その疲労感と物忘れはホスファチジルコリン不足による臓器不全の前兆かも

2020/02/04/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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原因不明の慢性疲労はありませんか?

慢性疲労は、現代人にとっては馴染みのある不調ですよね。

  • なんとなく朝、疲れが抜けていない。
  • お昼過ぎると疲労感で集中力が激減して仕事にならない。
  • 最近、物忘れが多くなったような気がする。

そんな感覚ありませんか?

慢性疲労の検査

慢性疲労で病院に行くと、大抵、副腎や甲状腺の機能の検査が行われます

稀に、血中のビタミンB群の値が調べられたりします。

副腎疲労や甲状腺機能低下、そしてビタミンB群欠乏の全てが慢性疲労と関係しているからです。(甲状腺機能低下症の検査については、『甲状腺機能低下症|(1)こんな症状ありませんか?検査の見方と間違えられやすい病気』をご確認ください。)

でも、逆に、それ以上の検査が行われることもあまりありません。

通常の検査をしても原因が分からなかったら

もし上記した検査でも慢性疲労の原因がわからなかったら、コリン(ホスファチジルコリン)の値を調べてみてもらってはいかがでしょうか。

何をしてもとれない慢性的な疲労は、コリンから造られるホスファチジルコリンと呼ばれる脂質の低下あるいは不足が原因していることがあるんです。

(裏付けとなっている研究論文は最後に参考文献として一覧にしています)

ホスファチジルコリンとは

体内で、脂肪がエネルギーとして利用されたり貯蔵されるためには、脂肪はタンパク質と結びつく必要があります。この時、脂肪とタンパク質を結び付けてくれるのがホスファチジルコリンです。

人体に必要な脂肪です。脳、腎臓、肝臓の健康な細胞の中に多く存在しています

ホスファチジルコリンは、親水性の頭部と疎水性の尾部を持っている特殊なリン脂質で、親水部にコリンが、疎水部に2つの脂肪酸が結合しています。

その疎水部に結合する2つの脂肪酸の種類(例えば、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸など)の組み合わせで、様々な種類のホスファチジルコリンが存在します

ホスファチジルコリンが不足すると

体内のホスファチジルコリンが不足すると、次の様な症状/不調が現れます。

  • 細胞膜の正常な働きの喪失
  • 血管内の脂質プラークの沈着
  • 動脈硬化
  • 悪玉コレステロールの沈着
  • 疲労
  • 免疫力低下
  • 不眠
  • 糖尿病

などです。

ホスファチジルコリンは案外身近にいる

ホスファチジルコリンなんて、聞き慣れない言葉ですから馴染みのない物質のように感じるかもしれませんが、ホスファチジルコリンは、案外、私達の身近にいます。

例えば、レシチンです。

レシチン

昔は、ホスファチジルコリンとレシチンは同じものとして扱われていました。でも、レシチンは、たくさんあるホスファチジルコリンのひとつです。

レシチンは卵黄を意味するギリシャ語に由来している名称です。

ですから当然、食品では、卵黄に多く含まれています。大豆芥子とうもろこしひまわりの種にも比較的多く含まれています。

コリンは食事からしか得られない

ホスファチジルコリンの元となるコリンは、体内で造ることができず食事からしか得ることのできない栄養素です。

また、コリンは水溶性の栄養素です。ビタミンB群と同じ様に考えられることの多い栄養素ですが、正式にはまだビタミンB群の仲間入りはしていません。

牛肉牛乳大豆などに多く含まれていて、卵には大豆の約3倍弱のコリンが含まれています。

コリンは、記憶やエネルギーに関係している神経伝達物質アセチルコリンの材料となります

コリン不足が続くと臓器機能不全に

コリンが十分に含まれていない食事をしている人は、臓器機能不全を発症する可能性があることが報告されています。

低コリン食を食べ続けてもらった57人の被験者に、最大42日で、臓器機能不全が起こったことが報告されています。1か月ちょっとコリンが不足しただけで、怖いですね。

コリン不足はこんな病気も引き起こします。ご参考まで以前『IN YOU』に提供した記事をリンクしておきます。『その立ちくらみの原因、高い死亡率も認められる「起立性頻脈症候群」かもしれません。食事からできるPOTS(起立性頻脈症候群)の改善方法とは。

コリンは肝臓でホスファチジルコリンになる

コリンは、PEMT (ホスファチジルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素)という酵素を介して、肝臓でホスファチジルコリンになります。

PEMT酵素の働きには、PEMT遺伝子が関係しています。もちろん、この遺伝子だけが関与しているわけではありませんが、重要な役割を担っています。

PEMT遺伝子

このPEMT遺伝子にSNP (スニップ)があると、

  • コリンが脳に到達できない
  • ホスファチジルコリンの産生が遅くなる

などによって、細胞膜の修復が遅れ、エネルギーレベルに影響が現れます。

慢性疲労や認知症の原因がSNPだと気づかれないまま、誤診され、何年も誤った治療が行われてしまうケースもあるようです。

SNP(スニップ)|DNAの塩基配列(A、T、G、Cの4種類の並び)のうち、1個の塩基が他の塩基に置き換わっているものを指します。ヒトの塩基配列は99.9%同じですが、0.1%に差異が存在していて、この差異が私達一人一人の姿形や能力の違いとなって表れます。このうち1塩基の違いが、疾患へのかかりやすさや、薬への応答性に関係していることが分かってきています。

ホスファチジルコリンの作用

ホスファチジルコリンには、様々な作用があることが報告されています。

乳化作用

ホスファチジルコリンには、乳化作用があります。乳化というのは、水と油を結合させることです。

乳化作用を利用している身近なものと言えば、洗剤です。

肉料理をした後の脂でギトギトになったフライパンに少し水を注いで、そこに洗剤を1-2滴垂らすと、脂がすーーーと、洗剤から遠のいていくように見えます。洗剤は、水と脂を結合させて、乳白色の泡となって綺麗に脂を洗い流してくれます。それが乳化です。

美容整形のリポリーシス

ホスファチジルコリンのこの性質を利用して、美容整形では、ホスファチジルコリンを脂肪溶解剤として使用して、皮下脂肪を除去する施術が行われています。「注入脂肪分解・リポリーシス」と呼ばれる方法です。

体の特定部位の脂肪にホスファチジルコリンを注射することで、そこの脂肪を溶かして消すのです。

食品添加物の乳化剤

卵黄のレシチンは「卵黄レシチン」、大豆は「大豆レシチン」と呼ばれて、食品添加物しとして使用されているのを見たことがあるのではないでしょうか。

添加物としてのレシチンは、油と液体を分離させないための乳化剤として使用されています。アイスクリームサラダドレッシングマヨネーズなどによく使われています。

最近では、和菓子の大福などに用いられているのも見かけます。お餅に油と乳化剤を混ぜることで、固くなってしまうことを防ぎ、柔らかい状態を長持ちさせるためではないかと思います。

余談ですが、マヨネーズはそもそも卵黄を使って作るのですから、わざわざ更に乳化剤を添加しなくてもいいのにと、統合食養のヘルスコーチとしては思わずにはいられません。。

コレステロールの正常化

ホスファチジルコリンは、血液中のコレステロール値を正常化すると考えられています。中性脂肪値を安定させたという報告もあります。

ホスファチジルコリンは美容整形で皮下脂肪を溶かすのですから、食べることで高脂血症(血液中の高いコレステロール値)を改善することには納得感があります。

また、高コレステロール食とホスファチジルコリンを一緒に摂った場合、

  • 動脈硬化と関係していると考えられているアポリポタンパク質A
  • アルツハイマー病との関係が示唆されているアポリポタンパク質E
  • 免疫機能と関係していると考えられているアポリポタンパク質B

のいずれも変化しなかったことが報告されています。善玉と悪玉コレステロールの割合にも変化が見られなかったとのことです。

記憶力の改善

前述した通り、ホスファチジルコリンは、神経伝達物質のアセチルコリンを造るために使われます。

アセチルコリンは、神経細胞の外側を潤滑にし、神経細胞間/シナップス間の神経信号の移動をスムーズにする役割をもっています。

脳内のアセチルコリンの不足は、記憶喪失につながる他、アルツハイマー病との関係が示唆されています。

双極性障害の改善

双極性障害の人の脳内で、アセチルコリンが不足すると躁状態が起こることが示唆されています。

被験者が少ない研究ですが、1日15mgから30mgのホスファチジルコリンの摂取によって、躁状態の発生頻度を減少できたことが報告されています。

体内でホスファチジルコリンが不足する理由

ホスファチジルコリンが不足する原因には、次の様な事柄が考えられます。

  • コリン不足(偏食などによって、コリンが含まれている食品を十分に食べていない)
  • 良質な脂質不足(パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などを十分に摂っていない)
  • 肝機能が弱っている
  • SNP(遺伝子変異)がある

ホスファチジルコリンを不足させないためには

コリンを多く含む食品

冒頭で紹介した、コリンを多く含む、大豆ひまわりの種牛肉とうもろこしなどを日々の食事に偏りなく加ええることが大切です。

パルミチン酸/オレイン酸/リノール酸を含む食品

  • パルミチン酸|飽和脂肪酸です。お肉(牛、豚、鶏など)の脂に多く含まれています。
  • オレイン酸|一価不飽和脂肪酸(オメガ9)です。種油(ごま・ブドウ・オリーブ)や牛の脂に多く含まれています。
  • リノール酸|多価不飽和脂肪酸(オメガ6)です。ナッツ油・種油、ナッツ、シーズ(種)など植物性の油に多く含まれています。

ホスファチジルコリンのサプリメント

ホスファチジルコリンそのものを直接摂取しても慢性疲労が改善することが報告されています。

『栄養ジャーナル(the Nutritional Journal)』に掲載された、ホスファチジルコリンが中年女性の疲労感を改善するかを検証した研究で、大豆レシチンのサプリメントが用いられました

それぞれライフスタイル、循環器の状態、精神状態等が異なる、疲労感を訴えている閉経後の40歳から60歳の女性96名が被験者となりました。

女性達は、次の3つのグループに分けられ、2か月間の観察が行われました。

  • グループ1:1,200mgのホスファチジルコリン入りの錠剤を毎日摂取(32名)
  • グループ2:600mgのホスファチジルコリン入りの錠剤を毎日摂取(32名)
  • グループ3:プラセボ(疑似薬)を毎日摂取(32名)

実験後の疲労感の検証には、運動検査は行われず、質問票に回答する形式が採られています。

サプリメントを飲んだ2つのグループ共に、実験開始時と比較して疲労感が改善していました。

容量の多いサプリメントを飲んだグループの結果が最もよく、単に元気になったというだけでなく、下の血圧と心臓足首血管指数が改善したことが報告されています。

サプリメントを購入する際の注意点

ホスファチジルコリンは、サプリメントとして購入することができます。

遺伝子組換え原料でないことを確認する

でも、サプリメントになっているレシチン/ホスファチジルコリンは、遺伝子組換えされた大豆から抽出したレシチンを使用しているものがほとんどだと聞きます。

ひまわりの種から抽出したレシチンを使っているものもありますが、遺伝子組換えされていないことを確かめてから購入する必要があります。日本の食品表示規制の下では、原料の形が残っていない場合にはそれを表示する義務がないことから、ひまわりの種から抽出したレシチンが遺伝子組換えか否かを知るには、メーカーに問い合わせる必要があります。

ホスファチジルコリンはほどほどに

動脈硬化を悪化させる可能性

ここまで、ホスファチジルコリンの良い作用についてばかり記載してきましたが、体内でホスファチジルコリンが過剰になると、それもまた大きな問題を起こします。

腸内細菌の中には、コリン/ホスファチジルコリンを、動脈硬化を悪化させる物質に変換するものがあることが発見されています。そのため、必要な成分ではありますが、多ければ多いほど良いわけではないことも知っておいてくださいね。

腸内細菌へダメージを与える可能性

レシチンは、乳化剤であることもお忘れなく

レシチン/ホスファチジルコリンの過剰摂取による腸内細菌への悪影響も報告されていますので、むやみにサプリメントで摂取することはやはりお勧めしません。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

最近のあなたに次の様な心配があるのなら、まずは、ちゃんと病院で検査を受けてください。

  • 慢性疲労がある
  • 物忘れが多くなった
  • 甲状腺機能低下ではないか心配
  • 副腎疲労ではないか心配

甲状腺機能低下症や副腎疲労でないことを確かめることが重要です。

症状が似ていても、原因が異なれば、改善のための食事療法は異なります

もしコリン不足が原因なのであれば、日々の食事にバランスよく、良質な油と、大豆や卵などを取り入れてください。

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング