甲状腺機能低下症|(1)こんな症状ありませんか?検査の見方と間違えられやすい病気

2015/10/20/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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甲状腺機能低下症と症状が似ている様々な疾患

1. 甲状腺機能低下症の症状

最近、次のような症状はありませんか?

  1. 8時間から10時間の睡眠をとっていても疲れが抜けず、昼寝が必要だと感じる
  2. 最近、体重が増加した。いろいろ試しているのに体重が減らない
  3. 感情の起伏が激しくなった。不安になったりになることが多くなった
  4. PMS月経不順等のホルモンバランスの乱れや、不妊、性欲減退など
  5. 筋肉痛、関節痛、手根管症候群、腱炎(けんえん)
  6. 手足が冷たい。冷え症である。低体温である
  7. 乾燥肌。ひびわれた肌。が欠ける。抜け毛が多くなった。
  8. まゆ尻が薄くなってきた。まゆ尻が目尻よりも短い
  9. 便秘
  10. 意識がはっきりしないことがある。集中力記憶力の低下
  11. 首の腫れいびきをかく。しゃがれ声になった

当てはまる項目が多かった人は、甲状腺機能の低下を疑った方がいいかもしれません。

でも、これらの症状は、副腎疲労の症状ともよく似ています。

2. 副腎疲労の症状

副腎は、私達の生存にとって不可欠な様々なホルモンを生成している大切な臓器です。例えば、こんなホルモンを造ってくれています。

  • ストレスに立ち向うコルチゾール
  • 性ホルモン(女性ホルモン男性ホルモン
  • 成長(若返り)に欠かせない甲状腺ホルモン
  • 神経伝達物質、アドレナリンなど
  • そして、アレルギー等と戦う免疫機能も担っています。

副腎は、私達をストレスから守ることを最優先に考えます。そのため、ストレスが長期化すると、性ホルモンや甲状腺ホルモン、神経伝達物質を合成することを抑制して、その分、コルチゾールを造ることに専念し始めてしまいます。

それでもストレス環境が続けば、副腎は疲れ果て、疲労し、免疫機能が弱まっていき、最後には、免疫機能不全を起こします。これが副腎疲労です。

こうなると、いろんな病気にかかりやすくなってしまいます。ストレスが必ずといって良いほど、大きな病気(心疾患、癌、脳梗塞、糖尿病など)の原因として挙げられるのは、このためです。

だから、副腎疲労が原因で、甲状腺ホルモンが生成不足となって、甲状腺機能低下症のような症状が起こることもあるんです。

3. 糖尿病の症状

実は、上に記載した症状は、糖尿病の症状とも似ています。例えば

  • 元気がない
  • 不眠
  • 抜け毛
  • 体に力が入らない、筋力低下
  • 高血圧、不整脈
  • 過剰な食欲
  • 痛みに敏感になった
  • の治りやの伸びが遅くなった

などの症状は、甲状腺機能低下症でも糖尿病でも起きます。

4. シリアック病/グルテン不耐症

シリアック病やグルテン不耐症をもっている人がグルテンが含まれている食品を食べると、自己免疫疾患に似た症状を引き起こすことが知られています。

そのため、自己免疫疾患と診断された人の多くが、実は、シリアック病ではないかと、近年、考えられています。

つまり、自己免疫疾患によって甲状腺機能低下を起こしている(橋本病)と診断され人の中には、シリアック病である可能性があるのです。

医療機関で、シリアック病に特化した検査を受けることもできますが、自宅でできる簡単な方法としては、2-3週間、グルテンを含む食品を口にしないで、様子をみることです。

診断のむずかしさ

甲状腺機能低下症、副腎疲労、糖尿病は、体内ホルモンの不適切な挙動、体内ホルモンが適切に作用していないことで起こる病気です。

例えば、最初に記載した症状の「まゆ尻が目尻よりも短い」は、甲状腺機能低下症に特有だと言われてはいますが、それだけで、原因が甲状腺機能低下なのか、副腎疲労なのか糖尿病なのかシリアック病なのかを見極めるのは、とても難しいものです。

また、上記した病気と症状が似ていることから、誤診の多い病気でもあります。特に、糖尿病の可能性が見落とされることが多いことが近年、報告されています。

そのため、信頼のおける医療機関でセカンドオピニオンを得ることが重要となります。

甲状腺機能低下症の発症率

甲状腺機能低下症は、年齢を問わず起こります。しかし、年齢とともに発症率は高くなります。

65歳以上の女性の10人に1人がかかっています。

そのため女性の疾患である印象が強いですが、男性でも6%(100人に6人)が罹ると言われています。

身近な病気ですから、甲状腺機能低下症について4回に渡ってお伝えしていくことにしました。

まず初回は、甲状腺機能低下症について、症状と検査方法や診断について、簡単に紹介します。次回以降、症状の改善と予防に効果のある食事や食品について2回に渡って紹介し、その後、ライフスタイルについて紹介します。

甲状腺ホルモンとは

甲状腺ホルモンはアンチエイジングのホルモン

甲状腺は首の前、あごの下あたりにあって蝶のような形をした臓器です。主に、テトラヨードサイロニンまたはサイロキシンやチロキシンと呼ばれるT4と、トリヨードサイロニンまたはトリヨードチロキシンと呼ばれるT3の2種類の甲状腺ホルモンを造ります。

甲状腺ホルモンは、全身のあらゆる組織の細胞に影響をもっています。胎児や新生児では、脳や体の正常な発育に必要ですし、あらゆる年齢層では、タンパク質、糖質、脂肪の代謝(エネルギー代謝)を調節しています。甲状腺ホルモンは、成長ホルモンとかアンチエイジング・ホルモンとも呼ばれます。私達の骨や皮膚の細胞の再生に大きく関わっているので、甲状腺ホルモンが少なくなると、子供では発育不良、成人では老化に似た現象が起こるのです。

甲状腺ホルモンの恒常性維持(フィードバック)機能

体内で最も活発に作用しているのは、T3です。T4は、長時間保存されて、細胞内でT3に変換されます。そのため、T4は、T3の貯蔵庫とも言われます。そして、私達の体内を循環している血液中のT3の大半は、各細胞がT4から造ったもので、甲状腺から直接分泌されるものは、1/4だけです。

T3とT4の生成と放出は、全て脳下垂体で分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によってコントロールされています。TSH自体は、視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)によってコントロールされています。更に、TRHがどのようにコントロールされているかについては、未だ不明なんです。

T3+T4 ⇔ TSH  ⇔ TRH ← ?

T3とT4が多くなりすぎると、TSHの分泌が抑制されます。T3とT4が少なくなり過ぎるとTSHの分泌が増えます。このTSHのフィードバック機能が正常に働いている時、甲状腺機能は、正常です。フィードバックが機能しなくなることを、甲状腺機能低下症と呼びます。

甲状腺機能低下症の原因

甲状腺が機能しなくなる原因は様々あります。

1.自己免疫疾患

近年一番多いのは、自己免疫疾患が原因の橋本甲状腺炎(橋本病)で、約90%を占めます。

2.ヨウ素欠乏症

ヨウ素欠乏症が原因となり、甲状腺ホルモン自体が造られず、機能低下を起す場合

3.TRHの生成不足

脳の視床下部に問題があり、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を十分に生成できないことで起こります。

二次性甲状腺機能低下症と呼ばれます。

4.その他

(1)エストロゲン過剰?

エストロゲン過剰が原因のひとつとされる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS、症状:無排卵月経、無月経、35日以上の月経周期、不妊など甲状腺機能低下症に高い相関関係があることが報告されています。

PCOSで甲状腺機能低下症の人は糖尿病も合併して発症する確率が高いことも報告されています。

(2)放射性ヨード療法

甲状腺ホルモンが造られ過ぎて甲状腺機能が異常亢進する場合などがあります。

(3)ビオチンの過剰摂取

ビオチンによる影響については、『ビオチン(ビタミンB7)と甲状腺ホルモンの不思議な関係』をご確認ください。

甲状腺機能の検査

医療機関で、甲状腺機能のための血液検査を受けることができます。

血清TSH

血清中のTSHの濃度を調べることで、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症の疑いを大抵、除外することができます。もちろん、脳下垂体や視床下部自体の疾患等によって、中枢性の甲状腺機能低下症を起こしている二次性甲状腺機能低下症の人も稀にいらっしゃいますが。

橋本病(自己免疫疾患)を含めて、甲状腺機能低下症では、脳下垂体からのフィードバック機能が利いていないので、血清TSH値が常に上昇を示す一方で、遊離T4は低値を表します。

甲状腺ホルモンは、血液中のトランスポーター・タンパク質(TBG)と結合して、体中に運ばれるのですが、TBGと結合していないT4を遊離T4と呼びます。

また、TBG(トランスポーター・タンパク質)は、妊娠、エストロゲン療法、経口避妊薬、感染性肝炎などの影響でも増加します。フェニトインやアスピリンやこれらの誘導体などの薬物を大量に摂取すると、見かけ上、血清総T4濃度(TBGと結合したT4と遊離T4の合計値)が低下します。

二次性甲状腺機能低下症の場合は、血清TSHと遊離T4の両方が低値を表します。

甲状腺機能低下症は、血清T3だけでは判別できないことがあるのですが、トランスポーター・タンパク質と結合していない遊離T3濃度は、主に甲状腺中毒症の評価に利用されます。

自己抗体

橋本甲状腺炎など、ほぼ全ての自己免疫性の甲状腺疾患で、T4とT3に対する自己抗体が認められます。一部の橋本病の人は、トランスポーター・タンパク質に対する自己抗体も持っています。

その他の診断

貧血、月経過多

甲状腺機能低下症の人は、ビタミンB12葉酸吸収力が低下することによって悪性貧血を起こすことがあります。重症化することはまれです。代謝の状態が改善されるにつれて、貧血は改善しますが、半年以上かかることもあります。特に、動物性食品を食べない人はビタミンB12欠乏である可能性がありますから、貧血の原因を調べてみることをお勧めします。

血清コレステロール

甲状腺機能低下症では通常、高値を示しますが、二次性甲状腺機能低下症では、低値を示します。

副腎機能の検査

甲状腺機能低下症と副腎疲労の症状はとてもよく似ています。そのため、甲状腺機能低下症と診断された人の中には、副腎疲労も併せて発症している人が時々いるのですが、見過ごされてしまうことがあります。そうした人は、甲状腺機能改善のために処方された薬による効果が持続しません。

もし甲状腺機能低下症と診断され、薬を処方された後も症状の改善が継続しない場合には、お医者様にその旨報告して、副腎疲労の検査をしてもらってくださいね。

糖尿病の検査

副腎疲労と同様に、甲状腺機能低下症と糖尿病の症状はよく似ているので、糖尿病の可能性が見過ごされてしまうことがあります。その場合、長期間放置されると、腎機能へ影響が現れてきてしまうことがありますので、インシュリン抵抗性等についても検査してもらってくださいね。

>>『甲状腺機能低下症の予防と改善(2)- 食事』へ続く

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ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング