バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
限定公開記事にしている理由
2019年10月、日本科学未来館で、サイエンス誌『ネイチャー』と日本医療研究開発機構(AMED)などがコーディネイトして行われた「こころの健康とデータサイエンス」についてのシンポジウムに参加してきました。
講演者は、東京理科大学や東京大学で研究をリードされている教授陣や厚生労働省の医務技官、文部科学省の科学技術政策局長など、そうそうたるメンバーによる最新研究についての発表の数々でした。
今回発表された研究内容については取り扱い注意とのことでしたので、私自身の備忘のために永久不滅限定公開記事として、簡単に整理しておこうと思います。
心の病気の診断の難しさ
体の病気の診断には、血液検査や血圧測定やバイオマーカーなど、数値によって客観的に診断することが多くの場合可能です。
しかし、心の病気は、問診や自己申告による主観的な情報のみによって診断をしなければならない難しさがあります。患者さんの性格によっては、同じ症状についても、過少評価や過大評価がなされてしまうこともあります。
行動と精神疾患との関係性
行動と精神疾患の関係性についてデータを分析していく中で判ってきたこともあるそうです。例えば
- 専門医による評価よりも、自己評価が非常に低い人は、自閉傾向が高い
- 真面目な人(ごまかさないとか、期日を守るとか)ほど、薬の効きが良い
- ある体の不調が起こる順番によって、精神疾患発症のタイミングが予測できる
- スマホを使う時間が増えるほど、自殺リスクが高まる
などです。
指標とデータのバイアス問題
1. 一貫した診断基準が存在しないことも
認知症の診断に世界で標準的に使用されている指標には、7つほどあるそうです。でも、
どの指標を用いて評価するかによって、認知症と診断された人の数が10倍も差があった
そうです。困りますね(苦笑)
認知症ではない人が認知症だと診断されてしまう可能性もある一方で、認知症なのに認知症ではないと診断されてしまうケースもあるということになります。介護や医療などを受けたり、本人と家族が生活を組み立てていく上で大きな問題となります。
2. 診断書も保険の申請書も独立した書類ではない
行動と精神疾患との関係性を分析し、正確な診断や予測をするためには、ベースとなるデータが膨大に必要となるのですが、その際、医師が書く診断書のみをベースにすることの問題点についても説明がありました。
理由は、医師が書く診断書は、患者の病気の記録のためだけでなく、診療報酬のポイントの請求のためにも使用されるため、診療報酬が得られやすい病名や検査が記録されることが多く、本来の病気の現状を厳密には表していないものや、不必要な検査やデータの記録もあるため、そのままでは分析用の純粋なデータとしては使用できないとのことでした。
これは、保険会社が保有している保険請求の書類も同じで、保険金が下りやすくなるような記述になっていることが多く、真実を表していない場合があるからだそうです。
エビデンス・ベース・メディシン
病気治療に関しては、1990年くらいから世界的にも、エビデンス・ベースで行われることの重要性が叫ばれています。
ちなみに、私がベースとしている統合食養学もエビデンス・ベースです。
米国ではBiostatistics(生物統計学)、英国とEUではMedical Statistics(医療統計学)という新しい分野が生まれ、データ解析に留まらず、データから読み解かれた事柄を問題解決に活用するための研究が進められています。
微細に渡る側面からの詳細なデータが蓄積されることによって、臨床試験の際、将来的にコントロールグループ(比較対象グループ)を作る必要がなくなる可能性があり、そうなれば、研究費の削減や、最終的には薬の価格を下げることが可能になるかもしれないとのことでした。
エビデンス・ベース・メディシンで判ったこと
心の病気にも、以下の4種類のマーカー(客観的な指標)が利用できることが判ってきたそうです。
- ストレスホルモン
- モノアミン(セロトニン/ドーパミン/ノルアドレナリン)
- 脳神経系の炎症(CSF)
- 栄養学
- 脳波の波形
1.ストレスホルモン
HPA系 (視床下部-下垂体-副腎)を介した内分泌反応(ホルモン) の異常、フィードバック機能の不全によって、うつが起こることが判ってきたそうです。
うつ病の患者では「視床下部-下垂体-副腎」が亢進するとのことです。
ストレスホルモンについては、マインド・ボディ・メディシン講座セルフドクター・コースの中でも取り上げているテーマです。
2.モノアミン
脳脊髄液の異常によって、うつが起こることが判ってきたそうです。
- ノルアドレナリンとセロトニンの代謝産物の量は、うつの程度に無関係なことが判ったそうですが、
- ドーパミンの代謝産物は、うつがひどくなるにつれて少なくなることが判ったそうです。
この発見によって、ドーパミンの代謝産物の量を測れば、うつの程度が判明できる可能性が高まったわけです。
ではなぜ、SSRIがうつに効くのか?
SSRI( 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 )を投与すると、セロトニンだけでなく、ドーパミンもノルアドレナリンも全部多くなることも判ったそうです。
SSRIについては、『ブルーベリーは心と体の両方に効くホリスティックなフルーツ』をご覧ください。また、抗うつ剤とドーパミンとの関係については『意外なうつの原因』もご参照ください。
3.脳神経系の炎症
うつの人の脳で、トリプトファン・キノリン経路の亢進が起こっていることが判ったそうです。結果、トリプトファンが減少し、セロトニンも減少する。
キノリン経路については『あなたが夜よく眠れない意外な理由』で簡単に説明しているのでご確認くださいね。
4.栄養学
精神疾患に対する腸内細菌の重要性が発見されています。「腸脳相関」とよばれ、うつの人の腸内には、善玉菌(乳酸菌とビフィズス菌)が少ないことが判っています。
また、オメガ3不飽和脂肪酸が不足すると、うつ発症リスクが高まることも報告されています。
腸内細菌と私達の心との関係については、こちらの記事も参考になると思います。
- 『サイコビオティクスと呼ばれる腸内細菌は私達の気分を説明できるのか』
- 『マイクロバイオータ(共生細菌・腸内ミクロフローラ)が私達の世界観を左右する』
- 『 ホリスティック・ヘルスコーチに聞く腸と脳の良い関係 』これは雑誌「からだにいいこと」でインタビューを受けたものです。
5.脳波の波形
「アクチグラフィ」と言うそうですが、正常な人の波形は、sin(サイン)に似たカーブを描くことが判ったそうです。しかし、うつの人の波形にはメリハリがないそうです。
ちなみにsinカーブは、こんな感じの波形
また、正常な人は昼に交感神経優位となり、夜、副交感神経優位となるところ、うつの人はその逆で、昼間、交感神経が優位にならず、また、夜に交感神経が優位になることから不眠の症状となって表れてくるとのことです。
更に、PAS神経の可塑性(=脳のしなやかさ)にも健常者との差があることが判り、そのことでもうつの診断か可能となる可能性があるそうです。なお、健常者の脳はしなやかだそうです。
声でこころをモニタリングするアプリ
東京大学の徳野先生が開発された無料アプリ「MIMOSYS」で、毎日の声の調子でこころの健康状態を客観的に診断してもらうことができるそうです。
早速、私もインストールしてみました。上の画像がアプリを使ってみた映像です。中の上くらいの心の状態のようですね(笑)
ただ、アンドロイドでしか電話(LINE通話含む)での会話を診断してくれないことが判ってちょっと残念。iPhoneの場合、固定された文章を毎回読み上げて診断してもらうことになります。(上の結果は、13の固定文章を読み上げた結果のグラフです。)
抗うつ薬では寛解しない
- うつ病に用いられることの多い2剤の寛解率は、50%のみ
- 社会生活への完全復帰も半分に留まっている
ということも判ったのだそうです。
寛解しない原因は、うつは症状であって、発症する原因は様々なのに、全てに同じ薬を用いていることに問題がある。原因別の薬の開発が必要であるとのことです。
これって、既に、『「病名が判ると何が悪いのか判る」と思っています?それ、迷信ですよ』でご紹介した通り、マーク・ハイマン医師(私の先生)が指摘していることですね。
思春期のこころ
従来、思春期は、10歳から19歳までと定義されているそうですが、昨今、精神年齢の低下?により、世界的に思春期を10歳から24歳と定義するケースが多くなっているそうです。
全ての年代と比較して、自殺者数が最も多い年代が日本だけでなく世界的にも思春期の若者世代であることから、思春期の若者を対象とした精神疾患の研究も近年進められているそうです。そこから判ったことは
- 親が他者に助けを求めることに抵抗がないと子供も抵抗がなく、親が問題を抱え込む傾向にあると、子供も問題を抱え込んでしまう傾向にある
- 母親が妊娠中に糖尿病を発症していると、子供がうつになりやすい傾向がある
ソフィアウッズ・インスティテュートの感想
今回のシンポジウムに参加して、知らなかったこと、あるいは、既に知っていたことの科学的な裏付けがはっきりしたことなど、多くの知見を得ました。
私は心理カウンセラーではないので、こうした知識を直接的に活用する機会は少ないのですが、こうした事柄を知ってヘルスコーチングを提供するのと、知らないまま提供するのとでは、クライアントさんのお話を聴く際の、視点?軸?の多さが違ってくるように思います。
科学未来館からの帰り道、方向音痴のため、駅を探して彷徨っていたら、突然、目の前に現れました。
なにかご褒美をもらった気分になりました♪
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