体内時計が狂うとがんになる?病気を予防し改善する体内時計の調整法

2024/06/04/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

心と体をつなぐホリスティックな食事法について、
ニュースレター登録者限定のキャンペーン情報等も配信しています。
ご登録は、こちらから
もれなく統合食養学ホリスティック栄養学冊子が無料ダウンロードできます

2023年11月に科学専門誌『Cell(細胞)』にがんを予防するだけでなく、がんの治療効果を高める体内時計の重要性について、まとめられた論文が発表されました。

がんのリスク要因の約80%は、改善可能なライフスタイルに起因しています。

そして、そのライフスタイルの調整には、体内時計が正しく時を刻んでいることが重要である証拠が具体的に記載されていました。

和訳要約してお伝えします。

がんの研究は、細胞周期が正常に働いていることの重要性を明らかにしました。

細胞周期というのは、一つの細胞から二つの細胞を生み出す周期のことで、間期と分裂期があります。間期は分裂の準備期間です。細胞核の中で様々な構造変化が起こります。分裂期は細胞核が活発に分裂していき、分裂した核がひとつの細胞になるまでの期間です。

細胞周期が正常に回るためには、次のような活動がタイミングよく起こることが重要です。

  1. 細胞内部と外部の環境の感知
  2. 損傷修復
  3. 分裂する細胞を決定
  4. 各分裂段階での遺伝物質と構成成分の忠実な複製と分布
  5. そのためのエネルギー供給と細胞内容物の代謝

体内時計の研究は、上記した細胞周期のタイミングを最適化するためには、細胞時間をコントロールすることが重要であることを明らかにしました。

更に最近の研究は、この、細胞周期と体内時計の2つのプロセスの間にある、直接的&間接的な相互作用を明らかにしつつあります。

体内時計は、遺伝子を転写するタイミングやタンパク質を合成するタイミングを直接的にコントロールし細胞周期を調節しています。そのため、細胞周期に関与している遺伝子は、とてもリズミカルに発現します。

細胞周期だけでなく、腫瘍を抑制する物質やがん遺伝子も体内時計と複雑に相互作用していることが多くのエビデンスによって示されています。

研究者は、体内時計の崩壊は、細胞の正常な機能の喪失と同じことだと述べています。

細胞や組織が刻む時間は、体内時計と体内リズムによってコントロールされています。

体内時計は、正しくは、概日時計と呼ばれるものですが、ここでは分かりやすく体内時計という言葉を用います。体内時計の一日は、24時間よりも少し長い約25時間です。しかし、人の生活時間は24時間に設定されているため、毎日、体内時計を適切にリセットする必要があります。

体内時計には、大きく主時計と末端時計の2種類があります。

脳の視床下部にある神経細胞のネットワークが主時計(マスター時計)です。主時計は、一日のリズムを調節し、他の脳領域や他の体内時計を調整しています。この調節によって、毎日の睡眠と覚醒のリズムや、絶食と摂食のリズムが決まります。

主時計は、網膜の神経細胞が太陽光、明るい光、青色光を察知することに反応して、リセットされます。

末端時計は、哺乳類ではひとつひとつの細胞全ての中に存在しています。その動きは細胞自律的です。末端時計は、食事(朝食)や運動によってリセットされます。

慢性的な体内時計の乱れは、特定の種類のがんのリスクを高めることが明らかにされています。また、さまざまな慢性炎症性疾患のリスクをも高めます。それによってもがんリスクが上昇し、がんの予後や回復にも大きな影響を与えます。

動物を用いた実験でも、慢性的な時差ぼけによって特定のがんのリスクが上昇することが示されています。

研究者は、次のように述べています。

がんの遺伝的素因の有無にかかわらず
個人の体内時計に影響するライフスタイル要因に的を絞った介入
を行うことは、がんの予防から生存までの、
がん治療のあらゆる段階で有効になるだろう

体内リズムも正しくは概日リズムですが、ここでも分かりやすく体内リズムという言葉を用います。

体内リズムは、生理機能と代謝に関する一日のリズムです。さまざまな臓器(組織)が造る数百から数千の物質が、24時間のリズムをもっていることが実証されています。

例えば、哺乳動物のすべてのタンパク質をコードする遺伝子の最大85%が24時間のリズムに沿って発現しています。また、ホルモンの多くも時間に沿ってリズミカルな動きをします。

あらゆる臓器には、それぞれの活動のリズムがあります

それぞれの臓器が担っているさまざまな働きの中で、相互に関係する作業のタイミングを同期したり、相容れない作業を異なる時間に分離したりと、各臓器が働く時間を配分し調節することによって、各器官が最適な環境で働くことを可能にしています。

この体内リズムの働きによって、がんを含むさまざまな病気の原因となる細胞の損傷や機能不全のリスクが抑えられています。

細胞の健康に関連する次のような細胞の働きは、24時間の周期を示し、がんに関連していることが明らかになっています。

  • 細胞増殖
  • アポトーシス
  • 炎症
  • 代謝再プログラミング
  • 転移

など

哺乳類では、体内時計の乱れが慢性的になると、次の疾患の発症を引き起こすことが明らかにされています。

  • 心臓代謝性疾患
  • 肥満
  • がん
  • 精神障害
  • 栄養神経障害

など

特に、体内時計の慢性的な乱れが乳がんや前立腺がんのリスク増加と相関していることが疫学研究と動物実験によって示唆されています。

WHOの国際がん研究機関は、2019年に、体内時計の乱れを伴う交替勤務(夜勤含む)を発がん性の可能性がある「グループ2A」に再分類しました。

夜勤や交替勤務だけでなく、次の環境もがんの増殖を促進する可能性があると述べています。

  • 夜間に明るい光を浴びる(屋内照明を含む)
  • 日中に自然光を浴びる時間が不足している

更に、2021年、米国の「国家毒物学プログラム」は、次のライフスタイルに発がん性のリスクがあると結論付けています。

「持続的な夜勤」と「特定の照明条件」

前臨床研究(動物研究)では、慢性的な時差ぼけを模倣した照明環境で飼育されたマウスの脳の主時計と時間制御遺伝子のリズミカルな発現が著しく損なわれたことを示しています。

更に、慢性的時差ぼけマウスで、次のがんの増殖が促進されたことが示されています。

  • 異所移植骨肉腫
  • すい臓腺がん
  • 肺腺がん

乳がんを自然発生したマウスを慢性的な時差ぼけにし、慢性的に体内時計を混乱させると、次のことが観察されました。

  • がん細胞の幹細胞の活性化
  • 免疫細胞の機能抑制
  • がん細胞の増殖
  • 肺転移の増加

メラノーマを発症したマウスでは、慢性的な時差ぼけによって、免疫反応が変化し、がんの進行に有利な細胞環境が促進されたことが報告されています。

マウスの体内時計を人為的に破壊して行われた多くの研究が、体内時計とがんの発生との相互作用を実証し、ほとんどの研究は、体内時計ががんを抑制する役割を担っていることを指摘しています。

がん細胞の縄張りは、腫瘍微小環境と呼ばれ、がん細胞を取り囲む複雑で動的な生態系をもっています。(なお、がん細胞の縄張りについて詳しくは『がんの縄張り』をご参照ください。)

がんの縄張りを取り囲むように、さまざまな種類の免疫細胞が存在し、がんの進行や転移などに影響しています。

体内時計のリズムの乱れは、がん細胞の縄張りを取り囲む免疫細胞集団と、がん細胞との力関係を変容させ、がんの発生と進行に有利に働くと考えられています。

神経膠腫の患者のサンプルから得た遺伝子発現データをコンピューター解析したところ、体内時計遺伝子の調節不全が免疫細胞の浸潤とがん細胞の増殖に関連していることが明らかにされています。

体内時計のリズムは、次のような自然免疫と獲得免疫の両方に影響をもっていると考えられています。

  • 免疫細胞の数
  • 日々のサイトカイン(炎症性物質)の変動
  • 免疫細胞の貪食力(有害物の排除力)
  • 免疫機能の反応性

免疫細胞内の時計遺伝子を欠損すると、がん細胞が増殖することが実証されています。

また、抗がん免疫反応が起こる時間帯、つまり、がん細胞を抑制する時間帯、つまり、免疫細胞が活発に働く時間帯があることが明らかにされています。

更に、がんの転移に関係している循環腫瘍細胞の放出が、体内時計のコントロール下にあることが実証されています。循環腫瘍細胞の放出のピーク時間帯は、がんの種類によって異なることも判明しています。

前立腺がんでは、循環腫瘍細胞の放出は、活動の開始時に最も多く、乳がんでは、睡眠中に循環腫瘍細胞が増加することが示されています。

循環腫瘍細胞の増殖と放出は、次のホルモンの日々の変動によって制御されていると考えられています。そして、これらのホルモンの放出は、体内時計によってコントロールされています。

  • メラトニン・・・睡眠導入ホルモン(抗酸化ホルモン)
  • グルココルチコイド(GC)・・・副腎皮質ホルモン
  • テストステロン・・・男性ホルモン
  • インスリン

メラトニンは、脳の松果体で作られ放出されます。習慣的な就寝時間の2~3時間前に増加し始め、睡眠の中頃にピークに達し、朝起きてから基本ラインに戻るまでに1~2時間かかります。

メラトニンは、すい臓からのインスリンの分泌を阻害するため、朝起きてから直ぐの食事は血糖値を上昇させてしまうため、起床後1~2時間あけてから朝食にすると良いと研究者は述べています。

メラトニンが合成できないようにしたマウスを用いた研究では、メラトニンがさまざまな種類のがんを抑制し、多くの生物学的活性を持つ体内時計に従って作用するホルモンであることが示されています。

メラトニンの詳しい機能や分泌させる方法については『メラトニン』をご確認ください。

コルチゾールは、副腎から分泌されるホルモンです。朝起きてから1時間以内にピークに達します。コルチゾールもまた、食後の血糖値の調節を妨げることが知られています。

コルチゾールの手なずけ方については、セルフドクターコースで詳しくお伝えしています。

すい臓から分泌されるインスリンに対する、より高いインスリン感受性は、自然な食事のタイミングと一致し、インスリンの働きに対するメラトニンとコルチゾールの影響を考慮すると、就寝前と起床直後の食事を避けることが血糖値の安定と改善に貢献することは明らかです。これは、血糖が気になる人だけでなく、他の生活習慣病やがんの予防、治療、サバイバーの再発予防にとって重要なことです。

メラトニン、コルチゾール、インスリンだけでなく、その他のホルモンや神経伝達物質の分泌や、エネルギー代謝、免疫機能などに関係している体内時計のタイミングが明らかになれば、食事や投薬のタイミングを最適化して、予防と改善や、副作用を軽減したり、薬の有効性を高めたりすることができると考えられています。

体内時計とがんやさまざまな疾患との関係についての知識は、「時間療法/クロノセラピー(chronotherapy)」として、がんの予防と治療の進歩に大きく貢献しています。

時間療法には次の3つのアプローチがあります。

  1. 体内時計のトレーニング
  2. 体内時計への投薬
  3. 体内時計に合わせた投薬

体内時計のトレーニングとは、乱れた体内時計のリズムを正常なリズムへと回復させ、維持するためのものです。体内時計の正常なリズムの回復と維持が、病気の進行と転帰に貢献するとの考えに基づいて行われます。主には、次の内容が含まれます。

  1. 光療法
  2. 睡眠
  3. 食事
  4. 運動

など

・・・・・・・・・

続きをご覧になるには、ニュースレターへのご登録が必要です

下のフォームにご入力されたメールアドレスに「限定公開記事」へのリンクがついた
Welcomeメールをお送りします。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

体内時計は、運動、睡眠、食事、と、そのタイミングによって調整することができます。

何を食べるか、どのように食べるかに加えて、いつ食べるのかいつ食べてはいけないのかが、がんを始めとするさまざまな疾患の予防と改善にとって重要であることが明らかにされました。

生活習慣病やがんと診断された人は、今回ご紹介した体内時計の調節も症状の改善や治療のサポートとして取り入れることをお勧めします。

でももしおひとりで取り組むことに不安や難しさを感じるのでしたら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

プライベート・ヘルスコーチング・プログラムについて
お気軽にご相談ください。
初回相談を無料でお受けしています。

あるいは、ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースで学びませんか?セルフドクターコースでは、あなたが食を通してご自身の主治医(セルフドクター)になるために、必要な知識とスキルを教えています。

新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

心と体をつないで健康と幸せを手に入れる
ニュースレターのご登録は、こちらから
統合食養学(ホリスティック栄養学)冊子が無料ダウンロードできます

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング