あなたの記憶は書き換えられているかも?記憶は簡単にすり替わる

2024/04/16/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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偽の記憶・本当の記憶

アメリカ心理学会(APA)のニュースレターで送られてきた記事のひとつが非常に興味深く、また、恐ろしく思える内容でしたので、一部を和訳要約してお伝えすることにしました。

あなたの記憶をいとも簡単に書き換えることができる方法について書かれていました。

あなたが確信をもって自分の記憶だと思っているものが、実は、ほんの些細なことで書き換わっている可能性があるという事実です。

あなたの記憶、思い出は、本当にあなたが思っているようなものではなかったとしたら?

あなたの記憶があなた自身や大切な人たちを傷つける内容に書き換えられていたとしたら?

この情報は、少なからず私の脳裏に警戒の旗を立てました。

記憶の真偽の科学と映画

STORYTELLING AND THE SCIENCE OF TRUE AND FALSE MEMORIES
マリア・バルタッツィ

実際には起こっていなくても

「子供の頃に凶暴な動物に襲われたという記憶を
思い出させることはできますか?」

「10代の頃に警察が捜査に来るほど重大な罪を犯したという記憶を
誰かに思い出させることはできますか?」

「一週間前にカードゲームで不正行為をして、
受け取る資格のないお金をカードバンクから引き出したという記憶を
誰かに思い出させることはできますか?」

ウエスト・ハリウッドのソーホーハウスにある、ふかふかの赤いベルベットの劇場席に腰を落ち着けたとき、これらの質問が発せられました。質問をしたのは、記憶心理学における世界有数の専門家の一人で、米国科学アカデミーの会員でもあるエリザベス・ロフタスでした。

彼女は、なぜ私たちがそのような行動をするのか、なぜ行動には結果が伴うのか、そして、私たちの行動を決める社会的および生物学的要因についての科学的根拠を掘り下げることに人生を費やしています。彼女の見解を聞くために、エンターテイメント業界の私たちは、ソーホーハウスの試写室を埋めていました。

米国心理学会(APA)の「科学パートナーシップおよびアウトリーチ」担当のシニアディレクターであるデレク・スナイダーは、その晩の講演を次のように紹介しました。

「心理学を人々のリビングルームに戻すこと」

そのひとつの方法は、ストーリーテリング(物語りすること)です。だから、プロデューサー、監督、脚本家が集まりました。APAは、「科学とエンターテインメント交換(The Science & Entertainment Exchange)」社と提携し、専門家を招き、彼らの知識をエンターテイメント・コミュニティと共有しています。

映画の中で語られる物語に、もっと行動科学を取り入れたいと考えているのです。

エリザベス・ロフタスの話

最初のゲストスピーカーとなったエリザベスは、ピーコックの新ドラマシリーズ「不合理/イレイショナル(Irrational)」を好ましい例として挙げました。

「この番組は、私たちがこうあるべきと期待する通りに作られていると思います。ハリウッドに精神科学/心理学が取り込まれています。」

私たちが何を覚えているのか、そして、その過去の記憶を、事実・アイデア・提案によってどのように変えることができるのかをエリザベスは研究しています。

時に、それは有害な結果をもたらすことがあります。

偽りの記憶と思い出した記憶に関わる彼女の研究は、訴訟の証人の証言の信頼性に関する発見と議論の両方の火種となってきました。

彼女は数十件の注目を集めた訴訟で専門証人またはコンサルタントを務めており、2021年のニューヨーカー誌でこのテーマが取り上げられました。エリザベスの実績は、なぜ記憶を研究することが重要なのかにヒントを与えてくれます。

誤情報効果

「記憶がなければ、朝の起床のし方も、コーヒーの淹れ方、
バス停までの道の見つけ方もわかりません。
でも、記憶は常に完璧に機能するわけでもありません。」

実際、多くの場合、記憶は、誤情報という形で完璧ではない状態で機能しており、誤情報はいたるところに存在しています。「誤情報効果」という現象すらあります。これは、記憶している事柄に悪い印象を与える誤情報にさらされた時に起こります。

あなたは、質問されたり尋問されたりした時に、誤情報を受け取ります。

あなたは、メディアの報道を見聞きした時に、誤情報を受け取ります。

あなたは、何かの体験をした直後に、共に体験をした人と話しをすると、誤情報を受け取ります。

これらのすべては、

「誰かの記憶に新しい情報が入り込む機会であり、
汚染、変換、歪曲、時に単なる記憶の補充が起こる原因です。」

存在しない記憶を思い出す

エリザベスは聴衆にさらに質問をしました。

なかったことをあなたが思い出すよう
「あなたの心に情報を注ぎ込む」ことはできるでしょうか?

典型的な反応は、「犯していない犯罪を私が告白するわけがない」です。でも、エリザベスの話を聴いたら、あなたは考えを変えるかもしれません。

誤情報パラダイム

過去数十年にわたって、彼女はヒトの記憶を研究するために2つのパラダイムを開発しました。1つは、「誤情報パラダイム」です。

被験者は、ある犯罪、事故、または、ある出来事を模倣した状況を目撃します。その後、その出来事に関する新しい有力な情報または誤情報が与えられます。その後、被験者は、覚えている事柄について質問を受けます。

彼女の初期の実験によるひとつの例では、トラックが一時停止標識で止まることなく通過した後に事故が起こる映像を被験者に見せます。その直後に被験者に次のように質問をします。

「交差点のイールド(道を譲れ)標識
他の車はトラックを追い越しましたか?」

キーワードは「イールド標識」です。この質問によって被験者には交差点にイールド標識があったという記憶が植えつけられます。後に、交差点にあった標識は何だったかと尋ねられた彼らは、何と答えたと思いますか?

イールド標識です。

でも、実際にそこにあった標識は何だったでしょうか?

一時停止標識です。

肥沃な偽パラダイム

エリザベスは、極端な「記憶汚染」についても話しました。

不安や憂鬱など何等かの問題を抱えて心理療法を受けた人々が、今まで存在していなかった記憶、例えば、動物を殺すことを強制され悪魔の儀式に関わっていたと信じ込むなど、幼少期の実際には存在しない恐ろしい記憶によってトラウマを持つようになることです

研究者としてエリザベスは、実際にはやっていない、動物の殺戮や犯罪を、いかにして人々にやったと信じ込ませることができるのかと考え始めました。

記憶のベースとなる出来事が存在しない「肥沃な偽パラダイム(Rich False Paradigm)」を彼女が思いついたのはその時です。

このパラダイムでは、出来事の代わりに、体験に関する記憶が被験者に提供され植えつけられます。その後、その出来事について覚えていることをテストします。

複数の国の研究者による大規模研究で、次のことが明らかになりました。

約30%の確率で、人々は詳細な記憶に陥る

約3人にひとりです。また、

23%の人は、覚えていないにもかかわらず、
その出来事が起こったと信じる

約4人にひとりです。

偽の記憶と本当の記憶の見分け方

では、偽の記憶と本当の記憶の違いをどう見分けたら良いのでしょうか?

これはいつまでも答えのない疑問であり、また、政治活動のように望ましい結果を得るための記憶を植えつけ、状況を操作する場合には、倫理的な問題も生じます。

偽りの記憶も、本当の記憶と同じ感情を起こします。神経信号が類似しているからです。

エリザベスは、これは認知心理学者が決めることではないと考えています。これは社会が決めることです。

講演最後の彼女からの警告とアドバイスは、

「誰かが自信を持って何かを言ったり、何かについて詳しく話したり、
話をしている時に泣いたりしたとしても、
それが実際に起こったということにはなりません

それが本物の記憶なのか、それとも他のプロセスの産物なのか
を知るには、独立した裏付けが必要です。」

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

知り合いのひとりに、偽記憶あるいは誤印象を周囲に与えるのが上手な心理学修士(20代の頃は嘘泣きの練習までしていた、笑)がいますので、この記事を読んで、諸々が腑に落ちたのでした。腑に落ちたのと同時に、その行為の異常性(サイコパス的な利己性)を感じずにもいられませんでした。

カリフォルニア大学デービス校の心理学と神経科学の教授チャラン・ランガナス博士は、次のようにも述べています。

 「私たちは思い出すという行為を通して記憶を上書きします」
「私たちの記憶は、変化する砂の上に築かれています」

自分の感覚や記憶と異なる誰かの言葉に「あれ?そうだったっけ?」と思った時が、記憶の塗り替えが起きている時です。その違和感をスルーしないことが大切ですね。

ランガナス博士は、記憶について次のようにもおっしゃっています。

記憶は写真や動画の再生ではなく、
絵画のようなもの

記憶は、事実そのものではなく、事実への私たちの解釈が反映されたものだと説明しています。確かに、同じ海を見ても、ひとそれぞれ感じ方が異なれば、どんな海を見たかという記憶の内容も異なります。その海をその人がどんな絵に描くのか、それがその人にとってのその海の記憶なんですね。

ネガティブな記憶への対処法として『ネガティブな記憶が出てきたら』も読んでみてくださいね。

そしてやっぱり犯罪捜査における目撃情報というのは当てにならない可能性が高く、冤罪を生む危険性を含んでいるものだと感じました。

さて、この記事を読んで、あなたはどう感じましたか?

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参考文献:

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング