バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
クローブは漢方の生薬
クローブって面白い形をしたスパイスだと思いませんか?
その形から、和名を丁子(ちょうじ)と言います。
体を温める効果があると言われていて、健胃薬として消化不良、嘔吐、下痢、冷えからくる腹痛を緩和する薬として処方されてきました。解熱、鎮痛、抗菌・殺菌作用があることも古くから信じられていることです。
そうなんです。クローブは漢方薬なんです。
中医学や漢方そしてアーユルベーダなどの東洋医学が古来よりその効能を認めているクローブですが、科学的な裏付けが追い着いていないのが現状のようです。
食品クローブと薬効成分ユージノール
スパイスとして用いられているのは、クローブの花蕾です。
クローブに含まれる油分の60%~90%は、ユージノール(オイゲノール)と呼ばれる成分で、抗菌剤、殺菌剤、麻酔薬などの医薬品に用いられる成分です。
ただし、食品としてのクローブについては、米国FDA(食品医薬局)は、GRAS(generally recognized as safe:一般的に安全と認められる)として、その安全性を認めているものの、機能については、カテゴリーIIIに分類し、機能を確約するためのデータが不十分であるとしています。そのため医療に使用することは認めていません。
ここでご紹介するクローブ精油の効果を検証している研究も、全てが動物実験です。ヒトを対象とした臨床試験が存在しないのです。このことが、FDAが「効能を確約するデータが足りない」とする根拠の背景でもあります。
(裏付けとなっている研究論文は最後に参考文献として一覧にしています)
解熱作用
ビール酵母によって発熱を起こしたマウスを使った実験では、市販の解熱剤ほどではないものの、クローブ精油にも解熱作用があることが示されています。
- クローブ精油を与えられなかったマウスと比較し、クローブ精油を与えられたマウスの最高体温は2.7度低く抑えられた
- 解熱剤のアセトアミノフェンを与えられたマウスの最高体温は、3.2度低く抑えられた
鎮痛作用
アスピリンよりも高い鎮痛効果
酢酸溶液をマウスのお腹に塗って、マウスがその場所を掻いたり、舐めたりする反応を観察した実験では、アスピリンよりも鎮痛効果が高いことが示されています。
- アスピリンを与えられたマウスの反応は、77.7%抑制
- クローブ精油を与えられたマウスの反応は、87.7%抑制
モルヒネに近い鎮痛効果
ホットプレート試験(50℃前後のプレートの上にマウスを載せて反応を観察する実験)では、モルヒネほどではないものの、何も与えられなかったマウスと比較して、約2倍の時間、熱さを感じなかったことが示されています。
- クローブ精油を与えられたマウスは、反応が82.3%遅かった
- モルヒネを与えられたマウスは、91.7%遅かった
オピオイド系鎮痛剤と同様の作用?
90匹のマウスを9つのグループに分け、それぞれ次の物質を与える10分前と、物質を与えた10分後にホットプレート試験を行っています。
- グループ1|生理食塩水(コントロール)
- グループ2~4|(マウスの体重1kgあたり)水抽出クローブ精油 50mg、 100mg、 200 mg
- グループ5~7|(マウスの体重1kgあたり)エタノール抽出クローブ精油 50mg、 100mg、 200 mg
- グループ8~9|(マウスの体重1kgあたり)4mgのナロキソンと水抽出クローブ精油 100mg、200mg
註:ナロキソンは、オピオイド拮抗薬の一つで、オピオイド系鎮痛剤の作用を打ち消すように作用します。
鎮痛のためなら蒸留法の精油が効果的
次の結果が得られています。
- 水抽出のクローブ精油を与えられたグループは、いずれの量も最良の結果を示した。
- エタノール抽出のクローブ精油は、コントロールグループと比べ大きな差はなかった。
- ナロキソンと水抽出クローブ精油を与えられたグループでは、ナロキソンがクローブの効果を打ち消してしまった
鎮痛のためにクローブ精油を選ぶなら、エタノール抽出ではなく、蒸留法がよさそうですね。
また、ナロキソンが作用したということは、クローブの鎮痛作用は、オピオイド系鎮痛剤と同様のメカニズムで作用しているということでしょう。
米国ではオピオイド系鎮痛剤の常用による死亡が多いのですが、クローブ精油なら多少安心かもしれません。でも、くれぐれも過剰摂取は厳禁です。この記事の最後にもクローブの注意事項をまとめています。
なお、どれもこれも、マウスには申し訳ない可哀想な実験の数々ですが、例えば、ホットプレート試験は60秒以上載せておいてはいけない等、動物を使った実験における倫理規定に基づいて行われた研究とのことです。
抗炎症作用
カラギーナンに暴露させたマウスの足の腫れ具合を調べた研究では、医薬品のインドメタシンほどではないものの、炎症を半分以下に抑えられることが示されています。すごいです。
- クローブ精油を与えられたマウスでは、炎症が50.6%抑制
- 抗炎症剤インドメタシンを与えられたマウスでは、70.4%抑制
抗菌・殺菌作用
泌尿生殖器の炎症の原因とされる病原菌に対するクローブ精油の効果を検証した研究があります。
膣炎を起こしたマウスを使った実験で、次の菌類に対して強い抗菌・殺菌作用を示しました。
- カンジダ・アルビカンス|ヒト腸内細菌叢の一般的な菌。日和見病原性酵母
- クリプトコッカス・ネオフォルマンス|植物と動物の両方にいる好気性菌。病原性酵母
- アスペルギルス・フミガータス|麹カビ属のカビ菌。アスペルギルス症の原因菌
様々な方法を試した結果、リポソーム化したクローブ精油を塗るのが一番効果があったとのことです。
リポソーム化は、化粧品などに良く用いられる方法ですが、リポソーム化することで、水に溶けにくい成分も親水性に変わり、肌に吸収されやすくなります。
糖尿病の改善
高脂肪食を与えII型糖尿病にした30匹のオスのウサギ(体重1~1.5kg)を使った実験で、クローブ精油と発酵生姜の効果を次の数値によって調べています。
- 血糖値
- 血清インシュリン
- インシュリン感受性
- レプチン値
ウサギは5匹ずつ6つのグループに分けられました。
- グループ1|正常血糖値グループ:標準食と浄化水を6週間
- グループ2|糖尿病グループ:標準食と浄化水を6週間
- グループ3|糖尿病グループ:体重1kgあたり0.26gのコレステロール+標準食を6週間
- グループ4|糖尿病グループ:標準食の12.5%をクローブ精油にして6週間
- グループ5|糖尿病グループ:標準食の12.5%を発酵生姜にして6週間
- グループ6|糖尿病グループ:標準食の12.5%をクローブ精油+標準食の12.5%を発酵生姜にして6週間
空腹時血糖を1週間ごとに測っています。
- 水しか与えられなかった糖尿病グループ(グループ2)と比較して、クローブ精油または発酵生姜を与えられた糖尿病グループ(グループ4と5)で血糖値が有意に低下
- 血糖値が最も改善したのは、クローブ精油を与えられた糖尿病グループ(グループ4)で、レプチン値が有意に減少
- 発酵生姜を与えられた糖尿病グループ(グループ5)では、血清インスリン値とレプチン値が有意に上昇
研究者は、糖尿病改善にはクローブ精油と発酵生姜の両方ともに効果が期待できるとしています。クローブ精油には、高レプチン血症を起こしている糖尿病患者の症状改善も期待できると述べています。
この研究結果を踏まえると、肥満か肥満でないかによってクローブ精油の効果が異なることとなり、次のようにアドバイスできそうです。
- 肥満症未満の人|クローブよりも発酵生姜を取り入れる
- 肥満症の人|糖尿病になってしまう前にクローブ精油を食事に取り入れる
レプチンの作用について補足
レプチンは、満腹ホルモンとして知られているホルモンで、様々な機能と役割をもっています。その重要性については、ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクター・コースの中でも教えていますが、肥満か肥満でない場合におけるレプチンの作用の違いについて下に簡単に補足します。
肥満症を発症していない人
レプチンは、肥満と体重増加を制御するように作用し、インスリン感受性を改善する作用があります。そのため、抗糖尿病薬として期待されています。
肥満症の人
レプチンの値が高くなり過ぎ、高レプチン血症になりやすいことが指摘されています。それがメタボリックシンドロームの発症に関与している可能性が示唆されています。
例えば、高血圧、血管障害、動脈硬化などです。
乳がん予防効果に期待
試験管試験で乳がん細胞を死滅
クローブの精油の主成分ユージノールが、3種類のヒト乳がん細胞( (MCF 10A、MCF7、MDA-MB-231) を91%死滅させたことが報告されています。
動物実験で乳がん細胞の成長を抑制
ヒト乳がん細胞を移植されたマウスを使った実験では、クローブの精油を経口摂取させると、28日間で78%のヒト乳がん細胞の成長が抑制されたことが報告されています。
その他、前立腺がん、肺がん、咽頭がん、メラノーマなどへの効果も期待されています。
皮膚線維症の予防と改善
ヒト皮膚線維芽細胞の増殖を抑制
ヒト皮膚線維芽細胞の炎症と組織修復に重要な役割を果たしている17のタンパク質バイオマーカーに対する外用薬としてのクローブ精油の効果を検証している研究がありました。
クローブ精油の効果を次の4つの異なる濃度(v/v、体積パーセント)で検証しています。
- 0.011% (10,000mlに11ml)
- 0.0037%(100,000mlに37ml)
- 0.0012%(100,000mlに12ml)
- 0.00041%(1,000,000mlに41ml)
濃度0.011%のクローブ精油がヒト皮膚線維芽細胞の抗増殖性作用を強く示したと報告しています。
炎症性物質を抑制
また、濃度0.011%のクローブ精油が慢性の炎症性疾患と関連している次のバイオマーカーを有意に抑制したことを報告しています。
- 血管細胞接着分子-1(VCAM-1)
- インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10)
- インターフェロン誘導T細胞α化学誘引物質 (I-TAC)
- インターフェロンγ誘導モノカイン(MIG)
皮膚修復タンパク質を抑制
更に、皮膚の組織修復タンパク質分子である次の物質を濃度0.011%のクローブ精油が有意に抑制したことも報告しています。
- I型コラーゲン|体内に最も多いコラーゲンで皮膚コラーゲンの90%
- III型コラーゲン|主に臓器にある細い線維のコラーゲンで、組織に柔軟性を与える
- マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)|動脈硬化との関係性があるとされるタンパク質
- 組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(TIMP-2)|がんのバイオマーカー
研究者は、クローブ精油のユージノールの抗炎症作用によって、皮膚線維症の改善と抗がん作用が期待できるとしています。
病気と関連したタンパク質が抑制されるのは嬉しいニュースですが、コラーゲンまで減っちゃうというのは、ちょっと残念な気分になります。でも、繊維症の細胞に使われるコラーゲンが減るということなので、心配はありません。
虫よけ効果
クローブ精油は昔から虫よけにも使われてきましたが、その効果を検証した実験がありました。
虫よけ剤のピカリジンと比較した結果が上のグラフです。
縦軸が、蚊が腕を刺すまでの時間で、ログで表記されています。
このグラフからは、何もしていない素肌の腕を蚊が刺すまでにかかった時間(約10秒)の約10倍の時間(約100秒、約1分半)クローブ精油は虫を避けていることがわかります。何もしないよりも良いものの、10秒が1分半になったところで、実生活の中で虫よけ効果を実感するのは難しそうです。
ピカリジンは(約8,000秒)、2時間以上も虫を避けてくれるので、勝負は明白です。
クローブの注意事項
FDA(米国食品医薬品局)は、クローブ精油の摂取には以下の事柄に留意するよう警告しています。
- 免疫系疾患、食物アレルギーを持つ人が経口摂取すると副作用が起こる可能性がある
- 大量摂取による肝障害の可能性
- 抗血液凝固剤(血をサラサラにする薬)を処方されている人の使用は避ける(血液凝固の可能性)
- 妊娠中・授乳中の人の使用は避ける
私の夏の自由研究
クローブの虫よけ効果については、個人的にかなり残念な結果でしたが、 今年やってみたことがあります。
以前、蚊に刺されやすい妹を助けるために蚊に刺されない方法を研究した男の子の実験について紹介しているテレビ番組を観たことがあります。
実験の結論は、「足の臭いを消すと蚊にさされない」でした。
その番組では、足の裏や指の間をアルコールで拭いておくと蚊にさされにくくなったことを紹介していました。
クローブでチンキを作ってみた
その実験結果を踏まえて、今年の夏、エタノールにクローブを漬けてチンキを作り、そのチンキで足の裏と足の指の間を拭いてから、実家の庭の菜園に半袖で入ってみました。
いつもなら半袖で庭の菜園に入ることはしません。長袖で入っても無数に蚊の餌食にされるので、絶対にしません。
結果、蚊にさされたのは2箇所に留まりました。
もちろん、ピカリジンを使った市販の虫よけ剤だったらまったく刺されずに済んだのかもしれません。でも、クローブチンキだって、足の裏に塗って使ったら、短時間の庭仕事の間くらいなら大丈夫なことを確かめることができました。
ナチュラルな虫よけの作り方については『アロマオイルで作る安全な虫よけスプレー』もご参照ください。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
さて、長々とクローブ精油について書いてきましたが、食事として、毎日の生活の中に取り入れるなら、精油を使うよりも、クローブをそのままスープやソースやお茶に使った方が使いやすいのではないでしょうか。
クローブのお料理への使い方については、『キッチンを薬局に|基本の15ハーブの効能と使い方(3)』が参考にしてみてくださいね。
私はクローブ大好きです。特にこの季節、私にとって欠かせないスパイスです。お料理以外にも、 いろいろなものに使います。夏には、上でご紹介した様に虫よけのチンキとしても使います。
これからの季節、アップルソースに加えたり、オレンジと一緒にお茶にしたり、ホットワインのスパイスとして加えたりが楽しいですね。
是非、季節を楽しみましょう。
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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参考文献:
- “clove oil”, US Pharmacopeia
- “Eugenol triggers apoptosis in breast cancer cells through E2F1/survivin down-regulation”, Al-Sharif I, Remmal A, Aboussekhra A, BMC Cancer. 2013 Dec 13;13:600. doi: 10.1186/1471-2407-13-600
- “Experimental evaluation of anti-inflammatory, antinociceptive and antipyretic activities of clove oil in mice”, Taher YA, Samud AM, El-Taher FE, ben-Hussin G, Elmezogi JS, Al-Mehdawi BF, Salem HA, Libyan J Med. 2015 Sep 1;10:28685. doi: 10.3402/ljm.v10.28685. eCollection 2015
- “Analgesic effect of the aqueous and ethanolic extracts of clove”, Kamkar Asl M, Nazariborun A, Hosseini M, Avicenna J Phytomed. 2013 Spring;3(2):186-92.
- “Effects of Clove and Fermented Ginger on Blood Glucose, Leptin, Insulin and Insulin Receptor Levels in High Fat Diet Induced Type 2 Diabetic Rabbits”, Abdulrazak A, Tanko Y, Mohammed A, Mohammed KA, Sada NM, Dikko AA, Niger J Physiol Sci. 2018 Jun 30;33(1):89-93.
- 「レプチンの多彩な生物作用と肥満関連疾患」、小川 佳宏、医学 と医療 の最前線、日本内科学 会雑誌第93巻第11号、平成16年11月10日
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- “Antimicrobial activity of clove oil and its potential in the treatment of vaginal candidiasis”, Ahmad N, Alam MK, Shehbaz A, Khan A, Mannan A, Hakim SR, Bisht D, Owais M, J Drug Target. 2005 Dec;13(10):555-61
- “Comparison among homemade repellents made with cloves, picaridin, andiroba, and soybean oil against Aedes aegypti bites”, Revista da Sociedade Brasileira de Medicina Tropical 44(6):793-794, nov-dez, 2011
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング