【ビタミンC】ビタミンCは摂れば摂るほど美容と免疫力がアップするの嘘と本当

2020/07/30/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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ビタミンCの食物摂取基準

成人: 推奨値は、1日 100mg以上

ビタミンCは、水溶性のビタミンです。

植物やほとんどの動物と異なり、ヒトはビタミンCを合成する能力を失っているため、食事などから摂取しなくてはならない栄養素です。

喫煙者は1日135mg

喫煙者は、非喫煙者よりも1日に35mg多く摂ることを米国FDAは推奨しています。喫煙者はタバコの煙に含まれる毒素によって酸化ストレスが増加し、一般的に血液中のビタミンC濃度が低いからだとしています。ちなみに、日本の厚生労働省によるビタミンCの食品摂取基準では、喫煙者向けの基準は特に設けられていません。

限界容量の基準がない

推奨量は設定されているのに、限界値が設けられていないことに気がつきましたか?

厚生労働省は、ビタミンCの限界容量を定めていないのです。(理由は「濃度は一定」の項をご参照ください。)

ただし、それは、通常の食品から摂取することを原則にした場合で、食品以外の例えばサプリメントなどから摂取する場合には、1日に1g(1,000mg)以上の量を摂取することは推奨できないとしています。(理由は、「過剰摂取」の項をご参照ください。)

ビタミンCの血液中の濃度は一定

ヒトの血液中のビタミンCの濃度は約0.1ミリモルで、次の3つのメカニズムによって厳密に一定に保たれています。

  • 腸での吸収
  • 体組織間の移動
  • 腎臓での再吸収

ビタミンCの体内吸収率はとても高く、口から摂り入れたビタミンCは、1日に最大200mgまでくらいなら90%~100%吸収されます。しかし、500mgを超えると収率が低下し始め、1,000mg以上になると吸収率は50% 以下に低下します。

血液中のビタミンCの濃度が飽和状態(0.1ミリモル)になると、追加のビタミンCは吸収されなくなり、尿へ排出されます。

ビタミンCを口から大量に摂取しても、血液中のビタミンCの濃度が0.22ミリモルを超えることはありません。だから、厚生労働省は限界容量を定めていないのです。

静脈注射を用いると腸内吸収をスキップできるので、高用量のビタミンCを血液中に投与することができます。そのため血液中の濃度を0.3~20ミリモルまで上昇させることができます。しかし、数時間以内に、腎臓によって排出され、血液中のビタミンC濃度は正常範囲に戻されます。

ビタミンCの過剰摂取による影響

それでもビタミンCは多ければ多いほど、美容によくて、免疫力もアップしてくれると考えている人は、多いのではありませんか?

でも、ビタミンCは多ければ多いほど良いわけではありません

胃腸不良

上でご説明した通り、ビタミンCは一定量以上は吸収されないようになっていますが、尿で排出される量にも限度があります。体にも吸収されず、尿として排出もされず、体に溜まった過剰なビタミンCが、次の様な悪影響を胃腸に与えます。

  • 吐き気
  • 下痢
  • 腹痛

1日に3〜4g(3,000~4,000mg)のビタミンCをサプリメントで服用した際に引き起こされた事例が報告されています。

腎臓結石

シュウ酸塩は、ビタミンCの代謝によって造られます。そのため、ビタミンCの摂取量が多いと、体内でシュウ酸塩(例えば、シュウ酸カルシウム)が多くなるので、腎臓結石になる可能性が高まります。

いくつかの研究が、ビタミンCのサプリメントの摂取によって、尿中のシュウ酸塩濃度が上昇することを報告しています。また、45,619人の男性(40~75歳)を14年間の追跡調査した結果、ビタミンCを1日に1,000mg(1g)以上摂取した男性は、毎日90mg未満のビタミンCを摂取した男性と比較して、腎臓結石のリスクが41%高いことが報告されています。その他にも、48,840人の男性(45~79歳)を11年間追跡調査した研究では、週7回以上ビタミンCのサプリメントを飲んでいた男性は、そうではない人と比較し、腎臓結石のリスクが2倍以上だったことが報告されています。

厚生労働省も、サプリメントなどから、1日1g(1,000mg)以上の量を摂取することは推奨できないとしています。

例えば、サプリメントや飲料(例:C1000タ〇ダとか..)を気軽に飲むのは要注意です。

その他の有害な症状

その他にも大量のビタミンC摂取による健康にとって次のような有害な症状が起こる可能性が報告されています。

  • 遺伝子変異
  • 先天異常
  • がん
  • アテローム性動脈硬化症
  • “リバウンド壊血病”
  • 酸化ストレスの増加
  • 過剰な鉄吸収
  • ビタミンB12欠乏
  • 歯のエナメル質の浸食

などです。

しかし、これらの発症に関しては、科学的な裏付けが乏しく、確実に起こる、あるいは因果関係があるとまでは言えないものです。

ちなみに、“リバウンド壊血病”は、高用量のビタミンCの補給によって壊血病を改善させると、その後、ビタミンCの補給を止めた途端に再び壊血病が起こることを指します。(ビタミンCが欠乏していないのにも関わらず、欠乏したかのような症状を起こす・・・ビタミンC依存症?)

体内のビタミンCはどこにある

ビタミンCは、体内の主に免疫細胞に多く存在しています。

  • 免疫細胞|免疫細胞内のビタミンCの濃度は、体内に貯蔵されているビタミンCの量を反映していると考えられています。
  • 筋肉|ビタミンCは筋肉にも貯蔵されています。
  • 血液|血液中のビタミンCの濃度は、最近の食事から摂取した量を反映しています。

ただし、ビタミンCの体内移動と解毒メカニズムに関する遺伝子変異をもっている人は、ビタミンCを多く含む食事をしていても血液中のビタミンC濃度が上がらないことがあります。

ビタミンCの機能

ビタミンCには、主に次の重要な働きがあることが判っています。

  • 抗酸化剤/酸化還元
  • 酵素の働きを助ける補因子
  • ミネラル吸収

酸化還元機能

ビタミンCは、強力な酸化還元(レドックス)剤です。血液と体組織で水溶性の抗酸化物質として働いています。

  • 有害物質の排出
  • 栄養素の代謝
  • 免疫細胞の活動の中で発生するフリーラジカルや活性酸素(ROS)の除去

タンパク質、脂質、炭水化物、核酸(DNAとRNA)など、私達にとって不可欠な物質を、ビタミンCは僅かな量で保護することができるほど、強い還元力をもっています。

ビタミンCが補助しているジオキシゲナーゼの中には、遺伝子の発現調節やゲノムの完全性の維持に関与しているものあります。そうした意味において、ビタミンCは遺伝子発現のエピジェネティクス(環境要因)のひとつと言えます。

また、ビタミンCは、他の抗酸化物質の酸化還元リサイクルもしています。例えば、酸化してしまったビタミンEを再生することができます。

酵素の補因子

酵素の働きを助ける補因子としての役割には、ビタミンCの酸化還元機能が関わっています。いくつかの重要な生体分子の合成の過程で、酵素と結合したミネラルが酸化しないように(還元されたままでいるように)して、多機能の酸化酵素の働きを手伝っています。

ビタミンCが働きを助けている酸化酵素は、モノオキシゲナーゼまたはジオキシゲナーゼに分類される酵素で、次の物質を体内で合成(生合成)しています。

  • コラーゲン(皮膚、骨などを造る)
  • カルニチン(エネルギーの産生に必要)
  • カテコー​​ルアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質)

ビタミンCがお肌に良いとされるのは、コラーゲン形成に関与していることと、酸化還元作用によってお肌の酸化によってできるシミやシワの予防になるからです。

ミネラル吸収

ビタミン C は様々なミネラルの腸管吸収を促進します。

総合すると、例えばアスリートにとってビタミンCは欠かせないビタミンだと言えますね。激しい運動によって発生する活性酸素を素早く還元し肉体の回復力を早め、コラーゲンとミネラル吸収によって骨を強く柔軟に保ち、貧血を予防し、エネルギーを生み、必要なアドレナリンやドーパミンをもたらしてくれます。

免疫機能におけるビタミンCの役割

ビタミン C は、免疫機能のいくつかの構成要素に影響をもっています。

例えば、白血球の中でも特に、好中球、リンパ球、食細胞の機能とその増殖をビタミンCが刺激することが示されています。

ビタミンCによって刺激される免疫細胞の機能には、次のようなものが含まれます。

  • 運動性
  • 走化性(周囲にある特定の化学物質の濃度差に対して方向性を持った行動を起こす現象のこと、化学走性)
  • 食作用

好中球、単核食細胞、リンパ球は、ビタミンCを高濃度に蓄積することができ、自らを酸化による損傷から守っています

例えば、免疫食細胞は、病原菌の侵入に際して毒素(スーパーオキシドラジカル、次亜塩素酸、ペルオキシナイトライトなど)を放出します。こうした毒素によって病原菌を殺すことができますが、免疫細胞自身にも損傷を残すことがありあます。ビタミンCの抗酸化力が、自傷してしまうことから免疫細胞を守っています。

また、免疫食細胞は、ウイルスの活性を抑制するインターフェロンなどのサイトカイン(炎症性物質)を作って放出しますが、ビタミンCは食細胞にインターフェロンの産生を増加させる働きがあることが観察されています。

更に更に、ビタミンCは、好中球の走化性と病原菌の殺傷能力を高め免疫B細胞と免疫T細胞の増殖と分化(特定の機能を有すること)を促進させることが報告されています。

ビタミンCの不足

ビタミンCの重度の欠乏症は、壊血病として何世紀も前から知られている、死に至る病気です。

壊血病の症状には、次の様なものがあります。

  • 疲労感(初期症状)
  • あざができやすい
  • 皮下出血
  • 傷が治らない(傷口がふさがらない)
  • 髪や歯の喪失
  • 関節の痛みと腫れ

など

これらの症状が起こる理由は、ビタミンCを必要とする次の成分の減少によるものと考えられています。

  • エネルギーを造るために必要なカルニチンの減少
  • カテコールアミン(アドレナリンなど)の減少
  • コラーゲンの減少による血管、結合組織、骨などの虚弱化

ただし、壊血病は、毎日わずか1日10mg(6~12 mg )のビタミンCで予防できるため、先進国で起こることは稀です。

ビタミンCと病気の関係

慢性疾患の予防と改善に必要なビタミンCの量は、壊血病の予防に必要な量よりも多くなります。そして、腎臓機能障害を起こす可能性のある1日1,000mgを超える量が用いられているケースがほとんどです。

ここで紹介する病気予防と治療に用いられたビタミンCは、経口のサプリメントからではなく、医師の監督の下、静脈注射が用いられています

そのため、自己判断で大量のビタミンCのサプリメントを服用することは避け、まずはお医者様にご相談してくださいね。

高血圧の予防と改善

血液中のビタミンC濃度と食事の質が高血圧の発症リスクと関係していることが報告されています。

  • 血液中のビタミンC濃度が高いほど、血圧が低くなる
  • 食事の質が悪く、かつ、血液中のビタミンCの濃度が低いほど、高血圧の発症リスクが上昇する
  • 血液中のビタミンCの濃度が低いと、食事の質が良くても高血圧は改善しない

高血圧予防には、ビタミンCのサプリメントではなく、ビタミンCの多いバランスした食事が重要ということではないでしょうか。

1,407人に平均8週間、毎日平均500mgのビタミンCを食事から摂取してもらうと、収縮期血圧(上の血圧)が 平均3.84mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が平均1.48mmHg低下したことが報告されています。

研究者は、高血圧の改善のためには、ビタミンCのサプリメントに頼るのではなく、ライフスタイルと食事全体を見直すことが重要だと述べています。

血管内皮機能不全の予防と改善

血管内皮の機能不全は、アテローム性動脈硬化症の初期に起こると考えられています。血管内皮が機能しないということは、血管の正常な拡張性(弾力性)が失われることを意味し、血管の収縮と血液の凝固に異常をもたらします

心不全、アテローム性動脈硬化症、糖尿病の人の血管内皮の機能不全は、ビタミンCを1日に500mg超、短期間摂取することで改善できることが判明しています。

冠状動脈性心疾患の予防

心臓の動脈内にプラークが蓄積(アテローム性動脈硬化)した状態の疾患です。何年も放置すれば、心筋梗塞や心臓発作が起こります。

日々の食事からの十分なビタミンCの摂取量が多いほど、冠状動脈性心疾患の発症リスクが低下すると結論づけられています。しかし、サプリメントからビタミンCを摂取した場合には効果はないとのことです。

日本人を対象とした研究もありました。日本人女性は食事からのビタミンCの摂取量が多いほど、冠状動脈性心疾患による死亡率が低下しましたが、男性ではそうした関連性は見られなかったことのです。

欧州で行われた大規模追跡調査(男女含む)では、血液中のビタミンCの濃度が高いほど、心不全の発症が低く、血液中のビタミンCの濃度が20μmol/L増加するごとに、心不全のリスクが9%減少したと報告しています。この時、ビタミンCは主に果物と野菜から摂取されたとのことです。

アテローム性動脈硬化を予防して、冠動脈性心疾患を予防するには、やはりサプリメントではなく、野菜や果物の多い食事に効果があるということですね。

手術中・術後の心筋損傷の予防

閉塞性の冠動脈疾患を治療するために行われる血管形成術を冠動脈形成術と呼びます。詰まった動脈に小さなバルーンを一時的に挿入して膨らませ、心臓への血流を回復させるものです。本来ならこの血管形成術だけで済むはずだった患者の約3分の1に心筋損傷が起こることが判っていて、死亡率を上昇させています。

血管形成術の1時間前に 1g(1,000mg)のビタミンCを点滴投与すると、酸化ストレスマーカーが低下し、微小循環灌流が改善されることが観察されています。別の研究では、冠動脈形成術の6時間前に3g(3,000mg)のビタミンC点滴によって、手術中と術後の心筋損傷の発生を大幅に減少させることができたことが報告されています。

心筋再灌流障害の予防

再灌流障害は、一時的な虚血後に血流が回復(再灌流)した時に発生する臓器損傷のことです。

心筋梗塞自体によって、または冠動脈バイパス手術中の大動脈クランプ(クリップで挟んで血流を止めること)によって、心筋が酸素欠乏(虚血)になることがあります。治療によって心筋への血流が再開し酸素の供給が回復すると、細胞は生きようとするので活性酸素が同時に発生します。その活性酸素が心筋を損傷させると考えられています。

再灌流時に起こる心筋損傷は、心房細動(不整脈)や心筋スタニング(心臓が動かない)などの合併症も起こします。

体内のビタミンCは、心臓手術中、並びに心臓手術後に枯渇することが判っています。

そのため、バイパス手術前にビタミンCを静脈投与することによって、再灌流による心筋損傷が減少したことが報告されています。

また、再灌流の3時間前からビタミンCを静脈投与し、手術後84日間ビタミンC(1日1,000mg)とビタミンE(1日268mg/400IU)のサプリメントを経口摂取し続けてもらった研究では、再灌流時から6~8時間、体の抗酸化力の低下を防ぐことができ、84日目の退院時までには左心室の機能が改善したことを報告しています。

心房細動/不整脈の予防

心房細動は、心疾患(心不全、脳卒中など)を発症させ、それによる死亡率を上昇させる要因のひとつです。

追跡調査と無作為対照試験のメタ分析の両方で、心臓手術後のビタミンCの摂取によって、心房細動の発症リスクが減少することが報告されています。これらの研究では、手術前に約2gのビタミンCが静脈投与され、手術後5日間は1日に1~2gを静脈投与しています。

脳卒中の予防

脳卒中には、出血性と虚血性があります。出血性脳卒中は、脳の弱くなった血管が破裂して起こります。虚血性脳卒中は、血管が詰まって脳の血流が遮断されて起こります。そのため、アテローム性動脈硬化を基礎疾患としてもっている人に起こりやすいタイプです。なお、先進国で起こる脳卒中の約80%は虚血性です。

日本で行われた居住者2,000人以上を20年間追跡調査した研究は、血液中のビタミンCの濃度が最も低いグループと比較して、最も高いグループの脳卒中のリスクが29%低かったと報告しています。欧州で行われた20,649人の成人を10年間追跡調査した研究でも、血液中のビタミンC濃度が最も低いグループと比較して、最も高かったグループの脳卒中リスクが42%低かったと報告しています。

両方の研究とも、血液中のビタミンC濃度は、野菜と果物を多く食べているほど増えていたことを報告しています。ただ、野菜や果物にはカリウムを多く含むものも多いため、脳卒中リスクの低下が、ビタミンCだけによる効果かどうかは判別できないとも、しています。

また、14,000 人以上の高齢男性を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、サプリメントによるビタミンCの摂取には、両タイプの脳卒中と死亡率に何の効果もなかったと報告しています。それだけでなく、8年間の追跡調査の結果においても、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンをサプリメントで別々に摂取した場合も、組み合わせて摂った場合も、どちらにおいても効果がなかったことを報告しています。

II型糖尿病の予防

米国国立衛生研究所 (NIH) と米国退職者協会 (AARP) による232,007人を対象とした食事と健康に関する調査は、サプリメントを飲まない人と比較し、週に7 回以上ビタミンCのサプリメントを服用している人は、II型糖尿病の発症リスクが9%低下することを報告しています。

21,831人を12年間追跡した調査では、血液中のビタミンC濃度が高いほど、糖尿病リスクが顕著に低下することを報告しています。

その他、血液中のビタミンC濃度が高いほど、糖化ヘモグロビン(HbA1c)などのインスリン抵抗性/耐糖能障害の発症が低いこともいくつかの研究が報告しています。

ただし、ビタミンCに治療効果がなかったとする研究報告もあり、ビタミンCには予防効果はあるものの、治療効果があるかについては不明です。

糖尿病による心疾患の予防

糖尿病による主な死因は、心疾患です。

2018年に行われたII型糖尿病に対する抗酸化ビタミンの補給効果を調査した無作為対照試験のメタ分析によって、糖尿病による酸化ストレスと糖尿病マーカーの改善のほとんどが、ビタミンCではなく、ビタミンEに起因することが判っています。

メトホルミン治療を受けている場合

しかし、メトホルミン治療を受けている場合には、II型糖尿病をもっている456人を対象とした12か月間の無作為化プラセボ対照試験は、ビタミンC(1日500mg)とアセチルサリチル酸(アスピリン|1日100mg)の両方共に単独で、空腹時血糖値とHbA1c濃度を低下させ、高脂血症を改善したことを報告しています。研究者は、ビタミンCが糖尿病の合併症である心疾患リスクをその後10年間に渡って減少させる可能性が高いと述べています。

遺伝子型によって効果が異なる

糖尿病による血管合併症の発症と関係がある遺伝子として、ハプトグロビン遺伝子(Hp)の対立遺伝子Hp2が特定されています。

Hp2遺伝子Hp2-2を2つ持っている人のHpタンパク質は、Hp遺伝子(Hp1-1とHp1-2)を持っている人のHpタンパク質と比較して、血液中の遊離ヘモグロビン(酸化物質)を除去する能力が低いことが報告されています。

抗酸化療法 (ビタミンC1,000mg/日 + ビタミンE800 IU/日)は、Hp1-1遺伝型をもっている糖尿病の女性で冠動脈アテローム性動脈硬化を改善させましたが、Hp2-2遺伝型を持っている糖尿病の女性では冠動脈アテローム性動脈硬化が悪化したことが報告されています。また、高脂血症の改善も見られなかったとのことです。

糖尿病の人は、ビタミンCの投与を受ける前に遺伝子検査をしてもらうと安心ですね。

妊娠合併症の予防効果なし

2015年に行われた無作為対照試験のメタ分析は、妊娠中にビタミンCを単独で、または他のいくつかのサプリメントと組み合わせて服用しても、次のリスクを低下できないことを報告しています。

  • 死産
  • 周産期死亡
  • 子宮内発育不良
  • 早産
  • 早期膜破裂
  • 子癇前症

ただし、胎盤剥離のリスクが36%低下し、胎児の在胎週数を有意に増加させたことも報告されています。

276,820 人の妊婦を対象とした無作為対照試験の別のメタ分析では、妊娠20週になる前から次のいずれかを服用してもらいましたが、流産、死産、先天性奇形などによる胎児喪失の予防効果は見られませんでした。

  • ビタミンCを単独
  • ビタミンCとビタミンE
  • マルチビタミン

また、10,000人の妊婦を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験の二次分析でも、ビタミンCとビタミンEのサプリメントによる子癇前症のリスクの減少は見られませんでした。

子癇前症の予防については『危険な妊娠合併症を予防できる簡単な方法』をご参照ください。

妊娠中の喫煙による影響の軽減

妊娠中の喫煙は、他の妊娠合併症の中でも胎児の発育不良や早産を引き起こすだけでなく、小児呼吸器疾患の主な原因となります。

妊娠中に喫煙した女性がビタミンCを補給することによって、胎盤剥離と早産のリスクを減少させることができることが判っています。

また、妊娠中に喫煙をした女性が妊娠中にビタミンC(1日500mg)を摂取すると、新生児の生後一週間の肺機能が向上し、1歳までの喘息発症リスクが低下することも判っています。

たばこを吸わない妊婦さんにとっては、ビタミンCの追加補給はあまり効果はないようですが、喫煙者の妊婦さんにとっては、ビタミンCがお腹の中の赤ちゃんの健康を守ってくれそうですね。だからと言って、妊娠中の喫煙による影響が帳消しになるわけではありませんから、吸わないのが一番良い選択です。

妊娠中の喫煙の影響については『母親の喫煙とストレスが胎児の心と脳に影響する』もご参照ください。

アルツハイマー病の予防

脳脊髄液を測ることで脳内のビタミンC濃度をもっと正確に把握できるのですが、脳脊髄液中のビタミン C 濃度を測定した研究はほとんどありません。

少ない研究によって次の事実が判っています。

  • ビタミンCは、能動的に脳へ運ばれること
  • 脳の血液脳関門によって脳細胞内に濃縮されて保存されていること
  • 脳脊髄液中のビタミンC濃度は、血液中のビタミンC濃度の数倍以上に濃縮されていること

血液脳関門の完全性が損なわれると、脳がビタミンCを保持できなくなり、脳脊髄液中のビタミンC濃度が下がり、血液中のビタミンC濃度が上がることも判っています。

しかし、認知機能やアルツハイマー病、その他の神経変性疾患などに対する、濃縮されたビタミンCの役割はまだ十分には理解されていませんが、次の事実が判明しています。

マウスを用いた研究によって、脳脊髄液と脳の細胞外組織の中のビタミンC濃度が低いと、アミロイドの沈着とアルツハイマー病の進行が促進されることが判明しています。

ビタミンCを合成する能力欠落させたアルツハイマー病のマウスでは、高用量のビタミンCの補給によって大脳皮質と海馬へのアミロイドの沈着が減少し、血液脳関門障害とミトコンドリア機能障害が抑制されました。

ヒトを対象とした研究では、アルツハイマー病ではない人と比較して、アルツハイマー病の人は、血液中のビタミンC濃度が低いことが判明しています。更に、血液中のビタミンC濃度が高いほど、認知機能が向上し、認知機能障害の発症リスクが低下することも判っています。

アルツハイマー病の可能性のある人(32人)を1年間の追跡した小規模な研究では、追跡開始時の血液中のビタミンC濃度に対する脳脊髄液のビタミンC濃度の比率が高いほど、認知機能の低下速度が遅くなることが観察されています。

また、ビタミンC(500mg/日)、ビタミンE(800IU/日)、α-リポ酸(900mg/日)を組み合わせて16日間摂取した二重盲検無作為対照試験では、開始から数週間までは、脳脊髄液中のリポタンパク質の酸化が減少したものの、軽度から中等度のアルツハイマー病の症状の改善は見られていません。1年間摂取した他の研究においても同様の結果が報告されています。

つまり、ビタミンCは認知機能低下の予防にはなるものの、低下してしまった認知機能を回復させることは難しいのかもしれませんね。

アルツハイマー病の食事については『アルツハイマー病と認知症|予防・改善のための食事法』をご参照ください。

白内障の予防

ヒトの房水(眼の前房と後房を満たしている液体)中のビタミンC濃度は、血液中のビタミンC濃度の15倍~20倍もあり、ビタミンCが重要な役割を果たしていることを示唆しています。実際、眼の水晶体のビタミンC濃度が低下するほど、白内障が重症化することが観察されています。

様々な研究によって、食事からのビタミンC摂取量が多く、血液中のビタミンC濃度が高いほど、加齢に伴う白内障のリスクが低下することが報告されています。しかし、サプリメントでビタミンCを補給した場合には、効果は見られず、コルチコステロイド(抗炎症剤)療法を受けている人では白内障リスクが上昇したことが報告されています。

ビタミンCだけでなく、ビタミンEとβ-カロテンについてもサプリメントでは白内障と白内障手術後の両方の症状の進行に対して、2年~12年間摂取し続けても実質的な効果が見られなかったことが報告されています。そのため、現在では、白内障予防にビタミンCのサプリメントは推奨されていません。

しかし、食事(果物や野菜)からの毎日のビタミンCの摂取量が多いほど、白内障の発症リスクが減少することは繰り返し報告されています。

なお、白内障予防の食事については『目の健康のためにサプリメントを飲んでいる人は期待が裏切られるかもしれません』をご参照ください。

痛風の予防

血液中の尿酸濃度や痛風の発症は、遺伝することが多いのですが、食事とライフスタイルを改善することで、予防と改善の両方に役に立つ可能性があることが様々な研究によって示されています。

1,387人の男性を対象とした観察研究では、ビタミンCの摂取量が多いほど、血液中の尿酸の濃度が低くなること、46,994人の男性を20年間追跡した研究では、毎日のビタミンC摂取量が多いほど、痛風の発生率が低いことを報告しています。

また、4,576人を対象にした横断研究では、食事中のビタミンCに対する糖分の割合が高いほど、高尿酸血症になる確率が高くなると報告しています。

ご家族に痛風の人がいる場合には、白い砂糖は控えめに果物とお野菜を豊富に食べることで、予防できる可能性が高まるのではないでしょうか。

また、尿酸値が上昇している健康な人を対象とした無作為対照試験のメタ分析では、1日500mgのビタミンCサプリメントを30日間摂取すると、対照グループと比較して尿酸濃度が0.35mg減少したことを報告していますが、これは統計的に有意な結果ではありませんでした。

また、痛風の標準薬(アロプリノール)とビタミンCのサプリメントを併用した研究においても、ビタミンCを追加する効果はなかったことが報告されています。

やはり、ビタミンCはサプリメントからではなく、野菜や果物から摂らなくてはダメなのですね。

敗血症の改善

敗血症とは、細菌が体内で繁殖し、組織や臓器が正常に働かなくなり、生命を脅かす状態になった時に現れる症状です。

重い病気の人や、敗血症性ショックを起こした人はビタミンC欠乏になることが多く、ビタミンCの1日の推奨量を経腸/非経口栄養療法によって投与しても、欠乏症が持続することが判っています。全身で起こっている炎症反応の代謝にビタミンCが大量に使用されているためだと考えられています。

集中治療室の敗血症患者に、体重1 kgあたり1日に50mg~200mgのビタミンCを96時間、静脈投与した研究では、ビタミンC欠乏症が改善し、SOFA(逐次臓器不全評価)とAPACHE(急性生理学的評価および慢性健康評価)IIスコアの上昇が起こらなかったことが報告されています。更に、炎症と内皮損傷のマーカーも低下しました。

重症の敗血症性ショック患者28人を対象とした別のランダム化二重盲検比較試験では、体重1kgあたりビタミンCを25mg、6時間ごとに72時間、静脈投与すると、昇圧剤(ノルエピネフリン)の必要量が大幅に減少して、治療期間を減少させ、28日間生存率を劇的に改善したことが報告されています。

退院までの間に、次のいずれかを投与した場合でも同様の結果が報告されています。

  • 静脈内ビタミンC(6時間ごとに1,500mg)
  • ヒドロコルチゾン(6時間ごとに50mg)
  • チアミン(12時間ごとに200mg)

標準的な治療と比較して、昇圧剤の使用量と投与時間が半減以上になり、死亡率を90%近く抑えることができたと報告されています。

ただし、高用量のビタミンCの投与は腎不全のリスクを上昇させる可能性があるため注意が必要と研究者は述べています。

風邪予防にはならないが気管支症状を軽減

風邪予防に関してビタミンCの効果が40年以上に渡って研究されてきましたが、ビタミンCのサプリメントによる一般の人の風邪予防効果は観察されていません。しかし、肉体的に過酷な状況にいる人、例えば、冬季の持久系のアスリートや兵士などは、ビタミンCによって風邪の発症率が半減したことが報告されています。

このことについては、以前、記事にしていますので『風邪の予防と症状緩和にビタミンCは効果がない?』をご参照ください。

また、風邪をひいている間のビタミンC補給には効果があることが示されていて、効果は大人よりも子供で大きいことも報告されています。

更に、呼吸器に感染した(咳・喉の痛みがある)場合に、1日にビタミンCを1g(1,000mg)2週間摂り続けると、喘息発作を予防できることも報告されています。

感染症による喘息と診断された人を対象に行われた研究では、1日にビタミンCを5g(5,000mg)1週間投与すると、ヒスタミンに対する気管支の過敏症を起こす人の割合が有意に少ないことを報告しています。

運動誘発喘息の予防

運動誘発喘息は、運動後に、一時的に咳や喘鳴(ぜんめい|ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音)によって呼吸困難になる現象で、喘息をもっていない人にも起こります。運動後に気管支が収縮して起こるので、運動誘発気管支攣縮(れんしゅく)とも呼ばれます。

運動誘発喘息をもつ40人に対して行われた次の3つの実験では、いずれも運動後の喘息の発生が予防できたと報告されています。

運動前にビタミンCを次の通り投与しています。

  • 1日500mgを2日間摂取
  • 1日だけ2,000mgを摂取
  • 1日1,500mgを2週間摂取

ただし、ビタミンCには予防効果が無いとする研究もありました。

鉛のデトックス作用

鉛は、車の排気ガスや塗料、たばこの煙からだけでなく食品からも体内に入ってきます。

これは農林水産省がホームページで公開している、食品に含まれている鉛から日本人が1日に平均してどれくらいの鉛を摂取してしまっているかを示したグラスです。

妊娠中に鉛を大量に摂取してしまった女性の乳児には、成長不良と発達異常が起こります。また、慢性的に鉛を摂取してしまっている子供には、学習障害、素行異常、低IQが起こる確率が高くなります。成人では、腎臓障害、高血圧、貧血を引き起こすことがあります。

いくつかの横断研究では、食事からのビタミンCの摂取量が多い人と比較し、ビタミンCの総摂取量が1日平均109mg未満の人の血液中の鉛の濃度が有意に高いことを報告しています。また、血液中のビタミンC濃度が高いほど、血液中の鉛の濃度が有意に低いことも報告されています。

喫煙と副流煙の吸引は、血液中の鉛の濃度を上昇させます。

喫煙者を対象とした研究では、ビタミンCを1日1,000mg4週間補給すると血液中の鉛の濃度が有意に低下することが報告されています。一方で、1日に200mgでは、血液中の鉛の濃度を減少させることはできなかったことも報告されています。

ビタミン C が血液中の鉛の濃度をどのように低下させるのかの、メカニズムは不明ですが、鉛が腸で吸収されるのを阻害したり、尿への排出を促すのではないかと考えられています。

鉛の害とその他のデトックス方法については『ひどい場合には死をももたらす有害な鉛を体内に入れない簡単な方法と、体から排出する方法とは』や『シラントロなら何でもデトックスに善いわけじゃない』をご確認ください。

乳がん予防

大規模追跡調査は、食事からビタミンCの摂取量が多いほど、乳がんの発症リスクが低くなることを報告しています。

米国の看護師を対象とした追跡調査では、乳がんを発症したことがある家族をもっている閉経前の女性のうち、1日にビタミンCを食事から平均70mg摂取している人比較して、食事から平均205mg摂取している人は、乳がん発症率が63%低かったと報告しています。

また、スウェーデンで行われたマンモグラフィの追跡調査では、肥満の女性のうち、1日に平均31mgのビタミンCを食事から摂っている人と比較して、平均110mgのビタミンCを食事から摂っている人は、乳がん発症リスクが39%低かったことが報告されています。

家族に乳がんの人がいることや肥満は乳がんのリスク要因です。そうしたリスク要因をもっていてもビタミンCを食事から十分に摂取していれば、乳がんが予防できるというのは素晴らしいことですね。

しかし、ビタミンCの摂取量(食事とサプリメントのどちらにおいても)乳がんの発症と関係がなかったとする研究も存在しています。

胃がん予防

多くの観察研究によって、食事からのビタミンCの摂取量が増えるほど、胃がんの発症リスクが低下することが判明しています。

研究室での実験では、胃で発生する、発がん性のN-ニトロソ化合物の発生をビタミンCが阻害することが示されています。(ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースのがん予防のレクチャーでは、ビタミンCだけでなく、N-ニトロソ化合物の発生を阻害する他の栄養素などについても教えています。)

また、胃液中のビタミンC濃度が低いと、ピロリ菌感染による胃がんの発症リスクが高まることも知られています。

試験管試験では、ピロリ菌の生存性を高めコロニー形成を促進するウレアーゼという酵素をビタミンCが不活性化することが観察されています。そのため、研究者は、ビタミンCは最も効果的な胃がん予防薬になるのではと述べています。(ただし、胃酸欠乏症の人では、胃がん予防にはならないとのことです。)

非ホジキンリンパ腫の予防

非ホジキンリンパ腫は、リンパ球ががん化して増殖し、リンパ節やリンパ組織(扁桃、脾臓など)に腫瘍ができる病気です。日本人の悪性リンパ腫の90%以上が、非ホジキンリンパ腫です。

35,159人の女性(55~69歳)を19年間追跡調査した研究では、果物と野菜の摂取量が多いほど、非ホジキンリンパ腫の発症リスクが低下したことが観察されています。

ビタミンCだけでなく、カロテノイド、プロアントシアニジン、マンガンなどの抗酸化物質が多く含まれる食事をしている人において、同様の結果が観察されています。しかし、サプリメントには予防効果は見られなかったとのことです。

154,363人の閉経後の女性を11年間追跡した別の調査では、食事によるビタミンC摂取量が多いほど、非ホジキンリンパ腫の一種の、びまん性B細胞性リンパ腫の発症リスクが低下することを報告しています。

ビタミンCのがん治療への適用

がん治療目的でのビタミンCの有用性についての論争が続きましたが、がん治療にビタミンCを用いる際には、その投与経路が重要であるという結論が出されています。具体的には経口摂取ではなく、静脈注射による投与に効果があることが認められています

1日10g(10,000mg)を10日間、静脈投与することによって、血液中のビタミンC濃度を30倍~70倍にすることができ、この高い血漿濃度は、試験管試験でがん細胞を毒殺したのと同等の濃度になるとのことです。

血液中のビタミンCががん細胞と戦う具体的なメカニズムについては、まさに研究が行われている分野です。現在までの仮説では、次の作用にビタミンCが関与していると考えられています。

  • ゲノムの完全性を維持し、細胞を変異から保護(腫瘍化を阻止)している
  • がん細胞だけに選択的に有毒となる高濃度の過酸化水素の発生を助ける
  • がん細胞の生存率を高める低酸素誘導因子を不活性化する

など

ビタミンC静脈投与の安全性

管理された臨床試験から得られている現在までのエビデンスは、ビタミンCの静脈投与が一般的にも安全で、がん患者にとっても十分に許容されることを示しています。

ただし、現在までに、80g(80,000mg)のビタミンCを静脈投与された、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症(遺伝性疾患)の患者2名に溶血性貧血が起きたことが報告されているため、ビタミンCの静脈投与の前に、遺伝子検査を行い、適応者のスクリーニングが重要であることが判明しています。

切除不能ながん患者を対象とした第I相臨床研究では、ビタミンCの静脈投与量は、体重1kgあたり最大1.5g(1,500mg)用量と体表面積1m2あたり70~80g(70,000~80,000mg)で、忍容性が高く安全なことが報告されています。

また、化学療法と放射線療法のどちらか、あるいは両方を受けているがん患者を対象としたいくつかの観察研究では、ビタミンCの静脈投与を追加的に行うことで、副作用が減少し生活の質が改善したことが報告されています。

転移性膵臓がんの患者を対象とした第I相臨床試験では、抗がん剤ゲムシタビンおよびエルロチニブと併用してビタミンCの静脈投与を行うと、血液中のビタミンCの濃度を安全に上昇させることが示されています。

ただし、一般的ではありませんが、化学療法で用いられる抗がん剤が、細胞酸化のメカニズムを利用して作用する場合には、ビタミンCの投与が障害となる可能性が高くなると考えられています。抗がん剤治療を受けている人は、ビタミンCのサプリメントを飲む前に、主治医に相談することを強くお勧めします。

ビタミンCへの反応度

同じ種類のがん細胞でも、細胞を採取した患者によって、ビタミンCに対する反応度が大きく異なることが判明しています。個人差が生じる理由/メカニズムについては現在研究がなされている分野ですが、体内で過酸化水素を分解してくれているカタラーゼ(抗酸化物質)の活性が高いほど、ビタミンCへの反応が低いことが報告されています。

更に、ビタミンCを細胞へ輸送してくれる、ナトリウム依存性のトランスポーター(SVCT-2)の量が多いほど、がん細胞のビタミンCへの反応度が高くなることも報告されています。

これは悩ましいですね。がん細胞はナトリウムを利用して細胞死を免れる仕組みをもっているため、ナトリウム(塩)を控える方がいいのですが、ビタミンCをがん細胞へ届けるタンパク質(トランスポーター)がナトリウムに依存しているとすると、むやみにナトリウムを抜くことが得策になるとも言えず、がん患者へのナトリウム摂取の指導は非常に難しいと、言えますね。

サプリメント

ビタミンCのサプリメントは、次のような形態で入手することが可能です。

  • L-アスコルビン酸
  • アスコルビン酸ナトリウム(1gあたり111mgのナトリウムを含む)
  • アスコルビン酸カルシウム(1gあたり90~110mgのカルシウムを含む)

L-アスコルビン酸として販売されているサプリメントが最も多いですが、他の形態よりも吸収されやすい、あるいは生体活性があるという科学的なエビデンスはありません。

また、ミネラル塩のビタミンC(アスコルビン酸ナトリウムやアスコルビン酸カルシウム)は、アスコルビン酸よりも酸性度が低く、消化管への刺激が少ないと考えられています。

フラボノイドとビタミンC

フラボノイドは、水溶性の植物色素で、ビタミンC豊富な果物や野菜、特に柑橘類に多く含まれている成分です。フラボノイドと一緒にビタミンCを摂ると生体利用率が高まると考えられていますが、フラボノイドが添加されたビタミンCのサプリメントでは、そうした効果は確認されていません

ただ、ホールフード(果物そのもの)としてフラボノイドとビタミンCを摂取した場合の効果については、様々な研究が報告しています。

例えば、以前、執筆した『遺伝子の番人キウイフルーツ』や『目の健康のためにサプリメントを飲んでいる人は期待が裏切られるかもしれません』をご参照ください。

パルミチン酸アスコルビル

脂肪酸と結合するとアスコルビン酸は、ビタミンCエステルとなります。パルミチン酸アスコルビルは、ビタミンCがパルミチン酸(中鎖飽和脂肪酸)と結合したビタミンCエステルのことです。

通常、ビタミンCは水溶性(水に溶ける)ですが、ビタミンCエステルとなることで脂溶性(脂に溶ける)のビタミンCになり、安定性が向上します。そのため、パルミチン酸アスコルビルを配合したスキンクリームなどが販売されています。

しかし、ビタミンCは、皮膚からはほとんど吸収されません。また、試験管試験では、皮膚から吸収されたパルミチン酸アスコルビルの有毒性が報告されています。

また、パルミチン酸アスコルビルは、サプリメントとしても販売されているようですが、腸で吸収される前に胃で分解されてしまうので、無駄なお買い物です。

アスコルビン酸テトラヘキシルデシル(BV-OSC)

そのままでは不安定な生理活性したビタミンCを安定化させるために加工したビタミンC誘導体です。その高い安定性によって化粧品などに使用されることが増えている成分です。

肌から吸収されコラーゲンなどの生成に役立つことなどがいくつかの研究によって報告されています。

医薬品との相互作用

ここに記載しているのは、主なものだけです。全てを網羅しているわけではありませんから、ここに記載している医薬品を服用している人だけでなく、何かしらの医薬品を服用している人は、ビタミンCのサプリメントを飲む前に必ずお医者様か薬剤師さんにご相談ください

ビタミンCの腸内吸収を阻害する可能性のある薬

  • ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(降圧剤、ニカルジピン、ニフェジピンなど)・・・動物実験での結果
  • アスピリン(頭痛薬)の常用・・・ヒトによる結果

ビタミンCによって血中濃度が低下してしまう薬

  • フルフェナジン(抗精神病薬、プロリキシン)
  • インジナビル(抗レトロウイルス薬、クリキシバン)

ビタミンCによって作用が阻害される薬

  • ワーファリン(抗凝固剤)
  • スタチン(コレステロール低下薬)

ビタミンCなどの抗酸化作用のあるサプリメントと一緒に服用すると、効果が失われたとする研究報告があります。一方で、薬の作用に影響はなかったとする報告もあり、未だ真偽は不明です。

ビタミンCによって血中濃度が高くなってしまう薬

  • アルミニウム含有製剤(制酸剤、リン酸結合剤)

ビタミンCは、腸内でアルミニウムと結合して、アルミニウムの腸内吸収を増加させてしまう可能性があります。特に、腎機能障害のある人は、こうした薬と一緒にビタミンCのサプリメントを飲むと、アルミニウム中毒を起こす危険があります。

  • 女性ホルモン剤(経口避妊薬、更年期症状改善薬、PMS/生理痛改善薬など)

ビタミンCが、血液中のエストロゲン濃度を上昇させてしまう可能性があります。エストロゲン過剰は女性ホルモン系の様々な疾患(乳がんなど)をひきおこす原因のひとつです。

ビタミンCは検査数値に影響する

高用量のビタミンCのサプリメントの使用によって、次の様な検査数値に影響を及ぼすことが判っています。

  • 血清ビリルビン
  • 血清クレアチニン
  • 便潜血のグアヤック分析

そのため、1日の推奨量を超えるビタミンCのサプリメントを服用している人は、健康診断/検査時に検査責任者に必ずその旨を伝えておく必要があります。

ビタミンCは食品から摂ることが重要

ビタミンCの多い野菜と果物トップ10

ビタミンCを多く含む食品

統合食養学は、ホリスティックな栄養学ですから、体の栄養状態を考える時、ミクロ栄養素(サプリメント)ではなく、マクロ栄養素、つまりホールフード(食品そのもの)で食べることが大切だと考えます。

今回ご紹介したビタミンCに関する多くの研究論文も、概ね、ビタミンCは食事(野菜や果物)から摂取しなければ体内で上手く機能しないこと、サプリメントでは効果がないことを証明しています。

そのため、ここにビタミンCの多い食品をリストアップしておきました。

図中の丸で囲まれた数値は、1日の推奨量がカバーできる量です。例えば、赤ピーマンなら2個、芽キャベツなら中くらいの大きさのもの5つで1日の推奨量が達成できるという意味です。

夏には夏の、冬には冬のお野菜や果物で、ビタミンCの補給をしていただければと思います。

ビタミンCの多い果物

C果物

風邪が流行る季節に、旬を迎える果物にビタミンCが多いのは、偶然ではないと思います。

上の表に出てくる野菜と果物のうち、以前、詳しく記事にしたものの記事をリンクしました。ご興味のある人は、ご確認ください。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

そして、病気の予防や治療にも、サプリメントを飲むのではなく、静脈から直接血液中にビタミンCを投与しなければ効果がないことがわかったのではないでしょうか。

つまり、ビタミンCのサプリメントを飲んだら「がんが治る」的なことを言っている人がいたとしたら、それは確実に詐欺か無知ですから、相手にしないのが賢明です。

もし体調に不安があり、ひとりで取り組むことに難しさを感じているのなら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

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様々な不調の改善について、12のテーマに沿って教えています。

新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

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参考文献

  • Vitamin C“, Micronutrient Information Center, Linus Pauling Institute, Oregon State University
  • 食品からの鉛の摂取量」、日本で実施された摂取量調査、農林水産省

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング