ピロリ菌は病原菌ではなく共生細菌(2)ピロリ菌と共生する統合食養学的アプローチ

2015/06/30/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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ピロリ菌と免疫細胞の相互の働き

第一回目『ピロリ菌は病原菌ではなく共生細菌(1)ピロリ菌を除菌すると食道がんに』の内容を要約すると、次の通りです。

詳しくは、元の記事を読んでいただくことを強くお勧めします。

  • ピロリ菌は、私達の免疫機能の一部です。
  • 胃液の分泌量を調整してくれている大切な共生細菌であって、決して、病原菌ではありません。
  • ピロリ菌の働きを無視すれば、胃潰瘍や胃がん、逆流性食道炎や食道がんに発展してしまう可能性があります。
  • ピロリ菌の役割を正しく理解し、上手に共生すれば、胃がんと食道がんの両方を予防できる可能性があります。

今回は、ピロリ菌の除菌をしていない人へ、ピロリ菌と上手に幸せな共同生活をおくる方法について、ピロリ菌の免疫細胞へのメッセージ(マイルドな胃痛)が起きた時に、私達がとるべき方法についてまとめました。

裏付けとなっている研究論文等は、最後に参考文献として一覧にしています。

ピロリ菌を暴走させる要因

次のような食品は、ピロリ菌の暴走を刺激してしまいます。できるだけ少なめにすることで、ピロリ菌をむやみに刺激せずに済みます。

  • アルコール類
  • カフェイン類
  • 炭酸飲料
  • 揚げ物
  • 香辛料
  • 食塩
  • 食品添加物(加工食品)

そして、過度なストレスもピロリ菌を刺激してしまいます。

食品添加物以外は、どれもこれも、まったく摂ってはいけないというものではありません。

16世紀の著名な医師パラケルススの言葉です。

“All substances are poisons;
there is none which is not a poison.
The right dose differentiates a poison and a remedy.”
(すべての物質は有害(毒)である。
毒でないものはない。適量が、毒か薬かを分ける)

Paracelsus

日本にも素晴らしい諺があります。「過ぎたるは及ばざるがごとし

上記した要因が摂り過ぎにならないよう気を付けて過ごすことが大切です。何事も「適量」が大切です。

ピロリ菌を味方にする方法

ピロリ菌の暴走を抑制することが報告されている食品についてご紹介します。

ピロリ菌と共生する食事

プロビオティクス/発酵食品

プロビオティクスとは、食べる善玉菌のことです。

発酵食品に多く含まれている善玉菌の中でもビフィズス菌属に、ピロリ菌の暴走をコントロールする働きがあることが、細胞実験によって報告されています。

私達と共生する細菌についての研究によって、菌のことは菌同士に任せた方が良いという方向性が見えています。

例えば、致死の大腸炎や下痢を引き起こすC.ディフィシル感染菌は、抗生物質がまったく効かないのに、善玉菌を移植した途端におとなしくなってしまうことが知られています。ピロリ菌についても、人間が浅知恵でどうこうしようとするよりも、他の善玉菌に任せることが大切なのかもしれません。

人間は地球上に住み始めてほんの数万年ですが、菌は、地球誕生の時から、ここに住んでいるのです。

グルタミン酸を多く含む食品

ベス・イスラエル・ディコネス・メディカル・センター(BIDMC)とマサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者が、アミノ酸の一種グルタミン酸が、ピロリ菌によって起こった胃潰瘍の治療に効果があると、『Journal of Nutrition(栄養学ジャーナル)』の 2009年5月号で発表しています。

抗生物質を使用せずに、胃潰瘍を治療できる可能性があるとのことです。

グルタミン酸を多く含む食品には次のようなものがあります。

  • 穀類・・・小麦に圧倒的に多く含まれています。小麦製品(パン、パスタなど)
  • 豆類・・・大豆に圧倒的に多く含まれています。大豆製品(きな粉、高野豆腐、湯葉など)
  • ナッツ&シーズ
  • 魚介類・・・かつお節、しらす、たらこ、あおのり、まぐろ(赤身)
  • 肉類・・・鳥類の肉(鶏、七面鳥、ハトなど)
  • 野菜・・・トマト、玉ねぎ

ただし、食品添加物/化学調味料のグルタミン酸ナトリウム(味の素)と、このグルタミン酸はまったく別ものですから、化学調味料をお料理にたくさん使えば良いなどと誤解しないでくださいね。

生姜/ジンジャー・ティ

生姜のショーガオールという成分にピロリ菌を抑制する効果があることが報告されています。

ショウガオールは、生姜の皮のすぐ下に多く存在している辛味成分ジンゲロールが加熱されることで発生する抗酸化物質です。

ショウガオールには、その他にも抗菌、抗ウイルス作用があると言われています。

ですから、ピロリ菌が心配な時には、生姜を皮ごと加熱してお料理に使いましょう。

また、お料理だけでなく、お茶にして飲むのも簡単で便利です。生姜とクローブを煎じてハチミツと一緒に飲んでみましょう。

マヌカハニー

マヌカハニーには、メチルグリオキサールと呼ばれる抗菌成分が豊富に含まれています。

他のハチミツにも含まれていますが、平均して、1kg当たり5-10mgであるところ、マヌカハニーには、最高で600mg含まれています。また、マヌカハニーに含まれている他の酵素の効果で、他のハチミツよりも酸化しにくいのも嬉しいです。

英国ハロゲイト市で開催されたSociety for General Microbiologyの2011年春のコンフェレンスでは、マヌカハニーが抗生物質に対する耐性菌に感染してしまった傷の治癒に、効果があったことが報告されました。そのことから、ピロリ菌の暴走を抑制してくれる効果があると期待されています。

ハチミツの詳しい機能については『はちみつ』をご確認ください。

ブロッコリー・スプラウツ(アブラナ科の野菜)

ブロッコリー・スプラウツ等、アブラナ科のお野菜に多く含まれている抗酸化物質スルフォラファンが、ピロリ菌によってダメージを受けた消化器官の粘膜の再生に効果があるという報告がなされています。

2011年の研究は、ブロッコリー・スプラウツがピロリ菌による胃がんの発症リスクを低減したと報告しています。

また、2009年の『Cancer Prevention Research(がん予防研究)』に発表された研究は「スルフォラファン豊富なブロッコリー・スプラウツを2ヵ月間、毎日食べることで、ピロリ菌の繁殖を抑えた」と、報告しています。

スルフォラファンは、様々ながんの予防になるという研究が多数存在しています。しかしながら、アブラナ科のお野菜をそのまま食べてもスルフォラファンは得られません。アブラナ科の野菜の特徴をよく知って、正しい調理法で食べなくてはいけないのです。

アブラナ科の野菜の正しい調理方法については、マインド・ボディ・メディシン講座セルフドクター・コースで教えています。

ピロリ菌からのメッセージ(マイルドな胃痛)を受け取ったら

直ぐに胃薬を飲むのではなく、それまでの食事や生活を振り返ってみてください。

  • お酒は飲み過ぎていませんか?
  • 食べ過ぎていませんか?
  • 加工食品やファストフードばかり食べていませんか?
  • 刺激性の強い料理をたくさん食べていませんか?
  • 炭水化物ばかり食べていませんか?(実は、脂肪やたんぱく質に比べて消化負担が大きい)
  • しょっぱいものが大好きではありませんか?

そうした生活や食事をまず、見直してみることから始めてくださいね。

そして次の食品を対処法として食べてください。不快な症状を一時的に緩和してくれます。

冷えると胃がキリキリと痛む時

冷えによって筋肉が緊張してキリキリと痛むのです。

そのため、体を温める食材を多く食べ、体を冷やさないことが大切です。

例えば、次の様な食材がお勧めです。

  • 羊肉
  • ニンジン
  • ネギ、ニンニク
  • しょうが
  • 山椒
  • 八角(アニス)
  • シナモン(桂皮)

甘草(リコリス)もお勧めです。甘草は、筋肉の急激な収縮による急性の胃痙攣などの緩和や鎮痛のために、昔から東洋医学で用いられてきた生薬です。甘草のハーブティなど飲んでみてはいかがでしょうか。

しかし、甘草は、摂り過ぎると高血圧や低カリウム症になるので、心配な人は、漢方薬剤師のアドバイスに従ってください。

胃が張る/ゲップが出る/口の奥が酸っぱい時

こうした症状は、ストレスが原因で起こることがある一方で、暴飲暴食によっても起こります。

自分に合ったストレス解消方法を見つけたり、ゆっくり噛んで食べ、腹八分目を意識することが大切です。

ストレスが原因の場合

香りの強い野菜や柑橘類がお勧めです。

  • 三つ葉
  • 香菜
  • パセリ
  • セロリ
  • 春菊

などや、オレンジ、みかん、レモン、グレープフルーツなどです。

暴飲暴食が原因の場合

ジアスターゼを含む食品

ジアスターゼという成分が消化を助けてくれます。

  • 大根
  • 大根葉
  • かぶ
  • カイワレ大根
ビタミンU豊富な食品

ビタミンUは、ビタミンの様な働きをするのでビタミンと呼ばれることがありますが、実は、アミノ酸誘導体です。胃を強くする働きがあります。ビタミンUは体内で合成できないので、食品から摂取しなければいけません。

市販の胃腸薬「キャベジン」の主成分です。

キャベツに最も多く含まれている他、次の食品にも含まれています。

  • レタス
  • セロリ
  • パセリ
  • アスパラガス
  • ブロッコリー
  • じゃが芋など
  • 青海苔

牛乳や卵などにも含まれています。

毎日キャベツを食べた胃潰瘍患者は、そうでない患者と比べて完治にかかる期間が3分の1になったことが報告されています。日々の食事にキャベツの千切りを付けるのも良いですよね。

また、キャベツ・ジュースに効果があることが報告されています。キャベツ4分の1相当を絞ったジュースを毎日飲んだ胃潰瘍患者の9割が、3週間で完治したとの報告もあります。

小さじ1杯半でも十分に胸やけを鎮静させると報告されています。

ただし、ビタミンUは水に溶けやすいので、長時間、水に晒したり、洗ったりしないよう気をつけることが大切です。また、熱に弱いので、あまり加熱せずに、できるだけ生で食べることが大切です。ちなみに、酸には強いので、ドレッシングに酢を使っても大丈夫です。

胃が重い/食欲不振/シクシク痛む時

胃の働きが弱いことが原因ですで起こる症状です。胃腸の働きを促し、消化を助ける成分が豊富な食品が適しています。

暴飲暴食の人にも効果のある大根キャベツがお勧めの他、ニンジンも胃腸に血を補い温め丈夫にしてくれるので、お勧めです。

また、前回の逆流性食道炎のコラムでご紹介した、ヌメリのある食品もお勧めですが、胃腸の働きが弱い人向けには、必ず、温めてから食べるようにしてください。

その他、なつめや甘草などもお勧めです。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

逆流性食道炎や胃食道逆流症など、胃酸が逆流する症状に悩まれている方は『逆流性食道炎と胃食道逆流症のための食事法』をご参照ください。

そしてもし、おひとりで取り組むことに難しさや不安を感じるのなら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング