【セレン】がん予防効果があるセレンは摂り過ぎると糖尿病になる|セレンの機能と豊富に含む食品

2016/04/08/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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セレンの食事摂取基準(2020)

成人一日の摂取基準です。

  • 女性|必要量:20μg、推奨量:25μg、上限量:300μg
  • 男性|必要量:25μg、推奨量:30μg、上限量:450μg

自然食品に含まれているセレンの多くは、セレノメチオニン、セレノシステインなどで、約90%は腸で吸収されます。とても吸収率の高いミネラルです。

なお、妊婦さんの必要量は25μg、推奨量は30μgです。授乳婦さんになると更に増えて、必要量は35μg、推奨量は45μgです。

セレノたんぱく質の働き

ヒトを含む動物にとって、セレニウム(セレン)は、多くの体内酵素の正常な働きにとって不可欠なミネラルです。セレンに依存している体内酵素は、セレノたんぱく質と呼ばれ、約25種類あると考えられています。しかし詳しい代謝機能が確認されているのは、その半分程度です。

ちなみに、植物はセレンを必要としないと考えられています。

抗酸化作用

セレンは、過酸化物質を分解・還元する酵素グルタチオンペルオキシターゼの必須成分です。約5種類のグルタチオンペルオキシターゼがセレンを含有していることが現在までに確認されています。

これらの酵素は、細胞のサビつきを防止する作用があります。

ビタミンEやビタミンCと協調して老化防止やがんを抑制し、免疫機能を高めることに注目が集まっています。

ビタミンEの働きを助ける

グルタチオンペルオキシターゼとしてのセレンは、ビタミンEの抗酸化力を2倍以上にすると考えられています。

ビタミンEの詳しい機能については『ビタミンE』をご確認ください。

ビタミンCの再生

セレノたんぱく質のひとつのチオレドキシン還元酵素は、チオレドキシンと協働してビタミンCを含む数種の抗酸化物質の再生に関与していると考えられています。

ビタミンCの抗酸化作用の維持に寄与し、細胞の生育と生存力にとって重要な働きです。

ビタミンCの詳しい機能については『ビタミンC』をご確認ください。

甲状腺ホルモンの生理活性

甲状腺ホルモン脱ヨウ素酵素は、セレノたんぱく質です。3種のセレン依存性の脱ヨウ素酵素は、甲状腺ホルモンを活性型と不活性型の両方にすることができるため、甲状腺ホルモンの生理活性をコントロールする役割を担っています。

細胞の正常な再生・成長・代謝

甲状腺ホルモンは、正常な成長や発育と代謝、細胞の再生に欠かせないホルモンです。新陳代謝を促す働きによって、老化を予防してくれます。

つまり、セレンが不足すると老化現象が起こります。

情緒の安定

甲状腺ホルモンは、ドーパミンの働きと関係し、心の状態にとっても重要な働きをしています。

そのため、セレンが不足すると、情緒不安になったり、うつの様な症状が現れてきます。

なお、甲状腺機能とセレンとの詳しい関係については『甲状腺機能低下症の予防と改善(3)- 食事(つづき)』をご確認ください。

血管内皮細胞の保護

セレノたんぱく質Pは、血漿の中に存在していて、その主な役割は、セレンを輸送することと考えられています。

また、活性窒素種(RNS)などから血管内皮細胞(血管内壁の細胞)を保護する抗酸化剤としても働くことが判っています。

その他のセレノたんぱく質

  • セレノタンパクW|筋肉中に存在しているが、その機能は今のところ不明。筋肉の代謝に関係していると考えられている
  • 15κDAセレノタンパク(Sep 15)|酸化還元機能を持ち,がん予防と関連
  • セレノタンパクV|精巣内にだけ存在し、精子形成に働くと考えられている
  • セレノタンパクS|炎症反応や免疫応答にも関

セレンによる病気予防

免疫機能増強/抗炎症作用

セレンが免疫機能を増強することを多くの研究が報告しています。

セレンは、免疫反応を組織化するサイトカイン(炎症性物質)と呼ばれる細胞のシグナル伝達物質の発現をコントロールする役割を担っていることが示されています。

抗ウイルス作用

セレンが、いくつかのウィルス遺伝子の突然変異や発現の変化を抑制している可能性があることが報告されています。

逆に、セレン欠乏による酸化ストレスが、ウイルス感染症の毒性や進行を増強すると考えられれています。

抗がん作用

自然発生、ウィルス性、化学物質のいずれかによって誘発される20種類のがんについて報告された100以上の動物研究のうち、3分の2以上からセレン補給が腫瘍の発生頻度を有意に低減することが観察されています。

ヒトを対象とした疫学調査では、食事からセレンの摂取量が低いグループは、がんによる死亡率が高いことが観察されています。また、セレンの血中濃度が低い人では、数種のがんの発生率が高い傾向が観察されています。ただし、女性ではこの傾向は低いことも報告されています。

最近の研究によって、セレンによる肺がんと前立腺がんの保護作用が認められています。

また、セレンに抗がん作用/がん予防効果がある仕組みについて次のような仮説があります。

  1. 抗酸化性セレノ酵素の活性が抗酸化状態を改善
  2. 免疫系機能の改善
  3. 発がん物質の代謝を促進
  4. がん細胞の成長を阻害
  5. アポトーシスに影響
  6. DNA修復に影響
  7. 血管新生抑制剤として機能する

成人で1日40~100 μgのセレンの摂取で、抗酸化性セレノ酵素の活性が最大化し、免疫系機能を亢進して発がん物質の代謝に影響を与えると考えられています。また、成人で1日200~300 μgの摂取で、がん予防効果が現れるとの報告もあります。

心疾患予防

理論的には、セレン酵素の活性を最適化することによって、脂質過酸化を抑制して、プロスタグランジンのような細胞シグナル伝達物質の代謝に影響を及ぼし、心臓血管系の疾病リスクを低下できると考えられます。

でも,ヒトを対象とした前向き追跡研究で、セレンの心臓血管系の保護作用を強く裏付ける報告はありません

また、セレンと高血圧症に関する疫学的観察研究をまとめた論文は、セレンと高血圧との間に関連はないと結論づけています。

セレン不足/欠乏

食事をバランスよく食べている場合に、不足することはありません。

欠乏症の症状

一般的なセレン欠乏の症状は次の通りです。

  • 筋力低下/筋消耗
  • 心筋症(心筋の炎症と損傷)/うっ血性心不全
  • ヨウ素欠乏による影響の悪化

また、セレンが不足すると、生理的なストレス耐性が低下することが報告されています。

欠乏症と関連性のある疾患

セレン欠乏と関連性が確認されている疾患は次の通りです。

  • 克山病/ケシャン病|コクサッキーウィルス感染で起こる。セレン不足によって誘発されると考えられている心臓肥大
  • カシンベック病|関節間の軟骨が退化する病気(骨関節炎)、セレン欠乏と関係していることが確認されているが、セレンの補給が予防になるという確証はまだない。

セレン不足を起こしやすい人

次の様な偏食や疾患をもっている人で、セレンが不足しやすいことが分かっています。

  • 魚や豆類をあまり食べない人
  • フェニルケトン尿症|治療食にセレンが少ないため

セレンを多く含む食品

セレンはタンパク質(アミノ酸)の成分として存在しています。ヒトの体内には、セレンを含むタンパク質が25 種類存在することが明らかにされています。

セレンの多い食品は、セレンを含むアミノ酸が多いタンパク質豊富な食品です。

上の画像でもわかるように、主に、魚類と魚卵です。

ビタミンCの多い果物や野菜や、ビタミンEの多いナッツ類といっしょに食べると効果は2倍以上になります。

ナッツとシーズの詳しい機能については、次のリンクをご参照ください。

セレンのサプリメント

食品中に存在するセレンは、約90%吸収されると冒頭に記載しました。

しかし、サプリメントに用いられる化合物は、生体活性していませんので、次の様な特徴があります。

セレン酸ナトリウム

  • ほぼ完全に吸収される
  • しかし、タンパク質へ取り込まれる(酵素と結合する)前にかなりの量が尿中に排泄されてしまう

亜セレン酸ナトリウム

  • 体内吸収率は約50%
  • しかし、いったん吸収されると酵素と結合しやすい

セレン酵母

セレノメチオニンをセレン酵母の形態で販売しているものです。

ただし、上記2つの化合物のどちらかに酵母を添加しているものだけのものが存在しているので、確認が必要です。

セレンの過剰摂取

通常の食事でセレンを過剰摂取することは考えにくいです。

しかし、サプリメントで摂る場合には、過剰摂取することが可能なので、注意が必要です。

中毒症状

セレンは、比較的に毒性が強いミネラルです。過剰に摂取すると次のような中毒症状が起こります。

  • 脱毛
  • 爪の変形/消失
  • しびれ
  • 頭痛
  • 吐き気、嘔吐
  • いらいら/神経系異常
  • 下痢
  • 食欲不振/胃腸障害
  • 口臭
  • 免疫抑制
  • 倦怠感
  • 善玉コレステロールの減少

糖尿病

血液中のセレン濃度が非常に高いグループで、2型糖尿病発症率が有意に増加することが観察されています。血液中のセレン濃度の上昇と糖尿病発症リスクの上昇に関連性があることが明らかにされています。

また、セレン摂取量が少ないほど/血液中のセレン濃度が低いほど、糖尿病発症リスクが直線的に減少することが示されています。

「栄養によるがん予防研究(Nutritional Prevention of Cancer)」で実施された、1,202人の男女が参加した無作為二重盲検プラセボ対照試験では,1日に200 μg(平均7.7年間)のセレンの補給が,2型糖尿病の罹患率の増加と関連することが確認されています。

厚生労働省は、糖尿病発症リスクを高める可能性があるので、

「サプリメントを摂取してセレン摂取量を
意図的に高めることは控えるべきである」

としています。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

セレンががん予防効果を示す量と糖尿病発症リスクを高める量がほぼ同じというのは、悩ましいところですね。でも、限界量に近い極端な量の摂取は、病気になってから考えれば良いことです。

現在の健康状態の維持にとっては、普通に偏食なくバランスの良い食事をして、セレンを不足させないことで十分で、大切なことだと考えます。

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献:

  • Selenium“, Linus Pauling Institute | Oregon State University
  • 「日本人の食品摂取基準2020」、厚生労働省

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング