
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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2022年1月号の『ネイチャー』誌に掲載された論文が非常に興味深かったので、私の興味を引いた部分について和訳・要約してお伝えします。その後、その情報を日常の生活の中でどのように活用できるのか、簡単な方法についてお伝えします。
なお、この記事内で紹介されている元の研究については、ネイチャーの記事をご参照ください。
(この記事の裏付けとなる研究論文は、参考文献として最後に一覧にしています。)
目次
私達と腸内細菌は一緒に同時に進化した
ヒトと腸内細菌の共生の根底にあるメカニズムは、まだ不明なことが多いです。
でも、この共生関係にとって、腸粘液の主成分であるムチンと母乳の中にあるオリゴ糖などの「糖鎖」が、私達と共生細菌との関係にとって重要であることは、既に判っていることです。
- 私達の腸内環境に適応できた、ムチン糖鎖を消化できる特殊な細菌
- 共生菌からの要望に応えてムチン糖鎖を造ることのできる私達の体
等、お互いからの刺激に対して、お互いに反応し合うこの現象は、共生関係が共進化したことを意味しています。
私達の体は糖を様々に活用している

私達の体は、糖をエネルギー源として使用します。でも、それだけはありません。
「糖転移酵素」という酵素を用いて、糖(単糖)を鎖状に連ねた「糖鎖」を作り、体内で重要な役割を担わせています。
糖鎖は、タンパク質や脂質、細胞や赤血球などの周囲にくっついて、次のような役割を担っています。
- 分解酵素から細胞を守る
- 細胞の活性化
- 細胞間の情報伝達
- 細胞同士の接着
- 血液型の決定(血液型は血球上のオリゴ糖鎖の構造によって決まります)
などです。
ムチン糖鎖と病気との関係

ムチンはタンパク質にくっついた糖鎖のひとつです。
ムチンは、消化器官や呼吸器官などの表面を覆っている粘液の主成分で、食べ物を消化器官内でスムーズに通過させたり、呼吸器官から異物を排出したり、精子が子宮頸部を通過するのを助けたりする役割を担っています。
ムチンは、単糖のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)に
- ガラクトース
- N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)
- シアル酸
などがくっついて鎖状になったものです。
また、タンパク質と結合した糖鎖には、O-結合型とN-結合型があります。
O-型糖鎖は病気と関係している
O-結合型糖鎖には、次の様な様々なものがあります。更に、それぞれにα型とβ型があります。
- フコース
- マンノース
- キシロース
O-結合型糖鎖は、疾患と関連する等、特定の機能性を持っていることが多いです。特に、O-型糖鎖の中でも、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)やシアル酸を含む比較的短い糖鎖が、がん等との関係していることが確認されています。
アルツハイマー病と糖鎖との関係については『アルツハイマー病とツバメの巣』をご参照ください。
O-型糖鎖のムチンは様々ながんと関係している

ムチンもO-結合型糖鎖です。体粘液に機能的な特性を与える役割を果たしています。
ムチンは一定のアミノ酸の配列が繰り返される構造をもっていて、体のどこにあるムチンなのかによって、次のように分泌型と膜結合型に分れます。
- 分泌型ムチン|MUC2、MUC5AC、MUC5B、MUC6、MUC7
- 膜結合型ムチン|MUC1、MUC3、MUC4、MUC12、MUC13、MUC16、MUC17
膜結合型のムチンは、がんと関係しているものがあります。
- MUC1|乳がん、卵巣がん、膵臓がんなど様々ながんにおいて過剰発現することが報告されています。
- MUC4|正常な臓器でも発現しますが、発現が過剰になり過ぎたり、少なくなり過ぎたりすると、乳がん、卵巣がん、肺がんなど様々な病気に影響を及ぼします。
ムチンの構成は一人ひとり異なる
ムチンの構造は、遺伝子によっても一部影響を受けます。そのため、私達ひとりひとり、ムチンの構成が異なります。そして、ムチン構成の個人差は、乳児期だけでなく成人期においても私達の健康と共生細菌の顔ぶれに影響を与えます。
例えば、フコースの合成に関する遺伝子に異常を持っている人は、オリゴ糖とフコースを結合させることができないので、腸粘液にフコース化オリゴ糖が存在しません。
フコース/フコース化オリゴ糖と疾患
フコースを造れない人は、クローン病やシリアック病などの疾患リスクが高くなり、フコースを造れる人とは、異なる顔ぶれの腸内細菌を持っています。(シリアック病については『シリアック病/セリアック病あるいはグルテン不耐症をご存知ですか?』をご参照ください)
また、フコース化オリゴ糖を造れない母親の母乳で育った乳児は、腸内のビフィズス菌の量が少なく、下痢やアレルギー性疾患を起こすリスクが高くなります。
腸内細菌と腸粘膜と宿主である私達

ムチンを主成分とする腸粘膜は、腸の上皮細胞の保護バリアとしての役割をもつだけでなく、宿主である私達と共生細菌とのコミュニケーションにとって重要な役割を果たしています。
体内の粘膜層の中でも大腸の粘膜層は最も厚く、内層と外層に分れています。内側の粘膜層には共生細菌は住んでいませんが、外側の粘膜層の中の
- 酸素濃度が低い
- ムチンタンパク質やムチン糖鎖が豊富
などの腸内の特殊な粘膜環境に高度に適応し、特異的な条件に応じてネットワークを構築し、粘膜内コロニーを作り、安定した細菌コミュニティを形成しています。
腸粘膜の健康が宿主と共生細菌の健康にとって重要

腸粘膜を健康的に維持することは、腸内細菌を健康に保護するだけでなく、様々な粘膜関連疾患の予防と改善にまで及ぶと考えられています。
- 宿主の食事内容が、腸粘液内のムチン糖鎖の量に影響を与え、
- 腸粘液内のムチン糖鎖の量は、腸内細菌の顔ぶれと機能性に大きな影響を与え、
- 粘膜内の共生細菌は、腸粘液の成分と厚さと、宿主の免疫力と代謝機能などに影響を与えます。
腸粘液は、腸のバリア機能を強くし炎症反応を減少させ、ヒトの健康にとって重要な役割を担っていることを示す研究が増え続けています。
粘液は、糞便もコーティングしています。
糞便を粘液で包み込むことで、腸の健康を維持し炎症や過形成(過剰な細胞分裂によって起こる組織の肥大)を防ぐ追加バリアとなっています。
腸内細菌の健康との因果関係が判明している疾患
腸内の共生細菌との因果関係が判明している疾患は次の通りです。
- 壊死性腸炎(NEC)
- 炎症性腸疾患(IBD)
- 大腸がん
自他共栄の腸内細菌ネットワーク

共生細菌は短い糖鎖しか栄養にできません。
私達の腸粘膜にあるムチン糖鎖は長すぎるので、事前に分解される必要があります。
しかし、ムチン糖鎖(多糖類)の分解は、一種類の腸内細菌が造るひとつの酵素だけではできません。様々な腸内細菌が造る様々な酵素の組み合わせが連続的に作用する必要があります。これは、共生細菌達が協働してムチン糖鎖を分解していることを意味します。
ムチン糖鎖などの複雑な多糖類を分解する糖鎖分解酵素(グリコシダーゼ/GH/配糖体加水分解酵素)を、多様な腸内細菌が造っています。
腸内細菌のゲノム解析の結果は、腸内細菌のほとんどが、ムチン糖鎖、O-結合型糖鎖、単糖の少なくとも1種類以上を切断したり、分解する能力を持っていることを示しています。
興味深いのは、ある酵素を造る腸内細菌が、必ずしも、自分で分解した糖を自分の栄養にしているわけではないということです。例えば、ムチンからシアル酸を分離する酵素シアリダーゼを造ることのできる腸内細菌の全てが、シアル酸を利用するわけではないのです。
腸内細菌が、分解物をお互いに与え合う行動は、環境適応力や集合体としての機能を高め、安定した腸内細菌ネットワークの構築を可能にしています。
研究者は「腸内細菌による’たすき’リレーのようなムチン糖鎖の分解の第一歩は、シアル酸から始まる。腸内細菌が造るシアリダーゼ(シアル酸分解酵素)の存在は、生態学的ネットワークの重要な特徴だ」と、述べています。
母乳とオリゴ糖鎖

母乳に免疫効果がある理由
ムチンから分解・分離したシアル酸が、他の善玉菌に提供されると、病原菌による感染症が起こらなくなることが観察されています。このことは、シアル化された母乳オリゴ糖に免疫効果があることの説明になるかもしれないと研究者は述べています。
ひとつの腸内細菌がムチンからシアル酸を分離し、他の腸内細菌がそのシアル酸を利用して母乳オリゴ糖をシアル化する。そのことで乳児の免疫力が向上する・・。
母乳に含まれているオリゴ糖
母乳に最も豊富に含まれている成分のひとつがオリゴ糖です。
オリゴ糖は、異なる特異性を持つ糖転移酵素の組み合わせによって、約2〜20の単糖が直列と多少の分岐構造でつながっている非常に多様な糖鎖です。
母乳オリゴ糖は、ムチン糖鎖と似たような単糖の基礎構造と結合構造をもっています。そのため、母乳オリゴ糖とムチン糖鎖の分子特性も似ています。そして、どちらも非常に多様な構造をもっていて、私達はひとり当たり200を超える異なる構造の糖鎖をもっていることが判っています。

現在、世界中で劇的に増加し続けている免疫関連障害の発症において、次の事柄における変化が新生児と腸内細菌の共生関係に影響を与え、関係しているとする仮説があります。
- 分娩方法
- 授乳方法
- 抗生物質の使用
- 総合的な栄養状態
生後1000日間の腸内細菌叢の発達は、乳児期の栄養に大きく影響されるダイナミックなプロセスです。
乳児の腸にコロニーを形成したパイオニア的細菌は、安定した生態系構築に向けて徐々に多様化し、他の善玉菌が宿主との安定したコミュニケーションと最適な共生関係を確立する上で重要な役割を果たします。(乳児期における腸内細菌の発達と免疫との関係については『翻訳シリーズ|子供の食物アレルギーの原因と治療法の最新研究』も併せてご覧ください。)
母乳オリゴ糖の役割
母乳オリゴ糖は、乳児にとっての直接的な栄養価はありません。
母乳オリゴ糖は、乳児の腸内で共生を許可する善玉細菌を選択し、病原菌が定着することを阻害し、抗炎症効果をもっています。
つまり、母乳に含まれている糖鎖(オリゴ糖)は、
- 直接的には、病原菌が腸内に定着することを阻止し
- 間接的には、病原菌と戦う善玉菌の栄養源として
新生児を保護しているのです。
母乳は、赤ちゃんと善玉菌の共生関係を確立させる役割をもっていると言えます。
糖鎖分解菌の役割

1. 他の善玉菌のための環境づくり
乳児の粘膜層に早期に定着する菌には、
- ビフィズス菌属
- バクテロイデス菌属
- A.ムシニフィラ菌属等
があります。
これらの共生細菌達は、生き残りのために、乳児の腸内に豊富にあるムチンと類似した構造をもつ母乳オリゴ糖を活用します。母乳オリゴ糖とO-結合型ムチン糖鎖は化学的に類似しているため、共生細菌達は、これらの複雑な炭水化物の両方を分解できる酵素をもっています。
例えば、A.ムシニフィラ(腸内のムチン分解菌のひとつ)は、糖鎖分解酵素に類似する酵素を用いて、母乳オリゴ糖とムチン糖鎖の両方を分解します。
乳児の腸内で母乳オリゴ糖を餌にできるムチン分解菌は、他の善玉菌が乳児の粘膜層に早くコロニーを形成できるよう環境を整える役割をもっているのではないかと考えられています。
2. 住家となる腸粘膜の健康維持
腸内細菌が糖鎖を分解して造る代謝物は、粘膜の健康の維持に必要であることが判っています。腸内細菌が腸粘膜にコロニーを正しく形成することで、体内の粘膜、免疫、および代謝が一生涯に渡って健康に保たれます。
つまり、糖鎖分解菌の豊富さが、乳児期以降の人生においても健康な腸の良い指標となると言えます。
糖鎖を食事から効果的に摂る研究
オリゴ糖鎖/フコース/シアル酸を多く含む食品
ホリスティックに糖鎖を摂るために必要なこと
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