バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
ADHD治療薬の作用
ADHDの治療薬、例えば、コンサータ、アデラル、リタリン、デキセドリンなどは、全てアンフェタミン系(向精神性麻薬系) の薬で、 ドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質を増やすことで、ADHDの症状を改善するように働きます。
ドーパミンは私達の喜びの感情と、ノルアドレナリンは前向きなやる気と関係しているホルモンです。
コーヒーの作用
コーヒーによってドーパミンやノルアドレナリンが増加することが確認されています。
もしコーヒーがADHD治療薬の代わりになるのなら、アンフェタミン系(向精神性麻薬系)の薬を子供に飲み続けさせなくても良くなります。
副作用のある薬を飲せることを考えたら、ずっと安全で安心ではないのでしょうか。
重要なのはアデノシン受容体
アデノシンは、様々な代謝、認知機能、冷静さや集中力に関係しています。
コーヒーの作用を理解するためには、アデノシンと結びつくアデノシン受容体について知る必要があります。
アデノシン受容体は、アデノシンという物質を受け取るグローブのようなもの(受容体)です。
- アデノシン受容体がアデノシンを受け取ると、特定の作用が起こったり特定の作用が止んだりします。
- 受容体をブロックしてアデノシンを受け取れなくすると、特定の作用が起こることを防いだり、ある作用を継続させ続けることが可能になります。
ただし、アデノシン受容体には、サブタイプが複数存在していて、それぞれ異なる役割を持っています。
カフェインとADHD治療薬
カフェインとADHD治療薬の成分の構造は、アデノシンと非常に似ています。そのため、カフェインとADHD治療薬の両方とも、アデノシン受容体と結合することができます。
カフェインまたはADHD治療薬の成分がアデノシン受容体と結びついてしまうと、実際のアデノシンは受容体と結びつくことができなくなります。
つまり、ADHD治療薬は、アデノシンが受容体と結びつくことを阻止し、アデノシンの作用を打ち消すのです。そのことで、ADHDの挙動が安定します。
ADHD治療薬/向精神性薬の作用
ADHDの人が、ADHD治療薬を飲むと、行動と心に落ち着きが戻り、集中できるようになります。しかしADHDをもっていない人が飲むと、ADHDのような症状が現れます。
ADHD治療薬だけでなく、向精神作用のある薬は、ADHDの症状を改善する作用を起こしますが、ADHDではない人が飲むと、異常な躁状態(覚せい剤のような作用)を引き起こします。
カフェインの作用
健康な人の体内で、カフェインがアデノシン受容体と結びつくと、私達を活動的にする神経伝達物質のドーパミンやノルアドレナリンの分泌を増加させ、私達の脳や体は活発になります。
ドーパミンとノルアドレナリンの作用によって、コーヒーを飲むと夜眠れなくなる人がいる一方で、コーヒーを飲むと、ほっと心が落ち着く人もいます。
コーヒーは食品ですから、ADHD薬と比較したらずっと穏やかに私達の精神状態に作用します。
なお、ドーパミンは多ければ多い方が良いわけではなく、分泌され過ぎると、気分を悪くさせたり、落ち着きが失われ、脈拍が早くなり、パニック症状を起こすことがあります。
カフェインがADHDに効くと考えられる理由
(裏付けとなっている研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています)
1. カフェインはドーパミンとノルアドレナリンを増やす
ADHAの治療に用いられる医薬品のほとんどすべてがドーパミンとノルアドレナリン値を増やす作用のある向精神性の物質です。
そして、カフェインは、ドーパミンとノルアドレナリンの両方を増やす、世界で最も普及している向精神性物質の1つです。その過程で、アセチルコリンとセロトニンも増やします。
実際、ADHD治療薬のリタリンには、多くのカフェインが含まれています。
2. カフェインは前頭皮質のドーパミン作動性機能を正常化する
『欧州神経精神薬理学(European Neuropsychopharmacology)』に発表された研究によって、カフェインが前頭皮質のドーパミン作動性機能を正常化し、ADHDの特徴である注意欠陥と認知変化を改善する可能性があることが示されています。
この研究では、カフェインが医薬品と同様にドーパミン値を正常化させたことが報告されています。
3. カフェインは軽度のADHDを改善する
カフェインを含有するお茶(紅茶や緑茶)が、軽度のADHDをもっている人を対象にした研究で、疲労感の軽減、自信、やる気、注意力、警戒心、効率、集中力、認知力を高めたと、報告されています。
この研究者は、お茶の摂取が成人のADHDの有効な積極的治療法である可能性を示唆しています。
4. カフェインは強迫性障害治療に有効
強迫性障害(OCD)の治療にとって、ADHD治療薬のデキストロアンフェタミン(デキセドリン)とカフェインのどちらが有効かを検証するための研究がスタンフォード大学によって実施されています。
そもそも医薬品とカフェインのどちらに効果があるのか研究されるくらい、比較対象として検討する価値があるくらい効果に期待できるということだと思います。
5. カフェインはアデノシン受容体の作用を打ち消す
「カフェインがアデノシン受容体の作用を打ち消すように
私達の脳で作用(アデノシン受容体拮抗作用)するという事実が、
ADHDの臨床診療でカフェインを使用する潜在的な利点だ」
と、する論文が、2014年の『精神薬理学ジャーナル(Journal of Psychopharmacology)』に掲載されています。
6. カフェインはADHD治療薬と体内機序が類似
ADHD治療薬のメチルフェニデートとカフェインは、両方とも1時間以内に作用が起こり、4時間以内に作用が消滅します。
この両者は、非常に類似した吸収と代謝のプロセス、体内機序、副反応をもっていることが報告されています。
カフェインの作用の程度はヒトによって異なる
1.ADHDの原因はドーパミン不足だけはない
ADHAが起こる原因はひとつではありません。
- 主に表れているADHDの症状
- 遺伝子の影響
- 体内のドーパミンやノルアドレナリンの量や分泌の状態
によって適する薬や治療方法が異なります。
そのため、カフェインの効果に差が生じることが想定できます。
2.カフェインと体質の相性
次の要因によってカフェインに対する反応は異なります。そのため、全てのADHDの人にコーヒーが効果があるとは約束できません。
- カフェインを分解できる能力
- カフェインがどのアデノシン受容体と結びつくか
- どれだけ多くの受容体と結びつくか
3.食品中のカフェイン量
カフェインの含有量は、それぞれの食品や飲み物によって異なります。そのため、医薬品と異なり常に一定量をコンスタントに摂り続けることは難しいと言えます。
例えば、紅茶や緑茶はどれだけ長い時間、茶葉をお湯につけておいたかによって抽出されるカフェインの量に差が生じます。
また、茶葉やコーヒー豆は自然食品ですから、同じブランドの茶葉や豆であっても、その年の天候や加工過程の違いに左右され、常に同じカフェインの量を含んでいるとは言えません。
コーヒーでは弱すぎてしまう人もいるかもしれません。
参考:『一般的な飲料に含まれるカフェイン量』
4.カフェイン多量摂取の悪影響
他の医薬品と一緒にコーヒーを飲むと、悪い作用が出てしまうことがあります。例えば、心機能や血圧、脳機能や情緒への悪影響です。
コーヒーの健康への是非については 『コーヒーは体に良いの?悪いの?』 を読んでくださいね。
5.未成熟児童のカフェイン摂取の問題
一般的に、成長期にある未成熟児童が、カフェインを積極的に摂ることは勧められません。
日本も米国も、特に子供のカフェイン摂取量に明確な制限を設けていませんが、カナダにはガイドラインがあり、日本の厚生労働省は、それを参考にするようにとホームページに掲載しています(他力本願?笑)
年齢:
- 4~6歳:45 mg未満
- 7~9歳:62 mg未満
- 10~12歳:85 mg未満
でも、これはADHDではない児童のためのガイドラインですから、ADHDの児童については、保護者の判断が必要に思われます。
薬を飲ませるよりも、1日に2~3杯のコーヒーが役に立つかもしれないと思われたなら、必ず主治医とご相談ください。そして、お子さんにコーヒー飲ませることを選択した場合には、医薬品を飲ませた時と同じようにお子さんを注意深く見守ってください。
未成熟児童ですから、少量のカフェインでも大きな変化をもたらす可能性があります。攻撃性や不眠や下痢、頭痛など、もし現れるようでしたら、直ぐに主治医に報告してください。
学校の成績も大切ですが本人の自己肯定感はもっと大切
最近では、ADHDの治療には、すぐに薬を処方することが正しい選択であるかのような風潮ですが、非常に近視眼的で潜在的な様々な危険をはらんでいる結論であるように感じます。
成長期の脳へアンフェタミン系の、向精神薬系の、麻薬系の薬を与えることの後遺症だけでなく、子供の自己肯定感や自尊感情を傷つける結果にならないか心配です。
薬を飲めば自分が「病気」であると子供は思います。でもコーヒーなら自分の行動を異常だと感じずに済みます。少し強い個性くらいに思えるのではないでしょうか。その認識は、子供の自己肯定感や自尊感情に大きな違いを生むように思うのです。
ADHD治療薬はアンフェタミン系の薬です。コーヒーは飲料です。
潜在的に危険な薬に依存する前に、コーヒーや紅茶、緑茶、ダークチョコレートなどを試すことを検討いただければと思わずにはいられません。
ちなみにこんな方法もADHDに効果あったとする報告もあります。『甘いもの欲求を科学的に抑える布団ってどんな布団?』
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参考文献:
- “Caffeine regulates frontocorticostriatal dopamine transporter density and improves attention and cognitive deficits in an animal model of attention deficit hyperactivity disorder”, Pablo Pandolfoab Nuno, J. Machadob Attila Köfalvib Reinaldo, N.Takahashia Rodrigo, A.Cunhabc, European Neuropsychopharmacology, Volume 23, Issue 4, April 2013, Pages 317-328, https://doi.org/10.1016/j.euroneuro.2012.04.011
- “Tea consumption maybe an effective active treatment for adult attention deficit hyperactivity disorder (ADHD)”, Kezhi Liu Xuemei, Liang Weihong Kuang, Medical Hypotheses, Volume 76, Issue 4, April 2011, Pages 461-463, https://doi.org/10.1016/j.mehy.2010.08.049
- “Double-blind study of dextroamphetamine versus caffeine augmentation for treatment-resistant obsessive-compulsive disorder”, Koran LM, Aboujaoude E, Gamel NN, J Clin Psychiatry. 2009 Nov;70(11):1530-5. doi: 10.4088/JCP.08m04605. Epub 2009 Jun 30
- “Ostracising caffeine from the pharmacological arsenal for attention-deficit hyperactivity disorder–was this a correct decision? A literature review”, Ioannidis K, Chamberlain SR, Müller U, J Psychopharmacol. 2014 Sep;28(9):830-6. doi: 10.1177/0269881114541014. Epub 2014 Jul 1
- “New Developments on the Adenosine Mechanisms of the Central Effects of Caffeine and Their Implications for Neuropsychiatric Disorders”, Ferré S, Díaz-Ríos M, Salamone JD, Prediger RD, J Caffeine Adenosine Res. 2018 Dec 1;8(4):121-131. doi: 10.1089/caff.2018.0017. Epub 2018 Dec 7.
- “Caffeine Frequently Asked Questions”, October 2011, Information for Parents on Caffeine in Energy Drinks
- “Caffeine Chart”, Center for Science in the Public Interest
- 「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」 厚生労働省
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング