アスピリン(鎮痛剤)が魔法の薬と呼ばれる理由|アスピリン成分を含む食品

2023/03/28/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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柳の樹皮の抽出エキスから発見された鎮痛成分

柳の樹皮の抽出エキスからサリシンと呼ばれる成分が、1899年に発見されました。

サリシン(Salicin)のサリ(Sali)は、ラテン語でを意味します。

サリシンに、アセチル基を付与して創られた化合物、アセチルサリチル酸は、皆さんも良くご存知の頭痛薬アスピリンです。

アセチルサリチル酸を主成分とする鎮痛剤

  • バイエルの「アスピリン]
  • ライオンの「バファリンA

ライオンの「バファリンA」にはアスピリン以外の他の成分も含まれていますが、バイエルの「アスピリン」はアスピリンしか含まれていません。だって元祖ですから・・。

アスピリンは、頭痛薬(鎮痛剤)であり解熱剤です。

コロナ禍で日本ではアセトアミノフェン(カロナール)が知名度をあげましたが、アセトアミノフェンの肝毒性を考えたら私は怖くて飲めません(笑)。(アセトアミノフェンの肝毒性については『アセトアミノフェン』をご参照ください。)

一方アスピリンは、たぶん、最も構造がシンプルな天然由来?の鎮痛剤です。

鎮痛だけではないアスピリンの効果

裏付けとなる研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています。

この、125年も前に発明されたシンプルな構造の植物由来の鎮痛剤は、今では「魔法の薬(wonder drug)」と呼ばれるくらい、次々と様々な病気に効くことが判明してきています。

実はこの記事は、2016年11月に初めて執筆したのですが、その後も次々とアスピリンの効果が発見されているため、改めて執筆しなおしたものです。

魔法の薬なのに、安価で製造も簡単で、処方箋なしでドラッグストアで購入できるんです!(笑)

そして、私のキッチンにある唯一の医薬品でもあります。

抗血液凝固作用/心疾患予防

アスピリンに抗血液凝固作用があることが判明し、近年、脳卒中や心臓発作の再発予防などに処方されています。

ただし、心疾患や脳卒中にかかったことがない人が、アスピリンを予防のために飲むと、胃の内出血や脳内出血が起ることも判明していますので、アスピリンは簡単に手に入る薬ですが、自己判断で飲むことはしないでくださいね。

がん細胞の増殖抑制

自然食品に含まれているサリシンには、がん細胞の血管新生(がん細胞が栄養を搾取するために作る新たな血管)を抑制する効果があることが報告されています。

そしてサリシンを主成分とするアスピリンに、次の種類のがんの発症リスクを低下させる効果があることが2010年以降次ぎ次ぎと報告されています。

大腸がん

発症リスクが27%減少すると報告されています。

特に、50歳~59歳で、心疾患リスクがある人、または、大腸ポリープや大腸がんの遺伝子特性をもっている人が、毎日、アスピリンを服用することが予防に有効だと、米国の大腸がん診療ガイドラインで強く推奨されています。

胃がん/胃噴門腺がん/食道扁平上皮がん

2011 年 9 月までに発表されたアスピリンと 12 のがん部位に関する全ての観察研究のメタ分析の結果、アスピリンの服用によって、次のがんの発症リスクが有意に低下することが報告されています。

  • 胃がん・・・39%減少
  • 胃噴門腺がん・・・33%減少
  • 食道扁平上皮がん・・・36%減少

肝がん

スウェーデンの慢性ウイルス性肝炎(B型とC型)患者を対象とした全国規模の研究では、アスピリンを使用しない場合よりも、低用量アスピリン(160mg以下)を服用することで肝細胞がんのリスクが有意に低く、肝臓関連死亡率が低くなることが報告されています。出血などの胃腸障害が有意に高くなることもなかったそうです。

前立腺がん

定期的なアスピリンの使用は、前立腺がん全体と進行性の前立腺がんのリスクの低下と関連していました。特に、定期的なアスピリンの使用が4年以上に限定すると、よりリスクが低下したことが報告されています。

卵巣がん

米国で行われた「看護師健康調査」と「看護師健康調査 II」 のデータを使用したコホート研究では、低用量アスピリンを服用していない人と比べて、服用している人の卵巣がんリスクが23%低いことが観察されました。

アスピリンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に分類される薬ですが、他のNSAIDとは異なる構造/作用をもっています。

例えば、アスピリンとは異なる構造のイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の服用では、卵巣がんリスクが19%高くなること、そして服用していた期間と1週間あたりの累積平均服用錠剤数と卵巣がんリスクには正の相関が観察されました。つまり、イブプロフェンなどのNSAIDは、服用すればするほど卵巣がんリスクが高くなるということです。

また、アセトアミノフェンの服用と卵巣がんリスクには明確な関連はみられませんでした。

乳がん

カリフォルニア州の公立学校の女性教師のコホート研究で、アスピリンとその他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の服用と乳がん(全てのタイプの乳がん) リスクとの関係が調査されていました。

週に3錠以上の低用量アスピリンを服用した女性で、乳がんリスクが約16%低下していることが観察されています。ホルモン受容体陽性/HER2陰性サブタイプの女性で特に顕著で約20%のリスク低下がみられました。

他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)には乳がんリスク低下効果はみられませんでした。

また、別の前向き追跡調査研究では、乳がん予防のためには、アスピリンを5年以上一貫して使用(週に2~7回)すると、乳がんに対する保護効果をより効果的に得られることが発見されています。

子癇前症の予防と改善

子癇前症(しかんぜんしょう)は、妊娠中に高血圧と過剰なタンパク尿を引き起こす危険な合併症です。妊娠中毒症などとも呼ばれているものです。通常、妊娠後期から出産直後に発生します。

米国予防医学作業部会(USPSTF)は、2014年に、子癇前症の発症リスクの高い妊婦に対して低用量アスピリンを投与することを推奨する声明を発表しました。この声明後の追跡調査の結果を踏まえ、2021年9月に妊婦と胎児・新生児への安全性が確認されたとして、改めて、推奨する声明が発表されています。

詳しくは『危険な妊娠合併症を予防できる簡単な方法』をご参照ください。

自己免疫疾患によって起こる不育症(血栓症や習慣性流産)の改善に、低用量アスピリンに効果があることを、神戸大学、大阪大学、手稲渓仁会病院(札幌市)不育症センターによる共同プロジェクトが発見し2024年9月に報告しています。

現在までに発見されている、血栓症や習慣性流産などの不育症の原因となる自己抗体には、次のものがあります。

  • 抗リン脂質抗体症候群(APS)を起こす抗リン脂質抗体(aPL
  • 抗β2-グリコプロテインI(β2GPI)/ヒト白血球抗原(HLA)-DR抗体(ネオセルフ抗体

ネオセルフ抗体は、上記の研究グループによって新たに発見された抗体です。

aPLは、子宮内膜内皮細胞の血管新生を阻害することで不育症を起こすことが知られています。

APSによる不育症への標準治療には、低用量アスピリンとヘパリン(抗凝固薬)が併用されています。

国内5施設で、抗β2GPI/HLA-DR抗体をもつ不育症女性78人のうち、2023年12月までに妊娠した47人を対象に、低用量アスピリンとヘパリンを用いた治療効果が調査されました。

  • 治療を受けたグループ・・・39人
  • 治療を受けなかったグループ・・・8人

無事に赤ちゃんを出産した率と妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、胎盤機能不全による34週未満の早産)の割合を比較したところ、次の結果が得られています。

  • 治療を受けなかったグループ・・・50.0%(8人中4人出産)
  • 治療を受けたグループ・・・87.2%(39人中34人出産)

抗β2GPI/HLA-DR抗体のみ陽性で、他の不育症危険因子を持たない妊婦では、治療を受けたグループの生児獲得率が、92.9%でした。

  • 治療を受けなかったグループ・・・50.0%(8人中4人が発症)
  • 治療を受けたグループ・・・5.9%(39人中2人のみ)

骨折予防

2020年に発表された1つの観察研究が、アスピリンの使用によって骨折リスクが17%低下したことを報告したことから、アスピリンの次のような作用によって骨の健康状態を改善し、高齢者の転倒リスクを低下させることができるのではないかとの期待が高まりました。

  • 骨形成に関与している骨髄細胞の発達と寿命を促進する可能性
  • 破骨細胞の活動を抑制する可能性
  • 心臓血管系の健康を(血液をサラサラに)維持することで、高齢者のフレイルを軽減することで転倒による骨折を予防する可能性

しかし、2022年12月にJAMAに発表された研究論文は、17,000人の高齢者を対象とした二重盲ランダム化試験を実施し、5年間追跡調査した結果、プラセボ(偽薬)と比較しアスピリンの骨折予防効果に有意な違いがなかったことを報告しています。

この実験で用いられたアスピリンの容量は1日100mgでした。

研究者は、今回の研究の対象となったの被験者の全員が白人であったことや、使用したアスピリンの容量の変更など、今後の研究に期待したいと述べています。

でもアスピリンはビタミンCを略奪する

アスピリンが魔法の薬と呼ばれる裏付けをご紹介してきましたが、アスピリンは医薬品です。サプリメントではありません。

どんなに素晴らしい薬にも副作用はあります。

アスピリンが柳の成分から造られているとはいえ、アスピリンは食品でもありません。

アスピリンを常用すると、ビタミンC欠乏になることが判明しています。それだけでなく、既にご紹介した通り、胃の内出血や脳内出血を起こす可能性もあります。

そのため、例えば、がん予防のためにアスピリンを服用する場合には、ビタミンCを多く含む食品を意識してたくさん食べることや、体の声に耳を傾けながら行うことをお願いします。ビタミンCを多く含む食品については『ビタミンC』をご確認ください。

だからと言って、ビタミンCをサプリメントで服用することにも注意が必要です。詳しくは『ビタミンC』をご確認ください。

サリシンは様々な食品に含まれている

サリシンは、柳の皮だけでなく様々な食品に含まれています。アスピリンに頼りたくない人は、こうした食品を上手に使うと良いですね。

野菜と果物は、一般的に、未完熟の状態の時、サリシンの含有量が多くなります。

サリシンを多く含む食品をよく見ると、例えば、

  • ベリー類は、エラグ酸レスベラトール
  • アブラナ科のお野菜は、スルフォラファン
  • ウリ科のお野菜は、ククルビタシン
  • 他の果物は、クロロゲン酸ビタミンC

など、抗がん作用があると言われている成分を含んでいる食品が多いことに気がつきます。

サリシン自体に抗がん作用があるだけでなく、サリシンを多く含む食品は、抗がん作用のある他の成分も複数含んでいると言って差支えないようです。

アスピリンアレルギー

近年、アスピリンにアレルギーをもっている人がいると耳にすることがあります。

アスピリンは、サリシンにアセチル基を付与して創られた化合物アセチルサリチル酸)ですから、アスピリンにアレルギーがある人は、次の、どちらかにアレルギーを持っていることになります。

  • アセチル基
  • サリシンそのもの

アセチル基にアレルギーを持っている場合

アスピリンにはアレルギー反応がでるものの、上で紹介した食品群にはアレルギー反応がない場合には、アセチル基に対してアレルギーを持っていると考えられます。

自然食品中のサリシンは、アセチル基と結びついていないので、食品を食べても平気なんです。

アスピリンだけでなく、他の医薬品を服用する際にも、アセチル基を含んだ製剤を避けるようにすると良いですね。薬剤師さんに相談してくださいね。

サリシンにアレルギーをもっている場合

アスピリンだけでなく、上で紹介した食品に対してもアレルギーを持っているという人は、サリシンにアレルギーを持っていると考えられます。

上に列挙した、食品群には、サリシン以外に特に共通点が少ないことから、頭痛、喘息、下痢、腹痛、発疹などのアレルギー反応が現れても、それがサリシンに対するアレルギーだと気づかれないことが多いようです。

そのため、リーキーガットやSIBOなどが疑われたりすることが多いようですが、一度、サリシンに対する抗体を調べてもらうと良いでしょう。

アスピリン以外の医薬品を選ぶ際にも、サリチル酸を含む薬を避けると良いでしょう。薬剤師さんに相談してくださいね。

その他の鎮痛剤の影響と代替食品

鎮痛剤として広く使用されている次の2つについて、服用する際の注意事項と、その代わりをする食品についてお伝えしています。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

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ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング