バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
ミルクは牛乳だけじゃない
ミルクと一言で言っても、いろいろあります。
動物から搾るミルクだけじゃなく、ナッツやシーズなどの植物からもミルクは採れます。
牛乳には含まれているのに植物性のミルクには無いか少ない栄養素もあれば、牛乳には含まれていないけれども植物性のミルクには豊富に含まれている栄養素もあります。
他の食材や献立、レシピを工夫することで、牛乳を使わなくても栄養価的に不足のないお料理を作ることも可能です。
今回は、様々なミルクについてお伝えします。牛乳だけがカルシウム源ではありませんよ!
牛乳
牛乳は、とても栄養価に優れた食品です。かつ、ただ飲むだけでそれらの栄養素を摂取できるので、便利ですし、調理の手間もコストもかかりません。低予算で栄養バランスを達成しなければならない学校給食にとっても非常に便利な食品です。
また、牛乳はカルシウムが多い食品だというイメージがありますが、『カルシウムを多く含む食品』をご覧になっていただければ、牛乳はカルシウム源として、実はそれほどではないことが判ります。ただ、繰り返しになりますが、飲むだけで良いので便利な食品なんです。
しかし、牛乳には、その他にも多くの問題が存在しています。
乳糖
牛乳特有の炭水化物(糖質)です。
この炭水化物を消化するために必要な酵素(厳密には、腸内細菌)をもっていない人(日本人に多いと言われています)にとっては、腹痛や下痢を誘発する物質です。
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするという人は、この乳糖を消化する酵素をもっていない人です。
カゼイン(乳たんぱく質)
足の爪が割れている四足動物(牛、羊、山羊など)の乳に特有のタンパク質です。ちなみに、爪が割れていないラクダのミルクにはカゼインは含まれていません。
このタンパク質が乳がんや卵巣がん、自己免疫疾患のリスクを高めるとする報告があり、ハーバード大学公衆衛生学部が注意を呼び掛けています。
一方で、カゼインが尿酸の排出を促すので痛風予防になるとする報告もあります。
乳牛の飼育環境と牛乳の安全性
乳牛の飼育の仕方や環境にも問題があります。
例えば、
- 抗生物質の投与
- 遺伝子組換え大豆やトウモロコシの飼料
- ホルモン剤/成長剤などの投与
です。
乳牛に与えたこれらの物質は、牛乳の中に分泌されている可能性があります。
授乳中のお母さんが食べたものは、母乳の成分として赤ちゃんに与えられることは良く知られています。だから、授乳中のお母さんは、アルコールを飲んではいけないし、様々な食事の制限があるのです。
牛だって同じです。乳牛に与えたものは、牛乳に含まれてしまうことは容易に想像できます。
環境負荷
2018年6月に『Science』に発表された論文「Reducing food’s environmental impacts through producers and consumers(DOI: 10.1126/science.aaq0216)」を基に英国の環境系NPO Veganuray が作成したグラフ(上記)によれば、それぞれのミルク1杯(200ml)を造るために係る環境負荷は、植物性ミルクと比較し、牛乳では約4倍になることが示されています。
私達の健康への直接的な影響だけでなく、環境への負荷においても牛乳には問題があると言えます。
グラスフェッド・ミルク
遺伝子組換え飼料や化学物質や薬を与えず、昔ながらの牧畜によって家畜を育てることを「グラスフェッド(Grass fed)」と呼びます。つまり「牧草だけを食べさせて育てた」という意味です。
欧米では、「グラスフェッド」であることを認証するマークなどが、肉類や乳製品(ミルク、チーズ、クリームなど)に付されるようになっています。
日本にはグラスフェッドの基準も認証する機関もまだありませんが、グラスフェッドの輸入品が購入できる他、日本でも自発的にグラスフェッドで飼育されている畜産農家さんも増えています。
牛に限らず、豚や鶏(卵)なども「グラスフェッド」のものが増えてきています。
どうしても牛乳を使わなければならないような場面やお料理なら、グラスフェッドの牛乳を使うと安心です。もちろん、グラスフェッドであってもカゼインたんぱく質は含まれていますから、飲み過ぎない/使いすぎないことが大切です。
とはいえ、まだとても高価なので飲みすぎ/使いすぎは滅多にないと思いますが、笑
豆乳
一番、広く飲まれている、そして、簡単に手に入る植物性のミルクです。
利点
カリウム(牛乳150mg vs 豆乳190mg)やタンパク質(牛乳3.3g vs 豆乳3.6g)の含有量では、牛乳と同等かそれ以上のミルクです。
また、牛乳に含まれていない鉄分(1.2mg)があり、葉酸(牛乳5μg vs 豆乳28μg)やビタミンE(牛乳0.1mg vs 豆乳3.1mg)、ビタミンK(牛乳2μg vs 豆乳4μg)は、牛乳の2倍以上含まれています。
また、抗酸化物質のイソフラボンを含んでいるため、循環器系疾患予防になると考えられている他、イソフラボンに女性ホルモン様の働きがあることから、女性の更年期症状の緩和になると考えらえています。
欠点
アレルギー表示義務のある指定食品のひとつです。
牛乳には含まれているレチノール(ビタミンA)が豆乳には含まれていません。カルシウムもあまり含まれていません(15mg)。
イソフラボンの女性ホルモン様の働きにより、閉経前の女性が摂り過ぎると婦人科系疾患リスクが高まる懸念があります。豆乳を発酵させるとタンパク質の構造が変化しますので、問題はありません。
注意事項
健康のために豆乳を飲むのなら「遺伝子組換えでない」&「有機」&「無調整」の豆乳を購入しましょう。
食品添加物に要注意
無調整の豆乳ではなく、「豆乳ドリンク」となっている製品に注意してください。人工甘味料や香料、乳化剤や増粘剤を含んでいるものが多く販売されています。
特に、味/フレーバーがついているものは、合成香料でその味を作っているものが圧倒的に多いです。例えばコーヒー味の豆乳にはコーヒーが入っているわけではなく、コーヒー味を再現した化学物質(香料)が使用されています。
フレーバーつきの豆乳がお好みであれば、必ずパッケージ裏を確認して安全なものを選んでくださいね。
遺伝子組換え大豆に要注意
パッケージ裏に「大豆(遺伝子組換えでない)」などと、書かれていることを確認しましょう。
非遺伝子組換え大豆であることが明記されていない場合には、遺伝子組換え大豆を使用している豆乳です。「分別管理済み」あるいは「不分別」という言葉は、遺伝子組換え大豆の混入があるという意味ですからご注意ください。
アーモンドミルク
最近、日本でもパックで購入できるようになりましたね。
利点
1カップのアーモンドミルクから、1日に必要なビタミンEの推奨量(6.5 – 7.0mg)の約半分が摂れます。ビタミンEの詳しい機能については『ビタミンE』をご確認ください。
アーモンドはカルシウムも多く含んでいるナッツです。100g当たりでは牛乳の2倍(230mg)です。アーモンドミルクは、良いカルシウム補給ドリンクとなります。カルシウムの詳しい機能については『カルシウム』をご確認ください。
欠点
牛乳や豆乳に比べると、タンパク質はほとんど含まれていません。
また、アーモンドのミネラル分の多くは、ミルクを搾った後のプードルの方に残っています。そのため、アーモンドミルクだけでなく、プードルも一緒にお料理に使うと無駄にせず安心です。
注意事項
食品添加物に注意
パッケージ裏をしっかりと確認しましょう。アーモンドミルクの多くに、人工甘味料や安定剤や香料(バニラ系)が添加されています。
脱脂アーモンド粉乳
脱脂アーモンド粉乳にアーモンド風味の香料を混ぜている、粉末アーモンドミルクがあるそうです。これをお湯で溶いてもアーモンドミルクにはなりません。
戦後、日本の子供の栄養事情を改善するために給食に導入された脱脂粉乳が、本物の牛乳とはまるで違う飲み物であったように、脱脂アーモンド粉乳は、アーモンドミルクではありません。
お湯で溶くだけのインスタント食品に、多くを期待してはいけません。
アーモンドミルクの作り方
アーモンドミルクに限らず、ナッツミルクは、自宅で簡単に作れます。自宅で作れば添加物を心配する必要もありません。しかも、ミルクを搾ったあとの残りカスは、いわゆる、アーモンドプードル(アーモンド粉)なので、クッキーやパンケーキなどに使えて無駄がありません。
材料:
- 生アーモンド・・・1カップ(8時間以上、浸水しておく)
- 水・・・4カップ
作り方:
- 浸水しておいた生アーモンドと水をブレンダーに入れ、高スピードでよく混ぜ合わせます。
- チーズクロース(最近ではナッツミルク専用のクロースもあります)に、混ぜ合わせたものを入れ、液体を搾ります。
- その液体がアーモンドミルクです。クロースの中に残ったカスが、アーモンドプードルです。
ライスミルク
多くは、炊いたお米から作られます。玄米から作ったものなども販売されています。
利点
炊いたご飯をミルクにして、冷やしてから飲むので、含まれている炭水化物(デンプンなど)がレジスタントスターチ(難消化性でんぶん)に変わります。そのため、ご飯を1膳食べるよりも血糖値が上がりにくく、太りにくい食品になります。
玄米で作るとビタミンB1が補給できる代謝促進ドリンクになります。玄米には白米の3倍から10倍のミネラルやビタミンが含まれています。
欠点
タンパク質やカルシウムはほとんど含まれていません。
他のミルクと比較すると水っぽいので、クリーミーさが欲しいお料理には向きません。また、白米は、ほぼブドウ糖ですから、他の栄養素の補給源にはなりません。
注意事項
食品添加物に注意
市販のものには、人工甘味料や塩、合成香料が添加されているものが多いです。必ず、パッケージ裏を確認して、無添加のものを選びましょう。
玄米ミルクなら無農薬のものを
農薬やヒ素などは、玄米のぬかに蓄積しやすものです。そのため、玄米ミルクは、必ず、無農薬の自然栽培か、せめて有機栽培された玄米が使用されていることを確認しましょう。
ライスミルクの作り方
ライスミルクは本当に簡単にできます。
材料:
- 炊いたご飯: 1膳
- 水: 2カップ
作り方:
- 材料を全部ブレンダーでよく混ぜ合わせた後、濾す
または、大さじ2杯の米粉を水カップ1杯と混ぜてもできます。
ココナッツミルク
ココナッツの独特のフレーバーがお菓子作りに人気ですね。
お料理にクリーミーさを加えるような際に、牛乳の代替ミルクとして、よく使われるミルクです。
利点
牛乳よりも多くのカリウム(牛乳190mg vs ココナッツミルク230mg)とマグネシウム(牛乳10mg vs ココナッツミルク28mg)を含んでいます。
欠点
タンパク質は牛乳の約半分です。
カルシウム(5mg)やその他のビタミン類もほとんど含んでいません。
食品添加物に注意
増粘剤や漂白剤、酸化防止剤が添加されているものが多いので注意しましょう。
オーガニックと書かれていても増粘剤が入っているものを見たことがあります。必ず、缶の原材料表示を確認してくださいね。
ココナッツミルクの一石二鳥活用
私は、ストレートなオーガニックのココナッツミルクを購入すると、いったん鍋で温めてから冷やします。すると、オイルとミルクに分離するので、オイルの部分は別容器にとっておいてココナッツオイルとしてお料理や基礎化粧品作りなどに使います。
フラックスミルク(亜麻仁ミルク)
さらっとしたミルクです。
利点
食物繊維と不飽和脂肪酸(オメガ3:αリノレン酸)が豊富です。
オメガ3は、中性脂肪や悪玉コレステロールを排出してくれる油なので、生活習慣病や肥満予防だけでなく、心疾患や脳卒中などの予防にも効果があります。
フラックスシードには、カルシウム(255mg)とマグネシウム(392mg)が豊富に含まれているので、ミルクの方にも多く含まれていることが期待できます。
また、女性ホルモンバランスを整えるリグナンを豊富に含んでいます。
欠点
タンパク質をほとんど含んでいないので、タンパク源にはなりません。
食品添加物に注意
市販のフラックスミルクには、大抵、人工甘味料が大量に添加されています。
その他、防腐剤や合成香料を添加して味をつけているものがあります。
パッケージ裏をちゃんと確認してくださいね。
フラックスミルクの作り方
材料:
- フラックスシード・・・1/3カップ
- 水・・・4カップ
作り方:
- ブレンダーで高スピードでよく混ぜ合わせ、ナッツミルクバッグで濾す。
これにデイツとバニラを加えて、味を調えるのが一般的です。シナモン、ナツメグ、クローブなどのスパイスで味付けするのも人気です。
ヘンプミルク
独特の風味があり、好き嫌いが分かれるミルクです。
利点
ヘンプシードは、タンパク質(29.5g)が多く、必須アミノ酸(20種)を10種類も含んでいます。そのため、ミルクも優秀なタンパク源となることが期待されているミルクです。
また、ヘンプシードには、鉄分(13.1mg)やカルシウム(130mg)も多く、オメガ3不飽和脂肪酸を含んでいます。ただ、ミネラル分の多くは、ミルクを搾った後のプードルの方に残っているので、ミルクとプードルの両方をお料理に活用すると無駄がなくて良いですね。
欠点
豆乳に含まれているフィチン酸(大腸がんを予防する効能をもつ成分)やオリゴ糖(腸内細菌の栄養素)がヘンプミルクには含まれていません。
食品添加物に注意
独特の風味を調整するために、市販のものには、大抵、人工甘味料や合成香料が使用されています。
パッケージ裏を確認してから購入しましょう。
ヘンプミルクの作り方
材料:
- 殻つき生ヘンプシード・・・1カップ
- 水・・・4カップ
作り方:
- ブレンダーで高スピードでスムーズになるまで混ぜてから濾す。
味を調えるのに、塩をひとつまみ入れることもあります。また、バニラやデイツ、メイプルシロップなどを甘味として加えると美味しく飲めます。
カシューミルク
とてもクリーミーなミルクです。
利点
カシューミルクのアミノ酸価は80です。
豆乳以外のナッツミルクの中で最も優秀なタンパク源となります。
欠点
ミネラル分はいずれもあまり含まれていません。
カシューミルクの作り方
材料:
- 生カシューナッツ・・・1カップ
- 水・・・4カップ
作り方:
- あらかじめ、生カシューナッツを2時間程度浸水させておく。
- その後、生カシューナッツと水2カップをブレンダーに入れ、低スピードから高スピードになるよう徐々にスピードを上げて混ぜる。
- もう2カップの水を加え、更によく混ぜる。
- もしナッツの粒が残っているようなら、ナッツミルクバッグを使って濾す。
水の量を少なくして、バニラ、メイプルシロップなどを加えると、ホイップクリームのようになり、また、ゆっくり冷やせばアイスクリームになります。発酵させればチーズにもなります。とても便利なナッツミルクです。
ナッツとシーズガイド
それぞれのナッツやシーズの詳しい個性については、次の記事をご参照くださいね。
- 『秋はナッツが美味しい季節!』 ナッツの栄養ガイド
- 『秋はシーズも美味しい季節』 シーズの栄養ガイド
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
あなたのお気に入りは、どの植物性ミルクですか?
市販のものは簡単で便利ですが、食品添加物(人工甘味料、香料、乳化剤、防腐剤、増粘剤など)が入っているものが非常に多いので、健康のために飲むのであれば、ご自分で作ってしまいましょう。
どのナッツミルクもブレンダーさえあれば簡単に自宅でできるものばかりです。そして、どのナッツミルクも冷蔵庫で約2~3日もちます。
そのまま飲むだけでなく、お料理やデザート作りに活用したり、スムージーや紅茶・コーヒーに入れて使うことだってできます。
豆乳とアーモンドミルクを上手く組み合わせたら、栄養価としては牛乳と同等かそれ以上のミルクになります。
なお、増粘剤として使用されるカラギナンは、アンドリュー・ワイル医師もご自身のブログで警鐘を鳴らしている天然由来の物質です。天然のものが全て安全というわけではありません。カラギーナンの詳細については『食品添加物のカラギーナン』をご参照ください。
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参考文献:
- 『食品成分表2015』、女子栄養大学学長 医学博士 香川芳子監修、女子栄養大学出版部(文部科学省「日本食品標準成分表」)
- 米国農務省(USDA)食品栄養データベース
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング