サステナブルなプラネタリーヘルスに向けて|ネイチャーと東大の共同SDGsシンポジウムを拝聴

2024/02/28/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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科学的な論文の発表サイトとして有名な『ネイチャー』(シュプリンガーネイチャー社)と東京大学がコラボで今回5回目となる、プラネタリーヘルス(地球の健康)に関するシンポジウムをオンライン視聴しました。

本当は、直接、会場で参加したかったのですが、この企画を知った時には、もう既に、会場は満席で申し込みができなかったのです。

会場100名は満場で、オンライン視聴登録者も80か国1,000人以上になったそうです。

日本語の同時通訳つきでしたが、全て、英語で行われたシンポジウムでした。

なお、当日のスライドや映像や画像は使用不可とのことなので、登壇者の紹介画像だけ掲載しています。

統合食養学は、ホリスティック哲学に則った新しい栄養学です。ホリスティック哲学の定義のひとつには、「身土不二(しんどふぢ)」、つまり

私たちは孤立に存在しているのではなく、
環境全てとつながった存在である

というものがあります。そのため、ホリスティック・ヘルスコーチである私にとって、プラネタリーヘルス(地球の健康)は、すなわち、私たちの健康とイコールですから、このシンポジウムをとても楽しみにしていました。

開会のあいさつのおひとりめは、東京大学の未来ビジョン研究センター長の福士謙介先生でした。

これまでの200年の間に、人間が進化し文明を築く過程で、地球の健康や生物、生態系まで変化させてきてしまったこと、地球の健康を保全していくためには、人間が変わる必要があること、総合的なアプローチが必要であること、生物多様性は人類が存続していくための礎石であることなどについてお話されました。

開会のあいさつのお二人めは、シュプリンガーネイチャー・ジャパンのアントワーン・ブーケ社長でした。

2023年にネイチャーで発表された研究論文の約20%がSDGsに関連したテーマだったそうです。今後も増えていくことを期待したいですね。

基調講演のおひとりめは、長崎大学の渡辺千保先生でした。

「プラネタリーヘルスって、何?なぜ?どうやって?」というお題でお話してくださいました。

人類の営みが生む、大気汚染、海洋汚染、それによる気候変動、生態系の破壊、生物多様性の減少、感染症の拡大、そして飢餓などを危惧し、地球環境の保全への意識が高まり、2014年に初めて「プラネタリーヘルス」という言葉が、研究論文に用いられることとなったとのことです。

プラネタリーヘルスの定義には、次のような、いくつか様々なものがあるそうです。

  1. 「人類の健康と生態系の健康」
  2. 人類と地球上の全ての生物の健康に対して、人類による地球の自然環境破壊が及ぼす影響について分析し言及する問題解決指向で分野横断的な社会運動
  3. 「新しい科学的で専門的な分野」

WHOやFAOなどは、プラネタリーヘルスとは、「One Health」と定義しています。

人類の健康、生物の健康、生態系の健康と区別するのではなく、それらはすべて同じもの、ひとつの健康であるということを意味しています。

人類と環境が相互依存的だということは自明であるのに、なぜ、今、プラネタリーヘルスに注目が集まっているのか・・・

それは、今、人類による影響が強くなり過ぎてしまった

Anthropocene=人新世(じんしんせい)

と、いう時代に地球の歴史が入っているからだとご説明されました。

人類の生活が便利で豊かになるほど、環境への負荷が高くなっていくというトレードオフ関係が存在することが本質的な問題であること、そして、SDGsの17の目標間においても、トレードオフの関係にあるものが存在していることなどを説明してくださいました。

興味深かったのは、気候変動に対する対策に重きを置くと、生物多様性にとってネガティブな結果を生じさせるものがいくつか発生するが、生物多様性の保全に対する対策に重きを置くと、気候変動にとっても良い結果を生むというシミュレーション結果です。

気候変動対策も生物多様性対策も同じようなもののように漠然と考えていましたが、厳密に分析すると、ひとつひとつの施策による影響が異なるという結果に、地球はやはりホリスティックなのだと、当たり前のことに感動しました。

また、地球環境に対して人類が侵してはならない境界が9つあるそうですが、そのうち6つの境界(1~5、9)を人類は既に大きく侵害してしまっているということでした。

  1. 気候変動
  2. 生物圏の完全性
  3. 土壌変動
  4. 淡水変動
  5. 生化学物質の流動性
  6. 海洋の酸性化
  7. 大気中の煙霧質負荷
  8. 成層圏のオゾン層の欠乏
  9. 新規の個体

このまま何もしなければ、2070年までに人類が地球上で住める場所は、現在の5分の1にまで減少してしまうだろうとのことです。

達成しなければならない3つのポイントとして、次の事柄を挙げられていました。

  1. 人類だけでなく他の生物を含めた地域変化と地球全体における変化の両方を認識する
  2. 現在の生活環境の快適さを追求することで、次世代の生活環境を損なうことがないよう、次世代への影響を考慮した解決策を考える
  3. 場所と時空において、部分最適ではなく、全体最適を目指す

そのために克服すべき、SDGsの目標間の関係性や対立性などについて説明されたのち、具体的な解決策の案を複数さまざまな視点からご紹介くださいました。

また、先住民族の次のような思考から学ぶ点が多いことを指摘されました。

  • 人間中心的な思考ではなく、自然環境中心の思考
  • 直線的で還元主義的な機械的思考ではなく、ホリスティックで全体指向のネットワーク型思考

長崎大学では、そうしたプラネタリーヘルスに関する教育を「プラネタリーヘルス・アライアンス(同盟)」として始めているとのことでした。同様の取り組みが20か国52の組織で行われているとのことです。

基調講演のお二人めは、ネイチャー誌の編集長のマグダレーナ・スキッパー氏でした。

One Planet, One Health
ひとつの惑星には一つの健康しかない

私たち人類は、地球の一部なのではなく、
私たちと地球は一蓮托生、
私たちはひとつの存在なのだ
We are One

と、冒頭に強調してお話されました。

そして、SDGsの現在の進捗状況はあまり芳しくなく、このままでは、2030年までに達成される目標はひとつもなく、達成度は15%程度にとどまる見通しだと説明されました。

そして、気候変動がいかに地球の健康(プラネタリーヘルス)を蝕んでいるか、生物多様性なくしては地球の健康は成り立たないこと、食糧の生物多様性の喪失、気候変動と人類の疾患との関係などについて、ネイチャーで発表された研究論文によって確認された事象を紹介されました。

例えば、気候変動によって昆虫や細菌類の生息地が変化し、その結果、昆虫や細菌が媒介する疾患の世界分布が変化してきているとのことです。

また、気候変動が身体的な疾患(例、心疾患など)を増加させるだけでなく、精神疾患の増加にも関係していることを挙げられました。特に、若い世代で「気候不安症(Climate Anxiety)」と呼ばれる精神疾患が増えていることを指摘されました。

プラネタリーヘルスは、クリーンエネルギーなくしては達成できないこと、また、プラネタリーヘルスの回復・維持は、基本的人権であるべきだとの認識を示されました。

SDGsの取り組みは、いまだ曖昧ではあるものの、それが現在の人類にとっての最適解である以上、取り組みを持続されていかなければならないと結びました。

東京大学のキム・ユンヒ准教授は、猛暑による健康リスクについて日本でのケーススタディを踏まえたお話をされました。

例えば、猛暑に際しエアコンを使用することが国から奨励されたものの、人間の健康を守るその行為は、環境にとっての負荷となる(使用電力の増加による気候温暖化加速)ため、人類と環境の両方に良い解決策について、科学はまだ模索の途中にいることなどお話をされました。

聖路加国際大学の西信雄先生は、プラネタリーヘルス・ダイエットについてお話されました。地球にやさしい食事方法のことです。

プラネタリーヘルスダイエットは、2019年にランセットが発表した、地球環境への負荷が小さい食材とバランスによる食事の推奨です。

現状の人類の平均的な食事は、タンパク源を牛・豚などの家畜肉に、炭水化物源をでんぷん質の高いジャガイモなどに依存し過ぎていることが、地球環境にとって大きな負担となっていること、そのため、それらを制限し、野菜や果物、全粒穀類、豆類、魚を多く食べることを推奨しています。

2003年から2015年までのたった13年間の間にも、日本人の食の傾向が大きく変化し、魚と野菜離れが顕著になり、一方で、パン、乳製品、肉と油の摂取量が大幅に増加しているグラフを示され驚きました。

また、日本人のどの年代の人も、プラネタリーヘルスが推奨している量よりも多く食べ過ぎていることも示されました。

ただ、ソフィアウッズから一言付け加えておくと、ランセットのプラネタリーヘルス・ダイエットのいくつかの制約は、あくまでも地球環境のためのものであって、人類の健康を維持するためには不足や偏りがあるという指摘が栄養学分野からあります。

また、プラネタリーヘルスダイエットについては、2021年に開催された「東京栄養サミット」をご参照ください。

広島大学の鹿島小緒里准教授は、広島で起こった台風による洪水災害による地域住人の健康変化についてお話をされました。

特に、災害地域における認知症件数が、洪水災害のない地域と比較して、洪水災害後に大きく増加していることがグラフで示され驚きました。

こうした課題を解決するために、組織・地域・分野横断的に取り組まれているPHAI(Planetary Healthy Aging Index、プラネタリー健康的な加齢指標?)というプロジェクトのご紹介をされました。

最後は、JICAの西村恵美子課長が、JICAによる取り組みについてお話されました。

その後、パネルディスカッションが行われました。私は残念ですが、用事があり拝聴することができませんでした。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

今回、SDGsの目標への取り組みには、分野・組織横断的なアプローチ、ホリスティックな視点が必要であることが強調されていたことによって、「私たちは環境全てとつながった存在である」というホリスティックな概念を食事やライフスタイルに取り入れてきた統合食養学のアプローチが、現代の科学的な見地からも、地球規模の健康においても支持されることが確認でき、とても嬉しい学びとなりました。

もしおひとりで取り組むことに不安や難しさを感じるのでしたら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

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