バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
鉄分の食物摂取基準
1日あたりの数値です。
成人男性: 必要量6.5mg、推奨量7.5mg、限界量50mg
成人女性(生理外): 必要量5.5mg、推奨量6.5mg、限界量40mg
成人女性(生理中): 必要量9.0mg、推奨量11.0mg、限界量40mg
鉄の必要量のかなりの部分は、老化した赤血球から鉄を再利用することで賄われます。
鉄分の性質
鉄はかなり重いミネラルで、細胞内の単体での鉄分(遊離した鉄分)は、酸化ストレスや細胞損傷を引き起こすフリーラジカルの生成につながる可能性があるため、鉄は潜在的に有毒です。そのため、血液中ではトランスフェリンと呼ばれるタンパク質と結合することで無毒化され、体中に運ばれます。
鉄は生物学的機能を支える数百のタンパク質や酵素の必須成分です。
鉄はほとんど排出されない
鉄はほとんど体の外へ排出されません。そのため、過剰になって細胞兵器となり全身の細胞を傷つけてしまわない様に、鉄の代謝はきっちりとコントロールされています。
ヘプシジンという肝臓で造られるペプチド(短い鎖のアミノ酸)が体内で鉄が多くなり過ぎないように調整しています。例えば、体内の鉄分の貯蔵が十分ある状態では、血液中の鉄分が多くなると腸内での鉄分吸収を抑制し、マクロファージ(免疫細胞)から鉄分の遊離を抑制して、血液中の鉄分の増加を抑えます。また、細胞での鉄の分離を促進し、鉄が利用されるのを妨げます。
鉄分の排出
わずかですが、鉄の排出も次の経路で行われています。消化器官からもわずかな量を排出しています。
- 尿
- 便
- 皮膚(汗)
鉄は体内のどこにいるのか/鉄の機能
鉄は様々な鉄依存性タンパク質と結合した状態で体内に存在しています。鉄依存性タンパク質の機能にとって必要不可欠な栄養素です。
鉄依存性タンパク質は、ヘムタンパク質とかヘム酵素、鉄依存性酵素などと呼ばれ、次のような様々な機能を担っています。
酸素の輸送や貯蔵
ヘモグロビン、ミオグロビン、ニューログロビンなどが体内で酸素の供給と貯蔵に関与しています。その他、フリーラジカル(酸化有害物質)の消去剤としての作用を持っている可能性も指摘されています。
ヘモグロビン
体内の鉄分のほとんど(約3分の2、約3.5mg)がヘモグロビンの中にあると言われています。赤血球の主要なタンパク質です。
ヘモグロビンのすごい能力は、肺と接している短い時間に素早く酸素を吸収できること、臓器/細胞を巡っている間に必要に応じて酸素を素早く放出できることです。
ミオグロビン
酸素の輸送中と筋肉細胞で短時間貯蔵されている時に機能します。運動している筋肉の酸素需要に合わせて、酸素が供給されるように助けています。
ニューログロビン
中枢神経系に多く存在しています。神経髄鞘の形成、神経伝達物質の合成、神経細胞の正常なエネルギー代謝に関与していると考えられています。
鉄の輸送と貯蔵
フェリチン、トランスフェリン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ラクトフェリンなどの非ヘムタンパク質が担っています。
フェリチンは、細胞内で鉄を保存し、必要なときに放出する役割を担っています。フェリチン値の測定は血中の鉄分量を推定する最も安価で簡易な方法です。
ヘモジデリンとして貯蔵されている鉄分もあります。ヘモジデリンは、ヘモグロビン由来の黄褐色/褐色の色素です。赤血球やヘモグロビンやフェリチンが分解される過程で発生する副産物です。
ヘモジデリンは次の臓器に多く存在しています。
- 肝臓
- 脾臓
- 骨髄
- 筋肉組織
電子輸送とエネルギー生産と解毒
ヘム含有酵素(鉄依存酵素)のシトクロムは、細胞のエネルギー生産時、ミトコンドリアの電子輸送に重要な役割を果たしています。具体的には、元気の素のATPが合成される時に電子運搬体として働きます。
また、シトクロムは、有機酸、脂肪酸、プロスタグランジン、ステロイド、ステロール、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンK等の代謝に関わる酵素の一員です。薬物や汚染物質の代謝と解毒作用にも関わっています。
また間接的に、神経髄鞘の形成、神経伝達物質の合成、神経細胞の正常なエネルギー代謝にも関与していると考えられています。
なお、シトクロムだけでなく、非ヘムの鉄含有酵素も、エネルギー代謝に重要な酵素です。
抗酸化作用と有益な酸化促進作用
ヘム含有酵素のカタラーゼやペルオキシダーゼは、潜在的に有害な活性酸素種(ROS)の過酸化水素の蓄積から細胞を守っています。
一方で、ヘム含有酵素であるミエロペルオキシダーゼは、免疫反応として白血球(好中球)が細菌を殺すために作るROS(次亜塩素酸)の合成を助けています。
更に、甲状腺が甲状腺ホルモンを造るプロセスをヘム含有の甲状腺ペルオキシダーゼが触媒しています。そのため、鉄分不足によって甲状腺機能低下症を起こす可能性があります。
DNAの複製や修復
鉄依存性酵素のリボヌクレオチド還元酵素(RNR)は、DNAの複製に必要なデオキシリボ核酸の合成を触媒しています。DNAの修復もしています。
明確なメカニズムはまだ判っていないのですが、細胞内で鉄分が不足すると、細胞の周期進行、成長、分裂が阻害されることがわかっています。つまり、鉄は、成長、生殖、治癒、免疫機能など、私達の生命維持に関わる機能にとって重要な役割を果たしていることが分かります。
触媒的作用の補助因子
フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどのアミノ酸は、触媒として非ヘム酵素を必要とします。
鉄分不足による症状
鉄分が不足すると現れる代表的な症状は
- 虚弱体質
- 倦怠感
- 息切れ
- 青白い顔色
です。
鉄分は、上で紹介したように赤血球に保存されているので、鉄欠乏性の貧血は、正常な赤血球生成を支えるのに十分な量の鉄分が無い時に発生します。
鉄分が不足すると赤血球は病的に小さくなり色も薄くなります。そのため顔色が青白くなります。しかし、かなりの鉄欠乏状態にならないと顔色が変わることはありません。
赤血球が減少すると、赤血球は内臓や細胞に酸素を届けているので、体は酸素不足となり、その結果、あなたの体は虚弱となり、息切れを起こしやすくなり、疲れやすくなるのです。
また、
- スプーン爪
- めまい
- 不安症
- 手足の冷え
- 不整脈
などを起こす場合もあります。
甲状腺機能低下症
詳しくは『鉄分不足でも甲状腺機能低下症の症状が起こる|本当の原因を突き止める』をご確認ください。
子供の運動/認知/知的発達の損傷
鉄分は、中枢神経系の発達に不可欠なミネラルです。
鉄依存性酵素/鉄依存性タンパク質は、上述の通り、神経の髄鞘形成、神経伝達物質合成、および神経細胞の正常なエネルギー代謝に必要です。
多くの観察研究が、貧血の有無によらず、子供の鉄欠乏症は、次の結果と関係していると報告しています。
- 認知発達不良
- 学業成績不良
- 異常な行動パターン
鉛中毒
鉄欠乏症は、腸での鉛の吸収を増やします。
鉛中毒の詳しい症状などについては、以前、IN YOUに提供した記事『ひどい場合には死をももたらす有害な鉛を体内に入れない簡単な方法と、体から排出する方法とは。』をご参照ください。ただし、鉛中毒の原因が鉄欠乏でない場合には、鉄分の補給は効果がありません。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群(正式名:下肢静止不能症候群、RLS、ウィリス・エクボム病)は、原因不明の神経学的運動障害です。男性よりも女性に多く、加齢と共に増加し、慢性腎不全と関係性が認められています。
また、神経伝達物質ドーパミンの合成に鉄依存性酵素のチロシン水酸化酵素が関わっていることから、むずむず脚症候群の発症には、鉄欠乏が関係していると考えれています。そのため、症状を抑える目的で、鉄分やドーパミン作用薬などが処方されています。
鉄分不足になりやすい人
次の人達は、鉄分不足になりやすいので注意が必要です。
- 加齢|加齢に伴う消化器官の弱りや萎縮性胃炎などが原因です。
- 肥満|肥満の人では、ヘプシジンが増えていることが観察されています。通常の食事をしても鉄分吸収が阻害される可能性があります。
- 成長期の子供|成長に伴う鉄需要が増えるためです。
- 生理のある女性|経血と共に大量の鉄分が排出されるために不足が起こります。
- 頻繁な献血|頻繁に献血をする人、特に月経のある女性。献血500mLごとに200~250mgの鉄分が体内から失われます。
- 定期的な激しい持久系運動|激しい持久力訓練をするアスリートは鉄の喪失が大きいことが分かっています。血液細胞や筋肉が増えること、消化管からの微細な出血、赤血球の脆弱性や溶血現象などによって起こると考えられています。
妊婦
胎児や胎盤による鉄の利用が増加し、母体の血液量が増加するため、鉄分不足を起こしやすくなります。妊娠中に母体に十分な鉄の貯蔵がなかったり、重篤な貧血だった場合、次の可能性が高くなります。
- 胎児時期や出生時の赤ちゃんの低体重
- 早産
- 低体重の新生児の鉄欠乏
- 母体死亡率
そのため、世界保健機構 (WHO) は、出産可能年齢の女性の貧血を減らす目的で、鉄分と葉酸のサプリメントを摂取することを勧めています。(葉酸については『葉酸には2種類あるって知っていますか?』をご覧ください。)
また、子癇前症や妊娠糖尿病を含む妊娠合併症になると、新生児の鉄の貯蔵量が低くなる可能性があります。子癇前症の予防については『危険な妊娠合併症を予防できる簡単な方法』をご参照ください。
妊娠前の鉄分量も重要
妊娠前に何年も鉄分不足の状態が続いていた女性が妊娠すると、母体と胎児の両方の命に係わるリスクが上昇します。また流産のリスクも、鉄分と甲状腺ホルモンの不足によって劇的に高まります。
両方とも妊娠前に正常に戻すことで、母体と胎児の安全な妊娠にとって素晴らしい予防策となります。
生後6か月までの新生児/乳児
健康な満期産児の体内に既に蓄積されている、150~250mgの鉄分のほとんどが妊娠第三期に蓄積されます。この量は生後4~6か月の生活に十分な量です。
母乳には鉄分が少なく、生後6か月までは腸での鉄分の吸収が上手くできないので、6か月未満の乳児にとって、お母さんのお腹の中にいた時にお母さんからもらう鉄分の貯蔵が死活問題となります。
特に、出産前や直ぐ後で既に鉄欠乏状態である場合には、特に有害だと考えられています。鉄欠乏によって起きた幼児の脳機能への変化は、その後、鉄分補給の治療を行っても改善しにくいことが報告されています。
生後6か月~3歳までの乳児/幼児
正期産児の鉄分の貯蔵量は、生後数か月間に必要となる鉄分の量を十分に満たすと考えられていますが、6か月以降になると、適切な食事による栄養補給が行われないと、鉄分不足を起こす可能性が高まります。
成長する体からの需要、それに伴って増える血液量、そして、鉄分の再貯蔵のために必要な鉄分量は次第に多くなっていきます。
消化管に疾患がある人
次の様な、胃腸に健康上の問題がある場合、食物の消化と吸収が滞り、鉄分不足を起こしやすい状態にあると言えます。
シリアック病|食物成分であるグルテンによって引き起こされる腸の炎症を伴う疾患です。詳しくは『シリアック病/セリアック病をご存知ですか?』をご確認ください。
炎症性腸疾患(IBD)|腸の炎症によって鉄分吸収が上手くできないことと、潰瘍化した粘膜から出血していることによる鉄分喪失の両方によって欠乏症が起きます。(ご参考まで『炎症性腸疾患・大腸がんを予防・改善する腸内細菌と腸粘膜の栄養戦略』をご参照ください。)
萎縮性胃炎|胃の細胞を攻撃する抗体によって起こる病気です。萎縮性胃炎はビタミンB12と鉄分の両方の吸収を同時に阻害します。生理のある年齢の女性の場合、鉄欠乏症が起きると、数年後に体内のビタミンB12の貯蔵も枯渇する可能性があります。萎縮性胃炎とビタミンB12については『ビタミンB12の作用と多く含む食品』もご参照ください。
ピロリ菌感染|胃腸での出血がなかったとしても鉄欠乏性貧血を起こす人が多いです。一般的に細菌の鉄分欲求は高いため、ピロリ菌に鉄分を奪われている可能性があります。(ピロリ菌については『ピロリ菌は病原菌ではなく共生細菌』もご参照ください。)
炎症性疾患がある人
次の様な急性あるいは慢性の炎症性の疾患がある場合、血液を循環している鉄分濃度が異常に低くなり、慢性疾患性貧血と呼ばれる貧血を起こすことがあります。
- 炎症性疾患
- がん/重症疾患
- 外傷
- 細菌感染(細菌も鉄分需要が大きいです)
- 寄生虫感染
炎症に誘発されてヘプシジンが増え、鉄分の吸収が阻害されたり、体内に貯蔵している鉄の必要な臓器への輸送が阻害されることで起こると考えられています。
慢性腎疾患(CKD)
腎機能が正常な人に比べて、かなりの量を胃腸から失血しています。人工透析を受けている場合の推定失血量は更に多くなります。体内の鉄分の貯蔵が十分な場合でも、赤血球の生成のために必要な鉄分が不足する可能性があります。
極端な菜食の人
詳しくは後述しますが、植物性食品に含まれている鉄(非ヘム鉄)の体内吸収率は、動物性食品に含まれている鉄(ヘム鉄)よりも低いです。
米国医学研究所(IOM)の食品栄養委員会(FNB)は、鉄の生物学的利用性は菜食だと10%しかないと試算しています。
他の栄養素との関係
ビタミンA
鉄欠乏症は、ビタミンA欠乏症と一緒に現れることが多いです。ビタミンAが不足すると、鉄の代謝が変化し鉄欠乏性の貧血を悪化させる可能性があります。
鉄欠乏症は、鉄分を単独で摂取するよりもビタミンAと一緒に取り入れることで治療効果が高いことが報告されています。ビタミンAの詳しい機能については『ビタミンAは必要不可欠でも「過ぎたるは及ばざるがごとし」以上に危険|特に妊婦さんは要注意』をご参照ください。
銅
銅は、赤血球の形成のために骨髄へ鉄を輸送するために必要なミネラルです。そのため、銅が不足しても鉄欠乏の様な症状が現れます。銅の詳しい機能については『生命維持にとって不可欠な銅は多くても少なくても問題』をご参照ください。
亜鉛
亜鉛は赤血球の形成を適切に維持するために必要なミネラルです。鉄欠乏症と亜鉛欠乏症が同時に起こると、鉄欠乏性貧血が悪化する可能性があります。
一方で、鉄分をサプリメントで大量に摂取すると、亜鉛の吸収を阻害してしまう可能性があります。詳しくは『美肌や美髪・不妊予防に不可欠なミネラル亜鉛を豊富に含む食品と不足してしまう原因』をご確認ください。
カルシウム
カルシウムは、鉄分の吸収を妨げます。カルシウムの機能については『ミネラルの精神安定剤・筋肉痛予防にもなるカルシウムを多く含む食品』をご参照ください。
鉄分の吸収を阻害する医薬品
次の医薬品は鉄分の吸収を阻害するため、注意が必要です。
- H2ブロッカー|制酸剤
- プロトンポンプ阻害剤(PPI)|制酸剤
- その他の制酸剤
- アスピリン|鎮痛剤
- NSAIDS(インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェンなど)|鎮痛剤
- ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬(シメチジン、ラニチジンなど)|抗アレルギー剤
- コレスチラミン(クエストラン)、コレスチポール(コレスチド)|コレステロール低下薬
服用から4時間空けてから鉄分を摂取することをお勧めします。
鉄分には2種類ある
食品に含まれている鉄分には次の2種類があります。
- ヘム鉄
- 非ヘム鉄
この2つは、吸収のされ方も体への影響も大きく異なります。
ヘム鉄を多く含む食品
ヘム鉄は、ヘモグロビンから発生するもので動物性の食品に多く含まれています。
- 特にレバーなどの内臓肉
- 鶏肉
- 獣肉(牛肉、豚肉、羊肉など)
- 魚
- 海藻・貝類など
例えば、のりは1枚約3gなので、のり1枚には約2.3mgの鉄が含まれていることになります。あさり等の殻は重量に含まれていません。あさりの中身100gに鉄分が37mg含まれているということです。あさりは中サイズで1個10g程度で中身は約4gなので、あさり7個(約70g、中身約28g)で、推奨値の鉄分約10mgとなります。
ヘム鉄は素早く吸収されて、吸収率は一緒に飲食する食品の栄養素から影響をあまり受けません。
干ひじきに含まれる鉄分の含有量
2015年12月25日に、文部科学省が干ひじきに含まれる鉄分の含有量は、その製法によって大きく異なることを発表しました。従来通りの鉄鍋で製造された場合は、今まで通りの鉄分含有量(上の表参照)であるものの、アルミ鍋・ステンレス鍋で製造された場合には、鉄鍋と比べ10分の1の鉄分含有量になってしまうとのことです。
だとしても、まだ他の海藻類と同じくらいになるだけで、ホウレン草の2倍の鉄分ですから、やっぱり干ひじきは、優秀な鉄分源と言ってよいと思います。
非ヘム鉄(無機鉄)を多く含む食品
非ヘム鉄は、植物性の食品に多く含まれています。例えば、上の画像のハーブ類以外では次の野菜と果物にも多く含まれています。
ほうれん草だけで一日に必要な鉄分を食べるためには、500g必要だということが判ります。
葉物野菜だけでなく、他の食品を取り混ぜることが大切ですが、茹でたり、炒めたり、蒸したり、スムージーにするなどして、カサを小さくして食べやすくする工夫も大切ですね。
その他にも
- 豆類
- ナッツ類
- 茶葉
などに含まれています。また、ビールや鉄鍋に含まれているのも非ヘム鉄です。
非ヘム鉄の吸収は、一緒に飲食する食品に含まれている成分によって大きく影響を受けます。
非ヘム鉄の吸収を助ける食品
フルーツ(柑橘類など)
フルーツに多く含まれているビタミンCは、食品に含まれている非ヘム鉄を還元して、体内に吸収しやすい形にしてくれるため、非ヘム鉄の吸収が促進されます。
ビタミンC豊富な食品については『ビタミンCは多く摂れば摂るほど美容と免疫力がアップする、の嘘と本当』をご参照ください。
余談ですが、血液検査の前にオレンジジュースを飲んでおくと鉄分量が上昇します。
お酢
お酢に含まれているクエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸には、非ヘム鉄の吸収を強化する効果があります。
肉/魚
鶏肉、獣肉、魚などにはヘム鉄が豊富に含まれていますが、非ヘム鉄の吸収も促すことが分かっています。ただ、理由はまだ判っていません。一緒に食べると良いですね。
非ヘム鉄の吸収を妨げる食品
コーヒー/紅茶/ハーブティー
これらの飲料に含まれているポリフェノールが非ヘム鉄の吸収を阻害します。ただ、ビタミンC豊富な食品と一緒に食べることで、この作用を弱められる可能性があります。
大豆
大豆タンパク質には、非ヘム鉄分の吸収を抑制する作用があります。
カルシウムのサプリメント
カルシウムのサプリメントは、非ヘム鉄だけでなくヘム鉄の吸収も阻害することが報告されています。カルシウムのサプリメントを飲んだ後は、2時間空けてから食事をすると良いです。
非ヘム鉄の吸収と無関係な食品
豆類/全粒穀物/ナッツ/シーズ
これらの食品に含まれているフィチン酸に、非ヘム鉄と結合する性質があることから、体内の鉄分が奪われる、あるいは、鉄分の吸収が妨げられるという情報がネット上で流れている様です。
しかし、食品に含まれているフィチン酸は既に鉄分と結合した状態で存在していますので、体内の他の鉄分を奪うことはありません。また、フィチン酸含有量と鉄分吸収率との関係にも確証はありません。
サプリメント
鉄欠乏症のリスクのない人は、医師からの指導のないまま自己判断で鉄のサプリメントを飲んではいけません。
市販されている鉄分のサプリメントの成分は次の通りです。
- 硫酸第一鉄七水和物|鉄元素を20%含む
- 硫酸第一鉄一水塩|鉄元素を33%含む
- グルコン酸第一鉄|鉄元素を12%含む
- フマル酸第一鉄|鉄元素を33%含む
鉄分はサプリメントではなく、食事から摂ることが副作用を避け、吸収率もよく、安心です。
硫酸第一鉄
1-2か月間のみ緊急避難的に摂取すること以外ではお勧めしません。
ドラッグストアで購入でき、簡単に摂取できるので魅力的ですが、胃への負担が大きく、長期間飲み続けると、ガス、吐き気、胃痛を起こします。
飲むときは食事と一緒に飲むようにしてください。
ベタイン塩酸塩のサプリメント
ベタイン塩酸塩は、古くから胃液の酸度を調節する医薬品として用いられている成分です。そのサプリメントになったものを購入することができます。
ベタイン塩酸塩は、より多くの鉄分を食品から抽出してくれるので、食品と一緒に摂ることで吸収できる鉄分が増えます。しかし、酸ですから、胸やけを起こすことがあります。
デキストランの筋肉注射
これは、副作用が伴うため最後の砦のような方法ですし、もちろん医療機関でしか受けられません。
副作用には、気絶、ほてり、身体のしびれ、唇が青くなる、ピンク色の尿、呼吸が浅くなる、呼吸困難、痙攣などが挙げられています。
過剰摂取による副作用
非ヘム鉄の過剰摂取による副作用
非ヘム鉄のサプリメントは、少量でも次の様な胃の不快な症状を起こすことがあります。
- 胃腸への刺激
- 吐き気/嘔吐
- 下痢/便秘
また、便の色が濃くなります。
更に1日100mg以上の非ヘム鉄を長期的に摂り続けると、次の疾患を発症することが判っています。
- 慢性的な鉄沈着症
- バンツー鉄沈着症
ビールを大量に常習的に飲んだり、鉄鍋で日常的に料理をする場合にも便秘などの胃腸の不調の発生が有意に高かったと報告されています。
ヘム鉄で副作用は起こりにくい
ヘム鉄のサプリメントでは、2か月間服用しても胃の不快感などの副作用が起こらず、血液生化学検査値にも変化が起きないことが報告されています。
鉄分のサプリメントを一緒に飲んではいけない医薬品
鉄分のサプリメントは、次の医薬品と一緒に飲んではいけません。これらの薬の作用を阻害することが報告されています。
- カルビドパ、ラボドパ(シネメット)|パーキンソン病治療薬
- レボチロキシン(シンスロイド、レボキシル)|甲状腺ホルモン剤
- メチルドパ(アルドメット)|降圧剤
- ペニシラミン(カプリミン、デペン)|抗リューマチ剤
- ビスフォスフォネート|骨粗鬆症治療薬
- キノロン|抗生物質
- ドキシサイクリン|抗生物質
- テトラサイクリン|抗生物質
- ミノサイクリン|抗生物質
鉄分のサプリメントを飲む場合には、これらの医薬品を服用する2時間前あるいは4時間後に飲むようにすると安心です。
また、痛風治療薬のアロプリノール(ザイロプリム)は肝臓での鉄の貯蔵を増やすので、鉄分のサプリメントと併用してはいけません。
これらに留まりませんので、医薬品を服用している人は、鉄分のサプリメントを飲む前に、必ず医師・薬剤師に相談してくださいね。
鉄分のサプリメントを飲んでも貧血が改善しない場合
ちゃんと血液検査をしてください。
鉄分欠乏の症状が明確に現れているのだから、わざわざ検査をしなくても、鉄分のサプリメントを飲めば済むように思われる人もいるかもしれません。
- 何かの感染症ではないか
- 服用中の処方薬の影響ではないか
- 今回この記事内で紹介すること以外の理由の可能性はないか
考えてみてください。
>>『鉄分だけ摂ってもダメ!?低血圧の症状が起きた時の対処法と貧血を改善する食事』
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参考文献:
- “Iron“, Micronutrient Information Center, Linus Pauling Institute, Oregon State University
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング