バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
ココナッツオイルとオリーブオイルのどちらを使っていますか?
近年、ココナッツオイルは、含まれている中鎖脂肪酸(MCT)が体脂肪や悪玉コレステロールを減らし、心疾患予防に役立つとの主張や脳機能をサポートしてアルツハイマー病予防になるという主張によって、熱狂的なフォロワーを増やしてきましたよね。
確かに、動物由来の脂質に対して、植物由来の油の優位性を示した研究はたくさんあります。特に、心臓の健康に対する様々な油の影響について研究した論文は非常に多く存在しています。
中でも、多くの科学的な裏付けを伴っているのは、エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル(EVOO)とフラックスシードオイル(亜麻仁油)です。
もちろん、それ一つで、全ての病気に良いといった万能薬のような油は、今のところ存在しませんが、お料理に使うとしたら、エキストラ・ヴァージン・オリーブオイルとココナッツオイル、どちらの油を優先すべきだと思いますか?
(なお、フラックスシードオイルは加熱にむきませんので、今回除外します)
エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル
オリーブオイルには様々な品質が存在しています。
オリーブオイルに限らず、一般的な植物油は、オイルを採るための種あるいは実にヘキサン(ベンジンの主成分で有毒)と呼ばれる化学薬品を使用して溶かしだす方法がとられます。ヘキサンは熱で揮発するため、一般的な植物油は加熱処理されヘキサンを除去した後に販売されています。
普通の「オリーブオイル」としか表記のないものや、日本で「ピュア」などと表記されているオリーブオイルは全てこの方法で採った油です。加熱処理されているので、不飽和脂肪酸の成分は失われ、トランス脂肪酸の含有量が多くなっているはずです。また微量のヘキサンが残留している可能性は否定できません。
一方、ヴァージン・オリーブオイルは、ヘキサンを使用せずに、物理的にオリーブを圧搾して採るオイルです。ヘキサンを使用しませんので、当然、加熱処理も行われません。そのため、オリーブの香や成分がそのままの状態で残っています。
その、ヴァージン・オリーブオイルの中でより品質の高いものが、エキストラ・ヴァージンと呼ばれるオリーブオイルです。特に、冷温圧搾(コールドプレス)されたものは最高品質です。
このエキストラ・ヴァージン・オリーブオイル(EVOO)を使ったヒトを対象とする調査研究が既に多く行われています。実際に心疾患、特に心筋梗塞と脳卒中のリスク低下に対して、ヒトへの有効性が高いことが証明されています。
『アメリカ心臓病学会誌(the Journal of the American College of Cardiology)』に掲載された最近の論文では、心疾患や生活習慣病の既往歴のない6万人以上の女性と3万人以上の男性を24年間追跡調査した結果を報告しています。
様々なライフスタイルや食事習慣の違いを調整した後のデータを比較すると、
1日に7g以上(大さじ半分以上)のEVOOを摂取していた人達は、EVOOを使用しない人達と比較して、心血管疾患リスクが14%低く、冠状動脈性心臓病リスクは18%低かったことが報告されています。ただ虚血性脳卒中では相違は見られなかったとのこと。
また、1日に使うマーガリン、バター、マヨネーズ、または他の油脂の5gをEVOOに替えるだけで、心血管疾患と冠状動脈性心臓病の発症リスクが5%~7%低下できるとのことです。
オリーブオイルに含まれている抗酸化物質(ポリフェノール)に抗炎症作用があり、心疾患発症リスクを抑制しているのではないか、更には、脳機能や他の臓器の健康によい働きをしているのではないかと考えられていますが、オリーブオイルのポリフェノールの働きについては、もっと多くの研究による裏付けが必要なようです。
参考『聖書に「薬になる」と書かれているオリーブの葉がコロナウイルス予防になるかもしれません』
ココナッツオイル
ココナッツオイルにも様々な品質のものが存在しています。
かなり加工が進み精製され、他の成分が添加されてしまっているものもあれば、オリーブオイル同様に、エキストラ・ヴァージンと呼ばれるココナッツオイルがあります。
ココナッツオイル支持者は、ココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸(MCT)に効能があると述べます。また、ココナッツオイルに主に含まれているラウリン酸と呼ばれる脂肪酸が、体重やコレステロールの減少に対して特殊な働きをすると主張しますが、こうした主張を裏付ける信頼に値する研究報告がほとんど無いのが現状です。
2020年1月に発表された、メタ分析レポートは、
2019年6月までに、PubMed、SCOPUS、Cochrane Registry、Web of Scienceに掲載されたココナッツオイルに関する研究論文の中から、ココナッツオイルの摂取を2週間以上続けた場合のヒトへの効果を検証している研究のみを抽出し、PRISMA(システマチック評価とメタ分析で優先される報告事項)ガイドラインに従って評価を行っています。
結果、ココナッツオイルの摂取は、
- 悪玉コレステロールを10.47 mg/dL増加させ、
- 血糖値、炎症性マーカー、肥満の改善に対しても、特に有意な効果はない
と、結論づけています。
ココナッツオイルの支持者には残念なことですが、現在までのところ、「ココナッツオイルがダイエットに効く」とは言えないようです。
オリーブオイル vs ココナッツオイル vs バター
上記したメタ分析は2019年6月までに発表された論文を検証していますが、その後、2020年に入ってから発表された『生物医学ジャーナル(BMJ)』に掲載された論文には、ココナッツオイルに希望がもてる内容が載っていました。
この研究は、2019年にイギリスのBBCの呼びかけによって集まった生活習慣病や心疾患の既往歴のないロンドンに住む96名の男女(平均年齢60歳、98%白人、67%女性)が対象となりました。
- エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル
- エキストラ・ヴァージン・ココナッツオイル
- バター
の3種類のうちどれかひとつを約1か月間(4週間)、1日に50g食べ続けてもらい、その影響を比較しています。
悪玉コレステロール値
- バターを食べ続けた被験者で有意に上昇
- ココナッツオイルとオリーブオイルで差は生じなかった
善玉コレステロール
- ココナッツオイルを食べ続けた被験者で有意に上昇
善玉コレステロールに対する総コレステロールの比率
- バターで有意に上昇
- ココナッツオイルとオリーブオイルで差は生じなかった
体重、BMI、内臓脂肪、空腹時血糖、上の血圧、下の血圧
- 3種の油で有意な差は生じなかった
総論
- 飽和脂肪酸の含有量が多いココナッツオイルとバターは、不飽和脂肪酸の多いオリーブオイルと比較して、血中脂質への影響に大きな差があった
- しかし、ココナッツオイルはオリーブオイルに近い働きも見せていた
ただしこれは、あくまでもほぼ白人系イギリス人を対象とした時の結果であり、イギリス人の一般的な食生活の中での影響です。
研究者は、他の食材との相互作用などにも注目する必要があるのではないかと述べています。
なぜなら
油だけでなく食事全体で考えることの大切さと身土不二
例えば、「フレンチ・パラドックス」という言葉を生んだ現象、つまり、悪玉コレステロールを上昇させると言われているバターを多く摂っているのにも関わらずフランス人の心疾患による死亡率がヨーロッパの中で低いという事実や、
メタ分析で悪玉コレステロールを上昇させると報告されたココナッツオイルを食事に多く使用しているのにも関わらず東南アジアの国々の人達は、米国人と比較して心疾患による死亡率が低いという事実です。
(フレンチ・パラドックスについては、『「赤ワインは体に良いは本当?」~フレンチ・パラドックスに異議あり!』をご参照ください)
これらを鑑みると、単にどの油を使用しているかということだけでなく、食生活全般を見なければ、各油の善悪については、結論付けることはできないのではないかということです。
研究者は、フランス人も東南アジア地域に住む人達も、一般的に、日常的に多くの果物や野菜、特にフルーツを食べていることを挙げています。
更に、その油を搾取する植物が育つ地域(熱帯なのか地中海なのか、温帯なのか寒冷地なのか等)と、その油を摂取する人が実際に住んでいる地域との調和?整合性?によっても効果が違うのではないかという見方も科学者の間ではあるようです。
つまり熱帯地域で育つココナッツの油は、熱帯地域に住む人々の健康には良い働きをするが、北に住む人々の健康には特に良い働きをしないのかもしれないという見方です。確かに、ココナッツオイルは、日本でも冬には固形になってしまいますから、そうしたことも血管への負担に違いが現れるのかもしれません。
まだまだ研究の数が足りないことから確信的なことは言えないようですが、統合食養学(ホリスティック栄養学)が大切にしている地産地消、身土不二のアプローチをもしかしたら科学がそのうちに証明してくれるかもしれませんね。
オリーブオイルのヨーロッパ人、ココナッツオイルの東南アジア人、では、日本人の私達は、菜種油や胡麻油とか大豆油がもしかしたら体質に合うのかもしれませんね。
そうした研究を待ちたいと思います。
結局、オリーブオイルなのか、ココナッツオイルなのか
この2つの比較では、今のところ、ヒトを対象とした、信頼のおける健康効果が証明されているのはエキストラ・バージン・オリーブオイルです。キッチンの主役はEVOOにしておくのが安心です。
そして、時々、フレーバーを楽しむためにココナッツオイルを楽しむなど、使い分けるのがよさそうです。
ちなみに私のキッチンにある油は、
- オーガニック認証の冷温圧搾のエキストラ・ヴァージン・オリーブオイル
- オーガニック認証のエキストラ・ヴァージン・ココナッツオイル
- 有機栽培で冷温圧搾の菜種油
- 有機栽培で伝統製法のごま油
- グラスフェッド・バター
です。基本、なんでもオリーブオイルを使っています。
天ぷらは菜種油、中華系や和風はごま油、タイ風料理やデザート作りにココナッツオイルという感じに使い分けています。バターはたまにトーストに塗ったり、卵料理やムニエルなどに使う程度でしょうか。
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参考文献
- “Extra Virgin Olive Oil and Cardiovascular Diseases: Benefits for Human Health”, Cristina Nocella, Vittoria Cammisotto, Luca Fianchini, Alessandra D’Amico, Marta Novo, Valentina Castellani, Lucia Stefanini, Francesco Violi, Roberto Carnevale, Review Endocr Metab Immune Disord Drug Targets,2018;18(1):4-13. doi: 10.2174/1871530317666171114121533
- “Olive Oil Consumption and Cardiovascular Risk in U.S. Adults”, Marta Guasch-Ferré, Gang Liu, Yanping Li, Laura Sampson, JoAnn E Manson, Jordi Salas-Salvadó, Miguel A Martínez-González, Meir J Stampfer, Walter C Willett, Qi Sun, Frank B Hu, J Am Coll Cardiol, 2020 Apr 21, 75(15):1729-1739. doi: 10.1016/j.jacc.2020.02.036, Epub 2020 Mar 5
- “Randomised Trial of Coconut Oil, Olive Oil or Butter on Blood Lipids and Other Cardiovascular Risk Factors in Healthy Men and Women”, Kay-Tee Khaw, Stephen J Sharp, Leila Finikarides, Islam Afzal, Marleen Lentjes, Robert Luben, Nita G Forouhi, Randomized Controlled Trial BMJ Open, 2018 Mar 6, 8(3):e020167. doi: 10.1136/bmjopen-2017-020167
- “A COCONUT EXTRA VIRGIN OIL-RICH DIET INCREASES HDL CHOLESTEROL AND DECREASES WAIST CIRCUMFERENCE AND BODY MASS IN CORONARY ARTERY DISEASE PATIENTS”, Diuli A Cardoso, Annie S B Moreira, Glaucia M M de Oliveira, Ronir Raggio Luiz, Glorimar Rosa, Clinical Trial Nutr Hosp, 2015 Nov 1;32(5):2144-52. doi: 10.3305/nh.2015.32.5.9642
- “The Effect of Coconut Oil Consumption on Cardiovascular Risk Factors – A Systematic Review and Meta-Analysis of Clinical Trials”, Nithya Neelakantan, Jowy Yi Hoong Seah, Rob M. van Dam, 13 Jan 2020, doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.119.043052, Circulation, 2020;141:803–814
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング