バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
今回はあまり注目されていないけれども、私たちの体の中で重要な働きをしているビタミンKについてお伝えします。
良く知られている骨を造ったり、止血してくれる作用だけでなく、他にもいろいろやってくれていることが次第に判ってきています。
ビタミンKの食事摂取基準(2020)
成人の一日の摂取基準です。男女ともです。
- 目安量: 150μg
ビタミンKは、大量摂取による毒性が確認されていないので、上限値が設定されていません。
必要なビタミンKは3種類
ビタミンKには、11種の同族体があり、私たちの健康にとって重要なビタミンKは、次の3種類です。
- K1(フィロキノン)| 植物の葉緑素で作られます。緑の葉物野菜に多く含まれています。
- K2(メナキノン – 4)| 私達の腸内細菌が造ってくれる他、卵・豚肉・鶏肉・チーズなどに含まれています。
- K7 (メナキノン -7)| 納豆菌によって造られます。
ビタミンK3は毒
ビタミンK3(menadione、メナディオン)というビタミンKも存在していますが、K3は天然には存在しない合成のビタミンKです。毒性があるため日本では使用が中止されていますが、海外からサプリメントを購入される際にはご注意を。
ビタミンKの性質
ビタミンKは、脂溶性ビタミンのひとつです。ビタミンKが体内に吸収されるためには、胆汁酸が必要です。
3種類のビタミンKは、それぞれ次の挙動が異なります。そのため、体内で異なる生理活性に関わっていると考えられています。
- 腸内での吸収率
- 血液中にとどまっている時間
ビタミンKはリサイクルされる
ビタミンKの体内貯蔵量は、限られています。
そのため、酸化還元サイクルを通してビタミンKは何回も再利用されています。
抗血液凝固剤(ワーファリンなど)は、このビタミンKのリサイクルの仕組みを阻害することによって作用します。
ビタミンK依存性タンパク質
ビタミンKのサポートを必要とする酵素をビタミンK依存性タンパク質と呼びます。ビタミンK依存性タンパク質は、次の機能に関わっています。
- 血液凝固
- 骨代謝
- 血管の石灰化予防
- 様々な細胞機能の調整
例えば、グルタミン酸は、体内で γ(ガンマ)カルボキシグルタミン酸に変換されることで、カルシウムの体内吸収を促進します。
グルタミン酸が “カルボキシ” グルタミン酸になるように、タンパク質がカルボキシル基と結合することをカルボキシル化といいます。この、タンパク質のカルボキシル化に必要なのが、γ-グルタミルカルボキシラーゼ(GGCX)という酵素で、GGCX 酵素は、ビタミンKの助けを必要とするビタミンK依存性タンパク質です。
GGCX 酵素が触媒しているタンパク質は体内に約20種類あることが報告されています。
例えば、肝臓で作られる血液凝固因子のプロトロンビンや骨芽細胞で作られるオステオカルシンと呼ばれるホルモンもカルボキシル化を必要とします。
ビタミンKが不足すると、さまざまな不調が起こります。
ビタミンKの機能
血液凝固を助ける
ビタミンKは、血液凝固因子のプロトロンビンが、肝臓で造られる時に補酵素として働き、止血作用にかかわっています。
また、ビタミンK依存性タンパク質のGas6(増殖停止特異的タンパク質6)は、血小板のシグナル伝達と血管の恒常性を調整しています。血栓の形成、アテローム性動脈硬化、慢性炎症、がんの増殖などと関係している酵素です。
ただし、ビタミンK1とビタミンK2とでは、その血液凝固作用に次のような大きな違いがあります。
- ビタミンK1(緑色の野菜など)・・・血液凝固作用の持続時間は2~3時間
- ビタミンK2(肉類・卵・チーズなど)・・・血液凝固作用の持続時間は数日
ですから、抗血液凝固剤を処方されている人が注意すべきは肉・卵・チーズです。緑色のお野菜は、食事の時間とお薬を飲む時間をズラすことで、すべてを避ける必要はありません。
骨の形成を助ける
ビタミンDは、腸でカルシウムの吸収を助けます。そして、ビタミンKは、吸収されたカルシウムが骨に取り込まれる(骨の石灰化)を助けます。
ビタミンK依存性タンパク質のひとつプロテインSは、破骨細胞による骨の分解に関わっています。プロテインSが不足すると(ビタミンKが不足すると)、次のような異常が起こると考えられています。
- 骨壊死
- 視力障害
- 精子形成の欠陥
- 自己免疫異常
- 血小板異常
また、ビタミンKが不足しビタミンK依存性タンパク質のGGCXの活性が低下すると、骨の石灰化が滞ったり、軟骨組織の異常な石灰化が起こります。
ビタミンKの摂取量が多いほど骨折リスクが低くなることが報告されているため、日本では骨粗鬆症予防の治療薬としてビタミンKが処方されることがあります。(ビタミンKのサプリメントについては、後述をご確認ください。)
ただし注意すべき点もあります。詳しくは『ビタミンKが添加されたビタミンDのサプリメントを飲んではいけない理由』をご参照ください。
血管の石灰化を予防する
ビタミンKは、骨の石灰化を促進する一方で、血管の石灰化を予防します。
次のビタミンK依存性タンパク質は、様々な臓器の石灰化を予防してくれています。
- GRP・・・皮膚、血管組織
- MGP・・・軟骨、血管壁、皮膚の弾性繊維、ヒトの目の線維柱帯網など
線維柱帯網は、眼の角膜と虹彩が接する部分にある網目状の組織で、目に運ばれてくる老廃物を濾過する役割を担っています。そのため、ビタミンKが不足すると、目の下にクマができやすくなります。詳しくは『目の下のクマ』をご覧ください。
ビタミンKが不足すると、血管内でカルシウム沈殿物を抑制するいくつかのビタミンK依存性タンパク質が不活性化してしまいます。
心疾患予防と長生き
ビタミンKの摂取量が多い人ほど、心血管疾患関連の死亡リスクが22%、全死因による死亡リスクが15%低いことが報告されています。
ビタミンK摂取量と死亡率は逆相関している(摂取量が多いほど死亡率は下がる)ことも報告されています。
細胞機能の調整
ビタミンK依存性タンパク質のペリオスチンは骨の組織で合成され、皮膚や骨を含むほとんどの結合組織で発現し細胞接着や細胞移動と関係していると考えられています。
ビタミンK依存性タンパク質のGas6(増殖停止特異的タンパク質6)は、神経系全般と心臓、肺、胃、腎臓、軟骨に存在しています。Gas6は、多様な細胞機能に関係し、細胞増殖調整因子と考えられています。食作用、細胞接着、細胞増殖、細胞死の予防等に関与しています。
また、発育中の脳神経と老化中の脳神経系で重要な役割を果たしていると考えられています。
加齢性疾患との関係
疫学研究では、ビタミンK不足が次のようなの加齢性疾患と関連することが示されています。
- 骨粗鬆症
- 認知症
- 変形性関節症
- フレイルなど
前立腺がんとの関係
欧州がんと栄養の予測調査機関(EPIC: the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)の研究者は、ビタミンK2の摂取を増やすことで、前立腺がんリスクを劇的に35%程度まで抑制することができたと報告しています。一方で、ビタミンK1ににがん予防効果はなかったそうです。
ビタミンンK2の血中濃度が高いほど、前立腺がんの発症リスクが低下する他、前立腺がんを発症した男性の多くがビタミンK2欠乏だったことも報告されています。
この研究では、ビタミンK2そのものを投与しているのではなく、ビタミンK2を多く含む食品(乳製品と鶏肉)を多く食べている人を調査しているため、真にビタミンK2だけの効果なのかは不明です。
例えば、ビタミンK2を多く含む乳製品には、女性ホルモンのエストロゲン様の作用がある成分があり、女性ホルモン系の疾患(乳がん・卵巣がんなど)のリスクを高めると考えられています。そのため、そうした作用によって男性の前立腺がんリスクが低下したとも考えられます。それを裏付けるように、この研究では女性のがんに対しては予防効果がなかったことが報告されています。
肺機能疾患との関係
デンマークのコペンハーゲン大学病院とコペンハーゲン大学による24〜77歳のコペンハーゲン市民4,092人を対象にした大規模な調査が行われています。
その結果、血液中のビタミンK濃度が低い人では、肺の機能が低下しており、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘鳴を訴える人が多いことが明らかにされました。
ただしこの研究で因果関係が証明されたわけではないため、研究者はビタミンKの補給によって症状が改善するかを検証する研究が必要であるとしています。
うつ症状との関係
うつ症状とビタミンKとの関連性については、米国では成人女性、国内では高齢女性を対象としたアンケート調査によって示唆されています。
2024年の第24回日本抗加齢医学会では、東京大学大学院加齢医学講座講師の東浩太郎氏が、骨芽細胞で造られるオステオカルシンと呼ばれるホルモンがGGCX 酵素によって、十分にカルボキシル化されない状態の低カルボキシル化オステオカルシンとうつ症状に関連性があることを報告しています。
GGCX 酵素は、ビタミンK依存性タンパク質です。
ビタミンK欠乏の症状
ビタミンKが不足すると次のような症状が現れます。
- 簡単に青あざや出血が起こる
- 鼻血
- 歯茎の出血
- 血尿/血便
- タール便
- 月経血過多
など
なお、新生児がビタミンK欠乏となると、命に係わる頭蓋骨内部の出血(頭蓋内出血)が起きます。
ビタミンKが不足しやすい人
ビタミンKは多くを貯蔵できないものの、腸内細菌が造ってくれている他、ビタミンKのリサイクルの仕組みによって、普通の食事をしていて体内で不足することはめったにありません。
一般的にビタミンKが不足しやすい人には次のような特徴があります。
- ビタミンK拮抗薬を服用している人
- 肝臓障害や肝臓疾患がある人
- 炎症性腸疾患
- 脂肪吸収不全障害のある人
- 母乳のみで育つ乳幼児(母乳にビタミンKが少ないため)
- 母親が抗てんかん薬を服用している乳幼児
また、新生児は一般的にビタミンK不足に陥りやすいことも判っています。ビタミンKを造る腸内細菌、肝臓での貯蔵機能、ビタミンKのリサイクルの仕組みなどが未発達だからです。
サプリメントの服用
ビタミンAとビタミンEのサプリメントを高容量で服用すると、ビタミンKの作用が阻害されることが判っています。
- ビタミンA・・・ビタミンKの吸収を阻害
- ビタミンE・・・ビタミンK依存性タンパク質の活動を抑制
ビタミンKの多い食品
調理上の注意点
- 脂溶性のビタミンなので、水洗いなどによって失われることはありません。
- 空気と熱には安定的なので、加熱調理による損失は心配ありません。
- 紫外線には弱いので、食品を補完する際には気をつけましょう。
ビタミンK過剰摂取による副作用
日常生活で、食事によって過剰になることはありません。
また、市販のマルチビタミンには含まれていないことが多いので、マルチサプリメントで過剰になることもありません。
ビタミンKのサプリメント
ビタミンK2(メナキノン-4、MK-4)のサプリメントは、日本では、骨粗鬆症治療用として1日45mgの用量で処方/市販されています。厚生労働省は、これまでの安全性に問題はないことが証明されていて、この量を超えて服用した場合にも副作用が発生した例はこれまでに報告がないと、述べています。
しかし、米国食品医薬品局(FDA)は現在、いかなる形態のビタミンKも骨粗鬆症予防または治療への使用を許可していません。
さて、あなたはどうしますか?
参考まで『ビタミンKが添加されたビタミンDのサプリメントを飲んではいけない理由』もご確認ください。
ビタミンKのサプリメントと乳幼児の白血病
1990年初期に、新生児へのビタミンKの注射によって、小児白血病やその他の小児がんの発症を誘発するのではないかとの見解が発表されました。
そのことでビタミンKの補給を拒否する親が増え、新生児のビタミンK欠乏死が増えたことから、米国とスウェーデンで大規模な調査研究が行われています。
それぞれ54,000人と130万人の子供の医療記録が調べられ、小児がんと誕生時のビタミンK注射との因果関係を示す証拠がないことが発表されました。
また、小児がんの子供2,431人と健康な子供6,338人の症例対照研究の解析によっても、新生児へのビタミンK注射が小児白血病のリスクを上げたという証拠は見つかっていません。
医薬品との相互作用
下に記載する薬を服用している一般の人だけでなく、妊婦さんや授乳婦さんが下記の医薬品を服用すると、母体だけでなく、胎児と新生児の両方においてビタミンK欠乏症のリスク上昇をもたらす可能性が指摘されています。
抗血液凝固剤(ワーファリンなど)
血栓予防のために抗血液凝固剤を処方されている人は、医師からビタミンKが多く含まれている食品の摂取を控えるように指導されます。それは、ビタミンKの血液凝固作用が、医薬品の効果を阻害してしまう可能性があるからです。(参考『薬といっしょに食べてはいけない食べ物』)
抗血液凝固剤を服用している人のビタミンK推奨量は、1日に90~120μgまでとされます。
そのため、緑のお野菜を避けなければならないと思っている人が多いですが、先にお伝えした通り、ビタミンK1とビタミンK2とでは、血液凝固作用の持続時間に大きな違いがあります。
緑のお野菜を避けるよりも、動物性の食品を避けることの方が、ずっと効果があります。
一方で、抗血液凝固剤(ワーファリンなど)はビタミンKの作用を阻害するため、骨折率を上昇させることが報告されています。
広域抗生物質(セファロスポリンやサリチル酸塩等)
長期に渡る使用は腸内細菌を減らし、ビタミンK合成に支障をきたすだけでなく、ビタミンKの腸内吸収を減少させ、ビタミンK欠乏を起こす可能性があります。
アミオダロン
心房細動を含む不整脈(不規則な脈)の薬は、ワーファリンの抗凝固効果を増強させ、ビタミンKの作用を阻害し、血が止まらなくなる出血リスクを上昇させる可能性があります。
コレステロール低下薬
ビタミンKを含む脂溶性ビタミンの吸収を阻害する可能性があります。
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参考文献
- “Dietary vitamin K intake in relation to cancer incidence and mortality: results from the Heidelberg cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC-Heidelberg)”, Nimptsch K, Rohrmann S, Kaaks R, Linseisen J, Am J Clin Nutr. 2010 May;91(5):1348-58. doi: 10.3945/ajcn.2009.28691. Epub 2010 Mar 24.(論文の全文をご覧になりたい場合には、こちらをご覧ください。参考文献もあります。)
- “The association of vitamin K status with lung function and disease in a general population”, Torkil Jespersen, Freja Bach Kampmann, Thomas Meinertz Dantoft, Niklas Rye Jørgensen, Line Lund Kårhus, Flemming Madsen, Allan Linneberg, Sanne Marie Thysen, ERJ Open Research Jan 2023, 00208-2023; DOI: 10.1183/23120541.00208-2023
- “Association of Vitamin K Insufficiency as Evaluated by Serum Undercarboxylated Osteocalcin With Depressive Symptoms in Community-Dwelling Older Adults”, Azuma K, Osuka Y, Kojima N, Sasai H, Kim H, Inoue S, Am J Geriatr Psychiatry. 2022 Sep;30(9):1051-1052. doi: 10.1016/j.jagp.2022.04.012. Epub 2022 May 5. PMID: 35641403
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ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング