
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
ワクチンと腸内細菌のこと
ワクチンによって起こる免疫反応には、大きな個人差が存在することは連日の報道によって、多くの人が今では知っていることかもしれません。
個人差を生む原因と考えられる要因は膨大ですが、近年、腸内細菌が、ワクチンに対する免疫反応の現れ方に大きく影響しているという証拠(エビデンス)が蓄積されてきています。
ワクチンによる免疫反応と腸内細菌との因果関係を示すエビデンスの多くは、マウスを用いた研究からもたらされ、これまでヒトを対象とした研究は十分ではありませんでした。
しかし、広域抗生物質を投与された患者にワクチンを接種した臨床研究によって、ヒトにおいてもワクチンによる免疫反応と腸内細菌との間に因果関係が存在すること、そして、腸内細菌が免疫反応をコントロールするメカニズムについても示唆が得られたことがサイエンス誌『ネイチャー』に掲載されました。
註: 広域抗生物質|グラム陽性菌とグラム陰性菌の2つの主要な細菌群に作用する抗生物質、または広範囲の疾患を引き起こす細菌に対して作用する抗生物質
インフルエンザ・ワクチンについてもふれられており、ワクチン接種の是非について悩んでいる人も多いと思われるため、その骨子を和訳要約してお伝えすることにします。
ただし、元の論文が非常に長かったので私の興味をひいた箇所のみの紹介です(笑、それでも長くなっちゃいました)全文を読まれたい方は、元の論文(英語)を最後に参考文献としてリンクを掲載していますので、そちらをお読みください。
マイクロバイオータって何者?

ヒトは、マイクロバイオータとして知られる何兆個もの多様な微生物と共存しています。(詳しくは、『バクテリア・コミュニケーション』をご参照ください。)
日本では、「腸内フローラ」という言葉が広く知られていますが、腸内だけではなく、身体全体、例えば、皮膚の上にも口の中にも胃にも耳にも、体の全ての部位に多様な微生物達があなたと共に生息しています。こうした微生物/共生細菌/常在菌は、総称して「マイクロバイオーム」または「マイクロバイオータ」と呼ばれます。
この2つの言葉は、しばしば同じ意味で使用されますが、マイクロバイオームは微生物のゲノム、マイクロバイオータは微生物そのものを指します。
あなたと共生している微生物(マイクロバイオータ)に含まれるものには、バクテリアだけでなく、ウイルス、真菌、原生生物、古細菌も含まれます。
マイクロバイオータは、あなたのために、幅広く、かつ、不可欠で有益な次の役割を果たしてくれています。
- 粘膜免疫の制御
- 栄養素の分解
- 病原体のコロニー形成の防止
- など
マイクロバイオータとヒトの絆

ヒトは、誕生した途端に、子宮外の世界に適応する必要性から、急速な変化に巻き込まれます。
産道を通る最初のストレスに続いて、皮膚表面に付着してくる大気中の細菌、呼吸の開始とともに肺に侵入してくる外来粒子、母乳という食べ物から送られてくる様々な外来抗原(栄養素)、そうしたもの全てにあなたの免疫システムは対処していかなくてはなりません。
マイクロバイオータは、あなたの誕生と共にあなたの体に棲みつき、1歳になる頃までにコロニーを形成します。
そしてあなたの一生において、無くてはならないパートナーとして共生関係を築きます。
乳児時の抗生物質とワクチン接種

新生児の免疫機能の発達は、様々な子供で様々なスピードで進み、出産方法、早産、食事などの要因の影響を受けます。詳しくは『赤ちゃんと共生細菌 – 分娩と授乳方法は健康と性格に影響する?』をご参照ください。
1. 抗生物質による混乱
マイクロバイオータが十分なコロニーを形成するまでの間は、感染症にかかるリスクが高く、その治療のために抗生物質が投与されれば、発生したばかりの脆弱なマイクロバイオータたちに大混乱をもたらします。
2. 免疫学的刺激
生まれたばかりの赤ちゃんは、例えば日本では、1歳になるまでに最大で13種類もの、異なる病原体に対するワクチンの接種を受けます。
バクテリアやウイルスだけでなく、ワクチンに含まれているアルミニウム(神経毒)ベースの不活剤を含む化学物質による、幅広い意味での、多種多様な免疫学的刺激に直面するのです。
3. よく分かってはいない
実はこれらのワクチンは、広く使用されているにもかかわらず、予防接種によって誘発される子供たちの自然免疫および適応反応の分子的・細胞的な性質については、まだよくわかっていないのです。
一方で、抗生物質とワクチンが、公衆衛生を改善し、平均余命を驚異的に延ばしてきたことも事実です。
マイクロバイオータと体内機能
過去10年ほどの研究によって、マイクロバイオータが次の多様な生理学的プロセスに対して、大きな役割を果たしていることが明らかにされています。
- 代謝
- 心血管機能
- 中枢神経系機能
- アレルギー性疾患
- 自己免疫疾患
- 炎症性疾患に対する感受性
- など
彼らは、あなたの生命維持にとってなくてはならない存在なのです。
マイクロバイオータと免疫機能
では、あなたのマイクロバイオータは、体の各場所でどのような働きをしているのでしょうか。
1. 腸内マイクロバイオータ
消化管に棲んでいるマイクロバイオータは、非常に多様でかつニッチなコロニーを形成しています。そして、主に小腸と大腸で、免疫B細胞、免疫T細胞、そして抗原提示細胞と一緒に働いています。
註:抗原提示細胞|免疫系に関わる血球。体内に侵入してきた細菌やウイルスに感染した細胞の断片を抗原として、自己の細胞表面上に提示して、免疫T細胞を活性化する細胞
マイクロバイオータは、腸内で次の物質を造っています。
- 短鎖脂肪酸(SCFA)
- トリプトファン代謝物
- 細菌DNA
- ビタミンA
- スフィンゴ脂質
- 多糖類A
- ムラミルジペプチド
- など
こうした物質の生体分子は腸の上皮内層を通って運搬されます。それを、腸粘膜(粘膜固有層)にいる免疫細胞が検知して免疫システムを調整します。
腸内マイクロバイオータが作る物質に反応して、腸内の免疫システムが変化するということは、マイクロバイオータは自らが造る物質を使って、腸内免疫システムを調教していることを意味します。
最も一般的な病原体のポリオ、コレラ、腸チフス、ロタウイルスなどに対する経口ワクチンは、これらの病原体を弱毒化したものですが、これらのワクチンに対する免疫反応の大きさに腸内マイクロバイオータが関わっている可能性があるのです。
2. 皮膚マイクロバイオータ

腸内に比べたら、皮膚マイクロバイオータのコミュニティの多様性は低く、数も少ないです。でも、皮膚のマイクロバイオータも免疫細胞とコミュニケーションをとっています。
皮膚から細菌が侵入すると、マクロファージとよばれる免疫細胞が炎症性物質を作り、それが伝達されて、自然免疫細胞のリンパ球が動員されます。
表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌の分泌物は、自然免疫を作動させる受容体(Toll様受容体)に結合し、免疫細胞の活動を抑制する働きがあることが判っています。つまり、皮膚の上にいる病原体に対する、あなたの皮膚マイクロバイオータと免疫細胞との協働の良し悪しが免疫関連皮膚障害と関連していることが示されています。
そうしたことから、皮膚マイクロバイオータも、ワクチン接種による免疫反応に影響を与える可能性があると考えられています。
やっぱり手洗いの後はちゃんと保湿クリームを塗っておかないと、ですね。詳しくは『コロナ禍で、見過ごされがちな体の自衛システムとその高め方』をご覧ください。
3. 気道マイクロバイオータ

肺は無菌だと長い間信じられてきました。
しかし、新しい検出技術と細菌細胞培養の技術によって、腸内ほどの多様性は無いものの、管腔表面にもマイクロバイオータが棲んでいることが明らかになっています。
弱毒生インフルエンザ・ワクチンは、鼻から(鼻腔内経路で)投与できる唯一のワクチンです。
ワクチンが肺で効果的に作用するためには、適切な質と量の粘膜抗体反応と免疫T細胞の反応が必要になります。当然、気管支の粘膜反応には、肺のマイクロバイオータが影響していることを考慮すべきだと研究者は述べています。
実際、肺の形質細胞や組織に存在するメモリーT細胞(TRM)は、ワクチンに含まれている細菌に反応して、周囲の細胞にシグナルを出し、抗ウイルス反応を強化することが示されています。しかし、肺以外の他の体の部位においても同様の作用が起こるかについては、まだわかっていません。
註:形質細胞|細菌やウイルスが体内に侵入すると、一部の免疫B細胞が形質細胞に変化する
4. 全身における働き
マイクロバイオータは、棲んでいる臓器(部位)の免疫環境に影響を与えるだけでなく、コロニーから遠い部位の免疫反応にも影響を与えていると考えられています。
実際、遠い部位で造られた代謝物(免疫刺激物)が、骨髄、肝臓、腹膜、脾臓など、様々な組織で発見されています。
例えば、脾臓と腸間膜リンパ節に届けられた細菌抗原は、細菌感染から全身を保護するように働くIgG抗体の産生を促します。
マイクロバイオータとワクチン接種
マイクロバイオータが免疫機能に影響力をもっていることは科学的に立証され、マイクロバイオータと免疫機能に因果関係があることを示す証拠が増えているにもかかわらず、ワクチン接種で起こる免疫反応とマイクロバイオータの関係は、まだよくわかっていません。
それだけでなく、ワクチン接種と抗生物質投与は、最も広く使用されている医療手段にも関わらず、驚くべきことに、ワクチンと抗生物質の相互作用についてもほとんど判っていません。
ワクチン効果の差

1. 個人差は100倍
ワクチンの有効性は、同じ地域(国)に住む人達の間でも、大きく異なります。
季節性インフルエンザの不活化ワクチンの接種によって、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素を阻害する効果は、同じ地域に住む個人間でも100倍以上の差があることが報告されています。
註:赤血球凝集素|インフルエンザウイルスの活動を効果的にする現象のひとつ
これまでに開発されたワクチンの中で、最も成功したワクチンの1つと言われる弱毒生黄熱ワクチン17Dですら、免疫細胞の反応の大きさには、10倍を超える個人差があると言われます。
2. 地域差

ワクチン反応は、世界の様々な地域の間でも大きく異なっています。
例えば、次の現象が報告されています。
- BCGワクチンの結核菌感染予防効果の差は、0%~80%に及び、アフリカよりもヨーロッパでの効果が高い
- ポリオ、ロタウイルス、マラリア、黄熱病のワクチンは、欧米諸国よりも、アフリカやアジアにおいて予防効果が低い
3. 所得差
経口ワクチンに対する免疫反応は、高所得国と比較して低中所得国で低く、一貫性も低いという観察が繰り返されています。
経口ロタウイルス・ワクチンと経口ポリオワクチンは、歴史的に低中所得国での成績が悪く、新たに認可されたワクチンであるロタリックスとロタテックを用いた最近の研究でも、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの低中所得国で有効性が低いことが示されています。
低所得国における免疫効果の低さは、人々の栄養状態や病原体への過去の感染の有無、母親の抗体、結核やHIV、寄生虫などの慢性感染症がどれくらい社会に広がっているのかなど、さまざまな要因から影響を受けていると考えられています。
こうしたワクチン接種によって起こる免疫反応の地域差や個人差は、マイクロバイオータによって説明できることを示す証拠が増えています。
ワクチン効果を高めるには

1. 人種や文化による影響
ガーナ、パキスタン、バングラデシュで腸内マイクロバイオータとワクチン反応障害との関連性が調査されました。
経口ロタウイルス・ワクチンに反応した乳児と反応しなかった乳児では、腸内マイクロバイオータの構成が大きく異なり、反応した乳児の腸内マイクロバイオータの構成は、オランダの乳児のものに近かったことが報告されています。
つまり、人種や生活環境や食生活などの違いを超えて、ワクチンに反応するマイクロバイオータの種類(構成、バランス)は共通していることが示されています。
2. 免疫反応を高め抗体反応を持続する菌

乳児期初期に腸内ビフィズス菌の量が多いほど、経口ポリオワクチン、非経口BCGワクチン、破傷風ワクチン、B型肝炎ウイルスワクチンに対する免疫反応が高いことが報告されています。
更に、ワクチン接種時のビフィズス菌の量が多いほど、ワクチン接種2年後においても抗体反応が高いことも報告されており、免疫反応の持続性にもマイクロバイオータが関係していることが示唆されています。
また、スイスで行われた研究で、マイクロバイオータの構成と非経口ワクチンの免疫効果に相関関係があることが示されています。
3. ワクチン接種に良いタイミング
マウスを用いた最新の研究は、腸内マイクロバイオータが乱れている時のワクチン接種は、抗体反応に深刻な障害を起こすことを示しています。
同じことが、ヒトに対しても言えるかは不明ですが、腸、肺、皮膚など体全体に広く分布しているマイクロバイオータは、棲んでいる部位(臓器)に直接影響を及ぼすだけでなく、離れた場所へも作用し、体全体への影響力をもっているため、ワクチン接種によって起こる免疫反応に影響を与える可能性は否定できないと研究者は述べています。
腸内環境が乱れているという自覚がある人は、ワクチン接種を受ける前の数日間で腸内環境を整えたり、あるいは、プロバイオティクスのサプリメントを飲み続けるなどしておくと安心かもしれません。
言い換えれば、腸内環境が良好で便秘も下痢もない時がワクチン接種を受ける良いタイミングです。
プロバイオティクスのサプリメントの効果

プロバイオティクスとは、健康を促進するために飲食する、食用の生きた善玉菌のことです。
プロバイオティクスのサプリメントには免疫機能への効果はあるのでしょうか。
1. プラスの効果はない
プロバイオティクスの服用による、ワクチンの免疫効果を評価した研究がいくつかあります。
しかし、乳児を対象とした研究も成人を対象とした研究も、次の事柄に一貫性がなく、因果関係を証明できるほどの強固な結果が得られていません。
- 抗原の種類
- プロバイオティクスの菌株の種類
- 生活環境
- など
ただ、腸内環境に特に問題がないケースでは、プロバイオティクスのサプリメントの服用による、ワクチンの免疫効果にプラスの影響は認められていません。
2. 腸内環境の改善には効果
腸内を無菌状態にした子豚と、プロバイオティクスを与えて腸内環境を良好にした子豚に、経口ロタウイルス・ワクチンを接種し、免疫反応の違いを比較した研究があります。
腸内が無菌状態の子豚と比較し、プロバイオティクスを与えれた子豚では、ワクチン接種による抗体反応と免疫反応が強化されたと報告されています。
腸内環境が悪い状態をプロバイオティクスによって改善する効果はあることを示したものと考えられます。
抗生物質とワクチン効果

病原菌を死滅させる一方で腸内の善玉菌も死滅させてしまう抗生物質は、ワクチンによる免疫効果にどのような影響を持っているのでしょうか。
1. 菌の減少とワクチン効果は不明
インドの乳児に対して、経口ポリオワクチンへの免疫反応を改善するために、ワクチン接種前にアジスロマイシン(広域抗生物質)を与えたところ、抗生物質によって環境性腸疾患と病原性腸内細菌(バクテリア)が減少したのにもかかわらず、ワクチンによる免疫反応の改善は見られませんでした。
一方で、腸内ウイルス性感染症とワクチンによる免疫反応の改善には相関がありました。
この研究は、ポリオワクチンの免疫効果は、抗生物質の効果(病原菌の減少)によるものではなく、ウイルスの減少によって高まったことを示しています。
ただし、この実験では、病原菌の関与を完全に排除することはできていません。
2. 既存免疫がある場合

抗生物質の投与によって起こる腸内マイクロバイオータの乱れが、ワクチンを接種した時の免疫反応にどのような影響を与えるかをシステム・ワクチン学のアプローチを活用して調査した研究があります。
その研究では、健康な成人を被験者として、次の実験が行われました。
- 広域抗生物質(バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール)を5日間投与
- 抗生物質の投与を中止する前日に季節性インフルエンザ・ワクチンを接種
抗生物質の投与開始から3〜5日以内に、被験者の便1グラムあたりの腸内マイクロバイオータの数は、10,000分の1に大幅に減少しました。その後、数日以内に元の量に戻りましたが、多様性は長期にわたって減少しました。
腸内マイクロバイオータの劇的な変化にも関わらず、ワクチン接種後の中和抗体価(抗体の量や強さ)に有意な低下はありませんでした。
註:中和抗体|ウイルスの増殖能を阻害する感染防御抗体。感染後 1 週間ぐらいから上昇し、長期間持続。
抗生物質によって腸内マイクロバイオータが大きくダメージを受けたのにも関わらず、季節性インフルエンザ・ワクチンの免疫効果にほとんど影響が無かった理由は、ほとんどの人が、既に季節性インフルエンザに対する既存免疫を、実際に感染した経験や予防接種によって持っていたからだと研究者は説明しています。
既存免疫は、免疫学的記憶によって、免疫防御がより迅速に激しく再始動するよう働きます。そのため、既存免疫がある場合には、腸内マイクロバイオータからの助けを必要としないため、抗生物質によって腸内細菌がダメージを受けてもワクチン効果に影響しないと考えられます。
3. 既存免疫がない場合

今まで遭遇したことのない未知の病原体に接した時、あなたの免疫細胞が起こす免疫反応は、腸内マイクロバイオータからのシグナルに、大きく依存している可能性があります。
この仮説を検証するために、過去3年間にインフルエンザのワクチン接種を受けていない、あるいは、感染していない個人を対象に臨床試験が実施されました。
抗生物質を投与された被験者では、次の現象が確認されています。
- H1N1型インフルエンザ株(ウイルス)に特異的なIgG1抗体力価とIgA抗体力価の大幅な低い
- H1N1型インフルエンザ株(ウイルス)の中和能力の低下
この結果は、既存免疫がない場合には、抗生物質による腸内善玉菌の減少が、季節性インフルエンザに対する抗体反応の重大な免疫障害につながる可能性を示唆しています。
つまり、新型コロナウイルスのように誰も罹ったことのない未知の変異ウイルスに対しては、腸内マイクロバイオータ、特に、善玉菌の果たす役割が重大だと言えます。
なお、日本人が新型コロナウイルスに対する交差免疫を持っていると考えられていることについては『NHKスペシャル「新型コロナ 全論文読解~AIで迫る 今知りたいこと」を観て』をご覧ください。
4. 高齢者と若年者の場合

更に健康な若年成人と高齢者に対して行われた他の研究では、抗生物質によって誘発された腸内マイクロバイオータのバランス失調が、内臓炎症を起こし、季節性インフルエンザ・ワクチン接種に対する免疫反応を変容させてしまうことが示されています。
科学的に立証されているマイクロバイオータの役割のひとつに、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換があります。二次胆汁酸には炎症反応を抑制する働きがあります。
つまり、マイクロバイオータは、二次胆汁酸の産生を介して、ヒトの炎症反応をコントロールしていることを示唆していると研究者は述べています。
実際、抗生物質の投与によって腸内マイクロバイオータが減少すると、二次胆汁酸の濃度が、 1,000分の1 に減少することが明らかにされています。
しかし興味深いことに、腸内マイクロバイオータが減少しても、インフルエンザワクチンに対する抗体反応は変化しませんでした。
つまり、既存免疫があれば腸内細菌が減少しても抗体は増えるが、炎症は治まらないということです。
5. 補足情報
抗生物質との付き合い方については次の記事も参考にしてくださいね。
これからのワクチンに期待すること
次のようなワクチンが開発されれば、ワクチン接種はより効果的で安全なものになるように思います。
- 個人の免疫状態に応じたワクチンの開発
- ワクチンの効果を高めるベースとなる腸内マイクロバイオームの構成の判明
- 腸内マイクロバイオームの構成に沿ったワクチンの開発
加えて、病原体の不活化の目的で一般的なワクチンに使用されている、アルミやチメロサール(水銀)やホルマリンなどの有害な添加物を使用せずにワクチン開発が行われることを願います。
サプリメントや食品と同様に、いくら素材がよくても、加工の過程で、好ましくない添加物が加えられてしまっては元も子もありません。
ワクチン接種までにあなたがやっておくべきこと

今回の「ネイチャー」のレビューを読んであらためて思ったのは、
ワクチンを打つなら腸内環境を整えて、
腸内を良いビフィズス菌で満たし、
腸内マイクロバイオータのバランスを正常化しておくこと
それが、ワクチンによる思わぬ副作用を避け、ワクチン効果を高め、抗体効果を長く継続させるために、今、あなたができる最大の策ではないでしょうか。
腸内細菌の顔ぶれを変えることについては『腸内細菌の構成は、遺伝(変えられない)と食事(変えられる)のどっちで決まる?』をご確認ください。
最新情報の追記
2021年5月追記
2021年4月のブリティッシュ・メディカルジャーナルに掲載されていた研究報告は、喫煙がワクチン接種後の抗体価を低下させると報告しています。
今更禁煙しても遅いと思う人もいるかもしれませんが、それでもやらないよりやった方が良いのは確実です。
2021年5月追記
炎症性腸炎で次の薬を処方されている人は要注意
1. インフリキシマブ
ブリティッシュ・メディカルジャーナル(BMJ:英国医師会誌)に2021年4月に掲載された研究報告によれば、抗腫瘍壊死因子(TNFα)抗体製剤のインフリキシマブを使用している炎症性腸疾患(IBD)患者(865例)で、新型コロナウイルスワクチンの1回目の接種の後、抗体反応が減弱することが報告されました。
ファイザー社とアストラゼネカ社のどちらのワクチンでも同じ結果です。
研究者は、インフリキシマブを服用している患者は、1回目と2回目のワクチン接種の間隔を空けすぎないようにとの注意を促しています。
2. ベドリズマブ
ベドリズマブを処方されていた患者(428例)では、そうした影響は起こらなかったとのことです。
ベドリズマブは、インフリキシマブとは異なる作用機序で炎症反応を抑制するため、インフリキシマブまたは免疫調節薬による治療効果が不十分な時に処方される薬です。
2022年10月追記
2022年10月11日に東京医科大学が『ヒト腸内細菌と代謝物質を介した免疫応答が新型コロナウイルス感染症および合併症に与える影響を発見』との発表を行いました。
個人が有する腸内細菌の割合や代謝物質の濃度がCOVID-19合併症の発症リスクに関係することが証明されています。
COVID-19で影響する菌種は、糖尿病、炎症性腸疾患、PPIとは異なり、関節リウマチと類似しているのだそうです。
やはり、腸内環境は、ワクチンによる副作用だけでなく、コロナへの感染のしやすさや重篤化しやすさとも関係が深いのですね。
マイクロバイオータと医薬品
ワクチン以外の医薬品とマイクロバイオータとの関係に関する記事は次のとおりです。
- 『腸内細菌時代の食事と病気(がん)を科学的に考える』
- 『なぜ薬が効く人と効かない人がいるのか?』
- 『薬を頻繁に飲んでいると感染症にかかりやすくなる』
- 『抗生物質だけでなく数多くの医薬品が腸内細菌にダメージを与えている』(IN YOUへ遷移)
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

長々とマイクロバイオータと免疫力やワクチン/抗生物質による影響などについて記載しましたが、もし、おひとりで取り組むことに不安や難しさを感じているのなら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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腸内環境を整えるためのボディエコロジーの4つのステップなどについても教えていますよ。
新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

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参考文献:
- “The Impact of the Microbiome on Immunity to Vaccination in Humans”, Sanne E. de Jong, Axel Olin, Bali Pulendran, REVIEW| VOLUME 28, ISSUE 2, P169-179, Cell Host Microbe, AUGUST 12, 2020, DOI:https://doi.org/10.1016/j.chom.2020.06.014
- “Infliximab is associated with attenuated immunogenicity to BNT162b2 and ChAdOx1 nCoV-19 SARS-CoV-2 vaccines in patients with IBD”, Kennedy NA, Lin S, Goodhand JR, et al, Gut Published Online First: 26 April 2021. doi: 10.1136/gutjnl-2021-324789
- 「ヒト腸内細菌と代謝物質を介した免疫応答が新型コロナウイルス感染症および合併症に与える影響を発見」、東京医科大学、国立国際医療研究センター、理化学研究所、江崎グリコ株式会社、2022年10月11日
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング



