コーデックス国際シンポジウムに参加しました|食品由来疾病とDALYとは?

2016/04/07/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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食品由来疾病(Foodborne Disease)

2016年3月22日に厚生労働省と農林水産省主催のコーデックスCodex、国際食品安全基準策定委員会)に係る国際シンポジウムに参加してまいりました。

コーデックス基準については前回ご報告した通りです。

今回は、前回ご紹介したアフリカの食品安全の問題(グルテンフリー人気で注目のテフやメイズの汚染)も含めシンポジウムで話合われた食品由来疾病についてご報告します。

WHOは、2007年にFoodborne Disease Burden Epidemiology Reference Group (FERG食品由来疾病負荷疫学参考グループ)を創設しました。

食品由来疾病データがない

食品由来疾病は、世界中の病気と死亡の重大な原因です。でも、安全でない食品による寿命への負荷やその影響の全貌は、把握されてきませんでした。

例えば、何かを食べてお腹を壊したとしても、私達は、毎回、病院に行ったりしません。病院に行くのは明らかに重篤な症状がある時だけです。大抵は、症状が治まるのを待って終わりです。そうした症例は、もちろん、データに登録されません。

万が一、病院に行ったとしても、普通の腹痛や下痢だと診断されれば、医者も保健所や疾病対策センターなどに、いちいち報告したりしません。そうした診療データは病院内に保管されても、WHOが統計として使えるところにはありません。

医療システムが整っていない発展途上国では、更に、把握は困難です。

推計データで政策判断するFERG設立

こうした状況から正確な数値をただちに把握することは困難だったとしても、統計的に推計することはできます。そうした推計値を用いて全体像を把握し、各国の食品安全基準の採択に向けての政策判断を支援することを目的に、FERGが設立されました。

その成果として、2015年12月3日に『WHO estimates of the global burden of foodborne diseasesグローバル食品由来疾病負荷のWHO推計)』が公表されました。

全てにおいて推計が行われたわけではなく、次のアプローチが用いられています。

  • 5歳未満と5歳以上で分類する
  • 世界を14の地域に分類して推計する
  • 食品由来危険因子31種について推計する(危険因子の全てがカバーされているわけではないのです)
  • 発生数、死亡数、DALY(障害調整後生存年数: Disability Adjusted Life Years)の3つの指標について推計する

DALY(障害調整後生存年数)

「ダリィ」と発音します。聞きなれない言葉ですね。でも、世界の疫学研究分野では、「平均寿命」や「死亡率」といった言葉よりも、今では広く使われている概念なのだそうです。

DALY 1 年 は、本来の寿命から食品由来の疾病によって失った1年という意味です。

DALYは低ければ低いほど良いことを意味します。

全人口について、このDALY年数(食品由来疾病によって失った寿命)を合算することで、ある国の国民が本来なら得られる健康寿命と現状とのギャップを明確化することが可能となります。

食品疾病由来のDALYは、

  • 早期死亡(平均寿命未満での死亡)によって失った寿命(Years of Life Lost: YLL)と
  • 障害や疾病等を抱えて生きた寿命(Years Lived with Disability: YLD)を

加算して求めます。

DALY = YLL + YLD

人口10万人あたりのDALYs

食品由来疾病危険因子31種全てを合算した人口10万人当たりのDALYsは、上のグラフような結果になっています。日本は、WPR A西太平洋Aグループ)に含まれます。WPR Aには、日本、オーストラリア、ニュージーランドの三カ国が含まれています。

アメリカAグループ(AMR A:米国とカナダ)のDALYsが最も低く西太平洋Aグループと併せ、食品由来疾病で失われる寿命が最も少ない地域だと言えます。

実は、全ての危険因子の合算だけでなく、31種の各食品由来疾病危険因子の全てにおいて、西太平洋AグループのDALYsは、ゼロか、ほぼ最低でした

なんだかんだ言っても、日本は、世界的に見たら最高水準の食品安全がある国だということを実感します。

日本の食品由来疾病の危険因子

世界的にみたら食品由来の疾病で失う寿命がもっとも短い日本ですが、全てにおいてゼロではありませんでした。

実は、このFERGのフレームワークに則って、2011年のデータを基に日本では、パイロット調査が行われました。対象となった危険因子は、急性下痢症を起こす次の3種のバクテリア(細菌)です。 

  • カンピロバクター属菌種
  • 非腸チフスのサルモネラ属菌種
  • 腸管出血性大腸菌

発表された数値は、人口10万人当たりの数値ではなく、日本の総人口のDALYs合算値でしたから、上のグラフと比較することはできないのですが、日本国民全体で、次の様な結果が報告されました。

  • カンピロバクター属菌種によって失った健康寿命(DALYs)は合計で、6,099年
  • 非腸チフスのサルモネラ属菌種によって失った健康寿命(DALYs)は、3,145年
  • 腸管出血性大腸菌によって失った健康寿命(DALYs)は、463年

年間、千年単位で寿命が失われているというのはすごいと思いつつ、例えば日本の人口1億人とすると、平均では約半年とか4か月の損失ということなのかな?

毎年、半年ずつ下痢で寿命が縮まる危険が日本にはまだあるということですね。そう考えると、日本人にとっては確かに、大きな危険因子です。

でも、私的には、バクテリアよりも、化学物質による食品汚染によって生じるDALYsに関心があります。

化学物質によるDALYs

今回公表された調査で対象となった化学物質は、次の3つで、それぞれのDALYsが推計されています。

  • アフラトキシン
  • キャッサバ芋の青酸毒
  • ダイオキシ(発がん性物質)

ヒ素、カドミウム、メチル水銀、鉛については、今年(2016年)の夏ころをメドに発表されるそうです。(こっちの方を知りたかったです、笑)

アフラトキシン(人口10万人あたりのDALY)

アフラトキシンは、穀物につくカビで、肝臓がんの原因因子ですが、急性毒ではありません。長い期間かけて体内に蓄積されることによって肝がんを発症させます。

アフリカD(AFR D:西アフリカ)グループ、東南アジアB(SEAR B)グループ、西太平洋B(WPR B)グループで、DALYsが大きいことが分かります。ちなみに西太平洋Bグループの数値は、ほぼ、中国の数値なのだそうです。

アフラトキシンによる死亡者数

上記地域の年間死亡者数を見てみると(上表)、健康寿命の損失(DALYs)が多いだけでなく、実際の死亡者数も、アフリカ、東南アジア、中国で多いことが判ります。これら地域からの穀類には注意が必要ですね。

エチオピアのテフやジンバブエのメイズが怪しいというアフリカ代表の言葉を裏付ける納得のデータです。詳しくは前回の『アフリカの食品安全の現状』をご参照ください。

テフ(Teff)はアフリカ以外の地域でも若干ではありますが栽培可能だそうです。お店でご購入の際には、輸入先の国を必ず確認してから購入することが重要になりそうです。

なお、インジェラ(テフを使った乳酸発酵パンケーキ)は、そば粉を代用してもできると、IIN(NYCのホリスティック栄養専門学校)でエチオピア出身の講師から以前教えていただきました。まだ、試していませんが、輸入テフを使うよりも国産のそば粉を使う方が安心ですね。

また、中国地域では毎年1万人近くがアフラトキシンで亡くなっていることが判ります。中国産の穀類(米や種やナッツ)は怖くて食べられませんね

2016年10月追記:

10月25日付で、中国産のハスの実からアフラトキシンが検出されたと厚労省が発表しました。そのため、中国産のハスの実とその加工食品の全品の検査が義務付けられました。

キャッサバの青酸毒(人口10万人あたりのDALY)

これは、完全にアフリカ固有の問題だということが判ります。

ただ、キャッサバ芋を乾燥したのがタピオカ粉です。タピオカはほぼ全ての先進国でデザートとして親しまれている食品です。日本で使用されているタピオカ粉がアフリカからの輸入品でないことを願うのみです。

キャッサバの青酸毒については、前回の『アフリカの食品安全の現状』をご参照ください。

ダイオキシン(人口10万人あたりのDALY)

東南アジアD(SEAR D:西アジア)グループ、中近東D(EMR D:東&北アフリカ)グループ、欧州C(EUR C:旧ソ・東欧)グループでDALYsが大きいことにあまり驚きませんが、欧州A(EUR A:西欧グループがゼロでないことに驚きました。

日本、オーストラリア、ニュージーランド、北米はゼロなのに・・・旧ソや東欧諸国からの輸入食品による影響なんでしょうか・・?

一方で、西&南アフリカ、中南米、中近東もゼロだったということは、まだ工業化が進んでいないことによる恵みなんでしょうか・・?

私的には、今夏公表予定のヒ素、カドミウム、メチル水銀、鉛の情報を早く知りたいものです。

カドミウムと鉛

ちなみに、環境保護グループである『As you sow』が2016年3月23日に発表した報告書『TOXIC CHOCOLATE(有毒チョコレート)』によれば、米国で販売されているチョコレート50商品を検査したところ、35商品からカリフォルニア州の環境基準を大きく上回るカドミウムと鉛が検出されたと報告しています。

その中には、ゴディバリンツも含まれています。

米国は合衆国なので、州ごとに法律や規制が異なります。中でもカリフォルニア州の基準は、EU基準とほぼ等しく厳しく、米国内で唯一、コーデックス基準に近い基準を採択している州です。

同じメーカーの製品でも、基準値未満のものもあれば、基準値を超えたものもあります。リンクしたページの下方に検査結果の一覧表がありますので、ご参照ください。リストの左から、メーカー名、商品名、検査結果の順に表示されています。右端の検査結果のマスが赤色のものは基準値緑色のものは基準値未満です。

市販の多くのチョコレートには、トランス脂肪酸が使用されていることや、乳化剤など腸内細菌を殺してしまうことが報告されている添加物が使用されていることが問題です。

が、少なくともそれらは原材料表に表示されています。

上の写真は、生きた乳酸菌を入れつつ、菌を殺す乳化剤も使っている製品の例です。

賢い消費者なら、表の魅力的なパッケージやメッセージに惑わされることなく裏の原材料表を確認して選択することが可能です。

でもカドミウムは、原材料表に表示されませんから、こうした報告はありがたいです。

ご興味のある人のみ:推計方法

公表されている数値は、95%信頼区間での中央値です。

95%信頼区間というと、「データは95%信頼できる、95%確実だ」という意味だと思われる人がいますが、そうではありません。信頼区間は大きければ大きいほど「不確実」だということを意味します。

的

統計上の数値には不確定要素が多いので、真の全体像がつかめないことがほとんどです。だから推計するのですが、その推計値の精度を示すために、「信頼区間」という概念があります。

射撃の射程範囲のようなものと考えてください。

「的の面積の95%のどこかには当たるよ。」

というのと、

「的の面積の10%のどこかに当たるよ。」

と、いうのでは、10%の方が、95%よりも正確に的を捕えていることになりますよね。

統計数値も同じです。信頼区間が小さい方が、その推計値は、より正確に真の値を捕えている可能性が高いのです。

今回コーデックスが発表した数値が、「95%信頼区間の数値」だということは、どこかに正しい数値があったとして、「その真の数値から95%の範囲のバラつきの中に、この推計値は含まれているはず」と、いうことを意味しています。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング