がん細胞の成長と増殖を難しくさせる体内環境を作るには

2021/02/10/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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がん細胞には体内に協力者がいる

がん細胞は、健康な細胞の間に発生するので、周囲を仲間に勧誘するところから始めないと、孤立したままでは酸素も栄養も得られず、成長も増殖でもできません。そのうちに免疫細胞に見つかって食べられてしまえば一件落着です。

しかし、そうならないためにがん細胞は、周辺の細胞を次第に仲間として取り込み、お互いに助け合いながら、増殖そして転移をしていきます。

詳しくは、サイエンス誌『ネイチャー』の「がん細胞は、決して単独で生きているのではない」という論文を和訳要約した『がん細胞の協力者を体内に作ってしまう仕組みとそうさせない方法』をお読みください。

がん細胞の増殖と転移の仕組みは、世間のストレスからグレかかっている若者を、悪い奴が餌を与えて手懐けて、次第に自分のために働くように仕向け、また自分にとって都合の良い手下には時々手助けしてあげながら、次第に勢力を大きく拡大していくのに似ています。

ですから、あなたがまずすべきことは、がん細胞の勧誘に乗らない、特殊詐欺の受け子にならない、健康で健全な細胞を維持しておくことです。

がん細胞の内部協力者を作らないために

がん細胞の成長と進行速度は、周囲の健康な細胞や血管が受ける次のようなストレスによって大きく変わります。

  • 酸素と栄養の不足
  • 代謝老廃物の蓄積
  • 好ましくないpH環境
  • など

1. 細胞をグレさせない

がん細胞を成長させない、あるいは、その成長速度を遅くするためには、あなたの体内の通常細胞が「がんに協力してもいいかなぁ~」なんてヤサグレて自暴自棄になったりしないよう、不必要なストレス与えないように過ごさなくてはなりません。

悪い奴らも協力する人がいなければ勢力拡大はできません。

つまり、あなたは平時?から次のような生活習慣を維持することが重要になります。

  • バランスの良い食事適度な運動(適切な酸素と栄養の摂り込み)
  • 便秘や冷えの解消(代謝老廃物を滞りなく排出)
  • 野菜中心の食事(体内pHが酸性に傾き過ぎることを防止)

ことが大切だと再認識しましょう。がん予防の一丁目一番地です。

2. 健康な脂肪細胞は必要

あなたの細胞が、がん細胞の協力者となってしまう仕組みと、そうさせない方法』で詳しく説明していますが、肥満症の体脂肪は、がん細胞を育てます。

しかし、健康な脂肪細胞からは、あなたの寿命を延ばしたり、幸福感を感じさせてくれたり、ホルモンバランスと関係している良いホルモンがたくさん分泌されます。

健康的な体脂肪を維持しつつ、メタボを予防・改善することが必要です。

がん細胞に栄養を与えないためには

がん細胞は、様々な手段を用いて代謝(栄養の利用)をするのですが、手段の選択(代謝進化の方向性)を決めるのは、次の要因です。

  • 血管の強さ
  • 血管との距離
  • 発生した臓器

がん細胞が発生する場所を意志の力で変えることはできなさそうですが、血管の強さは、次のように食事やライフスタイルで変えることができます。

  • 動脈硬化の予防(血管の内壁にへばりつくプラークを生まない、減らす食事)
  • 高血圧・高血糖の予防(血管を痛めない食事とライフスタイル)
  • 血管を強くすると言われている運動や食品の摂取

など、日ごろから血管を健康に保つ努力はできます。

免疫細胞とがん細胞の栄養の奪い合い

免疫細胞とがん細胞の両方にとって必要不可欠な栄養素があります。そうした栄養素は両者の奪い合いとなります。

そのため、これらの栄養素をそのまま直接、摂取したのでは、免疫細胞だけでなく、がん細胞にも資してしまうかもしれない危険性があります。

それががんの食事療法の難しいところです。

それを考えると、これまで様々な研究によって、がんに効果的に働くと報告のある食品はとても貴重です。

1. ブドウ糖

ブドウ糖がどれだけ存在しているかが、細胞の代謝と成長に大きな影響を与えます。

がん細胞によるブドウ糖の消費量が増えると、がん細胞以外の細胞が利用できるブドウ糖の量が減ります。

体内に潜伏している免疫細胞にとっては、栄養不足/エネルギー不足の環境となります。

(1)メラノーマの例

免疫T細胞は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)を使って、細胞のカルシウムイオンポンプ(細胞死に関する機能)の調節を行っています。

註:ホスホエノールピルビン酸(PEP)|生化学的に重要な有機化合物の一つ

しかし、メラノーマがブドウ糖を大量に消費してしまうと、免疫T細胞に必要なブドウ糖の量が制限され、PEPを十分に作ることができなくなってしまいます。PEPが減少すれば、細胞死を調節するシグナル伝達が滞り、メラノーマの成長を許してしまうことになります。

実際、メラノーマの治療において、免疫T細胞の数を増やすよりも、メラノーマによるブドウ糖の吸収を阻害し、免疫T細胞に直接ブドウ糖を供給する方が、免疫キラーT細胞の機能を回復させるために有効であることが報告されています。

あなたにできることは、不必要なブドウ糖をできるだけ体内に入れないようにすることですね。

2. アルギニン(アミノ酸)

アルギニンは、豚肉(ゼラチン)、大豆と大豆製品、ナッツ類とシーズ類、煮干しや鰹節、卵白などに多く含まれています。

一般的に、がん細胞では、細胞外からもたらされるアルギニンへの依存度が高いことが観察されています。

がんの種類の中には、尿素サイクル酵素アルギニノコハク酸合成酵素(ASS1)をもっていないために、自前でアルギニンが合成できず、外からの供給のみに依存している種もいくつかあります。

(1)卵巣がんの例

卵巣の脂肪細胞だけでなく、間質性脂肪細胞も、アルギニンの代謝を通して卵巣がん細胞と連絡を取っていることが示されています。

1. 卵巣がん細胞は、誘導型一酸化窒素合成酵素を用いてアルギニンから一酸化窒素とシトルリンを造る
2. 一酸化窒素は、ブドウ糖の代謝に利用され、がん細胞の増殖を促進
3. シトルリンは、間質性脂肪細胞がアルギニンへと再変換
4. そのアルギニンを再びがん細胞が受け取り、一酸化窒素とシトルリンを造る

アルギニンを用いた効率的なリサイクルの仕組みです

がん細胞だけでなく、アルギニンは、エフェクター免疫T細胞にも大きな影響を与えます。

註:エフェクターT細胞|胸腺の外に出て全身を循環しながら、病原体(細菌・ウイルス・寄生虫・真菌など)の排除に最適な免疫反応を誘導する。ヘルパーT細胞が、分化したもの。

アルギニンが十分にある時は、免疫細胞全体に代謝変化が起こり、中央記憶の様な細胞の生成が促進されます。

アルギニンが不足している時は、アミノ酸欠乏によって、免疫T細胞のエフェクター機能が弱まり、病原体ごとの専門部隊を造ることができなくなってしまいます。

免疫T細胞のエフェクター機能を活性化し専門の精鋭部隊として活躍してもらうために、アルギニン不足の解消と、アルギニンの充填療法が、有効な治療法として注目されています。

しかし、卵巣がんには危険な方法かもしれませんね。

3. トリプトファン(必須アミノ酸)

キヌレニン経路で起こるトリプトファンの分解過程で、最初に発生する酵素が、がん細胞とマクロファージ(免疫細胞)の両方で多く見つかっていることから、アルギニンと同様に、トリプトファンは、がん細胞と免疫細胞の両方にとって必要なアミノ酸であることが判明しています。

トリプトファンは、セロトニン経路と呼ばれる代謝経で代謝されると、セロトニン(幸せと覚醒のホルモン)やメラトニン(睡眠と認知機能保護のホルモン)になりますが、キヌレニン経路と呼ばれる代謝経路に入ってしまうと脳内で、キノリン酸と呼ばれる神経毒になります。

キヌレニン経路によって最終的に作られるキヌレニンは、免疫抑制代謝物であり、制御性免疫T細胞(免疫T細胞の働きにブレーキをかける細胞)の発生を促します。

註:制御性免疫T細胞|免疫応答の抑制的制御(免疫寛容)を司るT細胞の一種。 免疫応答機構の過剰な免疫応答を抑制するためのブレーキ(負の制御機構)や、免疫の恒常性維持で重要な役割を果たす。

そのことから、現在、免疫チェックポイント阻害剤を用いた臨床研究において、トリプトファンの分解を抑制する薬剤の併用試験が行われています。

トリプトファンがキヌレニン経路で代謝されないよう脳を保護する食品については、『あなたが夜よく眠れない意外な理由・放置しておくと怖~いことに』をご参照ください。

また、トリプトファンの詳しい機能については、『トリプトファン』をご参照ください。

4. セリン(アミノ酸)

セリンは、卵白、大豆や大豆製品、煮干しや鰹節など干した魚類、小麦タンパクに多く含まれています。でも、セリンは必須アミノ酸ではありません

つまり、あなたは、セリン合成経路(SSP)によって、セリンを自前で造ることができます

多くのがん細胞は、セリンを自前で造るよりも、外から摂取したセリンを選択的に消費します。また、免疫T細胞の拡張とエフェクター(分化)機能にとっても、外から得られるセリンは重要です。

(1)乳がんとメラノーマの例

乳がんやメラノーマなどの特定のがんは、例えセリンが外から与えられても、セリン合成酵素の遺伝子を増幅させて自前で造るセリンを好みます。

と、いうことは、乳がんとメラノーマの場合には、免疫細胞のために食事からセリンを提供しても大丈夫と理解して良いのかしら?

5. メチオニン(アミノ酸)

メチオニンは、タンパク質合成に関与し、すべてのメチル化反応でメチル基供与体(SAM)を生成する必須アミノ酸です。

註:S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)|メチル基供与体として作用

がん細胞は、メチオニンを分解し利用します。メチオニンの分解に関与している酵素は、がん細胞で過剰発現するがん遺伝子として同定されています。

免疫T細胞は、活性化すると、SAMの貯蔵量を維持するためにメチオニンを急速に取り込もうとします。その際、メチオニンが不足していると、ヘルパー免疫T細胞の増殖とサイトカインの産生に関与している主な遺伝子の発現が抑制されてしまいます。

つまり、がん細胞がメチオニンを消費してしまうと、免疫T細胞の活性と分化(専門部隊化)に影響が生じるのです。

6. 乳酸

乳酸を減らすと免疫療法の効果が高まります。

様々な研究・調査によって、乳酸の生産を減らすことで、抗がん免疫療法の効力を高められることが裏付けられています。(詳しくは『がん細胞の協力者を体内に作ってしまう仕組みとそうさせない方法』をご参照ください。)

であれば、適度な運動はがん予防にとって効果的ですが、一旦、がんと診断されたら、乳酸を発生させるような無酸素運動は控えた方が良さそうです。当然、乳酸の原料となる甘いもの(ブドウ糖)の摂り過ぎも良くありません。

これまでに執筆してきた、がんの治療効果を高める食事法についての記事です。

その他、がんの予防や改善効果を高める食品や食品成分については『がん』をご確認ください。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

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なお、セルフドクターコースの新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング