
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
妊娠によって性格が変わったように言われたり、今までとは異なる感情が現われたり、行動パターンが変化することを「妊娠脳」とか「妊娠脳になった」などと表現されることがありますが、それには実体があることが明らかにされたのです。
2024年7月にネイチャーに掲載された「妊娠脳」に関する記事が面白かったので和訳要約してお伝えします。
原則:縮む

バルセロナ自治大学の研究者は、妊娠出産期間を通して女性の脳に次の変化が起こることを、8年をかけてつきとめました。
- 妊娠期間中・・・大脳皮質全体が約5%縮小
- 出産後2~3か月・・・大脳皮質の複数の領域が妊娠前より平均2%小さくなる
妊娠中に変化する脳の領域は、「どれも縮む」というのが原則のようです。
影響を受ける脳の部位
影響を受けるのは、脳の次の部位など、多数に及びます。
- 報酬領域・・・喜びを感じる部分
- 視床下部・・・本能的な行動を制御してい部分
記憶を司っている海馬も、妊娠中に一時的に縮みます。
最も大きな影響は大脳皮質
しかし、最も大きく影響を受けるのが、大脳皮質です。
大脳皮質は、他の脳領域からの情報を統合する場所ですが、出産直後には、他者への共感などの社会的な心理プロセスや自己認識などに関係しているデフォルト・モード・ネットワークと呼ばれる回路が大きく影響を受けます。
出産後、ほとんどの変化は迅速かつ完全に元に戻ります。
デフォルト・モード・ネットワークは戻らない
しかし、デフォルト・モード・ネットワークだけは2年後も小さいままです。機能も出産後1年間は出産前と異なることも確認されています。
妊娠前の状態には回復しない可能性もあると考えられています。
なぜ脳は縮小するのか

「縮小」というと、ネガティブなことのように感じる人が多いかもしれません。
脳の縮小と愛着
でも、大脳皮質の縮小度合いは、母親の乳児への愛着の強さと相関していることが示されています。
蓄積されたデータから、デフォルト・モード・ネットワークの縮小が大きいほど、次の行動が強くなることが示されています。
- 乳児への愛着の強さ
- 乳児の写真に対する反応
- 巣作り行動
逆に、デフォルト・モード・ネットワークの縮小度合いが小さいと、赤ちゃんへの愛着形成に問題が生じます。
研究者は、女性が母親になる準備をするよう体と脳が導いているのではないかと述べています。
神経機能の洗練化
デフォルト・モード・ネットワークが共感や感情などの心理プロセスに関係していることを考えると、縮小した方が良いというのは不思議ですが、妊娠による脳の縮小でニューロン(神経細胞)が失われている可能性は低いことが神経代謝物に関する研究によって示されています。
他の多くの研究者が
「縮小は神経機能の洗練を反映している」
という見解を支持しています。減っているのではなく、無駄が削ぎ落されて洗練されているというのです。
ホルモンによるシステムジャック

この神経解剖学的な変化の大きさは、エストロゲンと妊娠に関係するホルモンの濃度と相関することも観察されています。妊娠とそれに伴うホルモンの急増は、生理機能を大きく変化させます。
「胎児の成長を可能にするために、
体内のほぼすべてのシステムがジャックされます」
妊娠によって社会的・環境的変化が起こると同時に、体内で脳とホルモンの生理的な激変が起こります。
これは、妊娠出産プロセスによるホルモン変化が神経発達の移行を引き起こしていることを裏付けていると考えられています。
ホルモン変化はステージの移行

これらの脳の変化は、あなたを人生の次の新たなステージへ移行させるために起きていると考えられています。
この変化は、思春期のホルモン変化による脳の変化に似ています。
思春期の脳とホルモンの変化は、人生のステージを「自立」に移行させます。それと同様に、妊娠による脳とホルモンの変化は、あなたの人生を「子を養育する」段階に移行させるためのものだと考えられているのです。
と、いうことは、出産経験のある女性と出産経験のない女性とでは、脳の人生ステージが異なるということ、ものごとに対する見方や考え方や行動などが出産というイベントを境に、出産経験のない女性とは異なる次元に移るということなのかもしれません。
パートナーにも伝播

妊娠中の女性に起こるホルモンと脳の変化と似た変化が、妊娠していないパートナーにも起こることが観察されています。
妊娠中の女性と比較すればその変化は小さいですが、男性パートナーだけでなく、レズビアンカップルの妊娠していない方の女性にも起こることが観察されています。
妊娠中の女性へのケアに積極的にかかわる度合いが高いほど、変化が大きくなることも示されています。
脳の変化によるその他の影響
妊娠出産に伴う脳の縮小は、次のような変化ももたらします。
1. 物忘れ
妊娠後期には記憶障害が起こりやすいことが一貫して観察されています。
これは、記憶を司る脳の海馬の容積が減少したことに関連していると考えられていますが、この忘れっぽさが、病的であったり日常生活に影響したりすることはめったにないことも報告されています。
わたしの個人的な感想ですが、妊娠後期に記憶障害が起こりやすくなるのは、出産に伴う苦痛などを忘れやすくするためではないかと思うのです。脳は、痛みなどの都合の悪いことを忘れやすくさせて、次の妊娠出産に再び取り組ませるよう、海馬を縮小するのではないかと思ったりします。
2. マタニティブルー

妊娠中と出産直後(子育て初期)は、精神衛生上の問題が高まる時期だと研究者は説明しています。世界中の新米ママの約17%が、マタニティブルー/産後うつの影響を受けていると考えられています。
マタニティブルーの原因のひとつは、ホルモンの変化です。特に、出産時にプロゲステロンが急激に減少することはよく知られています。
そして、海馬の萎縮や神経化学的・免疫学的変化に至るまで、妊娠に関連する多くの生理学的変化は、一般的なうつ病に見られる変化と類似しています。
なお、来週公開予定ですが、妊娠中のうつの予防改善については『妊娠中のマタニティブルー』、出産後のうつの予防改善については『産後マタニティブルー』をご参照ください。
3. 脳の若返り
出産すると脳が若く保たれる可能性があることが報告されています。
スイスのローザンヌ大学病院は、英国バイオバンク・プロジェクトに参加した中年女性約1万2,000人の脳をスキャンしたデータを用いて、出産による女性の脳の変化を分析した次の結果を2019年に発表しています。
出産していない女性と比較して、
出産した女性の脳は平均で約7か月若い
また、別の研究は、子供のいない同年代と比較して、性別に関係なく「親」の脳は、機能的に若く、子供の数が多いほど神経のつながりが良い脳の領域があることを示しました。
性別に関係なく親の脳・・つまり母親だけでなく、父親の脳も機能的に若く保たれるというのは、すごいですね。
妊娠出産だけでなく、子育てという行為が脳を活性化するのでしょうね。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

妊娠出産で主に女性に起こる、一見不可解で、もしかしたら悩ましい、さまざまな心と体の変化も、理由が分かると悪いものではない、返って良いものだったと知ってほっとしますね。
体はいつだってあなたの味方です。
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
もしおひとりで取り組むことに不安や難しさを感じるのでしたら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?
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参考文献
- “How pregnancy transforms the brain to prepare it for parenthood”, Liam Drew, 31 July 2024, Nature, doi: https://doi.org/10.1038/d41586-024-02447-w
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング