血液検査でアルツハイマー病が診断できるようになる!

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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アルツハイマー病を発症していることが血液検査で確認できるようになったという画期的な研究報告を受け、7月28日に発表されたJAMAの社説がとても分かりやすかったので、和訳要約してお伝えすることにします。

なお、出典は最後に参考文献として掲載しています。

今は、アルツハイマー病治療にとって飛躍の時です。

アルツハイマー病は、心臓病やがんなどの他の主要な慢性疾患と同様に、その進行を管理することが可能で治療可能な病気とみなされつつあります。

アルツハイマー病の進行管理には、次の4要素が含まれ、他の病気治療と同じです。

  1. 特定分子を発見することによる早期診断
  2. 病状を変容させるための治療を診断早期から開始する(早期治療
  3. リスクを低減する優れた予防戦略
  4. 治療間の連携(コーディネーション)

アルツハイマー病治療は、1990年代の脳脊髄液検査から始まり、2000年代前半にはアミロイドタンパク質のPETスキャン、2010年にはタウタンパク質のPETスキャンと変革が行われ、アルツハイマー病にとって重要な病理学的特徴(アミロイドおよびタウタンパク質)の検出技術の大きな進歩によって推進されてきました。

今では、質量分析検査と超高感度免疫測定によるリン酸化タウ217(p-tau217)の値は、脳脊髄液検査とPETによる脳アミロイドーシスとタウ凝集の測定値と有意に相関していること、そしてそれが、アルツハイマー病に特有だということが判っています。

そして、初期ステージのアルツハイマー病患者へのアミロイドプラークを減少させるモノクローナル抗体を用いた治療が最近承認されましたが、この治療薬を処方するにあたっては、アミロイドタンパク質が確実に存在するという確認が必要になります。

今回お伝えする2つの研究は、アルツハイマー病の病状管理が劇的に変化しているタイミングで発表されたもので、どちらも有益で歓迎すべきものです。

PETスキャンは高額であり、どこでも利用できるわけではありません。特に内科では、アルツハイマー病を正確に診断することは困難です。

内科医が早期かつ正確に診断を下すためには、信頼できる血液検査技術の確立が不可欠となりますが、血液中のアミロイドとタウの濃度は非常に低いため、長年、手の届かないものと思われてきました。

しかし、今回、アルツハイマー病病理における信頼に足る血漿バイオマーカーが発見されその有効性が実証されたのです。

スウェーデンの異なる内科と専門科で、軽度認知症、軽度認知障害、および主観的認知機能低下と診断された患者のアルツハイマー病の所見(アミロイドβとタウタンパク質) と、質量分析血液検査による次の2つの値を組み合わせたものが相関するかの検証が行われました。

  1. 血漿中の非p-tau 217に対するp-tau 217の割合(「p-tau217の%」)
  2. アミロイドβ42とアミロイドβ40の比率(アミロイド確率スコア2「APS2」)

臨床検査のみでアルツハイマー病を予測する精度は、内科で61%、専門科は73%でしたが、この研究における「APS2(血液検査)」を用いると、どちらの科でも91%になり、「p-tau217の割合(p-tau217の%)」が確定要因となりました。

この研究によって強力な相関関係が示されたことは、臨床診療において重要な意味を持っています。

なぜなら、非常に高い精度が求められるアルツハイマー病の血液検査を、内科を含む臨床の診断プロセスに組み込むことができることを、この研究は高い説得力もって示したからです。

これらの検査を用いることで、アルツハイマー病による認知障害や認知症の患者を臨床医が正確に特定できる可能性を高めることができます。アルツハイマー病を早期に正確に診断することは、脳内のアミロイドの減少を標的とするモノクローナル抗体を用いた新時代の到来により、ますます重要になっています。

これらの検査は、軽度の認知障害と認知症を発症している患者の状態を把握することに最も役立ちます。

しかし、アルツハイマー病には、「前臨床アルツハイマー病と呼ばれる長い前兆期があります。

例えば、この検査を用いて、主観的な認知機能の低下を訴えている(自己申告の)人に対して、アルツハイマー病を発症することを予測する精度は高くありません。

そのため、現時点では、血液バイオマーカーは、アミロイド濃度は高いものの正常な認知機能がある人や主観的な認知機能低下を訴える人ではなく、明らかな認知障害がある人に対してのみに使用することに重点を置く必要があります。

上述した質量分析研究は、米国のひとつの研究室によって、スウェーデン人のデータを用いて実施されたものです。そのため、この研究の限界は、対象者に多様性がないことです。

他の民族や人種に対して、今回の結果を一般化して適用すること、この技術が汎用可能なのか、経済的なものなのかは、まだ明らかではありません。

しかし、アミロイドとタウタンパク質の高性能免疫分析は、開発中のものが他にも多数あり、より広く利用できるようになる可能性は、あります。

この研究は、血液検査によって、アルツハイマー病の臨床診断をサポートできること、そして、内科と専門科の両方において、認知障害のある人のアルツハイマー病の診断精度を大幅に向上させられることを明らかしました。

アミロイドβタンパク質に対するモノクローナル抗体を用いた治療法が登場したことで、アルツハイマー病の早期診断が不可欠となったこのタイミングで、アルツハイマー病を早期に正確に診断できる方法が発見されたことは画期的です。

ただし、「APS2」血液検査は、前臨床期に、単独でアルツハイマー病の判定に使用するには精度が不十分であり、さらなる研究開発の必要性があります。

早期診断と治療に加えて、アルツハイマー病治療のますます重要となる焦点は予防です。

『コミュニティにおける動脈硬化リスク研究(the Atherosclerosis Risk in Communities Study)』のデータを使用した研究は、老年期に入ってから(原因に拠らず)認知症を発症した中年後期(平均年齢58歳)の人と、発症のない人との間で、次の2つの血漿バイオマーカーに重要な違いがあることを発見しました。

  1. トレオニン181のリン酸化タウ(p-tau181
  2. アミロイドβ42とアミロイドβ40の比率(APS2

加えて、この研究は、加齢と共に次の血漿バイオマーカーが増加することを明らかにしました。

  • アルツハイマー病の神経病理(アミロイドおよびタウタンパク質)
  • 神経損傷
  • アストログリオーシス(神経細胞の破壊による星状細胞/アストロサイトの異常な増加)

そして、これらのマーカーが中年期の高血圧や糖尿病、そして、APOE e4遺伝子と関係があることも実証しました。

この研究の参加者の26%は黒人でしたが、性別も人種もこの結果に影響しないことも確認されています。

アミロイドPETまたは脳脊髄液バイオマーカーによって確認できる認知機能低下が始まる15~20年前の「前臨床アルツハイマー病」と呼ばれるアルツハイマー病の前兆期からアミロイドプラークの蓄積は始まります

アルツハイマー病リスクの検出精度が、前臨床アルツハイマー病期の早い段階にまで拡張されれば、病気の進行を大幅に遅らせることのできる新しい治療法が発見される可能性も高まります。

そのためには、実務的には、血漿バイオマーカーを用いた大規模な試験が必要です。

上述した研究は、認知症発症の20年も前にアルツハイマー病のバイオマーカーが上昇し始めていることを検出できるという重要な観察結果を示しました。しかし、このバイオマーカーの予測精度は低く(ハザード比1.15倍)、人口統計に基づく予測精度よりも低いのです。

アルツハイマー病の可能性を前臨床期に発見するためには、より信頼性の高い堅牢な血漿バイオマーカーが必要です。

この研究では、中年後期に見られるアルツハイマー病の血液バイオマーカーの変化が、老年期認知症のリスク因子であることが実証されました。

認知症のリスク因子である高血圧と糖尿病は、食事と生活習慣の改善によって修正可能なリスクであり、アルツハイマー病の血液バイオマーカーと関連しています。

ただ、これらのリスク因子を改善することで、将来の認知症リスクを軽減できるかは、まだ明らかではありませんが、重要なヒントになることが示されています。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

研究者も述べている通り、認知症は生活習慣を改善することで予防できる可能性のある病気です。

詳しくは、アルツハイマー病/認知症の予防のための食事とライフスタイルについて執筆した5回シリーズの記事『アルツハイマー病と認知症』をご確認ください。

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参考文献

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング