バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
プレシジョン栄養療法とは
2022年10月の『ネイチャー・バイオテクノロジー』にプレシジョン・ニュートリッション(精密栄養療法/プレシジョン栄養療法)に関する記事が掲載されていました。
プレシジョン栄養療法とは、機械学習(AIを用いたデータの分析・予測・分類など)とジェノタイピング(遺伝子型判定)解析を用いて、病気治療の有効性を高めるよう設計された食事療法を意味します。
今回ネイチャーで取り上げられたプレシジョン栄養療法は、がん治療に関するものです。具体的には、様々ながんの種類ごとに、がん細胞の栄養に関する弱点を明らかにし、がん細胞を餓死させるよう設計された食事です。
ネイチャーの記事には、がん治療における食事療法の重要性について、現在、科学が明らかにしている事柄が、分かりやすく整理されていました。多くは、既に、ソフィアウッズ・インスティテュートが個別のブログ記事でお伝えしたことがあるものでしたが、ひとつにまとめることで情報が整理されて分かりやすいと思いましたので、あらためて和訳要約してお伝えすることにしました。
裏付けとなる研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています。なお、ネイチャーの論文内の参考文献はネイチャーの元の記事でご確認ください。
プレシジョン栄養療法はがん治療の4本目の柱
がん治療の3本柱と言われる、次の治療
- 手術
- 化学療法(抗がん剤治療)
- 放射線治療
この3つに加え、食事療法を4本目の柱とするために、例えば、米国カリフォルニア州に本拠を置くベンチャーの Faeth Therapeutics(フェース治療学)社は、「プレシジョン栄養療法」の研究に4,700万ドル(約70億円@JPY150)の資金調達を、2022年6月に実施しています。
プレシジョン栄養療法については、現在の情報処理技術によって、ターゲットを正確に絞った食事を設計できると考えられています。例えば、特定の栄養素に高い執着をもつがん細胞の、その執着を利用して、がん細胞を殺すことができると考えられています。
がん治療としての食事療法について判っていること
現在までに疫学研究から判明している食事とがんの関係は次のようなものです。
- 砂糖の大量摂取と肥満は、がんと関連している
- 摂取カロリーの制限が乳がんサバイバーの生存率を向上させる可能性がある
- 食物繊維の多い食事が大腸がん予防に役立つ可能性がある
- ケトンダイエットが化学療法と放射線療法の効果を高める可能性がある
全て統計上の可能性の話です。
がんの進行に対して、栄養療法の効果を客観的に評価した対照試験は今のところ存在しません。動物研究は、プレシジョン栄養療法が患者の生存の可能性を高められることを示唆していますが、ヒトを対象とした研究が行われていないのです。
がん治療としての食事療法が抱える現在の問題点
がん治療への食事療法の効果の検証は、次のような課題を抱えていると研究者は述べています。
- 栄養素の摂取量の測定法が標準化されていない
- 特定の栄養成分ではなく、食品に焦点が当てられている
- 被験者の高い途中離脱率
- 販促を目的とした疑似科学による怪しい主張
ヘルスコーチとしての私ソフィアウッズ・インスティテュートの個人的な見解を差し挟むと、従来科学のアプローチでは有効栄養成分を明確にすることが重要であることは理解します。しかし、食事は栄養素でするものではなく、食品で、料理で、するものです。また、単一栄養素ではなく食品の栄養素同士のシナジー効果、つまりホールフードで食べることの重要性については多くの研究が裏付けている事実です。そのため、「食品に焦点が当てられている」こと自体が食事療法の有効性検証の問題になるという指摘については、かなり的外れだと感じました。
プレシジョン栄養療法研究
フェース社の共同創設者兼CEOのアナンド・パリク(Anand Parikh)は次の様に述べています。
「遺伝的な要因と原発臓器ごとに
がん細胞が必要とする栄養素は異なることを利用して、
食事を介してがん細胞への栄養供給を減らすことを目指しています」
フェース社は、がん細胞の種類に特化した食事療法と治療の組み合わせには効果があるという裏付けを前臨床試験(動物実験)から得ています。
例えば、子宮内膜がん、膀胱がん、乳がんの患者から採取したがん細胞を移植したマウスでは、低炭水化物の食事によって、薬の効果(インスリン活性化酵素PI3K阻害剤)が5倍にもなることが示されました。また、大腸がん細胞を移植したマウスでは、アミノ酸のセリンとグリシンを制限すると、がん細胞の成長が遅くなり、生存率が3倍になることが示されています。食事療法と化学療法を組み合わせると、効果は更に高まったと報告しています。
フェース社は、これらの観察結果に基づき、3つの第I相の臨床試験を現在実施しています。
(1). 低糖質ダイエットの臨床試験
多くの固形がんでは、PI3K酵素のサブユニットのp110αに、インスリン感受性が高まりブドウ糖の取り込みが増える変異が起きています。がん細胞は、健康な細胞よりも多くのブドウ糖を消費することが知られています。アミノ酸や脂肪などの他の栄養素も必要とします。
PI3K酵素(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ)は、細胞膜の構成要素です。シグナル伝達タンパク質でもあり、様々な細胞活性をコントロールし、細胞の生存と死を決める生物活性脂質分子です。
がん細胞に栄養(ブドウ糖)を与えないために、PI3K酵素の阻害剤を投与すると血流中のブドウ糖が細胞に取り込まれなくなります。結果、高血糖状態が続きます。すると膵臓は更なるインスリンを分泌してブドウ糖を取り込み血糖値を下げようとします。すると、ブドウ糖の取り込みが再開され、結局、がん細胞への栄養供給を遮断することができず、がん細胞の増殖を抑えることができなくなります。
「この、インスリンの追加分泌は、
がん治療のために阻害したいPI3K酵素を再活性してしまうため、
化学療法を無効にしてしまうのです。」
と、1990年代にPI3K酵素を発見した細胞生物学者カントレイ博士は説明します。
こうした状況を踏まえ、Faeth社は、PI3K酵素阻害剤セラベリシブによる治療に、インスリンの分泌を抑制する食事を組み合わせた研究を行っています。(Faeth社は、2019年に武田薬品からセラベリシブのライセンス取得をしています。)投薬と食事を組み合わせることによって、そもそものインスリンの分泌を抑制する効果を調べています。
PI3K酵素阻害剤による化学療法を受けている人は、次のような低糖質の食事療法を平行して行うことで、治療効果を高められると一般的には考えられています。
- 低炭水化物ダイエット
- ケトン体ダイエット
- インターミッテント・ファスティング(断続的なファスティング)
詳しくは『ケトン体ダイエットは病気治療の食事法|健常者が行うと副作用や後遺症があることを知っていますか?』、『インターミッテント・ファスティングの正しいやり方』もご参照ください。
低糖質ダイエットががんの治療効果を高めるメカニズム
低糖質ダイエットががんの治療効果を高めるメカニズムは、様々な遺伝子分析、例えば、トランスクリプトミクス(特定の状況下での細胞中に存在する全てのmRNA)解析やディープフェノタイピング(詳細な表現型)解析などによって、明らかにされつつあります。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランス
マサチューセッツ工科大学コッホ統合がん研究所の所長で、Faeth社の科学顧問であるマシュー・ヴァンダー・ハイデン(Matthew Vander Heiden)博士は、2021 年の論文で、低GI食のがん細胞への効果は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスに関係している可能性があることを示しました。
がん細胞の増殖には一価不飽和脂肪酸が必要です。そのため、飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の比率を減少させるような食事と低糖質ダイエットを組み合わせた時にのみ、がん細胞の増殖を抑制することができたと報告しています。
ソフィアウッズ・インスティテュートの感想|健常者の健康維持にとっては不飽和脂肪酸の割合が飽和脂肪酸よりも多い方が良いと考えられていますが、がん患者では、逆のことが効果があるということでしょうか。興味深いですね。健常者の食事と病気治療目的の食事はまったく異なることのひとつの良い例ではないかと思いました。
また、不飽和脂肪酸のひとつであるオメガ3、特に、亜麻仁油を用いた臨床研究では、亜麻仁油を摂取した乳がん患者のがん細胞が減少したことが報告されています。亜麻仁油に含まれているリグナンという植物性エストロゲンの作用によるものです。そのため、「飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率」と、全ての不飽和脂肪酸をひとつにまとめて結論づけるのは困難なのではないかと感じました。
ちなみに、ケトン体ダイエットによっては、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスに変化を起こすことはできなかったことも報告されています。
免疫抑制的な骨髄細胞の減少
近年イタリアで行われたがん患者101名を対象とした研究では、一般的な化学療法と並行して断食に近い食事を5日間行うことによって、血糖値、インスリン、インスリン様成長因子-1が改善しただけでなく、免疫抑制的な骨髄細胞が減少し、CD8+免疫エフェクターT細胞が増加したことが観察されました。一方で、食事療法を伴わない化学療法だけの治療では、免疫細胞の効果は現れませんでした。
肝臓キナーゼB1(LKB1)欠損
同じくイタリアでは現在、肝臓キナーゼB1(LKB1)を欠いた進行性肺腺がんを患っている患者を対象に、糖尿病薬メトホルミンの投与と断食に近い食事療法の組み合わせが、化学免疫療法(プラチナ塩+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ)の有効性を改善できるかが調査されています。
- プラチナ塩|プラチナイオンを含む塩、塩化白金や臭化白金など
- ペメトレキセド|葉酸代謝拮抗薬、悪性胸膜中皮腫治療薬
- ペムブロリズマブ|がん免疫療法に使用されるヒト化モノクローナル抗体(単一の抗体産生細胞をクローニングして作られた抗体)
がん細胞抑制遺伝子LKB1をもたない肺腺がん細胞は、免疫チェックポイント阻害剤(抗PD1)治療への反応が弱い(耐性がある)ことが判っています。また、LKB1をもたない、あるいは、活性がない肺腺がん細胞は、栄養の枯渇に対して脆弱だという特徴も、動物研究によって示されています。
そのため、抗がん剤シスプラチンに対して耐性をもっている、LKB1をもたない肺腺がんに対しては、糖尿病治療薬のメトホルミンが抗がん剤として働くと考えられています。そのため、同様に、ブドウ糖の少ない(低糖質)食事がLKB1をもたない肺腺がんの治療に有効かどうかが調査されています。
術前の化学療法を受けているトリプルネガティブ乳がん患者でも、同様の研究が進行中です。
(2). セリン除去食の臨床試験
アミノ酸のセリンとグリシンは免疫細胞にとって不可欠な成分です。そのため私達は、体内で造ることができます。しかし、複数のがん細胞にとってもセリンとグリシンは不可欠なアミノ酸です。
例えば、セリンを食事から除去すると、一部のがん細胞は脆弱になります。この脆弱性は、KRAS遺伝子やP53遺伝子によって影響を受けます。
- KRAS遺伝子|がん遺伝子のひとつ。細胞増殖を促進するシグナル伝達の役割を持つKRASタンパクを作り出す遺伝子
- p53遺伝子|細胞内でDNA修復や細胞の増殖、停止、アポトーシス等を制御する機能を持つ。機能不全になると、がんが起こる。
「セリンとグリシンを自前で造る能力を失っている一部の
がん細胞にとって、食事から得るセリンは不可欠です。」
(セリンとグリシンは相互に変換し同じ機能をもっている)
と、英国ロンドンにあるフランシス・クリック研究所のグループリーダー長で、がん細胞におけるP53遺伝子の研究の専門家であるヴォーデン(Vousden)博士は説明します。
Faeth社は、転移性膵臓がんと大腸がんへの化学療法の効果を強化する目的で、セリンとグリシンを除去した食事療法の効果を検証しています。被験者は、セリン合成に重要な2つの酵素の発現が少ないがん細胞をもつ患者、つまり、セリン除去食に反応しやすい患者群を対象に行われています。
セリンを含む食品を抜いたところで、私達は体内でセリンを造ることが可能なので、上記したようにセリンを造れないがん細胞に限って有効な方法なのでしょうね。
ちなみに、セリンは、卵白、乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、魚に多く含まれています。
こうした検証試験は、従来の創薬研究とは異なり、複雑な規制の対象ではないため、医療用食品研究として実施できる利点があります。
(3). 腸内細菌に関する臨床試験
食事療法は、個々人の腸内細菌についても考慮する必要があります。何兆個にも及ぶ微生物は、アミノ酸や様々な物質を栄養素やメッセージとして自前で造ります。
「だから、食事を変えるだけでは、がん細胞への
栄養供給をコントロールするのは難しいかもしれません」
と、英国ジャージーを拠点とする、「栄養-マイクロバイオーム-免疫機能軸」に関する研究を支援しているシーレイヴ基金のCSOマニュエル・ファンクハウザー氏は述べています。シーレイヴ基金の活動は、免疫療法の効果と腸内細菌との関連性を記述した免疫学者ローレンス・ジトヴォーゲル博士の2014年の論文を裏付けとしています。
腸内細菌、潜在的には食事、がチェックポイント阻害剤治療に対する患者の反応に影響を与えることは知られていますが、腸内細菌がどのように影響を与えているのか等、根底にあるメカニズムはまだ明らかになっていません。
詳しくは『薬が効く人と効かない人がいるのはなぜでしょうか?』をご確認ください。
プロビオティクスサプリメントに効果なし
MDアンダーソンがんセンターのジェニファー・ワーゴ博士が率いる、メラノーマへの免疫チェックポイント阻害剤治療を受けている128人の患者を対象とした研究は、食事に関連するいくつかの示唆を提供しています。
プロビオティクス(サプリメント)抜きで、十分な食物繊維を含む食事をした患者で最大の効果が観察されました。
この結果は、前臨床試験(動物実験)でも再現されています。食物繊維の少ない食事またはプロビオティクスを与えられたマウスは、がん細胞を取り巻く細胞環境(腫瘍微小環境)にインターフェロン陽性で細胞毒性のあるT細胞が少ないことが観察されました。
腸内環境や免疫力向上にプロビオティクス(善玉菌サプリメント)が有効とされている一般的な認識を覆す報告で驚きました。食物繊維(プレビオティクス/腸内細菌の餌)は良いけれども、善玉菌を人為的に投与しない方が効果が高いというのは、ヘルスコーチとして非常に興味深いです。
その他『腸内細菌時代の食事と病気(がん)を科学的に考える』もご参照ください。
がん治療効果の予測精度
イスラエルのレホボトにあるワイツマン科学研究所の免疫学者エラン・エリナフ博士は現在、大細胞型B細胞リンパ腫の患者の化学療法への反応度を、食事パターンから予測できないか研究しています。
「どのような食事が、どのような臨床結果を示すのかを
予測することは非常に困難です。」
「栄養素への反応の個人差は、非常に大きいのです。
なぜなら、2つとして同じ腸内細菌はいないからです。」
と、エリナフ博士は警告します。栄養素からだけでなく、食べる量やタイミング、予期せぬその他の要因によって、異なる結果が現れることを指摘しています。
確かに、「ホモサピエンス」である私達もひとりひとりが異なるように、例え同じ種に属している腸内細菌であってもひとつひとつ異なるのかもしれませんね。
免疫療法との関係が示唆される腸内細菌3種
英国のキングスカレッジ・ロンドンのティム・スペクター博士と彼の研究チームは、進行性皮膚がんの165人の患者の腸内細菌のシーケンスデータを分析し、免疫療法への反応度と関係している腸内細菌3種を特定しました。
しかし、腸内細菌1種だけでは予測はできませんでした。
「腸内細菌は、異なる腸内細菌種の存在や不在を超越した方法で、
治療効果に影響を与えている」
と、2022年の『ネイチャー・メディシン』に掲載した論文で述べています。
この件については、以前執筆した『バクテリア・コミュニケーションを理解することが健康の鍵』が分かりやすいと思います。
糖尿病のプレシジョン栄養療法
イラン・シーゲル博士を含むエリナフ博士の研究グループは、メタボリックシンドロームと糖尿病をもつ人を対象とする研究によって、同じひとつの食品に対しても、血糖値の反応には大きな個人差があることを明らかにしました。
そして、腸内細菌から得られたデータと臨床的特徴に関する情報があれば、機械学習によって、ひとりひとりの血糖値反応を正確に予測できることも発見しました。
この研究による裏付けを基に、エリナフ博士とシーゲル博士は、デイツー(DayTwo)社を共同設立し、糖尿病の血糖値管理のために、ひとりひとりに合った食品を選択できるアプリを開発し商品化しています。
アプリ利用者から腸内細菌と臨床データを提供してもらい、ひとつひとつの食品がその人の血糖値に与える影響度を格付けして提供しています。
イラン・シーゲル博士の研究の詳細については『人類にとって唯一ベストな食事法はどれだ?』をご参照ください。
プレシジョン栄養療法の確立に必要なもの
しかし、医師が薬と一緒にプレシジョン栄養療法を処方するようになるまでには、もうしばらく時間がかかると考えられています。
「ヒトの腸内細菌の役割は、これまで考えられてきたよりも複雑です。」
「栄養素の分子的な影響と引き金的な影響に対する我々の理解は、
まだ非常に初歩の段階にあります。」
と、エリナフ博士は言います。
測定基準とデータ収集とデータベース
米国国立衛生研究所の「健康のためのプレシジョン栄養研究」と同様に、イスラエルとドイツにある彼の研究チームは、栄養素が病気にどのような影響をもっているかを何千人もの患者を対象に調査しています。
加えて、次の取り組みも必要です。
- 詳細な加工食品の栄養データ
- より包括的な食品データベース
- マクロ栄養素とミクロ栄養素の公認測定基準
ジュネーブに本拠を置くスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のマルセル・サラテ(Salathé)博士のデジタル疫学研究室によるクラウドソーシングでは、AIによる食品追跡ツールの開発、バーコード付き加工食品データベースの構築を行っています。
研究室の発見をキッチンで再現する
科学者は、栄養と病気との関係の根底にある複雑さを、機械的により深く理解すること、そしてその理解を以って、がん細胞を最も効果的に飢えさせ、がん治療に相乗効果をもたらす食事法を確立することを目指しています。
しかし、その後は、その食事法を実際の毎食の献立にできること、そして、患者がそれを確実に食べることが保証されなければなりません。なぜなら、例えば、セリンを除去した料理を簡単に自宅のキッチンで作ることができる人はほとんどいないからです。
このこと自体が障壁となりえます。
ヘルスコーチの関与が不可欠
その問題を解決できるのは、ヘルスコーチです。
管理栄養士は献立にすることはできるでしょう。しかし、患者がそれを確実に食べるよう導くことは彼等の仕事ではありませんし、彼等はそうした訓練も受けていません。
管理栄養士の教育課程に「コーチングスキル」はありません。
それができるのは適切な教育と訓練を受けたヘルスコーチだけです。
プレシジョン栄養療法の今後
無作為化対照試験と同様の厳格さで設計されるプレシジョン栄養療法は、これからの10年間で、はるかに大きな役割を果たすようになると研究者は述べています。
がん治療の効果に影響を与える食事の重要性を示すエビデンスが蓄積されてきていることから、今後、がん治療に栄養療法を組み合わせる機会は増えていくと考えられているようです。
「私達が生きている間に、
がんへの栄養学的アプローチが発見され、
その有効性が立証されるでしょう。」
と Faeth社のパリクCEOは予測しています。
Faeth社は、既に、米国コロラド州ボルダー市にあるセントラルキッチンから食事全般を患者の自宅へ直接配送し、管理栄養士から助言が得られるアプリを介して、処方された食事と飲み物とおやつを必ず食べるよう、サポートを提供することを始めています。
まったくの余談ですが、私はボルダーに住んでいました(笑)その頃のことは『私の思い出』に書いています。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
がんの食事療法についての記事
今までソフィアウッズ・インスティテュートが食事とがんとの関係について記載した記事には次のようなものがあります。こちらも参考になると思いますよ。
- 『がん細胞の成長と増殖を難しくさせる体内環境を作るには』
- 『がん細胞の協力者を体内に作ってしまう仕組みとそうさせない方法』
- 『腸内細菌時代の食事と病気(がん)を科学的に考える』
- 『薬が効く人と効かない人がいるのはなぜでしょうか?』
- 『がんを予防する簡単な習慣』
その他、「がん」予防・改善に効果をしめした食品などについて執筆した記事は「がん」でご覧ください。
がん治療と並行して食事を改善したい
もし通院でがんの治療に取り組まれている、あるいは再発予防に取り組まれているのなら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?
私達はどうせ3食食べるのです。ならば、その3食があなたの体内をがん細胞にとって居心地の悪い状態にできる食事をしましょう。
私達は食べたものでできています。
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
ソフィアウッズ・インスティテュートは、乳がんの述前・入院中・そして退院後の食事指導、前立腺がんの通院治療中の食事指導、甲状腺腫の術後の食事指導などしてきました。経過は今のところ良好です。クライアントさん達からいただいたご感想は、ホームページからご確認いただけます。
プライベート・ヘルスコーチング・プログラムについて
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参考文献
- “Precision nutrition o boost cancer treatments”, Nature, 07 October 2022
- “Low glycaemic diets alter lipid metabolism to influence tumour growth”, Lien, E.C., Westermark, A.M., Zhang, Y. et al., Nature 599, 302–307 (2021). https://doi.org/10.1038/s41586-021-04049-2
- “Fasting-Mimicking Diet Is Safe and Reshapes Metabolism and Antitumor Immunity in Patients with Cancer”, Cancer Discov (2022) 12 (1): 90–107, JANUARY 01 2022, https://doi.org/10.1158/2159-8290.CD-21-0030
- “Metformin Plus/Minus Fasting Mimicking Diet to Target the Metabolic Vulnerabilities of LKB1-inactive Lung Adenocarcinoma (FAME)”, Marina Garassino, Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei Tumori, Milano, NCT03709147, November 16, 2020
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング