バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
グルテンを巡るディープな議論
2015年7月4日のニューヨークタイムズに『The Myth of Big, Bad Gulten(仮題:グルテン極悪神話)』という、マイケル・ポーラン氏も称賛し、推奨した記事が掲載されました。そして、その2日後、『The New York Times makes a big, bad mistake(仮題:ニューヨークタイムズは極悪な過ちを犯した)』とするブログが現役のひとりの医師、ウイリアム・デイビス医師によって公開されました。
興味深い議論でしたので、他の研究報告と併せて簡単に紹介します。
皆さんは、どう思われますか?
なお、デイビス医師は、私が公認ヘルスコーチ資格を取得したIINの講師のおひとりで、2014年11月には、IINの卒業生も含めた特別講義をされ、私も受講しています。
また、グルテンとシリアック病やグルテン不耐症(過敏症)の詳しい症状などについては『シリアック病・グルテン不耐症ってご存じですか?』をご確認ください。
ニューヨークタイムズ誌が掲載した主張
グルテンがシリアック病を起こすのではない
グルテンが、シリアック病を起こすというのは、誤った認識である。
もともとシリアック病をもっている人が小麦などグルテンを含む食品を食べると自己免疫疾患のような症状を表すだけである。
米国民の3人にひとりが、今や、グルテンを避けた食品や料理を選択すると言われているが、グルテンを避けなければいけないシリアック病をもっている人は、人口の約1%のみである。
進化論的な主張は的外れである
グルテン忌避者の次のような主張
「小麦などの穀類が、人類の食事に加わったのは、わずか約12,000年前であるから、人類が、穀類を消化できるよう進化するにはあまりに短い時間しか経っていないため、穀類はそもそも人類の食事としてふさわしくない」
というい主張は、同じ頃、人類の食事に導入された牛乳に含まれる乳糖を消化するための遺伝子を人類は既にもっている(スカンジナビア人のほぼ100%)ことを無視している。
1万年は進化にとって決して短い時間ではない。
シリアック病(+グルテン不耐症)の発症率は、小麦消費量の多い国に多く、一方、乳糖不耐症は、牛乳消費量の少ない地域(アジアなど)に多いことも、シリアック病と進化とは関係がないことの証ではないか。
過剰な衛生意識による腸内細菌の減少
米国の小麦の消費量は、過去数百年を見ると、決して増加しているわけではないが、シリアック病患者数は近年になってから増加している。これは、やはり、グルテンではなく、私達の生活に問題があるのではないか。
フィンランドとロシアの隣接した地域同士の小麦消費量はほぼ同じだが、シリアック病発症者は、圧倒的にフィンランドに多い。この2つの地域の違いは、フィンランドの地区に比べ、ロシアの地区の経済環境が悪く、衛生環境もよくないことのみ。
現代人は、衛生意識が高くなりすぎ、私達の免疫力に適度な刺激となり、結果、免疫力を高めてきた一般的な病原菌を死滅させてきただけでなく、薬や抗生物質によって不必要に共生細菌を殺してきたことによって、腸内の重要な細菌を失ったことが、グルテンに対して問題を抱える人が増えた理由なのではないか。
この主張に対する医師(Dr. William Davis)の反論
人類の食事に加わったタイミングの差
人類はそもそも母乳を飲んで育つ動物であるから、それが牛の乳であっても、同じ哺乳類の乳を飲むことへ体を適応させるための進化にそれほど時間を必要としなかったのではないか。
一方で、穀類を食べるという行為は、そもそも哺乳類の遺伝子にない行為で、農耕は人類が発明した行為であるから、未だに体を適応できる進化を遂げられていないのではないか。
また、乳糖を消化できるように人類は進化できたかもしれないが、牛乳のタンパク質カゼインを消化できるまでには至っていない。カゼインが自己免疫疾患の原因ではないかとの研究報告があることを忘れてはならない。
穀類特有のタンパク質グリアジンが原因
小麦を含む穀類の糖分を分解する酵素アミラーゼを分泌できるよう人類は遺伝子を進化させてきたが、問題は糖分やグルテンだけではない。
グリアジンと呼ばれる穀類特有のタンパク質(グルテンの成分)が、シリアック病だけでなく、その他の自己免疫疾患や肥満症の原因ではないかとの研究報告があることも忘れてはならない。
環境要因と共生細菌に関する見解には同意
近年、増加傾向にある病気について、環境細菌や共生細菌と人類との関係が変容したからではないかとの見解には、同意する。
しかし、その腸内細菌を変容することに一枚噛んでいるのが、穀類の摂取であるとする研究報告があることを見過ごしてはならない。
小麦に限らず穀類はいっさい食べない方が良い。
その他の議論と研究報告
グルテンフリーは単なるファッションに過ぎない
マーケット調査会社によれば、米国成人人口の約22%がグルテンフリー食品を好むと回答し、2012年から2014年におけるグルテンフリー商品市場が63%拡大、6兆円超の市場規模になっています。
しかし、米国マサチューセッツ州ジェネラル・ホスピタルのシリアック病治療研究センター(Celiac Research and Treatment)長は、次のように述べています。
「グルテンフリーは、単なるファッションに過ぎず。
医療的必要性のない行動である。」
詳しくは、『グルテンフリーで体調が良いが本当なのか?3分の2は思い込み』をご覧ください。
戦前戦後で小麦グルテンの含有量に変化なし
現在の小麦は品種改良によって、大戦前の小麦よりも大量のグルテンを含むようになったことがシリアック病などの増加の原因ではないかという議論があります。しかし、戦前戦後で小麦のグルテンの含有量に変化はなかったことが報告されています。
添加物としての小麦利用の増加
明らかな小麦製品だけでなく、キャンディやドレッシングや加工肉製品など幅広い加工品に小麦グルテンが使用されるようになったことで、現代人のグルテン摂取量は、戦前と比べ6倍になっていると言われています。
グルテン摂取が人体の許容量を超えたことでグルテンによる病気が増加しているのではないかとの議論があります。しかしその真偽はまだ検証されていません。
衛生仮説
過剰な衛生意識によって免疫反応が狂ったことによって、引き起こされているとする「衛生仮説」も存在しています。
グルテン不耐症の真犯人はグルテンではない可能性
グルテンとシリアック病との関係は明白ですが、グルテン過敏症(グルテン不耐症)の真犯人は、グルテンではない可能性が指摘されています。
グルテンの成分であるグリアジンとグルテニンには、70もの種類が存在しているため、どの種類が原因物質であるか突き止められていないことが理由のひとつに挙げられています。
FODMAPsが原因している可能性
FODMAPs(Fermentable Oligosaccharides, Disaccharides, Monosaccharides and Polyols:発酵性オリゴ糖類、二糖類、単糖類と多価アルコール)と呼ばれる炭水化物が、過敏性大腸症候群(IBS)の典型的な症状を引き起こすことが報告されています。
IBSは、グルテン不耐症ではありませんが、類似した症状を示します。
グルテン不耐症と自己申告する被験者にFODMAPsを避けた食事を2週間続けさせた後に、グルテンを与えても症状が出なかったことが報告されています。(Peter Gibson, M.D., at Monash University in Australia, 2011)
また、2週間から6週間除いた後に、徐々に戻していっても症状の再発は見られなかったことも報告されています。(Jessica Biesiekierski, Ph.D., University of Leuven in Belgium)
なお、FODMAPsの主成分であるフルクタン(果糖から構成される多糖)は、穀類だけでなく、多くの果物や野菜にも含まれているため、FODMAPsを除去した食事を長期間続けることは困難です。
公認ヘルスコーチの私はどうしているのか?(個人的な見解と対応)
まだまだ科学で白黒つけられるほどの確固たる証拠が見つけられていないことや、日々、新しい物質や栄養素の発見がなされていること等が、こうした議論を生んでいるのでしょう。
特に、食物栄養学においては、肯定的な証拠と否定的な証拠の両方が、調査のやり方次第で得られてしまうことが、本当のことを分かりづらくしているように思います。
そこで公認ヘルスコーチである私自身がどうしているのかについてご紹介したいと思います。
グルテンがシリアック病を起こすわけではない
シリアック病の人がグルテンを含む穀類を避けなければいけないのは当然です。
しかし、健常者がグルテンを含む穀類を食べたら、シリアック病になるとは考えていません。
古代小麦を購入
穀類特有のタンパク質グリアジンが、自己免疫疾患の原因である可能性は考慮すべきだと思っています。しかし、全ての穀類を食事から排除すべしというデイビス先生の主張からは距離を置いています。
シリアック病などと関係の深い種類のグリアジンは、1970年代に米国で行われた小麦の品種改良によって発生した亜種だということですから、全ての小麦を避けるのではなく、スペルト小麦など、古代小麦で作られた全粒パンやパスタを購入するようにしています。(Dr. William DavisによるIINでの講義より)
自然栽培の玄米と古代米を購入
お米にはグルテンは含まれていません。
しかし、グリアジンの一種が含まれているとデイビス博士は言います。しかし、どの種類のグリアジンが危険なのかの結論はまだでていません。
また、私にはお米アレルギーがありませんし、一日に1食はお米を食べたいという気持ちがあるので、芋類や豆類などを上手に併せながら、玄米に雑穀(古代米)を混ぜていただいています。
牛乳ではなく豆乳とナッツミルク
牛乳に含まれているカゼインについては、信頼のおける研究機関(ハーバード大学公衆衛生学部や米国PCRM(責任ある医療を目指す医師の会))から自己免疫疾患や乳がんとの関係を示唆する報告があるため、飲みません。
それに、幼児期から牛乳が嫌いでした。美味しいと思ったことがありません。給食の牛乳も全て男子にあげていましたから、自主的にはずっと飲んでいません。
カルシウムなら、他の食品から摂れます。詳しくは『カルシウム』をご確認ください。
牛乳の代りに、ナッツ・ミルクや豆乳を使います。
ただしチーズやバターなど発酵された乳製品は食べます。グラスフェッドのものが良いですね。
できるだけ口に入れられるもの
共生細菌、環境細菌の役割について、過剰な衛生環境の危険性については、同感です。ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座の中でもお伝えしています。
食事だけでなく、お掃除につかう洗剤やボディクリームなどのパーソナルケア品も、できるだけ口に入れられるもので作られたものを使うようにしていますし、自分でも作っています。
さて、皆さんは、どう思われますか?
どうされていますか?
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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あるいは、ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースで学びませんか?セルフドクターコースでは、あなたが食を通してご自身の主治医(セルフドクター)になるために、必要な知識とスキルを教えています。
新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。
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参考文献:
- “The Myth of Big, Bad Gluten”, MOISES VELASQUEZ-MANOFF, New York Times, JULY 4, 2015
- “The New York Times makes a big, bad mistake”, Dr. Davis, July 6, 2015
- “Unraveling the Gluten-Free Trend“, Samuel Fromartz, The Gluten Enigma, March/April 2015
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング