常在菌を豹変させリーキーガットの弾きがねとなるもの(グルテンじゃないです)

2023/03/14/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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新しく発見された常在菌の挙動

理化学研究所の生命医科学研究センターの粘膜システム研究チームが2023年1月に発表した発見がとても面白かったので、要約してご紹介します。

ちなみに、この研究については、理研から送られてきたプレスリリースの記事で知ったのですが、その記事だけでは分からない点があったため問い合わせをしました。すると直ぐ翌日には研究チームリーダーの大野先生から丁寧なお返事をいただきました。そこに実際の論文へのリンクもつけてくださっていたので、詳細を理解することができました。この場をもちまして迅速でご丁寧なご対応に感謝申し上げます。

さて、その発見とは

私達の腸内にいる常在菌のひとつが、
あることをきっかけに糖尿病や肥満などの代謝性の病気
を悪化させてしまう物質を大量に造るようになる

と、いうものです。

そうした、菌が造る健康を害する物質は、エンドトキシン(内毒素)と呼ばれています。

そして、今回判明した、エンドトキシンを造るその菌の名前は、フジモナス・インテスティニ(Fusimonas intestini)、略してFI(エフアイ)と呼ばれている菌です。

FI菌は病原菌ではなく常在菌

この、FI菌は、常在菌、つまり共生細菌です。病原菌ではありません。私達全員がもっているわけではありませんが、誰しももっている可能性のある菌です。

また、持っていたとしても、腸内細菌全体に占める割合は、あまり多くないマイナーな菌だと考えられています。なぜなら、この菌は、仲間がいないと腸内に定着しにくい内気な奴だからです。

常在菌だけど善玉ではない

ただ、FI菌は善玉菌ではありません。そのため、特に、普段から良い行いをしているわけではありません。

例えば、次のような物質を造っています。

  • エライジン酸(トランス脂肪酸)
  • パルミチン酸(飽和脂肪酸)
  • ステアリン酸(飽和脂肪酸)

適量であれば、飽和脂肪酸は細胞膜やホルモンやビタミンを造る材料となる物質ですから構いませんが、多くなり過ぎると、飽和脂肪酸もトランス脂肪酸も動脈硬化や肥満、糖尿病、心疾患を起こすことが知られている物質です。

トランス脂肪酸は天然にも工場的にも存在する脂肪酸ですが、欧米では危険物質として認定されています。詳しくは『トランス脂肪酸の危険性』をご確認ください。

ですから、少なくともエライジン酸は、確実にエンドトキシン(内毒素)と言えます。

トランス脂肪酸なんて造る常在菌がいるんですね・・・驚きました。

豹変するキッカケとは

とは言え、仲間がいないと定着しにくい内気な菌は、ただそこにいるだけでは、大きな悪事を行うことはあまりありません。悪さをするポテンシャルはもっているけれども、キッカケを与えさえしなければ、特に問題を起こすことのない菌です

その、FI菌をとんでもなく豹変させるキッカケが、今回、明らかになったのです。

仲間の存在

仲間がいないと定着しにくいと先ほど書きましたが、その仲間とは、次の様な菌達です。

  • 大腸炎を引き起こす代表的な大腸菌(E. Coli)(悪玉常在菌)
  • FI菌と同じラクノスピラ科に属する(親戚筋の)ラウティア・ハイドロジオトロフィカ菌(BH菌、常在菌)
  • 同じくラクノスピラ科に属する(親戚筋の)マルビンブリアンティア・フォーテキシゲンス菌(MF菌、常在菌)

です。

大腸菌は増えすぎると下痢など大腸炎を起こすことが知られている悪玉菌ですが、この子も常在菌です。誰の腸の中にもいる可能性のある菌です。

ラクノスピラ科の菌は、大腸がんを予防する酪酸を造ることが知られている他、一方で増えすぎると糖尿病を起こす可能性があることが報告されている一族です。

FI菌だけの場合と比較して、大腸菌とFI菌の両方をもっている宿主では、造られるエライジン酸(トランス脂肪酸)とパルミチン酸(飽和脂肪酸)の量が2倍になることが観察されています。

FI菌は仲間と一緒にいると、普段の2倍多く働くようになるようですね。ちょっと迷惑です。

健康な人の3人に1人以上がもっている

でも、どの子も誰の腸の中にいても不思議のない菌達です。

実際に、34人の糞便検体を調べたところ、健康な人のFI菌保菌率は約38.2%だったことが報告されています。健康な人でも約3人にひとり以上がFI菌をもっていることになります。言い換えれば、FI菌をもっていても健康でいられるということです。

ただ、FI菌の数と空腹時血糖値や肥満度(BMI)には、正の相関があることも今回明らかにされました。つまり、FI菌の数が多くなるほど、血糖値と肥満度が悪化するということです。

やはり大腸菌同様に、FI菌も、むやみに増やさずマイナーな菌のままにしておくこと、この子達があまり多く増えすぎないように管理することが重要だと分かります。

重要な共犯者の存在

ただ、FI菌を本当の意味で凶悪な菌に豹変させるためには、もう一段、共犯者からの手助けが必要なことが今回明らかにされました。

その共犯者とは、私達、宿主です。

宿主の脂肪の多い食事(高脂肪食)によって、それまで控えめだったFI菌が増え始め、肥満や糖尿病を悪化させるエンドトキシン(内毒素|トランス脂肪酸と飽和脂肪酸)を大量に造るようになることが今回発見されたのです。

脂肪酸が豊富な培地でFI菌を培養した実験においても、エライジン酸(トランス脂肪酸)の増加が確認されています。

つまり、

FI菌を本当に凶悪な菌に豹変させるのは
私達自身による油の摂り過ぎ、脂の多い料理の食べ過ぎ

なんです。

今、健康に見える人でも、3人に1人以上はFI菌をもっているわけですから、油断して脂っこい食事ばかりつづけていると、知らぬ間にFI菌が増殖して、体内でどんどん毒素を造り、気がついたら肥満や糖尿病になってしまっているかもしれません。

また、大腸菌とFI菌の両方をもっている場合には(多くの人が普通に当てはまる)、2倍太りやすいわけですから、注意が必要です。

でもタンパク質と炭水化物は嫌い

面白いことに、タンパク質や炭水化物などの水溶性代謝物(アミノ酸や糖)を与えても、FI菌の働き(トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の産生)に変化が起きないことが報告されています。

つまり、FI菌をもっていたとしても、脂質が多くなり過ぎない限り、お肉を食べてもご飯を食べても、健康的な食事をしていれば、それほど心配する必要はないということになります。

実際に、FI菌をもっていても、健康的な食事をしている宿主の体重には変化が起きないことが観察されています。

FI菌は肥満と糖尿病の直接的な原因

これまでお伝えした通り、FI菌が豹変するためには、仲間の存在と宿主による高脂肪食という条件が整わなければなりません。

しかし言い換えれば、条件が整いさえすれば、FI菌は肥満や糖尿病の直接的な原因になることが、細菌の遺伝子の研究によっても、今回明らかになったのです。

実際、肥満&糖尿病患者34人の糞便検体を調べたところ、肥満&糖尿病患者のFI菌保菌率は、70.6%でした。肥満の人の約3人に2人以上がFI菌をもっていることになります。さきほどの健康な人の保菌率38.2%と比べると明らかに多いです。

FI菌が肥満と糖尿病を起こす仕組み

FI菌を大腸菌と一緒にして、高脂肪食を食べたら、体内のトランス脂肪酸と飽和脂肪酸の両方が増加することは、既にお話した通りですが、なぜか血液中の脂肪酸の量はほとんど増加しないことがマウスの実験によって明らかになりました。

血液中の脂肪酸が増えないのになぜ肥満になる?

血液中の脂肪酸の量が増えないのに、どうして、肥満や高血糖が起こるのでしょうか。

そこで研究者は、腸管バリア機能に重要な働きをしている、細胞接着分子(タイトジャンクション)の遺伝子発現を調べてみることにしました。すると、細胞同士を接着する分子が減少し、リーキーガットが起きていることが明らかになりました。

確認のため、培養した腸管上皮細胞に、FI菌と大腸菌の両方をもっているマウスの糞便抽出物とエライジン酸(トランス脂肪酸)を加えたところ、確かにタイトジャンクションの遺伝子発現が低下したことが観察されました。

更に、肥満症のマウスにエライジン酸(トランス脂肪酸)を与えたところ、腸管バリア機能が低下しただけでなく、肥満度や血糖値の悪化が起こりました。

これら一連の実験によって、FI菌が造るエライジン酸(トランス脂肪酸)が、腸管バリア機能を低下させた結果として、肥満や血糖値が悪化するというメカニズムが明らかにされたのです。

あなたも食べているかもしれないエライジン酸

今回の研究では、菌由来の内毒素エライジン酸(トランス脂肪酸)がリーキーガットを起こし、それが、肥満や糖尿病を悪化させるというメカニズムが明らかにされました。

エライジン酸は、FI菌だけが造るわけではありません。

工場由来のトランス脂肪酸の多くがエライジン酸です。

工場由来のトランス脂肪酸と言えば、マーガリンや植物油脂、ショートニングなどの加工油脂全般が含まれます

エライジン酸とリーキーガットは因果関係

トランス脂肪酸は、既に欧米で危険物質として認定され、加工食品への使用が禁止になっていますが、その主な理由は、動脈硬化や心疾患の原因となるからでした。(詳しくは『トランス脂肪酸の危険性』をご確認ください。)

しかし今回の菌の研究によって、トランス脂肪酸がリーキーガットを引き起こすことが確認されました。肥満や糖尿病は、その結果にすぎません。

トランス脂肪酸とリーキーガット、そして肥満と糖尿病との関係が、常在菌を介した因果関係であることが証明されたのです。

FI菌がいなくてもマーガリンでリーキーガットになる

つまり、それは、FI菌をもっていなくても、自らトランス脂肪酸を食事として食べていれば、同じようにリーキーガットが起こる可能性を示したことになります。

リーキーガットは、肥満や糖尿病だけでなく、重篤なアレルギーも起こします。接着が弱くなった腸壁から様々な毒素が体内に入り込みやすくなるので、大きな病気の入口となります。

FI菌の有無に関係なく、トランス脂肪酸(マーガリン、植物油脂、ショートニングなど)は、極力、避けるべき食品成分であることを改めて確信しました。

ちなみに、ここ数年人気で話題になった有名食パン店のほとんどが、マーガリンやショートニング、あるいはその両方を使っているってご存知でしたか?危ない危ない。

今回の記事への補足となる記事

今回のブログ記事のテーマに関係した、以前執筆した記事を下にご紹介しておきます。

脂質と糖尿病

脂質と糖尿病については、次の記事が参考になると思います。

リーキーガット/腸内環境

リーキーガットに関係して執筆した記事です。

その他、≪腸内環境≫をご覧いただくと、リーキーガットの他、腸内細菌や腸内環境に関係する様々なテーマで執筆した記事をご覧いただけます。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

健康診断で肥満気味と指摘されたことがある人、あるいは血糖値を注意されたことがある人は、食事とライフスタイルを健康的に改善させることは当然必要ですが、FI菌の存在を疑ってみても良いかもしれませんね。

最近では、腸内細菌の顔ぶれを検査してくれるクリニックも増えています。

一度、検査してみると安心です。そうすることで、あなたの肥満や血糖値を改善するために執るべき食事対策が異なってきます。

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング