バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
パントテン酸の食事摂取基準(2020)
成人一日の摂取基準です。
- 女性|目安量:5mg
- 男性|目安量:5~6mg
パントテン酸は、ヒトに対して毒性はないと考えられているため、限界量が設けられていません。
パントテン酸の性質
あまりその名前を聞くことのないビタミン、パントテン酸は、ビタミンB群のひとつ、ビタミンB5です。
知名度は低いものの、パントテン酸は全ての生物、植物性食品にも動物性食品にも広く含まれています。そのため、欠乏症は非常に稀です。
腸内細菌もパントテン酸を造くってくれています。ヒトも生物ですからね(笑)
パントテン酸の主な機能
生命維持にとって欠かせない体内の生化学反応で重要役割を担っている、次の補酵素やタンパク質を体内で活用できるようにする補助因子の合成にパントテン酸が必要です。
つまり、パントテン酸は縁の下の力持ちということです。表舞台に出ることは決して無いけれども、居ないと舞台が成り立たない重要な役割を担っています。
コエンザイム(補酵素)A
コエンザイムA(CoA)は、生命維持にとって不可欠な多様な生化学反応が正常に機能するために、必要な補酵素です。
4′-ホスホパンテテイン
4′-ホスホパンテテインは、コエンザイムAの一部(構成要素)です。
コエンザイムAの役割
栄養素の分解とエネルギー産生に関与
コエンザイムA(CoA)は、他の機能成分と結合して、次の様な補助因子になります。
- アセチルCoA
- スクシニルCoA
- マロニルCoA
- 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル(HMG)-CoA
など
コエンザイムAとこれらの補助因子は、脂肪、炭水化物、タンパク質を分解してエネルギーを作り出すクエン酸回路や脂肪酸β酸化経路に関与しています。その過程で次の役割を担っています。
- 必須脂肪酸、コレステロール、ステロイドホルモン、メラトニンの分解
- ビタミンAとDの代謝
- ヘム(ヘモグロビンの成分)の産生
- 神経伝達物質アセチルコリンの産生
肝臓のデトックス機能
肝臓での多数の薬剤や毒素の代謝に、コエンザイムAが使用されます。
遺伝子のスイッチをオン(発現を促進)
コエンザイムAは、体内のタンパク質のアセチル化(アセチル基との結合)に利用されます。タンパク質はアセチル化すると機能が変化します。
例えば、染色体を構成するタンパク質(ヒストン)がアセチル化すると、染色体の構造が変化して、遺伝子のスイッチがオンになります。
ヒストンからアセチル基を取り除くと、染色体の凝縮や遺伝子発現の抑制が起こる(スイッチがオフになる)ことが判っています。
アセチル化したタンパク質は、その他にも様々な機能に関与しています。
細胞シグナル伝達経路
コエンザイムAによって提供される長鎖脂肪酸と結合することで、多くのシグナル分子は細胞シグナル伝達経路で中心的な役割を果たします。
酵素の活性化
酵素の中には、単独では働けないものがあり、アポ酵素と呼ばれます。
アポ酵素は補助因子と結合してホロ酵素になると、体内で活性した(働ける)状態になります。
その補助因子が、コエンザイムAに含まれている4’-ホスホパンテテイニル基(4′-ホスホパンテテイン)です。
神経の保護とお肌の健康(脂肪酸の合成)
神経細胞を保護している脂肪酸やお肌の健康にとって必要な次の脂肪酸の合成には、パントテン酸が必要です。
- スフィンゴ脂質(神経伝達を強化するミエリン鞘の必須成分)
- リン脂質(細胞膜の重要な構造成分)
これらの脂質を体内で合成するには、脂肪酸を運ぶ役割を担っているタンパク質が活性化しなくてはなりません。その活性のために、パントテン酸の4’-ホスホパンテテイニル基が使われます。
詳しいミエリンの役割とコレステロールについては『脳機能とコレステロール』をご参照ください。
悪性貧血予防(葉酸の代謝)
葉酸が体内で適切に働くためには、パントテン酸が必要です。
葉酸が体内で適切に代謝されてテトラヒドロ葉酸に変換されるためには、10-ホルミルテトラヒドロ葉酸脱水素酵素(FDH)が必要ですが、この酵素の活性のためには、パントテン酸の4’-ホスホパンテテインが必要なのです。
テトラヒドロ葉酸が欠乏すると、大球性貧血を引き起こすことがあります。
詳しい葉酸の機能については『葉酸』をご参照ください。
成長と骨粗鬆症予防とアンチエイジング(アミノ酸リジンの代謝)
必須アミノ酸のひとつリジンをミトコンドリアが分解する時に、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド合成酵素(AASS)が必要です。AASSはアポ酵素なので、活性するためには、パントテン酸の4’-ホスホパンテテイニルが必要です。
リジンは、成長ホルモンの分泌を促し、カルシウムの吸収をサポートする役割を担っています。また、体の成長や細胞修復に関わるホルモンや酵素の材料として利用されるアミノ酸です。
パントテン酸の欠乏症
ヒトでの自然発生的なパントテン酸欠乏症は非常に稀です。
そのため、パントテン酸欠乏の症状は、主に臨床実験や事例研究によって観察されたものです。
- 頭痛
- 疲労感
- 不眠
- 腸の不調
- 手足のしびれ/ひりひり感
動物実験で観察された欠乏症の症状
動物を用いた欠乏症の研究がいくつかありました。
- ラット・・・副腎損傷
- マウス・・・運動耐性の低下、筋肉と肝臓でのブドウ糖貯蔵(グリコーゲン)の減少、皮膚刺激、白髪化
- サル・・・ヘムの合成不足による貧血
- イヌ・・・低血糖、呼吸促迫、頻脈、痙攣
- ニワトリ・・・皮膚刺激、羽毛の異常、ミエリン鞘の変性に関連した脊髄神経損傷
こうした現象がヒトにおいても起こるかどうかは不明ですが、可能性としてありえるのかもしれませんね。
パントテン酸欠乏になりやすい人
自然な状態でバランスの良い食事をしている人がパントテン酸欠乏になることは稀ですが、次の事柄に該当する場合には、パントテン酸が不足する可能性があります。
女性ホルモン剤を服用している
生理痛やPMSの改善、更年期症状の改善のために処方される女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)剤は、パントテン酸の消費量を増やす可能性があり、パントテン酸不足の原因となりえると考えられています。
アルツハイマー病治療薬を服用している
日本でアルツハイマー病の精神機能の強化に使用されているホモパントテン酸カルシウム(ホパンテン酸カルシウム)は、パントテン酸拮抗作用のある薬です。
そのため、この薬によってパントテン酸欠乏が起き、肝臓のデトックス機能が阻害され、肝性脳症という異常な脳機能状態が起こる副作用があります。
PanK2遺伝子に変異がある
PanK2遺伝子の変異は、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症と呼ばれる4′-ホスホパンテテインやコエンザイムAの合成障害を起こします。この障害の特徴は次の通りです。
- 視覚および知的障害
- ジストニア(筋緊張異常)
- 言語異常
- 行動困難
- 人格障害
完全にパントテン酸が欠乏すると人格まで変わってしまうんですね・・
パントテン酸と病気との関係
白髪予防のエビデンスはない
マウスを用いた実験では、パントテン酸欠乏で毛が白くなったり、その後、パントテン酸を投与することで元に戻すことができたことが報告されています。
しかし、ヒトを対象とした研究では、パントテン酸の服用によって白髪が予防あるいは白髪が元に戻ったと言う証拠は存在していません。
パントテン酸入りのシャンプーについても同様にエビデンスはありません。
創傷治癒効果は不明
試験管試験では、傷をつけた皮膚線維芽細胞にパントテン酸の化合物D-パントテン酸カルシウム(D-パントテノール、デクスパンテノール)を添加すると、細胞増殖や細胞移動が高まり、創傷治癒が早くなったことが報告されています。
しかし、ヒトを対象とした研究では、その確実な効果を報告した研究がなく、効果は不明です。
コレステロール値の改善
パントテン酸を主成分とするパンテチンの服用によってコレステロールが低下したことが報告されています。
心疾患リスクが低度~中度の被験者120名を対象とした、1日に600mgのパンテチンを8週間、その後、1日900mgのパンテチンを更に8週間服用する無作為化二重盲検プラセボ対照研究の結果、次の指標の全てがプラセボと比較し有意に低下したことが報告されています。
- LDLコレステロール
- アポリポタンパク質B
- HDLコレステロールに対する中性脂肪の比率
ただ、パンテチンはビタミン剤ではありません。パントテン酸を主成分とする化合物です。日本では医薬品扱いです。
過剰摂取による副作用
食事から摂取したパントテン酸のヒトへの毒性は報告されていません。
しかし、パントテン酸をサプリメントで大量に服用することで、腸や細胞でのビオチンの吸収を阻害する可能性があります。
パントテン酸を多く含む食品にはビオチンも多く含まれています。そのため、食品から摂れば、こうした問題は起こりません。
ビオチンの詳しい機能と多く含む食品については『ビオチン』をご確認ください。
パントテン酸のサプリメント
パントテン酸のサプリメントとして、主に次の化合物が販売されています。
パントテノール/パンテノール
パントテン酸の安定したアルコール類似体で、体内で素早くパントテン酸に変換されます。
D-パントテノールを最大5%まで含む局所製剤は、最長で1ヶ月までは安全に使用できるとされています。
しかし、D-パントテノールを含む軟膏による、皮膚刺激、接触性皮膚炎、湿疹などが発症したとする報告がいくつか存在しています。
D-パントテン酸カルシウム/D-パントテン酸ナトリウム
D-パントテン酸カルシウムを1日10~20gという非常に高用量で摂取したケースで、下痢が報告されています。
パンテチン
パンテチンは日本では、コレステロール低下のための処方薬です。
また、スタチン(コレステロール低下薬)と併用すると、血中の脂質低下効果を高める可能性が指摘されています。
米国ではサプリメントとして市販されていて、1日最大1,200mgまで耐用性があるとされていますが、吐き気や胸焼けなどの胃腸系の副作用が報告されています。
日本では医薬品扱いですから、必ず、医師の指導の下で服用してください。
パントテン酸豊富な食品
動物性の食品では、内臓のお肉と魚卵・鶏卵に多く含まれています。また、鶏肉全般と鮭・マスなどに多く、魚の肝にも多く含まれています。
植物性食品だけでリストにしてみると、次のようになります。
ここに掲載しているもの以外にも、キノコ類全般、雑穀類、山菜類に多く含まれています。
また、冒頭でお伝えした通り、パントテン酸は、全ての生物に含まれているビタミンなので、量の多少はありますが、全ての自然食品に含まれています。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
パントテン酸は、自然発生的に欠乏することが希なせいか、他のビタミンと比較して話題にされることがあまりないビタミンですが、ビタミンB群のひとつです。
ビタミンB群は、ひとつひとつ個別に摂るのではなく、ビタミンB群として一緒に摂らなければ意味がないことは『意外と知られていないビタミンB群の正しい摂り方』で詳しく説明している通りです。
目立たないけれども生命維持に欠かせない重要な役割を担っているパントテン酸。きっと本当に必要だからこそ、欠乏することが滅多に無いように私達の体は創られたのだろうと思います。
自然発生的には欠乏することはありませんが、医薬品との相互作用によって欠乏してしまう可能性があることも今回お伝えしました。そうした医薬品を服用している人は、パントテン酸豊富な食品(サプリメントではなく)を意識して食事に取り入れておくことが大切です。
このことを知っているかいないかで、生活の質を大きく変えることができます。
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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参考文献:
- “Pantothenic acid“, Micronutrient Information Center, Linus Pauling Institute, Oregon State University
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング