バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
蜂蜜は医薬品
人間が蜂蜜を活用している姿が石器時代の壁画に描かれているほど、蜂蜜は、何世紀にも渡って世界中で薬として用いられてきた食品です。
日本でも、蜂蜜は薬局方に掲載されている列記とした医薬品です。
今回は、古代医療における蜂蜜の活用法と現代科学で明らかにされた蜂蜜の薬効についてお伝えします。
2013年までに発表された蜂蜜を用いた研究をまとめたレビュー論文がありました。とても網羅的でしたので和訳要約し、補足を加えながらお伝えします。最後に参考文献として掲載しています。ただし、この研究論文内で引用されている研究については、元の論文の索引をご確認ください。
まずは、蜂蜜の基本情報を整理しておきましょう。
蜂蜜には「生」と「普通/加工」がある
蜂蜜は「生」でなければあまり効果がないって知っていましたか?
生ハチミツ
生蜂蜜は、蜂蜜そのものです。蜂の巣から直接採取したもので、不純物を取り除くことはしていますが、熱処理や低温殺菌などがなされていません。
そのため、酵素やビタミン、ミネラルがそのまま含まれています。
加工ハチミツ
よくスーパーなどで目にする普通の蜂蜜は、加工蜂蜜と呼ばれるものです。熱処理または低温殺菌されているため、生ハチミツと比較して、よりスムーズで均一で、結晶化することがありません。
一方で、薬効の元となる酵素やミネラル、ビタミンのいくつかの成分が失われています。
言い換えれば、普通の蜂蜜からは、今回お伝えする蜂蜜のさまざまな作用/効果はあまり期待できないといえます。
蜂蜜の種類
蜂蜜には特定のお花の蜜だけを集めたものもあれば、複数のお花の蜜を集めて作られているものもあります。お花の種類によって、含まれている成分は異なります。
百花蜜
読んで字のごとく、さまざまなお花の蜜のミックスです。
百花蜜の味や香りや成分は、蜜を採取したお花の構成によって異なります。含まれている成分の幅が広いため、生であれば、幅広い機能が期待できると考えられています。
マヌカハニー
ニュージーランドに自生しているマヌカの花の蜜から作られる蜂蜜です。抗菌成分メチル・グリオキサールの含有量が多いことで知られています。
マヌカハニーは、メチル・グリオキサールの含有量に沿っていくつかのグレードに分かれています。グレードの基準には、次の3つが存在していて、2015年にニュージーランド政府によって制定されました。
- MGS(Molan Gold Standard)
- UMF(Unique Manuka Factor)
- MGO(Methylglyoxal)
1と2は、フェノール溶液何%に相当するかを基準にグレードが決められていて、10以上が医療グレードです。10~12で病気予防、15以上で病気の改善効果があると言われています。
3は、1kgあたりのメチル・グリオキサールの量(mg)で示されています。263以上で医療グレード。400くらいまでが病気予防、500以上で病気改善効果があると言われています。
蜂蜜の色
蜂蜜には、さまざまな色がありますが、色の違いによる効果に差はあるのでしょうか?
蜂蜜の色の違いは、蜜蜂が蜜を採取したお花の種類による違いです。つまり、成分の違いでもあります。
濃い色の蜂蜜
蜂蜜の色と抗酸化作用との間には、強い相関関係があることが判明しています。実際、濃い色の蜂蜜には、抗酸化成分のフェノール類の含有量が高いことが明らかになっています。ミネラルを多く含んでいるとも考えられています。
写真左側は、国産の蕎麦のお花の蜂蜜です。右側は、胡麻のお花の蜂蜜(マレーシア産)です。
両方とも真っ黒ですね!
そのほか、濃い色の蜂蜜には、栗の花やヒースの花の蜂蜜などがあります。
薄い色の蜂蜜
薄い色の蜂蜜には、アカシアの花、クローバーの花、オレンジの花などがあります。
よく目にする百花蜜も薄い色の蜂蜜です。
生蜂蜜の栄養価
生蜂蜜にはアミノ酸、ビタミン、ミネラル、酵素など約200種類の成分が含まれているといわれています。
ただし、主な成分は糖分と水分です。炭水化物は総重量の約80%を占め、水分は約20%です。蜂蜜の結晶化は、保存状態などによっても影響を受けますが、水分が減少すると結晶化が速まります。
蜂蜜のタンパク質は総重量の約0.1~0.5%とごくわずかです。
また、蜂蜜の約0.57%が有機酸(グルコン酸)で、蜂蜜の酸味は、この有機酸の味です。
蜂蜜の糖分
炭水化物の約46%~48%が果糖、約37%~40%がブドウ糖です。そして約4~5%が、プロビオティクスとして注目されているフラクトオリゴ糖です。
蜂蜜によって乳酸菌とビフィズス菌が増加することが実証されています。
炭水化物の残り約10%~15%は、マルトース、スクロース、イソマルトース、ツラノース、ニゲロース、メリビオース、パノース、マルトトリオース、メレジトースなどの二糖類とオリゴ糖です。
複数の研究によって、蜂蜜が耐久性トレーニング前後、そして、持久運動中のアスリートにとって効果的な炭水化物源であることが実証されています。ソフィアウッズ・インスティテュートでも、夏場の水分補給や運動するクライアントさんに、蜂蜜を使った自前の水分補給ドリンク(電解水)の作り方をお伝えしています。
蜂蜜のミネラル
蜂蜜には、さまざまなミネラルが含まれています。
多様なミネラルが含まれてはいますが、厚生労働省の食品成分表に掲載されている2種類の蜂蜜(普通と国産)、そして、今回参考にしている論文に掲載されている蜂蜜の平均的な成分のいずれにおいても、1日の必要量の10%を超えるものはありません。
1日に必要とする量との比較では、銅(6.7%)が最も多く、次にマンガン(6%)、そして鉄分(5.5%)と続きます。その他、カリウム、マグネシウム、亜鉛、リン、カルシウムなどが含まれています。
蜂蜜のビタミン
ビタミンでは、主にビタミンB群を含んでいます。こちらも1日の必要量の10%を超えるものはありませんでしたが、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、B6、B2、ビオチンの順に多く含まれています。
ビタミンB群は、私たちの代謝や有害物質の排出に欠かせないビタミンですから、蜂蜜の薬効に一役かっていると考えられます。
ビタミンCは、蜂蜜の種類によって含まれているもの、いないものがあるようです。厚生労働省の食品成分表に掲載されている蜂蜜のどちらにもビタミンCは0 mgとなっていますが、今回参考にしている論文には、蜂蜜100gあたりビタミンCが平均して約0.5mgと、僅かではありますが含有していると記載されています。
蜂蜜の酵素
蜂蜜には、さまざまな酵素が含まれています。主な酵素は次の4つです。
- インベルターゼ(サッカラーゼ)・・・スクロースを果糖とブドウ糖に変換
- ジアスターゼ(アミラーゼ)・・・デキストリンとマルトースを産生
- グルコースオキシダーゼ・・・抗菌作用を有する
- カタラーゼ・・・過酸化水素を水と酸素に還元
後半で、これらの酵素がどのような働きをしているのか詳しくお伝えします。繰り返しになりますが、これらの酵素は、生蜂蜜からでなければ得られません。
伝統医療における蜂蜜の活用
蜂蜜は、約8,000年以上前から地球上でさまざまな民族によって薬として利用されてきたと考えられています。ここでは、古代文明をもつ国々でどのように蜂蜜が活用されてきたのか簡単にお伝えします。
古代エジプト
蜂蜜は、900の治療法で500回以上も薬として言及されています。ほとんど全ての古代エジプトの薬には、ワイン、牛乳、蜂蜜が含まれています。また、古代エジプトでは、蜂蜜は神々への捧げものでした。
主に次の用途で用いられていました。
- 死者の防腐処理
- 感染した傷の治療
- 局所軟膏
紀元前2,600年~2,200年頃の古文書スミス・パピルスに記載されている標準的な傷用軟膏の処方箋には、グリース、蜂蜜、糸くずを混ぜて塗るように記載されています。
古代イスラム
聖クルアーンは、蜂蜜には、治療的価値があると説明していて、古代イスラムでは、蜂蜜は健康的な飲み物と考えられていました。イスラム教の預言者ムハンマドは、下痢の治療に蜂蜜を使用することを推奨しています。
約1,000年前のイランの偉大な科学者で医師だったアヴィセンナは、蜂蜜を結核の最良の治療薬として推奨しています。
古代ギリシャ
ギリシャの偉大な科学者であり自然療法の父ヒポクラテスは、蜂蜜を次のように薬として用いていました。
- オエノメル・・・蜂蜜とブドウ果汁で作るドリンク剤。痛風や神経障害の薬。
- オキシメル・・・蜂蜜と酢で作る軟膏/ドリンク剤。鎮痛薬。
- ヒドロメル・・・蜂蜜と水で作るドリンク剤。脱水症。急性の発熱。
また、脱毛症、避妊、創傷治癒、下剤、咳と喉の痛み、目の病気、局所消毒、傷の予防と治療にも蜂蜜を利用していました。
古代インド
古代ヴェーダ文明にとって蜂蜜は、自然が人類にもたらした最も素晴らしい贈り物の1つでした。アーユルヴェーダ(インド伝統医療)の教典では、蜂蜜は消化力の弱い人にとって有益とされています。また、蜂蜜の使用が刺激性の咳き込みの治療に非常に有益であることが強調されています。
現代においてもアーユルヴェーダでは、蜂蜜を次の疾患や不調に用いています。
- 歯と歯茎の健康維持
- 不眠症(催眠作用)
- 皮膚疾患(傷や火傷の治癒)
- 心臓の痛みや動悸(心疾患の改善)
- 肺の不調
- 貧血
- 目の疾患(白内障予防、視力回復)
生蜂蜜の薬用作用
生蜂蜜は、伝統医療で重要な役割を果たしてきただけでなく、現代においても、さまざまな研究が行われ、1892年に初めて生蜂蜜に抗菌活性が確認されてから、現在までに、約60種の細菌、真菌、ウイルスに対する抑制効果があることが報告されています。
1.抗菌作用
蜂蜜の最も有名な機能のひとつが、有害なバクテリア(細菌)と戦う力です。蜂蜜には、好気性菌と嫌気性菌の両方、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方を含む抗菌作用があります。
静菌作用と殺菌作用
蜂蜜の濃度によって、静菌(菌の増殖を抑制する)作用と殺菌作用に分けることができます。
生蜂蜜の抗菌力は非常に強力で、9倍~10倍に希釈しても静菌作用があることが示されています。例えば、試験管試験では、蜂蜜20%の溶液でピロリ菌を抑制できることが示されています。
静菌作用
- 百花蜜・・・5~11%
- マヌカハニー・・・4~8%
殺菌作用
- 百花蜜・・・8~15%
- マヌカハニー・・・5~10%
生ではない普通の加工蜂蜜でも、20%~30%の濃度で静菌作用が確認されています。しかし、殺菌作用はありませんでした。
蜂蜜の効果は、放射線誘発性口腔乾燥症による感染症や虫歯にも認められています。
蜂蜜は耐性菌を作らない
蜂蜜は、抗生物質とは異なり、耐性菌を発生させないことが確認されています。そのため、継続的な使用を心配しなくても良いことが報告されています。
2. 抗真菌(カビ)作用
生蜂蜜には、真菌の抑制効果があります。真菌(カビ)の増殖を抑制し、希釈しても蜂蜜は毒素の生成を抑制することができます。
蜂蜜の抗真菌作用は、次の種類で観察されています。
- すべての一般的な皮膚糸状菌
- 酵母菌
- アスペルギルス属
- ペニシリウム属
カンジダ症の原因菌や、白癬や水虫などの皮膚真菌、脂漏性皮膚炎やフケの原因菌にも効果があることが示されているため、これらの疾患の治療に効果があると考えられています。
3. 抗ウイルス作用
生蜂蜜には、抗ウイルス作用もあります。
ヘルペスウイルスの治療薬アシクロビルと比較して、生蜂蜜を患部に塗ることで、口唇ヘルペスと性器ヘルペスの両方の改善効果があると結論づけられています。
また、歯肉炎と歯周病の治療にも効果があると考えられています。
更に、風疹ウイルスの活性を抑制する効果があると報告されています。
4. 抗炎症作用
生蜂蜜が次の炎症性物質の活性を低下させ炎症を抑えること、その結果、免疫調節作用があることが示されています。
- シクロオキシゲナーゼ-1
- シクロオキシゲナーゼ-2
大腸炎の炎症モデルでは、生蜂蜜には、プレドニゾロン(ステロイド薬)と同じくらいの効果があったことが示されています。
更に、血液中のプロスタグランジン濃度を減少させる効果が示されています。
プロスタグランジンには、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、血管拡張作用などがありますが、プロスタグランジンが多い女性は生理痛が重い傾向があるため、PMSや生理痛の改善に蜂蜜が役に立つと考えられています。
炎症を治療する薬には、重大な副作用があるものが多く、例えば、コルチコステロイド剤は、組織の成長と免疫機能を抑制してしまいます。イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、特に、胃の細胞組織に有害な薬です。なお、イブプロフェンによる影響については、『イブプロフェン』をご確認ください。
でも、蜂蜜には、その様な副作用はありませんから、安心して使える抗炎症剤(鎮痛薬)になります。
5. 抗酸化作用
生蜂蜜には、次のような多様な抗酸化成分が含まれています。
- フェノール酸・・・エラグ酸、コーヒー酸、p-クマリン酸、フェルラ酸など
- フラボノイド・・・アピゲニン、ピノセンブリン、ケンフェロール、ケルセチン、ガランギン、クリシン、ヘスペレチンなど
- アスコルビン酸
- トコフェロール(ビタミンE)
- カタラーゼ
- スーパーオキシドジスムターゼ
- 還元型グルタチオン
- メイラード反応生成物
- ペプチド
抗酸化作用は、フェノール類の含有量が多いほど強くなります。蜂蜜に含まれているフェノール成分は相互に作用して、相乗的に抗酸化効果をもたらしていると考えられています。
蜂蜜の高い抗酸化力を利用して、トリポリリン酸ナトリウムなどの食品の防腐剤の代わりになるのではないかと考えられています。
有難いことに、蜂蜜の抗酸化力は、加工、取り扱い、保管によって影響をあまり受けません。
生蜂蜜の疾病予防改善効果
前述した蜂蜜の薬効作用を活用して、さまざまな疾患の予防と改善に蜂蜜が用いられています。ここからは、研究が行われている蜂蜜の疾病予防改善効果について、ひとつひとつお伝えしていきます。
1.創傷治癒
蜂蜜の医療的効果のうち、最も多く研究されているのが、傷の治療効果です。生蜂蜜を、次の傷の治療に用いることができることが明らかになっています。
- 擦り傷
- 切り傷
- しもやけ
- ひび割れ
- 膿瘍
- 潰瘍
- 火傷
- 子宮頸部潰瘍
- さまざまな手術の傷
外用薬として、ほぼすべての種類の創傷や外的な炎症の治療に有効であることが示されています。
蜂蜜を傷口に塗布することで、炎症と滲出液が軽減され、組織の再生が刺激され治癒が促進し、傷痕が縮小することが明らかになっています。蜂蜜が痛みを軽減し、傷を殺菌し、組織の再生を刺激し、炎症を軽減することで、傷痕を残さずに素早く治ることが実証されています。
ただし、蜂蜜による詳しい創傷治癒の分子メカニズムはまだ解明されていません。
蜂蜜を創傷治療に使う方法
- 蜂蜜を湿布材/包帯に塗って蜂蜜包帯を作り、それで傷口を覆うように用います。
- 蜂蜜は、傷口をふさいで十分な量を塗る必要があります。また、傷口周辺にも塗ることが推奨されています。
- 傷口に直接塗るよりも、湿布材/包帯の方に塗って、蜂蜜包帯にしてから使用することが、傷口全体を蜂蜜でカバーしやすくなるため推奨されています。
蜂蜜包帯を使用することで、湿布材が皮膚に接着してしまうことを防ぐことができます。
注意事項
- 蜂蜜を傷口に塗ると、一時的にヒリヒリすることがあります。
- 蜂蜜を過剰に塗り過ぎると、皮膚が乾燥する可能性があります。その際には、生理食塩水でパックすると回復します。
- 糖尿病患者の大きな傷口に塗ると、血糖値が上昇する可能性が理論上あります。
火傷の治療
火傷に蜂蜜を塗ると、火傷が鎮静し、その後、急速に治癒が起こります。
次の4つの方法で、火傷の治癒効果を比較した研究がありました。
- 蜂蜜包帯
- 羊膜包帯
- ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)包帯
- 茹でたジャガイモの皮
他の方法と比較して、蜂蜜包帯が火傷の痕を残さずに早期に治癒を促したことが示されています。皮膚移植を行った場合にも、蜂蜜包帯によって、人工皮膚の保全が良好になったことも報告されています。
このほか、蜂蜜とオリーブオイルを火傷治療に用いる方法については『オリーブオイル』をご確認ください。
手術後の傷
手術の傷の治癒について、次のようなさまざまな実験が行われています。
- 腹腔鏡手術後の手術傷に蜂蜜を塗布することで感染症の予防に成功しています。
- 膝の切断手術を受け、黄色ブドウ球菌に感染した少年の事例では、マヌカハニーを用いた治療を10週間続けたところ、完治したことが報告されています。
- また、乳がん手術後の潰瘍の治療に蜂蜜を用いて成功した事例や、帝王切開、子宮摘出手術後などにも局所に蜂蜜を塗布する治療が行われた事例では、いずれも、細菌感染症が抑えられ、抗生物質の使用と入院期間が短縮したことが報告されています。また、傷痕が残ることも避けられたとのことです。
傷跡を残さずケアするその他の詳しい方法については『傷跡をナチュラルに薄くする』をご確認ください。
放射線によって発生した粘膜炎の治療にも効果があることが報告されています。
2. 胃腸疾患の予防と改善
感染症は、消化管の粘膜に細菌などが付着して増殖することで発症します。蜂蜜が、細菌の付着を阻止できることが実証され、生蜂蜜を食べることで、細菌やウイルスによる胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍などの胃腸の感染症の治療と予防ができることが報告されています。
蜂蜜が細菌の付着を阻止する正確なメカニズムは、まだ判っていませんが、主に次の3つのメカニズムによると現在考えられています。
- 蜂蜜が細菌/ウイルスをコーティングすることで、細菌/ウイルスの機能を抑制する。
- 細菌/ウイルスが宿主に付着するために必要な静電荷または疎水性を、蜂蜜が変化させる。
- 蜂蜜による細菌の死滅/ウイルスの不活化(前述した抗菌・抗ウイルス作用参照)
蜂蜜5%の効果
蜂蜜5%濃度の飲料には次の効果があることが報告されています。
- 下痢と胃腸炎の改善(ただし、ウイルス性胃腸炎には効果なし)
- 水分補給(ナトリウムの摂取量を増やすことなく、カリウムと水分の摂取量を増加)
- 損傷した腸粘膜の修復と抗炎症効果
- インドメタシンによる胃炎の予防と改善
- 細菌の血管透過性の阻止
蜂蜜20%濃度の効果
濃度20%以上では、次の効果が示されています。
- 抗ピロリ菌作用があることが明らかになっています。
- スクラルファートと同等の胃潰瘍に対する治療効果があることが示唆されています。
3. 眼科疾患の改善
蜂蜜は世界中で次のようなさまざまな眼科疾患の治療に用いられています。
- 眼瞼炎
- 角膜炎
- 結膜炎
- 角膜損傷
- 目の火傷(化学的&熱性)
医療による治療に反応しなかった患者102名に、蜂蜜を軟膏として患部に塗布する治療を行ったところ、85%の患者に改善が見られ、15%の患者に症状の悪化が止まったことが報告されています。
感染性結膜炎では、発赤、腫れ、膿の排出が減少し、細菌が根絶されるまでにかかる期間が短縮したことが報告されています。
4. 糖尿病にとっても安全な甘味料
ブドウ糖やショ糖と比較して、蜂蜜は、I型とII型糖尿病の患者の血糖値を大きく上昇させないことが明らかにされています。また、蜂蜜はインスリンの分泌を刺激し、血糖値を低下させることも実証されています。
更に、蜂蜜は、健常者と高脂血症の患者の両方において、血液中の脂質、ホモシステイン、C反応性タンパク質(CRP)の値を低下させることが示されています。
なお、ホモシステインは毒性のあるアミノ酸で肉食が多い人の血中に多く存在しています。C反応性タンパク質は、体内に炎症がある時に増えるタンパク質です。
5. 心疾患予防と改善
生蜂蜜は古代から心臓の薬として活用されてきました。ただし、現代の科学では、蜂蜜の循環器への効果を検証した研究は、ほとんど動物実験に留まっていて、ヒトを対象とした研究は極わずかしかありません。
心疾患リスクを低減することが示されているさまざまな抗酸化作用のある物質のうち、蜂蜜に含まれている成分は次の通りです。
- ビタミンC
- モノフェノール
- フラボノイド
- ポリフェノール
中でも蜂蜜に含まれている広範なフェノール化合物が心疾患の治療に効果があると期待されています。
また、蜂蜜には一酸化窒素代謝産物が含まれている可能性があり、それによっても心疾患の予防効果があると考えられています。
悪玉コレステロール低下
肥満症の38人を対象に、生蜂蜜による影響が調査されました。生蜂蜜を1日70g、30日間食べ続けると、1~4までの指標の数値が減少したことが報告されています。
- 総コレステロール
- 悪玉(LDL)コレステロール
- 中性脂肪
- C反応性タンパク質(CRP)
- 善玉(HDL)コレステロール
- 空腹時血糖
- 体重
また、別のヒトを対象とした研究では、75gの生蜂蜜を食べた場合と人工蜂蜜(果糖とブドウ糖のミックス)を食べた場合による影響を比較しています。
人工蜂蜜と比較して、生蜂蜜には次の効果がありました。
- インスリンとCRPの上昇が有意に低い
- コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪が低下
善玉コレステロールが若干増加
- 高トリグリセリド血症(血液中の中性脂肪値が高い)の患者・・・中性脂肪が、人工蜂蜜で増加し、生蜂蜜で減少しました。
- 高脂血症の患者・・・悪玉コレステロールが、人工蜂蜜で増加し、生蜂蜜で減少
- 糖尿病の患者・・・血糖値の上昇が、人工蜂蜜よりも、生蜂蜜で著しく低い
研究者は、特に、心疾患リスクが高い人は蜂蜜を食べることを習慣にすることで、リスクを低下させ、体重増加も避けられると結論づけています。
血圧低下
さらに、蜂蜜が静脈血圧を低下させ、心臓の負荷を軽減し、静脈系のうっ血を軽減すると考えられています。
虚血性心疾患予防
マウスの心臓に人工的に虚血を起こす10分前から、虚血後10分間まで、濃縮クレブス溶液に蜂蜜を混ぜて灌流した実験によって、蜂蜜が虚血/再灌流によって誘発される障害の予防薬として機能することが実証されています。
不整脈・梗塞予防
別のマウスを用いた研究では、生蜂蜜を45日間食べさせることで、強力な抗不整脈効果と抗梗塞効果をもたらすことが示されました。
運動誘発性心疾患予防
マウスにアドレナリンを注射(体重1kgあたり100μg)する1時間前に、生蜂蜜(体重1kgあたり5g)を与えると、アドレナリンによって誘発される血管運動機能不全や心臓障害が予防されたことが報告されています。
単純計算では、体重50kgのヒトでは、250gの蜂蜜を食べることになるので、かなりの量ですね。
研究者は、生蜂蜜に含まれている、さまざまなミネラルと抗酸化物質や酵素の働きによる抗炎症作用などによって、心臓保護効果と治療効果が直接的に得られると考えられると述べています。
6. 抗がん作用
蜂蜜のがん予防効果がいくつかの研究で報告されています。
7. その他の蜂蜜の効果
次の疾患や不調の改善に効果があったことが報告されています。
- 咳
- のどの痛み
- 胸痛
- 疲労
- めまい
- 抜歯痛
- 肝機能障害
- 子宮収縮(PMS、生理痛、経血過多、早産)
- 骨密度
- 閉経後の体重増加
- 更年期症状
スプーン1杯の蜂蜜は、喉のイガイガを治してくれます。臨床試験では、蜂蜜は、一般的な咳止め薬と同じくらい効果があることが示されています。詳しくは『ハチミツと咳』をご確認ください。
麻疹と普通の発疹の見分け方
また、蜂蜜の珍しい用途としては、麻疹の発見に使えます。
発疹が出た初期段階で、発疹に蜂蜜をマッサージすると、もしそれが麻疹だった場合には、翌日に発疹がより顕著になります。蜂蜜を塗り続けることで麻疹も普通の発疹も消えていきます。
蜂蜜でアレルギーは起こるか?
例えば、ある種類の植物にアレルギーをもっている人が、その植物の花から採取された蜂蜜を食べたら、アレルギー症状が出るのでしょうか。
研究論文によれば、蜂蜜そのものに対するアレルギーは非常に希なのだそうです。
しかし、蜂蜜に含まれている花粉そのものやハチのタンパク質に対してアレルギー反応が起こる可能性はあります。
ハチミツが花粉症を起こす可能性について、次のように考えられています。
- ミツバチにとって花粉は非常に大きく重いため、花粉そのものではなく、蜜を含んだ花粉の粒子を運び、蜂蜜を作っている。
- 蜂蜜は、花の蜜にミツバチの唾液を加えて発酵させているものなので、花粉のタンパク質は発酵の過程で分解されている可能性が高い。
- しかし、ミツバチは花粉と接触している以上、花粉がそのままの形で蜂蜜に含まれいないとは言い切れない。
そのため、研究者は、生ハチミツで花粉症が悪化する可能性は否定できないとしています。花粉症に限らず、さまざまな食品にアレルギーを持っている人は、アレルギー専門医に相談することをお勧めします。
蜂刺されにアレルギーがある場合は?
過去に蜂に刺されたことがある人は、蜂刺されにアレルギーを発症していることが多く、次に蜂に刺されるとアナフィラキシーを起こす可能性もあります。
でも、安心してください。蜂に刺されたことがある人も蜂蜜を食べても大丈夫です。アレルギーを起こす原因となる蜂の毒に含まれているタンパク質は、蜂蜜には含まれていないのです。
ビーポーレンやローヤルゼリーは?
ただし、スーパーフードとして注目されているビーポーレン(蜂が集めた花粉そのもの)やローヤルゼリーでアレルギーが出たという報告があります。
そのため、アレルギーが心配な人は、花粉と蜂に関する製品についてはアレルギーの専門家に相談することをお勧めします。
ヴィーガン?ベジタリアン?
ベジタリアンもヴィーガンも野菜中心の食生活ですが、蜂蜜に対する対応は異なっています。
ベジタリアン
蜂蜜はベジタリアンだと考えられています。
ベジタリアンは、4つ足動物(牛・豚・羊など)の肉を主に避けますが、例えば、魚、卵、乳製品などは、場合によっては食します。
蜂蜜の採取は、直接的に動物を苦しめたり殺すことをせず、卵や乳製品と同様に、動物の副産物だと考えるため、ベジタリアンは、蜂蜜を食べます。
ヴィーガン
蜂蜜はヴィーガンではありません。
ヴィーガンは、動物の肉を食べることを避けるだけでなく、動物による副産物も全て避けます。
蜂蜜は、蜂が自らのコミュニティのために造ったものであって、ヒトのために造ったものではないため、ヒトによる蜂蜜の採取は、蜂に対する搾取にあたると考えられています。
また 養蜂家による次の様な行為が蜂への虐待にあたると考えられています。
- 蜂蜜を採取した後に、蜂に砂糖を与える(蜂の健康を損なう)
- 薫炎を使用して蜂を大人しくさせる(蜂の神経機能への障害となる)
- 蜂蜜を採取する際に、死んでしまう蜂がいる
- 蜂の人工交配(蜂の自然な種の保全を損なう)
そのため、ヴィーガンは蜂蜜を食べません。
なお、ベジタリアンとヴィーガンの詳しい違いや健康的に野菜中心の生活を続ける方法については『健康的にベジタリアン/ヴィーガンになる方法』をご確認ください。
注意事項
蜂蜜にはボツリヌス菌が残存している可能性があります。
ボツリヌス菌は熱にも強いので調理しても死滅させることは難しいため、加熱処理されている普通の蜂蜜にも含まれている可能性があります。
そのため、免疫機能が未熟な1歳未満の子供には、食べさせたり、使用したりしないでくださいね。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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参考文献
- “A Comprehensive Review of the Effect of Honey on Human Health”, Marta Palma-Morales, Jesús R Huertas, Celia Rodríguez-Pérez, Nutrients, 2023 Jul 6;15(13):3056. doi: 10.3390/nu15133056, PMID: 37447382, PMCID: PMC10346535
- “Traditional and Modern Uses of Natural Honey in Human Diseases: A Review”, Tahereh Eteraf-Oskouei, Moslem Najafi, Iran J Basic Med Sci. 2013 Jun; 16(6): 731–742, PMCID: PMC3758027, PMID: 23997898
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング