バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
アーユルヴェーダのハーブ製剤
今回は、科学的な検証が進んでいる、アーユルヴェーダ(インド伝統医療)で用いられてきた生薬トリファラについて、米国で1884年に設立され、現在、世界で最も権威のある、がんの専門病院であり研究所のメモリアル・スローン・ケタリング・がんセンターのホームページに掲載されている情報を基に、補足を加えながら和訳してお伝えします。
トリファラの 「トリ」は、数字の「3」を意味します。そして、「ファラ」は「果物」を意味します。つまり、トリファラは、3つの果物という意味があり、実際、3つの果物を組み合わせた生薬です。
トリファラの3つのフルーツ
トリファラに用いられる薬用植物は、次の3つです。果実を乾燥させた粉末を同量に混合して作られています。
- ターミナリア・チェブラ(Haritaki|ハリタキ/ブラックミロバラン)
- ターミナリア・ベレリカ(Bibhitaki|ビビタキ/ベレリックミロバラン)
- エンブリカ・オフィシナリス(Amalaki|アマラキ/アムラ/インディアングースベリー)
アーユルヴェーダでのそれぞれの活用
ハリタキ
ヒンズー教の医療と薬の神様ダンヴァンタリが、その手に持っているのが、ハリタキだと言われています。ダンヴァンタリは、日本に伝来して薬師如来となりました。
でも、薬師如来の手には、もはやハリタキはありませんね。伝来の途中でどこかに落としてきてしまったのでしょうか(笑)
ハリタキは仏教経典の中にも記載があります。日本語での生薬名は、「訶子(かし)」または「訶梨勒(かりろく)」です。
ハリタキには、消化を促進させる効果があると考えられています。その消化促進効果の中には、次の作用が含まれています。
- 唾液の分泌調整
- 腸の蠕動運動の刺激
- 便通改善
その結果として、次の不調の改善効果があると言われています。
- 食欲不振
- 下痢/便秘
- 肌荒れ/皮膚疾患
- 貧血
- 頭痛
- 腹痛
など
ビビタキ
ビビタキは、サンスクリット語で「病から距離を置くもの」という意味があるそうです。ビビタキの効果には、収斂作用とデトックス作用があると言われています。
収斂作用には次の効果が含まれます。
- 鎮痛
- 止血
- 抗酸化作用/アンチエイジング
デトックス作用には、消化管や呼吸器などの粘膜内に溜まった有害物質まで排出できるほどの強力な力があると考えられていて、その結果、粘膜の炎症による次のような疾患の改善に効果があると言われています。
- 喘息
- 気管支炎
- 目の炎症
- 膀胱炎
アマラキ/アムラ
アーユルヴェーダでは、アムラの根から葉まで全てが薬として用いられます。
アーユルヴェーダには六味 – 甘味、辛味、酸味、渋味、苦味、塩味 – がありますが、その中で、アムラには、塩味以外の5つの味が含まれていると言われています。そのため、3つのドーシャ(体質、要素)の全てに適応する希少なフルーツだと考えられています。ただ、フルーツそのものは苦味が強いため蜂蜜などと一緒に食されるのが一般的です。
アムラにはビタミンCと抗酸化物質が豊富に含まれていると言われています。そのことから、アーユルヴェーダでは若返りのハーブとして用いられています。
また、ビタミンCと抗酸化物質の作用によって次の効果があることが確認されています。
- お肌のしわ/たるみの改善(コラーゲン合成)
- 便秘解消
- 血液サラサラ効果(血液の浄化)
血液が浄化されることによって、更に次の効果があるとされています。
- 血行改善/冷え改善
- 心疾患予防
- 免疫力向上
- 喘息/咳の緩和
- 育毛
- 体力増進
- 認知症予防
などです。
インドの日常におけるトリファラの活用
インドでは、食欲を回復させ、消化を高めるハーブとして、日常的によく利用されているようです。
下痢や便秘を改善することで体内の老廃物を排出し、血液と内臓を浄化する働きがあると考えられています。
アーユルヴェーダにおけるトリファラの活用
アーユルヴェーダでは、3つのドーシャ(体質、要素など)の全てに効果のある薬として用いられています。
特に、次の疾患の治療と免疫力向上に用いられます。
- 虫歯
- 貧血
- 黄疸
- 便秘
- 消化器官の洗浄
- 喘息
- 発熱
- 慢性潰瘍
- 炎症
- 肥満
- 糖尿病
- 眼疾患
治療効果を高めるために、ゴムの木の樹脂であるグッグルを混合して使用することもあります。
科学によるトリファラの効果
トリファラには免疫力を活性化させる免疫賦活(めんえきふかつ)効果があると考えられています。そのため、次の疾患の予防改善に効果が期待されています。
- 免疫機能に関する疾患
- 消化管(胃腸)の疾患
- 内臓炎症
- 歯肉炎
- 高コレステロール
- がん
しかし、トリファラの免疫力向上効果については、限定的なデータしかなく、また、上記した効果の実証についても、現在、動物を用いた前臨床が行われているものがほとんどです。ヒトを対象とした効果の実証は進んでいません。そのため、効果の裏付けのためには、大規模な研究が必要です。
トリファラに含まれているポリフェノールとフラボノイドが、その効果の多くに関与していると考えられています。
その主要なポリフェノールは、没食子酸(もっしょくしさん)、ケブリン酸、ケブラギン酸です。いずれも抗酸化作用と免疫調節作用をもっています。
動物実験で確認された予防効果
また、次の疾患の保護作用(予防効果)の可能性が動物試験によって示されています。
- 腸の損傷
- 大腸炎
- 腎毒性
前臨床試験(ヒトを対象としない試験管や動物実験研究)によって、トリファラの抗酸化活性/抗酸化特性によって、次の効果が生じていると考えられています。
- 大腸炎の予防・改善効果
- 有害物質からの腎臓の保護効果
動物を用いた研究では、消化管の保護効果や、内臓炎症を軽減する効果が示唆されています。
動物実験で確認された治療効果
トリファラを使用した前臨床研究(試験管試験と動物試験)では、次の作用があることが報告されています。
- 抗関節炎作用
- 抗炎症作用
- 抗がん作用
- 抗菌作用
- 抗肥満作用
- 脂質低下作用
抗ストレス作用
ヒトの抗体を産生できるようにしたマウスを用いた研究では、騒音ストレスにさらされたマウスの免疫機能をトリファラが刺激し、コルチコステロン(ストレスホルモンの一種)を低下させたことが報告されています。
ただし、コルチコステロンは、脳の海馬の構造に影響をもっているものの、コルチゾールとの比較では重要性はかなり低い副腎皮質ホルモンです。
抗関節炎効果と抗炎症効果
前臨床試験(ヒトを対象としない実験研究)で、トリファラのひとつハリタキが、ヒアルロン酸を加水分解する酵素(ヒアルロニダーゼ)とコラーゲンを分解する酵素(コラゲナーゼ)を阻害して、軟骨の分解を阻止したことが報告されています。
トリファラの抗関節炎効果や抗炎症作用は、次の炎症性経路と酵素を阻害できるからだと考えられています。
- 自然免疫反応のひとつのNF-κBシグナル経路の中でも炎症性反応に深く関与しているp65を介したNF-kBp65経路
- 炎症時に発生するCOX-2酵素
NSAIDs系の鎮痛剤(イブプロフェンなど)は、COX-2酵素を阻害することで作用します。そのため、トリファラは、NSAIDs剤の代替となる可能性があると考えられています。(イブプロフェンについては『イブプロフェン』をご参照ください。)
放射線防護効果
全身ガンマ線照射に対するトリファラの防御効果を、照射を受けた動物の死亡率および細胞レベルでのDNA損傷の観点から調査した研究では、7.5Gyのガンマ線照射の7日前から照射後7日間まで、マウスの体重1kgあたり1gのトリファラを毎日経口摂取させると、放射線誘発死亡率が60%減少したことが報告されています。
これは、放射線による細胞の酸化損傷が抑制されたことによる、トリファラの抗酸化作用に放射線防護効果があることを示したものです。また、X線によるDNA鎖の切断から細胞を保護することも観察されています。
すい臓がん
試験管試験と動物試験の両方において、トリファラがヒトすい臓がん細胞の増殖を阻害しアポトーシスを誘導することが確認されています。
トリファラのがん細胞の増殖阻害効果は、遺伝子の発現をコントロールするERK経路と、免疫反応経路のp53経路の活性化によることがデータによって示されていることから、ヒト膵臓がんの治療と予防に役立つ可能性があると考えられています。
胃がん
マウスを用いた研究で、ストレス誘発性の胃潰瘍に対するトリファラの胃保護効果が検証されています。
その結果、トリファラには、著しい抗腫瘍増殖作用と抗転移作用があり、胃がんの治療にとっても有望な抗がん剤となると考えられています。
乳がんと前立腺がん
乳がん細胞を用いた研究では、トリファラががん細胞にアポトーシスを引き起こすROS(活性酸素種)を増加させたこと、また、ブレオマイシン(抗がん剤)から通常細胞を保護したことが観察されています。トリファラは、さまざまな乳がん細胞株において抗がん活性を示しました。
また、トリファラの水性抽出物が、乳がん細胞と前立腺がん細胞の増殖を減少させました。
大腸がん
トリファラのケブリン酸が、次の作用を介して、ヒト大腸がん幹細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することが観察されています。
- がん遺伝子のひとつで、がん患者で恒常的に発見されている c-Myc遺伝子の抑制
- がんの成長と関係しているサイクリンD1タンパク質の抑制
- Bax/Bcl-2比率(アポトーシスを促進するタンパク質/アポトーシスを抑制するタンパク質比率)の上昇
研究者は、ケブリン酸は、トリファラの抗がん作用の重要な成分であるだけでなく、治療の可能性を秘めた天然の多標的抗がん剤でもあると述べています。
臨床試験(ヒトを対象とした研究)で確認された効果
トリファラのヒトへの効果を検証した研究は限られています。
次の効果を調べた研究の予備データでは、効果が示唆されています。
- 免疫刺激効果
- 口腔前がん病変の回復
- HDLコレステロールと血糖値の改善
しかし、トリファラとグッグルを併用した二重盲検試験では、血清コレステロール値、BMI、胴囲に効果は見られませんでした。
また、高コレステロールの改善に関するヒトを対象とした臨床研究では、結果に一貫性がありませんでした。
歯周病を悪化させる?
トリファラには、抗菌特性があるのにもかかわらず、グルコシルトランスフェラーゼ(糖を作る酵素)を活性化して口腔細菌バイオフィルムの形成を促進する可能性が示されています。
いくつかのヒトを対象とした臨床研究が、トリファラを用いたマウスウォッシュには、抗菌効果とマウスウォッシュの殺菌成分クロルヘキシジンに匹敵する抗歯垢効果があることを示唆している一方で、トリファラが口腔細菌バイオフィルムの形成を促進する可能性があることが示されています。
抗がん作用
健康なボランティアを対象とした小規模な研究で、トリファラが細胞傷害性T細胞とNK細胞を増加させたことが観察されています。
トリファラによる副作用
稀に胃腸に不調が起こります。
胃腸に良い成分を含み、胃腸の不調のために処方されるハーブなのに、胃腸に不調を起こすことがあるだなんて、なんて皮肉なことでしょう・・。
やはり、どんなに良いものも、体の声を聴きながら使用しなければいけませんね。
CYP(シトクロムP450)基質薬
CYP(シトクロムP450)基質薬を服用している場合にはトリファラを使用しないでください。医薬品による副作用が起こるリスクを高めてしまう可能性があります。
CYP(シトクロムP450)が含まれている薬は、高血圧、糖尿病、心臓病、うつ病、てんかん、喘息、アレルギー、痛み、炎症、感染症、がん、HIVなど、多くの病気に処方されています。
何等かの医薬品を服用している人は、トリファラを試す前に医師・薬剤師に必ず相談してください。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
まずは食事とライフスタイルを見直す
便秘や下痢を繰り返している、胃がいつも痛い、頭痛を繰り返す・・・もしそんな状態が続いているのなら、まずは、基本的な食事と生活習慣を見直すことから始めましょう。
今回ご紹介したトリファラは、天然のフルーツをベースにしているとは言え、基本的な食事やライフスタイルを改善することなく、臭いものに蓋をするように使用することをお勧めすることはできません。
もちろん、便秘薬や胃薬や頭痛薬を慢性的に服用することに比べたら、トリファラの方がずっと体に優しいと言えます。でも、食事とライフスタイルを見直すことの代わりにはなりません。
ただ、SIBOやIBSを持っている人は、試してみる価値があるかもしれません。
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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新学期は、3月と9月スタートです。
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参考文献:
- “Triphala”, Memorial Sloan Kettering Cancer Center
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング