
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
ビタミンAの食事摂取基準(2020)
いずれも成人一日の摂取量で、レチノール活性当量で表しています。
- 女性:必要量 500μg、推奨量 700μg、限界量 2,700μg
- 男性:必要量 650μg、推奨量 900μg、限界量 2,700μg
レチノール活性当量とは、全てのビタミンAをレチノールに換算した量です。
必要量と推奨量は、レチノイドとカロテノイドの両方が対象ですが、限界量には、カロテノイドは含まれていません。
ビタミンAの性質
ビタミンAは、脂溶性ビタミンです。体内で合成できるビタミンDやビタミンKなどの脂溶性ビタミンとは異なり、ビタミンAは体内で合成することができません。
そのため、食品から得る必要がありますが、食品から摂取したビタミンAは、肝臓に貯蔵されます。
そして、ビタミンAには、動物性のビタミンAと植物性のビタミンAがあります。
1. 植物性のビタミンA(プロビタミンAカロテノイド)
植物性のビタミンAは、プロビタミンAカロテノイドと呼ばれます。
植物には数百種類以上のカロテノイドが存在していますが、そのうちヒトが体内でビタミンAに変換できるのは、約10%のみと考えられています。
代表的なものには、次の3種類があります。
- αカロテン
- βカロテン
- βクリプトキサンチン
植物性のビタミンA(プロビタミンAカロテノイド)の詳しい機能については、『カロテノイド』をご参照ください。
2. 動物性のビタミンA(レチノイド)
レチノイドは、体内で変換する必要がなく、腸で吸収したまま肝臓に貯蔵できるビタミンAです。レチノール、レチナール、そしてこの2つから造られるレチノイン酸などがあります。
レチノイドは素早く吸収され、体内からの排出もゆっくりなので、数か月単位の長期間体内に留まっています。
ビタミンA(レチノイド)の機能
今回は、主に動物性のビタミンA(レチノイド)の機能についてお伝えします。
1. 視覚機能

レチノールは血液を通して網膜へ送られます。微量の光を検知でき暗視能力に不可欠な視覚色素であるロドプシンの網膜での生成に活用されます。そのため、網膜で利用できるレチノールが不足すると、夜盲症(鳥目)になり、暗い所で目が順応できなくなります。
2. 遺伝子発現のコントロール

ここで高校生物の復習
DNA(遺伝子)がもっている遺伝情報(設計図)をもとに、様々なタンパク質がつくられることを「遺伝子の発現」と言います。タンパク質を合成するためには、同じ設計図(遺伝情報)が多くの細胞質(リボソーム)に届けられなければなりません。そのために設計図のコピーが作られます。それを「転写」と呼びます。そのコピーをリボソームに届けるのがRNAです。
体内でレチノールやレチナールから合成されるレチノイン酸は、遺伝子発現に影響を持っているため、多くの生理機能にとって重要です。具体的には、細胞核の中にはレチノイドの受容体があり、その受容体とレチノイドが結合することで遺伝子の転写が可能になります。
レチノイドの受容体は、甲状腺ホルモン受容体やビタミンD受容体とも協働しています。これは、遺伝子の転写には、ビタミンA、 ビタミンD、甲状腺ホルモンが影響することを意味します。
3. 発達と成長

再び高校生物の復習
細胞が分裂して増えることを「増殖」と言います。細胞が分裂して特定の機能に特化することを「分化」と言います。細胞が分化すると一般的に増殖は止まります。例えば、細胞の増殖によって体は成長し、目なら目に細胞が分化することで増殖が止まります。
ビタミンAは、細胞の分化に大きな役割を果たしていると考えられています。
具体的には、ビタミンAは、胎児の発育に不可欠な働きをしていて、
- 胎児の手足の発達
- 心臓や眼と耳の形成
に必要です。更に、成長ホルモンに対する遺伝子の発現をコントロールしていることも観察されています。
4. 免疫機能/美肌
ビタミンAは、免疫機能が正常に働くために必要な栄養素です。そのため「抗感染性ビタミン」とも呼ばれます。
皮膚と粘膜は私達の体内に有害物質が侵入することを防いでくれているバリアーのように働いています。ビタミンAは、皮膚と粘膜細胞(気道や胃腸などの粘膜)の健康的な働きの維持に必要です。詳しい粘膜の健康については『腸内細菌と腸粘膜の栄養戦略』をご参照ください。
また、レチノイドは、免疫細胞の増殖と分化と活性化においても中心的な役割を果たしています。
5. 赤血球の産生

全ての血液細胞は、幹細胞から造られます。幹細胞が正常な赤血球に分化するためには、レチノイドが必要です。また、ビタミンAは、鉄分の赤血球への輸送を助けています。
そのため、ビタミンAが不足すると鉄欠乏貧血が悪化します。貧血については『鉄分だけ摂ってもダメ!?貧血を改善する食事』をご参照ください。
ビタミンAの機能は亜鉛から影響を受ける
亜鉛が不足するとビタミンAの機能を阻害する次の様な問題が起こります。
- ビタミンAを臓器へ運搬するタンパク質の減少
- ビタミンAの毒性から臓器を保護するタンパク質の減少
- 肝臓に貯蔵してあるビタミンAを活用できるように遊離する酵素の活性の低下
- レチノールをレチナールに変換する酵素の減少
亜鉛の詳しい機能については『亜鉛』をご参照ください。
ビタミンA欠乏とビタミンA過剰の両方の症状が起きていたら、亜鉛が不足しているサインですね。
ビタミンA欠乏症
ビタミンAが欠乏すると次の疾患が現われます。
1. 失明

ビタミンAは視覚機能にとって不可欠な栄養素ですから、不足すると次の様な視覚異常が起こります。
- 初期の欠乏症状は、暗所順応障害や夜盲症となって表れます。
- 軽度の欠乏症状は、「ビトー斑点」と呼ばれる結膜に変化が起こります。
- 重度/慢性的なビタミンA欠乏症状は、眼球乾燥症(ドライアイ)を起こします。
最終的に角膜が潰瘍し、失明します。
2. 感染症/後天性免疫不全疾患
軽度のビタミンA不足でも感染症による死亡率、呼吸器疾患や下痢など罹患率が高くなります。
肝臓に貯蔵してあるビタミンAを血液中に搬出する役割をもっているタンパク質は、肝臓で造られます。
感染症になると、レチノールを血液中に運搬するタンパク質の合成が肝臓で減少するため、血中のレチノール濃度がかなりのスピードで減少し、悪循環が起こります。
コロナも感染症です。
感染症が、ビタミンA不足による死亡率や重症化率を高めていると考えられています。
ビタミンAを多く含む食品
ビタミンAもサプリメントからではなく、食品から摂ることを意識してくださいね。
1. 動物性ビタミンAを含む食品
動物性のビタミンA(レチノイド)を多く含む食品です。

肝臓に貯蔵しているビタミンA(レチノイド)と同じものが、動物性食品には含まれています。
2. 植物性ビタミンAを含む食品
体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAとなるカロテノイドを含んでいる食品です。


植物性のビタミンA(プロビタミンAカロテノイド)は、動物性のビタミンAに比べて吸収率がよくありません。また、カロテノイドの体内でのレチノールへの変換効率もあまり高くありません。
そのため、あらかじめカロテノイドをレチノールに変換した後の「レチノール活性当量」で上の表は作成されています。
プロビタミンAカロテノイドの詳しい機能については『カロテノイド』をご参照ください。
上の表の中で、詳しい機能について記事を執筆したものは次の通りです。併せてご確認ください。
サプリメント
ビタミンAのサプリメントには、一般的に次の化合物が用いられています。これらの化合物1μgは、レチノール1μgに相当します。
- パルミチン酸レチニル
- 酢酸レチニル
サプリメントには、これらの化合物とβ-カロテンを組み合わせているものが多くあります。
サプリメントに用いられているβ-カロテンは2μgで、レチノール1μg相当になります。
過剰摂取による副作用

通常の食事をしていてビタミンA過剰になることは稀です。
1. 過剰症を起こしやすい人
しかし、次に該当する人は、低量のビタミンAの摂取でも過剰症になりやすいので要注意です。
- 高齢者
- 遺伝性の高コレステロール症
- 慢性的に飲酒する習慣のある人
2. アルコールとの関係
慢性的な飲酒は、肝臓に貯蔵してあるビタミンAを枯渇させ、同時に動物性ビタミンAの肝毒性が強まり、アルコール誘発性肝障害を起こします。
3. 妊婦

胎児の正常な発育には、十分なビタミンAが必要です。
しかし、過剰な動物性ビタミンA(レチノイド)の摂取は、胎児の先天性異常を誘発すると考えられています。そのため、妊婦は1日に1,500μg以上のビタミンAを含むサプリメントの服用を避けることが推奨されています。
特に、次の成分を含むサプリメントやクリームなどの使用を避けることが重要です。
(1)エトレチネートやイソトレチノイン(アキュテイン)
レチノールの合成を促す成分のエトレチネートやイソトレチノイン(アキュテイン)も、重い先天異常を誘発することが知られているため、こうした成分が含まれているサプリメントは、妊娠中や妊娠する可能性がある場合には服用してはいけません。
(2)トレチノイン(レチン-A)
お肌に塗る薬の成分として、レチノールの合成を促すトレチノイン(レチン-A)が配合されている外用薬があります。
トレチノインは経皮吸収されるため、これも妊娠中に使用してはいけません。
(3)ビタミンAを用いた治療を避ける
妊娠する可能性のある女性は、ビタミンAを用いた治療を避けることを強くお勧めします。
なぜなら、レチノイドの作用期間は長く、レチノイド治療を止めた後も数ヵ月間は、副作用や先天性異常が起こる可能性があることが報告されているからです。
一方で、植物性のビタミンA(β-カロテン)が、先天性異常のリスクを高めたという報告はありません。
ビタミンA過剰症
上記した理由以外でも、さまざまな理由でレチノイドのサプリメントを服用している場合には、容易に過剰摂取が起こりえます。
ビタミンAの過剰摂取による症状には次のようなものが含まれます。
1. 急性ビタミンA中毒
ビタミンAの摂り過ぎによる症状には次のようなものが含まれます。
- 吐き気
- 頭痛
- 倦怠感
- 食欲不振
- めまい
- 皮膚乾燥(乾燥肌)
- 落屑(外側皮膚の喪失)
- 脳水腫
- など
2. 慢性ビタミンA中毒
さらに、慢性的にビタミンAの過剰状態が続くと、次のような症状が表れます。
- 急性中毒の症状
- かゆみを伴う皮膚乾燥
- 骨や間接の痛み
- など
3. ビタミンA過剰症
ビタミンA過剰症は、植物性のビタミンA(カロテノイド)では起こりません。動物性のビタミンA(レチノイド)の過剰摂取によって起こります。
レチノイドによる過剰症は短期間の過剰摂取だけでなく、低量でも長期間に渡る慢性的な摂取で起こります。
- 肝障害/出血
- 昏睡
- 骨粗鬆症による骨折

1日に5,000μgを超える動物性ビタミンAを長期間摂取し続けた高齢の男女の、骨密度が低下し、骨粗鬆症による骨折が増加したことが複数の研究によって報告されています。
植物性ビタミンAでは、こうした現象は起こらず、動物性ビタミンAの過剰摂取のみが骨に悪影響を及ぼすことが観察されています。
骨粗鬆症と動物性ビタミンAの作用の仕組みについては未だ不明ですが、過剰なレチノイドが破骨細胞の活動を活性したり、ビタミンDの作用を阻害することでカルシウムバランスが崩れるなどの可能性が考えられています。
4. 乳児の場合
なお、乳児がビタミンA中毒を起こすと、泉門(胎児・乳児の頭蓋骨にある膜でおおわれた隙間)が隆起します。
がんとの関係

試験管試験や動物実験では、レチノイドが様々な臓器のがんの発生を有意に抑制すると報告されていますが、ヒトを対象とした研究では、ビタミンAとがんとの因果関係は明確になっていません。
1. 乳がん予防効果はない
試験管試験では、レチノイドが乳がん細胞の成長を抑制したことが観察されていますが、動物実験とヒトを対象とした食事を用いた研究では、こうした効果は確認されていません。食事またはサプリメントによるビタミンAの摂取量の増加がヒトの乳がん予防になるという証拠は今のところほとんどありません。
また、疫学研究においても、レチノール摂取量と乳がん発症リスクとの間に有意な相関は認められていません。
2. 肺がんリスクを上昇させる
高用量のビタミンAとβカロテンは、肺がんの発症率を上昇させる可能性があることが報告されています。
認知症との関係
2013年~2020年に実施された「健康と退職に関する調査」に基づき、50歳以上の米国成人を対象とした前向き研究を実施した結果が2025年に報告されています。
2014年~2020年まで2年ごとに実施された、全般認知機能の複合テストスコア(範囲:0~27)を用いて認知機能は測定されています。
レチノール摂取量によって4段階のグループに分けたところ、最もレチノール摂取量が少なかったグループと比較して、最もレチノール摂取量が多かったグループでは、認知機能が有意に高い(β = 0.408)ことが示され、レチノール(動物性ビタミンA)と認知機能には有意な関連があることが明らかにされています。
一方で、プロビタミンAカロテノイド(植物性ビタミンA)と認知機能との間には、有意な関連は認められませんでした。(β = 0.033)
ビタミンAに治療効果がある疾患
次の病気治療にとって、動物性ビタミンA(レチノイド)に効果があることが認められています。
- 網膜色素変性
- 急性前骨髄球性白血病
- 皮膚疾患
ただし、ビタミンA(レチノイド)による治療には、潜在的な副作用と毒性があります。そのため、医師の指導と管理の下で、薬理学的用量で使用される必要があります。
この記事の読者のみなさんが自己判断でサプリメントを服用することがないよう、ここには各疾患に用いられる用量を記載することは控えます。レチノイドによる治療を望まれる方はお医者様にご相談くださいね。
ビタミンA配合化粧品と遺伝子変異

お肌の健康に良いとして、ビタミンAが配合されている化粧品などが多く販売されていますが、ビタミンA(パルミチン酸レチニル)を塗布した皮膚細胞を紫外線(A波)に晒さらすと、染色体異常が起こることが2010年に報告されています。
これは試験管試験の段階の報告のため、ヒトを対象に行われた実験ではありませんが、米国食品医薬品局(FDA)もビタミンA(パルミチン酸レチニル)を塗布した後に紫外線を浴びることで、皮膚の腫瘍や損傷の発症を促進させる可能性について言及しています。
そのため、ビタミンA配合の化粧品などをご使用になる際には、紫外線を長時間浴びないようにする方が安全ではないかと思います。
一方で、紫外線ダメージを受けたお肌の修復に、レチノール配合の外用薬に効果があることが多数報告されています。レチノール配合品は、予防ではなく、修復に使用する方が良さそうですね。
女性ホルモン剤との関係

エストロゲンやプロゲステロンを含む女性ホルモン剤は、肝臓に貯蔵されているビタミンAを血液中に放出するタンパク質を増やします。結果、血中のビタミンA濃度が上昇します。
そのため、女性ホルモン剤とビタミンAのサプリメントを一緒に服用すると、ビタミンA過剰になる可能性があり危険です。女性ホルモン剤を服用している人は、ビタミンAのサプリメントは止めましょう。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

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参考文献:
- “Vitamin A“, Micronutrient Information Center, Linus Pauling Institute, Oregon State University
- “Dietary provitamin A and non-provitamin A carotenoid in relation to cognitive function among middle-aged and older adults.”, Hailili, G., Huang, L., Wu, M. et al., Nutr J 24, 119 (2025). https://doi.org/10.1186/s12937-025-01180-y
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング