな研究によって裏付けられています。

ブタのムチン糖鎖をマウスに経口投与したところ、次の改善が確認されています。

  • 難治大腸炎を起こすC.ディフィシル菌の減少
  • 食事性肥満の発症遅延
  • A. ムシニフィラ菌(ムチン分解菌)の相対量の増加

また、粘膜シアリダーゼ(シアル酸分解酵素)を造る腸内細菌が、C.ディフィシル菌感染から宿主を守っていることを複数の動物実験が示しています。

ムチン分解菌とヒトの免疫機能/代謝機能との間には、因果関係があることを示す事例が複数存在しています。

食事にムチン糖鎖を加えると、腸内でA.ムシニフィラ菌が増え、食事性肥満の発症が遅くなることが報告されています。(つまり、太りにくくなる)

でも、ムチン糖鎖は、サプリメントとして摂るのではなく、次の食品からとって欲しいものです。

  • ツバメの巣
  • クラゲ
  • ウナギ
  • コイ
  • ドジョウ

また、今回の論文は、腸内の善玉菌の餌(プレバイオティクス)となる難消化性オリゴ糖や食物繊維だけでなく、次の成分を多く含む食品を積極的に食事に取り入れることの大切さも伝えています。

  • フコース・・・オリゴ糖のフコース化に必要
  • シアル酸・・・ムチン糖鎖の成分であり、母乳オリゴ糖のシアル化に必要

2. フコース

フコースは、海藻のヌメリ成分フコイダンから発見された糖鎖です。その名前の由来となったヒバマタ属の海藻(主に昆布)に多く含まれています。

文部科学省の成分表にフコースの登録がないことから、海藻の糖鎖含有量について分析した研究論文から、食用と思われる海藻を抜き出して、海藻のフコース含有量について下の表を作成しています。

モズクがダントツですね。

さまざまな種類のコンブにも多く含まれていることが判ります。ワカメやヒジキなどもフコースの良い摂取源になる食品ですね。

東洋医学(中医学)では、免疫力アップにはヌメリ食品が良いとされます。ヌメリ食品の代表例は海藻類ですが、科学的にもその根拠が裏付けられましたね。

なお、市販のフコイダンのサプリメントなどは、フコダインをメカブから抽出しているものが多いのですが、残念ながらこの研究にはメカブの登録はありませんでした。

3. シアル酸

シアル酸は、母乳や牛乳、鶏卵、ツバメの巣に多く含まれています

文部科学省の食品成分表にシアル酸の登録がありませんので、シアル酸研究会と1997年の『生物と化学』の35号に掲載されていた「鶏卵の化学とその応用」という解説書を参考にシアル酸の含有量をまとめています。

シアル酸研究会によれば、ツバメの巣の重量の約10%がシアル酸です。牛乳には0.2 mg/mLのシアル酸が含まれているとのことでした。

また、下の画像の左側の表が「鶏卵の化学とその応用」に掲載されていた鶏卵の各部位に含まれているシアル酸量です。右側の表は、農林水産省の鶏卵の規格を参考に、卵1個(殻付き)の重量を60gとして全てを換算したものです。

ツバメの巣がダントツだということが判りますね。( ツバメの巣の糖鎖については『アルツハイマー病とツバメの巣』 をご参照ください。)

でも、ツバメの巣は高級食材ですから日常的に食べるようなものではないので、日々の健康にという目的としては活用しにくいように思います。そういう意味では、鶏卵は便利なシアル酸源になりますね。

左の表によれば、鶏卵の部位の中では、カラザにシアル酸が多く含まれていることが判ります。カラザとは、卵黄の横にちょこっとくっついている白いヒモや固まりのようなものです。

見栄えのために調理の過程で取り除いてしまう人もいるようですが、カラザのシアル酸から抗インフルエンザ薬が創られるくらいですから、食べた方が良いものです。

シアル酸研究会によれば、卵白はO-結合型糖鎖、卵黄はN-結合型糖鎖とのことです。確かに、生の卵白はヌルヌルしていて体内の粘液に似ていますが、成分的にもムチンに近いのですね。

ソフィアウッズインスティテュートからのアドバイス

今回は、糖鎖などのミクロ成分の説明が多い内容となりましたが、サプリメントなどでそうした成分を摂るのではなく、ご紹介した自然食品を食事として取り入れることで腸内環境を適切に導くことを選択して欲しいと願います。

統合食養学には、腸内環境を整えるための「ボディエコロジーの4ステップ」というアプローチがあります。

今回のネイチャーの論文は、そこで推奨している食品の科学的な裏付けとなり、腸内環境を健康的に保つ具体的な食事戦略を明確にしてくれました。

でももし、ひとりで取り組むことに不安があるのなら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング