
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
心と体をつなぐホリスティックな食事法について、
ニュースレター登録者限定のキャンペーン情報等も配信しています。
ご登録は、こちらから
もれなく統合食養学(ホリスティック栄養学)冊子が無料ダウンロードできます
目次
ピロリ菌除菌で増えている逆流性食道炎
2015年に『ピロリ菌は病原菌ではなく共生細菌(1)ピロリ菌を除菌すると食道がんの発症リスクが高まる』を執筆してから、もう7年が経ちましたが、とうとうピロリ菌除菌が胃酸過剰や逆流性食道炎などの発症の原因のひとつとして日本消化器病学会のホームページにも掲載されるようになりました。
ピロリ菌を除菌する人が増加するに伴い、胃酸の逆流や逆流性食道炎になる人も増えています。
制酸剤や胃酸遮断薬を日常的に飲まれているという人もいらっしゃるかもしれませんね。
ハーバード大学医学部のローレン・ラビノヴィッツ医師が胃酸遮断薬のひとつ、プロトンポンプ阻害剤(PPI)について記事を書かれていましたので、情報シェアの目的で和訳要約してお伝えします。
また、PPIを含む制酸剤によるさまざまな副作用について、現在までに明らかにされている事実についても併せてお伝えします。
プロトンポンプ阻害剤とは

プロトンポンプ阻害剤は胃酸遮断薬で制酸剤の一種です。処方薬と市販薬の両方があり、代表的なプロトンポンプ阻害剤には次のものがあります。
- オメプラゾール
- パントプラゾール(プロトニックス等)
消化性潰瘍疾患、食道炎、胃食道逆流症、ピロリ菌感染など、いくつかの胃腸障害の治療に用いられています。
低用量かつ短期間の使用が重要
米国消化器病学会の新しいガイドラインは、プロトンポンプ阻害剤を適切に使用しようするよう訴えています。具体的には、次のことがらを強調して推奨しています。
治療を必要とする症状にとって、
最も低用量かつ最も短い期間で使用すること
ラビノヴィッツ医師によれば、プロトンポンプ阻害剤は、必要以上の量を必要以上に長い期間使用されることが頻繁に行われてしまっているとのことです。
使用期間を短くできるケース
プロトンポンプ阻害剤の使用期間を通常期間よりも短くできるのは、例えば次の様なケースです。
- ピロリ菌感染の治療時に抗生物質と一緒に処方されたケース(通常1~2週間)
- 胃や小腸の潰瘍または食道の炎症に処方されたケース(通常4~12週間)
- 胃酸の逆流や腹痛(消化不良)に処方されたケース
- 医師が腹痛の原因を特定するための検査を行っている間の症状緩和に処方されたケース
症状が早く改善したり、治療が早く完了した場合には、用量を減らしたり、想定よりも早い段階で投薬を完全に中止することが可能です。
しかし、後述しますが、PPIにはリバウンドがあるので急に止めることはできません。
使用期間が長くなるケース

次の様な特定の疾患や症状がある場合には、長期にわたってプロトンポンプ阻害剤を使用しなくてはならないことがあります。
- 重度の食道炎
- 重度の胃酸逆流
- 好酸球性食道炎
- 食道狭窄
- バレット食道(逆流性食道炎が原因で起こる症状。胃酸の逆流によって食道の扁平上皮がただれて、胃の円柱上皮が食道に上がってきてしまった状態。食道がん予備軍)
- 特発性肺線維症
- プロトンポンプ阻害剤の中止によって消化不良または上気道症状が悪化したケース
また、胃と十二指腸の消化性潰瘍によって、上部消化管出血の病歴がある人は、再発防止のために長期的にプロトンポンプ阻害剤を使用しなりません。
プロトンポンプ阻害剤の副作用
ラビノヴィッツ医師によれば、プロトンポンプ阻害剤によって副作用が起こることは稀です。でも、どんな薬にも副作用が起こる可能性はあります。
既に明らかにされているプロトンポンプ阻害剤による副作用には次の様なものがあります。
1. 他の疾患リスク
プロトンポンプ阻害薬の長期使用によって、うつ症状や甲状腺機能低下が起こることが報告されています。
プロトンポンプ阻害剤が認知症リスクを高めるという懸念が以前ありましたが、新しい研究によって、この関連性は否定されています。
2. 感染症リスク
プロトンポンプ阻害薬の長期使用によって、特定の感染症、例えば、肺炎やC・ディフィシル菌感染(難治性大腸炎)などのリスクが増加します。
3. 多剤耐性菌の増殖
2020年にJAMAで報告された26 件の観察研究と 29,382 人の患者を含む系統的レビューとメタ分析は、プロトンポンプ阻害薬を含む制酸剤の使用によって、多剤耐性細菌の定着リスクが70%上昇すると報告しています。
具体的には、抗生物質を分解する次の物質を造る菌とバンコマイシン耐性腸球菌による腸管コロニー形成のリスク増加と関連していることが明らかにされています。
- 広域スペクトル β-ラクタマーゼ
- カルバペネマーゼ
- プラスミド媒介 AmpC β-ラクタマーゼ
制酸剤を常用すると感染症にかかりやすくなるだけでなく、治りにくくもなるということですね。
4. たんぱく質合成抑制
藤田医科大学臨床栄養学講座の研究は、制酸薬(プロトンポンプ阻害薬やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー)が、血液中のプレアルブミンの濃度を低下させ、たんぱく質合成を抑制する可能性を示しています。
5. ミネラル吸収の阻害
特に、鉄分、カルシウムの吸収が阻害されることが判明しています。
制酸剤は、高齢者による服用が多いため、タンパク質、鉄分・カルシウムが不足すれば、筋力も骨力も落ちて、フレイルになる可能性が高くなると考えられます。
他の医薬品への影響
プロトンポンプ阻害剤は、次の薬と薬物相互作用を引き起こすことがあります。
- クロピドグレル(抗血小板薬)
- ワルファリン(抗血液凝固剤)
- 抗てんかん薬
- HIV薬
- など
そのため、これらの薬を服用している場合には、投与量の調整が必要になります。必ず、担当の医師に伝えてください。
これらの薬に限らず、どんな薬であれ、服用している薬や量について変更があった場合には、あなたにかかわっている全ての医師に伝えることが重要です。
プロトンポンプ阻害剤は急に止められない
現在、既にプロトンポンプ阻害剤を服用している場合には、お薬を減らすにしても中止するにしても、必ず、医師と話し合い、その指示に従う必要があります。
プロトンポンプ阻害剤は、急に止めるとリバウンドが起こるからです。
1. 服用が比較的短期間の場合
急性症状には、一般的に、1日2回 のプロトンポンプ阻害剤が処方されます。
症状が改善するなどして服用する必要が無くなれば、大抵、1日1回に減らすことから始まり、その後、症状を観察しながら毎週半分ずつ、徐々に減らしていくことになります。
症状が改善したからといって、直ぐにお薬を止めて良いわけではないのです。
2. 服用が長期間の場合
長い期間、プロトンポンプ阻害剤を服用していた場合には、急に服用を止めるとリバウンドが起こることが研究によって報告されています。
リバウンドの症状として、胃酸の過剰分泌の再開と食道や胃の不快な症状が再開します。
リバウンドが起きた際には、プロトンポンプ阻害剤以外に、次のような制酸剤が処方されます。
- H2ブロッカー(ファモチジン、ガスター等)
- 炭酸カルシウムを含む制酸薬(沈降炭酸カルシウム等)
- など
それでもリバウンド症状が2か月以上続いた場合には、再度、プロトンポンプ阻害剤が処方されることになります。
その他の制酸剤について
市販されている制酸剤や医師から処方されるPPIを含め、ひとつひとつの製品の長短を『制酸剤/胃酸逆流改善薬それぞれの長所と短所』で簡単に説明しています。
併せて参考にしてくださいね。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

既にプロトンポンプ阻害剤を服用されている人は、自己判断で薬を減らしたり止めたりせずに、『逆流性食道炎/胃食道逆流症』でご紹介している食事とライフスタイルを取り入れることをお勧めします。
予備軍の人も、『逆流性食道炎/胃食道逆流症』に記載している食事やライフスタイルを取り入れることで、お薬を必要とするほど悪化させずに済むかもしれません。
状況がどうであれ、あなたは1日3食は食べるのです。その食事があなたの症状を予防したり緩和したりするものでなくてはなりません。また、お薬を減らしてもらえるかもしれません。
でももし、おひとりで取り組むことに不安や困難を感じるのでしたら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
プライベート・ヘルスコーチング・プログラムについて
お気軽にご相談ください。
初回相談を無料でお受けしています。
あるいは、ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースで学びませんか?セルフドクターコースでは、あなたが食を通してご自身の主治医(セルフドクター)になるために、必要な知識とスキルを教えています。
新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

心と体をつないで健康と幸せを手に入れる
ニュースレターのご登録は、こちらから
統合食養学(ホリスティック栄養学)冊子が無料ダウンロードできます
参考文献
- “Proton-pump inhibitors: Should I still be taking this medication?”, Nisa Desai, MD, Loren Rabinowitz, MD, September 6, 2022, Harvard University
- “AGA Clinical Practice Update on De-Prescribing of Proton Pump Inhibitors: Expert Review”, Laura E. Targownik, Deborah A. Fisher, Sameer D. Saini, CLINICAL PRACTICE UPDATE| VOLUME 162, ISSUE 4, P1334-1342, APRIL 01, 2022, February 16, 2022DOI:https://doi.org/10.1053/j.gastro.2021.12.247
- “Umbrella review of 42 systematic reviews with meta-analyses: the safety of proton pump inhibitors”, Elizabeth M. Salvo,Nicole C. Ferko,Sarah B. Cash,Ailish Gonzalez,Peter J. Kahrilas, 11 June 2021, https://doi.org/10.1111/apt.16407Citations
- “Evaluation of the Association Between Gastric Acid Suppression and Risk of Intestinal Colonization With Multidrug-Resistant Microorganisms: A Systematic Review and Meta-analysis.”, Willems RPJ, van Dijk K, Ket JCF, Vandenbroucke-Grauls CMJE., JAMA Intern Med. 2020 Apr 1;180(4):561-571. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.0009. PMID: 32091544; PMCID: PMC7042870.
- “Oral Antacid Use Is Negatively Associated with Serum Prealbumin Levels in Japanese Individuals Undergoing Health Checkups.”, Ushiroda, C.; Deguchi, K.; Yamamoto-Wada, R.; Tanaka, H.; Ono, C.; Yoshida, M.; Sarai, M.; Miyahara, R.; Sasaki, H.; Iizuka, K., Nutrients, 2024, 16, 3715. https://doi.org/10.3390/nu16213715
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング