
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
糖尿病ではない女性とフェニル酢酸
サイエンス誌『ネイチャー』で2018年7月に発表された論文には、糖尿病ではない肥満の女性では、フェニル酢酸(さくさん)が、次の疾患を引き起こす原因になることが報告されました。
- 肝臓の脂肪蓄積(脂肪肝)
- 非アルコール性脂肪性肝炎
そう言われても、直ぐには、何のことやら分からないと言う人もいるでしょう。
なお、裏付けとなる研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています。
フェニル酢酸とは

体内で必須アミノ酸のひとつのフェニルアラニンが正常に代謝されると、アミノ酸のチロシンになります。
この時、チロシンを造る酵素が欠如していると、フェニルアラニンが正常に代謝されないため、異常代謝物であるフェニル酢酸が発生します。
フェニル酢酸が体内に蓄積すると、フェニルケトン体になります。
フェニルケトン体は脳機能を侵す
体内に蓄積したフェニル酢酸(フェニルケトン体)は、やがて尿中に排泄されますが、その過程で次の作用を起こす危険な副産物です。
- 脳細胞へのダメージ
- 精神発達の遅滞
そして今回、脂肪肝や非アルコール性肝炎の原因にもなることが判明したのです。
ただし、フェニルケトン体が体内で造られるのは、主に先天性の難病(フェニルケトン尿症)をもっている場合なので、多くの人は心配する必要はないのかもしれません。
しかし何らかの理由で、フェニルアラニンをチロシンに変える酵素の働きが弱くなってる糖尿病ではない人は、冒頭でご紹介した通り、フェニルケトン体によって肝疾患が起こる可能性を否定できません。
それに、フェニルケトン体以外にもケトン体は存在しています。
“通常の”ケトン体とは

食事から炭水化物を抜く、あるいは極端に制限すると、日常生活や運動に必要なエネルギーを確保するために、体は体内の脂肪を分解し、糖に変え始めます。
その時、副産物としてケトン体が発生します。
そのため、炭水化物を極端に制限することを勧める人たちは、必ず次の言葉を口にします。
「体内の脂肪を使用するので、痩せられる」
ケトン体が多くなり過ぎると?

体内で発生したケトン体は、尿中に排出されます。肝臓でケトン体が作られた場合には、血液中に排出されます。
尿中濃度が高くなると
尿に排出されるケトン体の量が多くなると、ケトン尿症になります。
脳障害や発達遅延を起こす可能性が高まります。
血中の濃度が高くなると
血液中に排出されるケトン体の量が多くなると、ケトン血症が起こります。
血液のpHが酸性に傾き、アシドーシスが起こり極端な場合には、昏睡状態に陥ります。
妊婦とケトン体
妊娠中にケトン体が多く出ると、次のような妊娠悪阻(にんしんおそ)の症状が悪化するリスクが高まります。
- つわり
- 脱水
- 栄養失調/偏重
ケトン体を発生させる食事
“通常の” ケトン体は、次の食事法によって発生させることができます。
- ケトン・ダイエット
- 炭水化物抜きダイエット(アトキンス食事療法)
- 低炭水化物ダイエット/ローカーボダイエット
- 断食/ファスティング
いずれも炭水化物(糖質)を一日20g以下などに極端に制限する食事法です。
ケトン体を発生させる食事法は、特定の病気治療を目的に開発された食事法です。
代謝性疾患と神経変性疾患のための食事法

特に、糖尿病などの代謝性疾患と、てんかんなどの神経変性疾患への有効性は、既に確立されています。
- 糖尿病
- てんかん
更に、軽度認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病などの改善への有効性に対しても期待されています。
冒頭に記載した通り、ケトン体は、健常者の脳機能に障害を起こす危険性のあるものです。しかし、脳に病気をもっている人にとっては治療を後押しする物質であることは興味深いです。
例えば、現在、「麻薬」と呼ばれるものの多くは、元々は精神疾患の治療薬として開発されたものです。精神疾患を起こしている人には改善薬として作用するものが、健常者には精神疾患を起こす麻薬となるわけですが、ケトン体も同じなのではないかと思わずにはいられません。
痩せたいからと気軽に初めて良い食事法ではないのではないでしょうか?
てんかん治療に効果がある理由
なぜ、ケトン体を発生させる食事法がてんかん治療に効果があるのかを説明する明確な仕組みは、まだ判明していません。
しかし、有効性を多くの研究が裏付け、いくつかの仮説が存在しています。
腸内細菌の構成
有力な仮説のひとつは、ケトン体ダイエットによって、腸内細菌の構成が大きく変わることが確認されていることから、腸内細菌が造る物質(ホルモン様)が脳に影響を与えているというものです。
がん治療のための食事法

2018年8月23日の「ネイチャー」に掲載された論文では、PI3K経路を阻害する作用のある抗がん剤の投与と並行して、ケトン体ダイエットが実施された場合に、がん細胞によって抗がん剤の効果が阻害されることがなくなり、効果が高まった(がん細胞死を促した)ことが報告されています。
なお、ケトン体ダイエットだけでは、がん細胞死は起きないことも報告されています。
がん治療に効果がある理由
PI3k経路は、血糖値の上昇とインスリンの分泌に関係している経路です。がん化遺伝子(Akt)のスイッチをオンにする経路でもあります。
血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌され、PI3k経路によって血中の糖が肝臓、筋肉、脂肪細胞に取り込まれることで、血糖値が下がります。
がん細胞もこのPI3k経路を独自にもっていて、血中の糖を効率よく吸収しています。がん細胞に糖を与えず餓死させるために、このPI3k経路を阻害する抗がん剤が開発されました。
しかし、この経路が阻害されると、血液中の糖が回収されないため、血糖値が下がらなくなります。血糖値が下がらないため、膵臓は更にインスリンを分泌し、血糖値を下げようとします。過剰に分泌されたインスリンによって、抗がん剤で阻害したはずのがん細胞のPI3k経路が再度活性化してしまい、抗がん剤の効果を無効にしてしまうことが明らかにされています。
そのため、この抗がん剤と、血糖値を上げないケトン体ダイエットを並行して行うことで、抗がん剤の効果を維持することが可能になることが確認されたのです。
血糖値が下がらない薬を使っているから
ケトン体ダイエットに意味がある
すい臓機能が不全になり血糖値を下げることができない糖尿病の人の症状の改善にケトン体を発生させる食事が効果があるのと同じ理由で、血糖値が下がらない薬を服用しているがん患者さんの治療の後押しになるのです。
心血管疾患のための食事法
他の臓器とは異なり、健常な心臓は、脂肪酸が主たるエネルギー源です。しかし、心不全などの心臓病になると、エネルギー源が脂肪酸からケトン体にスイッチされることが明らかにされています。
ちなみに、肝臓はケトン体をエネルギー源とすることができませんが、肝臓以外の他の臓器や細胞は、全てケトン体をエネルギー源とすることができます。
静脈投与によって血液中のケトン体濃度を高めることで、心不全などの心臓疾患に対する治療効果があることが示されています。
そのことから、ケトン体を発生させる食事によって、エネルギー不足の心臓に補助的な燃料を提供する可能性があり、治療をサポートすると考えられています。
病気治療の食事と健常者の食事は異なる

ケトン体を発生させる食事は、さまざまな病気治療に効果があることが示され、期待されている食事法です。
ただし、だからと言って、病気ではない健常者が単に体重を落としたいという理由だけで、安易に実施するには注意を要する食事法でもあります。
健康なマウスの寿命は縮む
マウスを用いた研究ですが、ケトン体を体内で造ることができない(内因性ケトン生成欠乏)短命のマウスに、β-ヒドロキシ酪酸(ケトン体)の前駆体の1,3-ブタンジオールを含む餌を毎日与えると、寿命の短縮を阻止できることが示されています。
しかし、健康なマウスでは、幼少期から1,3-ブタンジオールを与えると中年期での死亡率が上昇することが示されています。
高齢ではないマウスの寿命も縮む
また、高齢のマウスに1,3-ブタンジオールを与えることで寿命が延び、アテローム性動脈硬化症による死亡率が低下することが示されていますが、高齢ではないマウスに低炭水化物によるケトン食を与えると、死亡率は著しく増加します。
病気でない時の薬は毒でしかない
マウスでの結果がそのままヒトにおいて同様の結果になるかは分かりません。
しかし、研究者は次のように述べています。
投与方法と健康状態によっては、
ケトン体の補給は生存に関して諸刃の剣となる可能性がある。
糖尿病ではない人が糖尿病の薬を飲んだり、てんかんではない人がてんかんの薬を飲んだり、心臓病ではない人が心臓病の薬をのんだりしたら、それはもう薬ではなく毒になることは想像しやすいのではないでしょうか。
食事も同じです
医食同源、薬食同源
病気の治療に効果のある食事法は、健常者にとって健康を害するものになりかねないということ。
ひとつの作用だけに着目して全体を見ないことはとても危険です。
体とじっくり取り組む
そして
短期間に簡単に手に入れたものは
短期間に失います
失うだけならまだしも、時に、深刻な副作用や後遺症を体や脳に残すこともあります。
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参考文献:
- “Microbiome metabolomics reveals new drivers of human liver steatosis”, Nathalie M. Delzenne & Laure B. Bindels, Nature Medicinevolume 24, pages906–907 (2018)
- “Gut Bacteria Seize Control of the Brain to Prevent Epilepsy”, Sean W. Dooling, Mauro Costa-Mattioli’Correspondence information about the author Mauro Costa-MattioliEmail the author Mauro Costa-Mattioli, Volume 24, ISSUE 1, P3-5, July 11, 2018, Cell Host & Microbe
- “Diet boosts the effectiveness of a cancer drug”, Michael Pollak, NEWS AND VIEWS, Nature, 06 August 2018
- “Therapeutic Potential of Ketone Bodies for Patients With Cardiovascular Disease: JACC State-of-the-Art Review.”, Yurista SR, Chong CR, Badimon JJ, Kelly DP, de Boer RA, Westenbrink BD., J Am Coll Cardiol. 2021 Apr 6;77(13):1660-1669. doi: 10.1016/j.jacc.2020.12.065. Epub 2021 Feb 23. PMID: 3363735
- “Ketone bodies: A double-edged sword for mammalian life span. Aging Cell.”, Tomita I, Tsuruta H, Yasuda-Yamahara M, Yamahara K, Kuwagata S, Tanaka-Sasaki Y, Chin-Kanasaki M, Fujita Y, Nishi E, Katagiri H, Maegawa H, Kume S., 2023 Jun;22(6):e13833. doi: 10.1111/acel.13833. Epub 2023 Apr 14. PMID: 37060184; PMCID: PMC10265173.
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング