バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
骨が造るホルモン
骨が作るタンパク質(ホルモン)が、血糖値や代謝や食欲と関係していることが、ここ何年かの間に報告されています。
ひとつのタンパク質は私達を生活習慣病から守ってくれる天使のホルモン。でも、もうひとつのタンパク質は、生活習慣病からがんまで様々な病気の危険なサイン。悪魔のホルモンです。
天使のオステオカルシン
オステオカルシンは、骨に含まれるタンパク質です。骨のタンパク質のうち、コラーゲン以外のタンパク質の約20%を占める物質です。
ビタミンD3によって多く発現し、骨の形成に関与していると考えられていて、骨芽細胞の骨形成マーカーとして用いられています。
血糖値を下げて代謝をあげる
2014年に骨が作るタンパク質、オステオカルシンが、血糖値を下げ、代謝を上げることが発見されました。
研究では、マウスに週3回3ヵ月間オステオカルシンを経口摂取させています。(ちなみに、マウスの週3回3ヵ月間は、単純計算で、ヒトの約2ヵ月に1回7年間です、笑)
飲み続けたマウスの膵臓で、インスリンを合成・分泌するランゲルハンス島のβ細胞が増殖してランゲルハンス島が増大していること、それに伴ってインスリンの分泌量が増えることが報告されています。
更に、オステオカルシンを摂取すると、高脂肪・高炭水化物のエサで飼育したメタボリックシンドロームのマウスも、糖代謝が改善するという結果が得られたと報告しています。
骨を健康に保つことで、メタボが解消されて、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病の予防・改善になるということですね。
長寿ホルモンの分泌を促す
オステオカルシンは、長寿ホルモン「アディポネクチン」の分泌を促すことが他の研究によって報告されています。
オステオカルシンを増やすには
ビタミンD3によって多く発生するということですから、キノコ(ビタミンD2)を食べるよりも日光浴をして自分で光合成することが一番良いということではないでしょうか?
ビタミンD3は、私達の腸内細菌が、紫外線を吸収して体内で造っています。
腸内細菌が作ってくれるのですから、骨の健康そして太らない体質を作るためには、腸内環境を整えることも大切です。
骨の健康と腸内環境、発酵食品との関係については『骨粗鬆症を予防して骨を健康にする食品は?ヒント:カルシウムじゃありません』をご覧ください。
また、かかとを上げて、ストンと落とす運動をすることで、オステオカルシンの分泌が促されるそうですよ。
悪魔のリポカリン2
リポカリン2は、様々な肥満関連の炎症性疾患のマーカーです。
食欲を抑制
骨芽細胞から分泌されるタンパク質、リポカリン2(LCN2)が、食欲を抑制することが発見されています。
リポカリン2は、脳の視床下部のニューロンでメラノコルチン4受容体(MC4R)と結合して、食欲抑制経路を活性して食欲を抑制するのだそうです。
血糖値を安定
2017年3月、リポカリン2が、インスリン分泌を誘導して、耐糖能とインスリン感受性を向上させ、グルコース恒常性(血糖値の安定)を維持することが報告されています。
なぜ炎症性疾患マーカーなのか
ここまで読むと、リポカリン2って、食欲をコントロールしたり、インスリン感受性を向上させたりしてくれて、全然、悪魔のようには思われません。良い子のように思ってしまいます。
なぜ、リポカリン2が、肥満関連の炎症性疾患のマーカーなんでしょうか?
血液中のリポカイン2
血液中にリポカリン2が多い人ほど、次の疾患をもっていることが多いことが明らかにされています。
- 腎障害
- 脂肪蓄積
- トリグリセライド(中性脂肪)血症
- 高血糖
- インスリン抵抗指数
- CRP(炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するタンパク質)
尿中のリポカイン2
また尿中にリポカリン2が多い人ほど、乳がんを発症している確率が高いことが報告されています。
乳がんを悪性化
更に、乳がん細胞で、リポカリン2が発見された人の乳がんは悪性化しやすいことが報告されています。
また、局所での浸潤性が高く、リンパ節転移を起こしやすいことも報告されています。
リポカリン2は本当は悪くない?
リポカリン2が食欲を抑制するように作用するのは、体内の血糖値や血中脂肪がある一定の許容量を超えてしまい、様々な炎症性の病気を起こし始めたため、もうこれ以上、血糖や血脂が増えすぎないように、食欲を抑制するのではないかと推察できます。
そう考えると、リポカリン2を悪魔と決めつけてしまうのも可哀想な気がしてきます。
元々は、血糖が高くなり過ぎない様に、脂肪が蓄積しないように、内臓炎症が起きないように、食欲を抑制してくれているだけなのですから。
リポカリン2を悪魔にしてしまうのは、あなたの食生活でありライフスタイルです。
本当の悪魔は己ですね。
骨が私達の血糖値や代謝や食欲に関係している物質を造っているということに驚きます。
私達ができることは、天使のオステオカルシンが作られるように、そして、リポカリン2を必要としないような、食事とライフスタイルの維持です。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
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参考文献:
- “骨が作るタンパク質が血糖値を下げる オステオカルシンが代謝を改善“, 2014年10月22日,九州大学 大学院歯学研究院
- “Endocrine regulation of energy metabolism by the skeleton”, Lee NK, st al., August 2007, Cell 130 (3): 456–69. doi:10.1016/j.cell.2007.05.047. PMC 2013746. PMID 17693256.
- “骨による食欲調節“, Nature 543, 7645, 2017年3月16日
- “Physiology: Bone-derived hormone suppresses appetite”, Richard D. Palmiter, Nature 543, 320–322 (16 March 2017) doi:10.1038/nature21501, Published online 08 March 2017
- “MC4R-dependent suppression of appetite by bone-derived lipocalin 2“, Ioanna Mosialou, et al, Nature 543, 385–390 (16 March 2017) doi:10.1038/nature 21697, Received 28 June 2016 Accepted 09 February 2017 Published online 08 March 2017
- “リポカリン-2はヒトでは肥満,インスリン抵抗性および高血糖と関係する炎症マーカーか“, 鈴木優治, 埼玉県立大学短期大学部, 臨床検査, 51巻5号 pp.527, Published Date: 2007/5/15, DOI: http://dx.doi.org/10.11477/mf.1542101212, Print ISSN: 0485-1420 Online ISSN: 1882-1367
- “尿中と癌組織に見つかるリポカリン2は悪性度の高い乳癌のマーカーとして有望“, 大西淳子, 日経メディカル, 2009/3/3