【ビタミンE】あなたのビタミンEはコンプリートですか?

2015/11/11/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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ビタミンEは、アンチエイジングや抗酸化ビタミンとして人気のビタミンです。最近の研究では、脳の健康にも良いことが報告され、更に注目が集まっています。

ビタミンEの食事摂取基準(2020)

厚生労働省は、ビタミンEの一日の摂取基準を、αトコフェロールの値でのみ発表しているので、ここでも、その値を掲載します。いずれも成人の基準です。

  • 女性: 目安量:5.0~6.5mg、限界量:650~700mg
  • 男性: 目安量:6.0~7.0mg、限界値:850~900mg

ビタミンEの機能

生殖機能の健康

ビタミンEは、マウスの妊娠に必要な食事因子として1922年に発見されたビタミンです。

ビタミンEの成分のひとつ、「トコフェロール」の「トコ(Tocos)」は、ギリシャ語で「子供を産む」、「フェロ(Phero)」は「力を与える」という意味を持っています。

つまり、トコフェロールは子供を産む力を与えるもの」という意味です。

ヒトにおいても性ホルモン(男性ホルモンや女性ホルモンの合成や分泌に関与し、健康的な生殖機能の維持にとって必要なビタミンと考えられています。

ビタミンEの不足は、不妊症や流産の原因になります。

抗酸化作用

ビタミンEは、食事から摂った脂肪が体内で酸化し、過酸化脂質になることを抑制します。

過酸化脂質は、細胞死を早めたり、細胞を殺したり、異常細胞(がんや腫瘍)の発生と増殖に関与している物質です。

また、野菜の細胞壁に含まれている不飽和脂肪酸の酸化も予防し、過酸化脂質の発生を阻止するため、サラダを食べる時には、ビタミンE豊富なオリーブ油やナッツ類と一緒に食べると効果的です。

血管拡張作用

血管を収縮させる神経伝達物質の生成を抑制します。

毛細血管が拡張されることで血行が促進され冷えが解消されます。

がん/老化との関係

ビタミンEは、体内を酸化から守り予防してくれるため、がん予防や老化予防(アンチエイジング)になると考えられています。

心疾患/脳卒中との関係

ビタミンEは、コレステロールの酸化も抑制します。動脈硬化は、コレステロールの酸化によっても起こります。

血管を拡張することから、血圧を下げる効果が期待できます。

MASHは、従来、「非アルコール性脂肪肝(NASH)」と呼ばれていた疾患で、名称が2024年に「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」に変更されました。MASLDは「代謝異常関連脂肪性肝疾患」です。

現在、MASLD/MASHを適応症とする薬は存在していません。

ビタミンEを用いたプラセボ対照ランダム化比較試験のみを対象にマレーシア大学が行った論文のシステマチックレビューとメタ解析は、次のことを報告しています。

なお、ビタミンEの投与期間は、24週以上と24週未満のいずれにおいても有意な改善が認められたこと、ビタミンEの投与量は、400~800IU/日でした。

ALTは、肝臓の細胞で作られる酵素の一種です。肝臓の細胞が壊れると血液中に大量に放出されるため、血液検査で、高いALT値は、肝臓に問題や疾患がある可能性を示します。

ビタミンEの摂取によって、ALTが有意に改善することが示されています。特に、MASLDのグループで有意なALTの改善が認められています。ただし、MASHのグループでは、ALTの有意な改善差は見られませんでした。

ASTも肝臓の細胞で作られる酵素の一種です。肝臓の細胞が壊れると血液中に大量に放出されるため、血液検査で、高いAST値は、肝臓に問題や疾患がある可能性を示します。

ビタミンEの摂取によって、ASTが有意に改善することが示されています。ASTは、MASLDとMASHの両方において有意な改善が認められています。

肝臓脂肪、小葉内炎症、肝細胞の空胞変性のいずれもビタミンE投与群で有意に改善することが示されています。

一方、肝線維化の有意な改善は認められませんでした。

プラセボ群と比べて、ビタミンE投与群のMASH消失率は、リスク比で1.9倍と顕著に高かったことも示されています。

ビタミンEの効果の真偽

ビタミンEの効果には、さまざまな報告があり、中には「効果がなかった」、あるいは「悪影響があった」とする研究報告もあります。

なぜビタミンEに効果があったとする研究と効果なかったとする研究が存在してしまうのか、近年、ビタミンEについて詳細な分析がなされ、その原因と考えられる事実が判明しています。

天然ビタミンEには同族体が8つある

同族体というのは、同数&同種の原子をもっていて、組成式が同じ、でも、構造が異なる物質のことです。

ビタミンEの8つの同族体

ビタミンEには、次の4つの「トコフェロール」と、同じく4つの「トコトリエノール」が存在します。

  1. アルファ(α
  2. ベータ(β
  3. ガンマ(γ
  4. デルタ(δ

4つの「トコフェロール」と4つの「トコトリエノール」の8つあってコンプリート(完全)なビタミンEです。

アルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)、デルタ(δ)には、それぞれ異なる作用があることも明らかになってきています。

例えば、ビタミンEの抗ガン作用は、主に、γ(ガンマ)トコフェロールの作用によることが判明しています。特に、乳房細胞の保護作用(乳がん予防効果)があることが明らかにされています。

つまり、α(アルファ)トコフェロールしか含んでいないビタミンEのサプリメントには、あまりがん予防効果は期待できないことになります。

トコフェロールとトコトリエノール

トコフェロール

サプリメントに含まれているビタミンEは、このトコフェロールです。しかし、4つあるトコフェロールのうち、アルファ(α)のみが含まれています。8つある同族体の1つだけです。

理由は、昔、行われた人体に必要な栄養素の調査によって、ヒトの血液中や細胞組織中から発見されたビタミンE がほぼαトコフェロールのみだったことに由来します。その結果、ヒトには「αトコフェロールのみが必要。8つ全部は必要ない。」と判断されたためです。

厚生労働省の食品摂取基準もαトコフェロールの基準が設定されているのみです。

トコトリエノール

高い高酸化力をトコトリエノールはもっています。

トコフェロールよりも50%から70%も強力に脳や肝臓の細胞に浸透し、細胞内のミトコンドリアを守っていることが最近の研究で明らかにされています。

また、アルツハイマー病の改善に効果を示すことも報告されています。(参考:『アルツハイマー病・認知症(2)予防と改善の食事(つづき)』)

しかし、文部科学省が公表している食品成分表には、4つのトコフェロールの含有量は掲載されていますが、トコトリエノールについての記載はどこにもありません

ビタミンEのサプリメント

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ビタミンEのサプリメントの問題は、αトコフェロールしか含んでいないということに留まりません。

ビタミンEのサプリメントには、天然のαトコフェロールを用いたものと、化合物のαトコフェロールを用いたものが存在しています。

自然に存在する天然の αトコフェロールは、次のどちらかで表記されます。

  • d-αトコフェロール
  • RRR-αトコフェロール

一方、化合物である合成 αトコフェロールは、次のように表記されます。市販のビタミンEのサプリメントの99%は、こちらです。

  • dl-αトコフェロール

合成ビタミンEの問題

dl-がついたビタミンE、つまり、合成されたビタミンEは、それが α であっても γ であっても、細胞が栄養素として認識せず、吸収されることなく体外に他の老廃物や有害物質といっしょに排出されてしまうことが明らかにされています。

つまり、ビタミンEのサプリメントの99%は、肝臓に負担をかけているだけで、体にとって何のメリットも生んでいないのです。

「ビタミンEには効果がなかった」と報告している臨床研究では、天然のビタミンEではなく、サプリメントのビタミンE、つまり dl-αトコフェロールが用いられていたことが判明しています。

天然ビタミンEのサプリメントの問題

では、天然のd-αトコフェロールなら安心なのでしょうか?

実は、「ビタミンEは、健康に悪影響を生む」と報告している臨床研究の多くが、天然のビタミンEのサプリメント、つまり、d-αトコフェロールを用いていたことが判明しています。

天然なのに?なぜ?

d-αトコフェロールは天然なので、体内に吸収されます

しかし、8つあるべきビタミンEの1つでしかないことから、d-αトコフェロールのみを大量に摂り続けると、体は残りの7つの同族体が不足していると判断し、欠乏症の症状を表すことが明らかにされたのです。

天然のビタミンEは吸収されるからこそ、ひとつのみに偏った摂取の仕方をすると、健康に問題が起こってしまうのです。

ビタミンEは食品から摂る

ビタミンEの抗酸化作用を十分に享受するためには、人工か天然かに依らずサプリメントからではなく、食品からコンプリートな状態で摂ることが不可欠です。

ですから、γトコフェロールに抗がん作用があるからといって、それだけをサプリメントとして摂ればいいというものでは、決してないということも覚えておいてくださいね。

ビタミンEの多い食品

文部科学省の食品成分表にはトコフェロールの含有量しか記載がありませんから、その合算値で表を作成しています。

グループ分けするとこんな感じです。

ビタミンEの多い果物

参考:

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング