【ビタミンC】「ビタミンCは摂れば摂るほど美容と免疫力がアップする」の嘘と本当

2020/07/30/

バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。

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美容や健康への意識が高い人は、ビタミンCに効果があることをよくご存じです。そして、多くの人が、ビタミンCは多く摂れば摂るほど効果が高まると考えています。

そのため、多くのビタミンC製品が市販されています。ビタミンCが簡単に摂れると謳っているジュースやサプリメントが人気です。

でも本当に、ビタミンCは、多ければ多いほど良いのでしょうか?

なお、参照した論文を最後に参考文献として掲載しています。ただし論文の中で引用されてる研究については元の論文の索引をご確認ください。

ビタミンCの食事摂取基準(2020)

植物やほとんどの動物と異なりヒトは、ビタミンCを合成する能力を失っています。そのため、飲食することでビタミンCを摂取する必要があります。

厚生労働省が定めている成人一日のビタミンCの摂取基準は次の通りです。男女ともに同じです。

  • 必要量:80mg、推奨値:100mg

限界量の基準がない

厚生労働省は、ビタミンCの限界量を定めていません。(理由は次の「濃度は一定」の項をご参照ください。)

ただし、それは食品/食事からビタミンCを摂ることを原則にした場合です。

食事以外、例えば、サプリメントなどから摂取する場合には、1日に1g(1,000mg)以上の量を摂取することは推奨できないとしています。(理由は後述する「過剰摂取」の項をご参照ください。)

喫煙者は+35mg

喫煙者は、非喫煙者よりも1日に35mg多く摂ることを米国FDA(食品医薬品局)は推奨しています。

喫煙者はタバコの煙に含まれる毒素によって酸化ストレスが増加し、血液中のビタミンCの濃度が通常よりも低くなるため、非喫煙者よりも多くのビタミンCの補給が必要になるからです。

ちなみに、日本の厚生労働省は、喫煙者向けの基準を設けていません。

ビタミンCの血液中の濃度は一定

ヒトの血液中のビタミンCの濃度は約0.1ミリモルです。次の3つのメカニズムによって厳密に一定に保たれています。

  • 腸での吸収
  • 体組織間の移動
  • 腎臓での再吸収

ビタミンCの腸での吸収率はとても高く、口から摂り入れたビタミンCは1日に最大200mgまでくらいなら90%~100%吸収されます。そして、500mgを超えると吸収率が低下し始め、1,000mg以上になると吸収率は50% 以下に低下します。

そして、血液中のビタミンCの濃度が飽和状態(0.1ミリモル)になると、追加のビタミンCは吸収されなくなり、ビタミンCは水溶性のビタミンなので、尿へ排出されます。

ビタミンCを口から大量に摂取しても、血液中のビタミンCの濃度が0.22ミリモルを超えることはありません。だから、厚生労働省は限界量を定めていないのです。

ビタミンC不足ではない健康な人が、ビタミンCを余分に摂ったとしても、追加分はすべておしっことして排出されてしまうので、無駄な出費でしかありません。

ただし、静脈注射によって直接的に血液中にビタミンCを供給すると、腸内吸収をスキップできるので、血液中のビタミンC濃度を0.3~20ミリモルまで上昇させることができます。

しかし静脈注射を用いても、ビタミンCは数時間以内に腎臓によって排出され、血液中の濃度は正常範囲に戻されてしまいます。

ですから、静脈注射によるビタミンCの補給に効果があるケースは、非常に限られます。詳しくは、後述するビタミンCと病気との関係をご確認ください。

ビタミンCの過剰摂取による影響

余分なビタミンCを摂ることには、あまり意味がないだけでなく、サプリメントから摂った化合物としてのビタミンCには、過剰摂取による問題があります

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」の中で次のように述べています。

サプリメントなどから
一日に1g(1,000mg)以上の量を摂取することは推奨できない

1g といえば、1000mg です。「C1000タ〇ダ」とかは、実は、気軽に飲んではいけないものなのかもしれませんよ。

胃腸不良

上述したように、食事から摂った天然のビタミンCは、一定量以上は吸収されず、尿として排出されます。

一方、サプリメントから摂取した化合物のビタミンCが尿で排出される量には限度があります。体にも吸収されず、尿として排出もされず、体に溜まった過剰なビタミンCは、次の様な問題を胃腸に与えます。

1日に3〜4g(3,000~4,000mg)のビタミンCを、サプリメントで服用した際に次の不調が引き起こされた事例が報告されています。

  • 吐き気
  • 下痢
  • 腹痛

腎臓結石

シュウ酸塩は、ビタミンCの代謝によって造られます。そのため、ビタミンCの摂取量が多いと、体内でシュウ酸塩(シュウ酸カルシウムなど、結石の結晶)が多くなり、腎臓結石になる可能性が高まります。

いくつかの研究が、ビタミンCのサプリメントの摂取によって、尿中のシュウ酸塩濃度が上昇することを報告しています。

例えば、45,619人の男性(40~75歳)を14年間に渡って追跡調査した研究は、一日に90mg未満のビタミンCを摂取していた男性と比較して、一日に1,000mg(1g)以上を摂取していた男性の腎臓結石リスクが、41%も高いことを報告しています。

また、48,840人の男性(45~79歳)を11年間に渡って追跡調査した研究は、ビタミンCのサプリメントを服用していない男性と比較して、週7回以上も服用していた男性は、腎臓結石のリスクが2倍以上だったことを報告しています。

その他の有害な症状

その他にも、サプリメントによる多量のビタミンCの摂取によって、次のような有害な症状が起こることがあると報告されています。

  • 酸化ストレスの増加
  • 歯のエナメル質の浸食
  • ビタミンB12欠乏
  • 過剰な吸収
  • がん
  • アテローム性動脈硬化症
  • リバウンド壊血病
  • 遺伝子変異
  • 先天異常

ビタミンCには、抗酸化作用があり、がん予防などに効果があると言われていることを考えると、サプリメントから摂るビタミンCは逆効果になりかねないのかもしれません。

ただし、これらの症状の発症については科学的な裏付けが乏しく、確実に起こる、あるいは因果関係があるとまでは言えません。

上の一覧の中にある「リバウンド壊血病」とは、壊血病(ビタミンC欠乏症)の改善のために高用量のビタミンCの補給をし、壊血病が改善した後で、そのビタミンCの補給を止めると、ビタミンCが欠乏していないのにも関わらず、再びビタミンC欠乏症(壊血病)の症状が起こる疾患を指します。ビタミンC中毒です。

ビタミンCの貯蔵庫

体内に吸収されたビタミンCは、体内のどこにいるかと言えば、主に免疫細胞に多く存在しています。

  • 免疫細胞|免疫細胞内のビタミンCの濃度によって、体内に貯蔵されているビタミンCの量が分ると考えられています。
  • 筋肉|ビタミンCは筋肉にも貯蔵されています。
  • 血液|血液中のビタミンCの濃度は、最近口から摂取した量を反映しています。

免疫機能とビタミンC

体内のビタミンCの多くが免疫細胞に貯蔵されていることから、ビタミンCが、免疫機能の構成要素に大きな影響をもっていることは明白です。

免疫機能にどのような影響を与えているかと言えば、主に次の3つです。

ビタミンCは、白血球(免疫細胞)の中でも、特に、好中球、リンパ球、マクロファージの次の機能とその増殖を刺激します。

  • 運動性
  • 走化性(周囲にある特定の化学物質の濃度差に対して方向性を持った行動を起こす現象のこと、化学走性)
  • 食作用(有害物質や菌などを捕食・分解・殺傷する作用)

更に、ビタミンCが、免疫B細胞と免疫T細胞の増殖と分化(特定の機能を有すること)を促進させることが報告されています。

好中球、単核食細胞、リンパ球は、ビタミンCを高濃度に蓄積することができ、自らを酸化による損傷から守っています

例えば、マクロファージは、病原菌の侵入に際して毒素(スーパーオキシドラジカル、次亜塩素酸、ペルオキシナイトライトなど)を放出します。こうした毒素によって病原菌を殺す過程で、免疫細胞自身も損傷を追うことがありあます。ビタミンCの抗酸化力が、免疫細胞が自傷してしまうことから守っています。

マクロファージは、ウイルスの活性を抑制するインターフェロンなどのサイトカイン(炎症性物質)を作って放出します。ビタミンCはマクロファージにインターフェロンの産生を増加させる働きがあることが観察されています。

更に、ビタミンCは、好中球の走化性と病原菌の殺傷能力を高めることが報告されています。

ビタミンCのその他の機能

ビタミンCには、その他にも、主に次の重要な働きがあることが判っています。

  1. 酵素の働きを助ける補因子
  2. 抗酸化剤/酸化還元
  3. ミネラル吸収

1. 酵素機能のサポート

ビタミンCが補因子として、その働きを助けている酵素には、モノオキシゲナーゼやジオキシゲナーゼに分類される酵素があり、次の物質の体内合成(生合成)に関与しています。

  • コラーゲン(皮膚、骨などの成分)
  • カルニチン(エネルギーの産生に必要な成分)
  • カテコー​​ルアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質)

ビタミンCがお肌に良いとされるのは、お肌にハリを作るコラーゲンの体内合成に関与しているからです。

また、ビタミンCが、その働きをサポートしている酵素には、遺伝子の発現調節やゲノムの完全性の維持に関与しているものがあり、ビタミンCは、間接的に遺伝子発現に関与している環境因子(エピジェネティクス因子)のひとつと言えます。

2. 酸化還元機能

ビタミンCは、強力な酸化還元(レドックス)剤です。

上述した、ビタミンCの酵素の補因子(サポーター)としての役割には、ビタミンCの酸化還元機能が大きく関わっています。いくつかの重要な生体分子の合成の過程で、酵素と結合し酸化したミネラルを還元し、酵素の働きを助けています。

それだけでなく、ビタミンCは、血液と体組織で水溶性の抗酸化物質として次のような働きを担っています。

  • 栄養素の代謝
  • 有害物質の排出
  • 免疫細胞の活動の中で発生するフリーラジカルや活性酸素(ROS)の除去

タンパク質、脂質、炭水化物、核酸(DNAとRNA)など、あなたにとって不可欠な栄養素を僅かな量で酸化から保護することができるほど、ビタミンCは強い還元力をもっています。

また、ビタミンCは、他の抗酸化物質を還元再生して、リサイクル(再利用)できるようにしています。例えば、酸化したビタミンEを還元して再生しています。

ビタミンCがお肌に良いとされるのは、コラーゲンの合成に関与しているからだけでなく、その強力な還元作用によって、お肌酸化によってできるシミやシワを予防してくれるからです。

3. ミネラル吸収

ビタミン C は、様々なミネラルの腸管吸収を促進します。

ミネラルは一般的に腸での吸収率があまり高くありません。そのため、ミネラル不足を予防して、効率よくミネラルを摂取するためには、ミネラル豊富な食品とビタミンC豊富な食品を一緒に食べることが大切になります。

ただし、上述した通り、サプリメントによる多量のビタミンCの補給によって、鉄分過剰になることもあります。鉄分のサプリメントを服用している人も多いのですが、鉄分は潜在的に有毒な重金類に分類されるミネラルですから、本来、注意が必要です。詳しい鉄分の機能については『鉄分』をご参照ください。

ビタミンC不足/欠乏症

ビタミンCが重度に欠乏すると、壊血病が起こります。壊血病は、何世紀も前から知られている死に至る病気です。

壊血病の症状には、次の様なものがあります。壊血病に至らなくてもビタミンCが不足すると、次のような症状が現れやすくなります。

  • 疲労感(初期症状)
  • あざができやすい
  • 皮下出血
  • 傷が治りにくい/治らない(傷口がふさがらない)
  • 抜け毛
  • 関節の痛みと腫れ
  • 歯の喪失
  • など

こうした症状が現れる理由は、上述した「ビタミンCのその他の機能」でお伝えした通り、ビタミンCがサポートしている酵素が機能しなくなるからです。

壊血病は、一日わずか10mg(6~12 mg )のビタミンCで予防できます。そのため、先進国で起こることは稀だと考えられています。

しかし、もしあなたが大きなストレスを抱え、果物や野菜をあまり食べない習慣があり、上記したような症状があるのなら、ビタミンC不足を疑ってみる必要はありそうです。

なお、ビタミンCの体内移動と解毒メカニズムに関する遺伝子変異をもっている人は、ビタミンCを多く含む食事をしていても血液中のビタミンC濃度が上がらないことがあります。

ビタミンCと病気の関係

慢性疾患の予防と改善に必要なビタミンCの量は、壊血病の予防に必要な量よりも多くなります。しかも、腎臓機能障害を起こす可能性のある1日1,000mgを超える量が用いられるケースがほとんどです。

そのため、以下で紹介する病気予防と治療に用いられているビタミンCは、経口できるサプリメントではなく、医師の監督の下、静脈注射によって投与されているものです。

上述した通り、経口サプリメントには吸収率に限界があり効果はありませんから、自己判断で大量のビタミンCのサプリメントを服用することは避け、まずはお医者様にご相談ください。

そして、病気治療ではなく、予防のためにビタミンCをと考えている人は、お野菜と果物から摂取することを第一に考えてくださいね。最後にビタミンCを多く含む食品についてもご紹介します

血圧との関係

食事の質と血液中のビタミンC濃度が高血圧の予防と次のような関係をもっていることが明らかにされています。

  • 血液中のビタミンC濃度が高いほど、血圧は低くなる
  • 食事の質が悪く、かつ、血液中のビタミンCの濃度が低いほど、高血圧リスクが上昇する
  • 質の高い食事をしていても、血液中のビタミンCの濃度が低いと高血圧は改善しない

具体的には、1,407人の被験者が一日平均500mgのビタミンCを約8週間、食事から摂取したところ、収縮期血圧(上の血圧)が 平均3.84mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が平均1.48mmHg低下したことが報告されています。

研究者は、次のように述べています。

高血圧の改善のためには、
ビタミンCのサプリメントに頼るのではなく、
ライフスタイルと食事全体を見直すことが重要だ

高血圧予防には、サプリメントではなく、ビタミンC豊富なバランスの良い食事が重要であることを裏付ける研究結果です。

血管内皮機能との関係

アテローム性動脈硬化症の初期には、血管内皮の機能不全が起こると考えられています。

血管内皮が機能しないということは、血管の正常な拡張性(弾力性)が失われることを意味し、血管の収縮と血液の凝固に異常をもたらします。

心不全、アテローム性動脈硬化症、糖尿病の人の血管内皮の機能不全は、一日 500mg 超のビタミンCを短期間摂取することで改善できることが判明しています。

冠状動脈性心疾患との関係

冠動脈性心疾患とは、心筋梗塞や心臓発作のことです。心臓の動脈内にプラークが蓄積した状態のアテローム性動脈硬化を何年も放置した結果で起こる疾患です。

日々の食事から十分なビタミンCの摂取量が多いほど、冠状動脈性心疾患の予防効果が高くなること、そして、サプリメントからビタミンCを摂取した場合には効果はないことが確認されています。

日本人女性を対象とした研究では、食事からのビタミンCの摂取量が多いほど、冠状動脈性心疾患による死亡率が低下しましたが、男性ではそうした関連性は見られませんでした。

欧州で行われた大規模追跡調査(男女含む)は、主に果物と野菜からビタミンCを摂取し、血液中のビタミンC濃度が高い人ほど心不全を起こしにくく、血液中のビタミンCの濃度が20μmol/L増加するごとに、心不全の発症が約 9% 低下できると報告しています。

心筋梗塞や心臓発作を予防するには、
サプリメントではなく、
ビタミンCを多く含む野菜や果物を食べることに効果がある

ということです。

心臓手術との関係

体内のビタミンCは、心臓手術中、並びに心臓手術後に枯渇することが判っています。

閉塞性の冠動脈疾患を治療するために行われる血管形成術を冠動脈形成術と呼びます。詰まった動脈に小さなバルーンを一時的に挿入して膨らませ、心臓への血流を回復させるものです。この冠動脈形成術を受けた患者の約3分の1に心筋損傷が起こり、術後の死亡率を上昇させていることが判明しています。

血管形成術の1時間前に 1g(1,000mg)のビタミンCを点滴投与すると、酸化ストレスマーカーが低下し、微小循環灌流が改善されることが観察されています。別の研究では、冠動脈形成術の6時間前に3g(3,000mg)のビタミンCの点滴によって、手術中と術後の心筋損傷の発生を大幅に減少させることができたことが報告されています。

虚血後の再灌流の場合

心筋梗塞自体によって、または冠動脈バイパス手術中の大動脈クランプ(クリップで挟んで血流を止めること)によって、心筋が酸素欠乏(虚血)になることがあります。

治療によって心筋への血流が再開し酸素の供給が回復(再灌流)すると、細胞は生きようとして同時に活性酸素が大量に発生します。その活性酸素によって、心筋が損傷すると考えられています。

再灌流時に起こる心筋損傷は、心房細動(不整脈)や心筋スタニング(心拍が一時停止する)などの合併症も起こします。

しかし、バイパス手術前にビタミンCを静脈投与することによって、再灌流による心筋損傷が減少することが報告されています。

再灌流の3時間前からビタミンCを静脈投与し、手術後84日間ビタミンC(1日1,000mg)とビタミンE(1日268mg/400IU)のサプリメントを経口摂取し続けた研究では、再灌流から6~8時間後の体内の抗酸化力の低下を防ぐことができ、84日後の退院時までには左心室の機能が改善したことを報告しています。

心房細動/不整脈との関係

心房細動は、心疾患(心不全、脳卒中など)の原因となり死亡率を上昇させる要因のひとつです。

追跡調査と無作為対照試験のメタ分析の両方で、心臓手術前と術後におけるビタミンCの摂取によって、心房細動を予防できることが報告されています。

これらの研究では、次の量のビタミンCが静脈投与されています。

  1. 手術前・・・約 2g(2,000mg)
  2. 手術後・・・一日1~2g(1,000~2,000mg)を5日間

脳卒中との関係

脳卒中には、出血性と虚血性があります。

出血性脳卒中は、脳の弱くなった血管が破裂して起こります。

虚血性脳卒中は、血管が詰まって脳の血流が遮断されたことで起こります。そのため、アテローム性動脈硬化がある人に起こりやすく、先進国で起こる脳卒中の約80%を占めています。

日本で行われた居住者2,000人以上を20年間追跡調査した研究は、血液中のビタミンCの濃度が最も低いグループと比較して、最も高いグループの脳卒中のリスクが29%も低かったことを報告しています。

欧州で行われた20,649人の成人を10年間追跡調査した研究でも、血液中のビタミンC濃度が最も低いグループと比較して、最も高かったグループの脳卒中リスクが42%も低かったことを報告しています。

両方の研究とも、次の事実を報告しています。

野菜と果物を多く食べている人ほど
血液中のビタミンC濃度が高い

ただし、野菜と果物にはカリウムを多く含むものが多いため、脳卒中の予防効果がビタミンCのみによる効果かどうかは判別できないとも述べています。

また、14,000 人以上の高齢男性を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験は、次のように発表しています。

サプリメントによるビタミンCの摂取は
両方のタイプの脳卒中と死亡率に何の効果もなかった

また、8年間の追跡調査の結果においても、サプリメントで、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンを組み合わせて摂っても、個別に摂っても、効果がなかったと報告しています。

II型糖尿病との関係

21,831人を12年間追跡した調査では、血液中のビタミンC濃度が高いほど、糖尿病リスクが顕著に低下することを報告しています。

また、血液中のビタミンC濃度が高いほど、糖化ヘモグロビン(HbA1c)などのインスリン抵抗性/耐糖能障害の発症が低いこともいくつかの研究が報告しています。

米国国立衛生研究所 (NIH) と米国退職者協会 (AARP) による232,007人を対象とした食事と健康に関する調査では、サプリメントを飲まない人と比較し、週に7 回以上ビタミンCのサプリメントを服用している人は、II型糖尿病の発症リスクが9%低下すると報告しています。

ただし、ビタミンCには、治療効果がないとする研究報告もあり、ビタミンCには糖尿病を予防効果はあるものの、治す効果があるかは不明です。

2018年に行われたII型糖尿病に対する抗酸化ビタミンの補給効果を調査した無作為対照試験のメタ分析によって、次の事実が示されました。

糖尿病による酸化ストレスと糖尿病マーカーの改善のほとんどは、
ビタミンCではなく、ビタミンEに起因する

メトホルミン治療を受けている場合

糖尿病患者の主な死因は、心疾患です。

メトホルミン治療を受けているII型糖尿病の456人を対象とした12か月間の無作為化プラセボ対照試験は、ビタミンC(1日500mg)とアセチルサリチル酸(アスピリン|1日100mg)は、共に単独で、空腹時血糖値とHbA1c濃度を低下させ、高脂血症を改善したと報告しています。

研究者は、メトフォルミン治療を受けている糖尿病患者の心疾患を、ビタミンCが10年間に渡って予防できる可能性が高いと述べています。

遺伝子型による影響

ハプトグロビン遺伝子「Hp」の対立遺伝子「Hp2」が、糖尿病患者による心疾患の発症と関係している遺伝子として特定されています。

Hp遺伝子の「Hp1-1」と「Hp1-2」を持っている人のHpタンパク質と比較して、Hp2遺伝子の「Hp2-2」を2つ持っている人のHpタンパク質は、血液中の遊離ヘモグロビン(酸化物質)を除去する能力が低いことが報告されています。

抗酸化療法 (ビタミンCを一日1,000mg + ビタミンEを一日800 IU)は、Hp1-1遺伝型をもっている糖尿病の女性で冠動脈アテローム性動脈硬化を改善させましたが、Hp2-2遺伝型を持っている糖尿病の女性では、冠動脈アテローム性動脈硬化が悪化したことが報告されています。また、高脂血症の改善も見られなかったとのことです。

糖尿病の人は、ビタミンCの投与を受ける前に遺伝子検査をしてもらうと安心ですね。

妊娠合併症との関係

2015年に行われた無作為対照試験のメタ分析は、妊娠中にビタミンCを単独で、または他のいくつかのサプリメントと組み合わせて服用しても、次のリスクを低下できないことを報告しています。

  • 死産
  • 周産期死亡
  • 子宮内発育不良
  • 早産
  • 早期膜破裂
  • 子癇前症

ただし、胎盤剥離のリスクが36%低下し、胎児の在胎週数を有意に増加させたことも報告されています。

276,820 人の妊婦を対象とした無作為対照試験の別のメタ分析では、妊娠20週になる前から次のいずれかを服用してもらいましたが、流産、死産、先天性奇形などによる胎児喪失の予防効果は見られませんでした。

  • ビタミンCを単独
  • ビタミンCとビタミンE
  • マルチビタミン

また、10,000人の妊婦を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験の二次分析でも、ビタミンCとビタミンEのサプリメントによる子癇前症のリスクの減少は見られませんでした。

なお、子癇前症の予防については『危険な妊娠合併症を予防できる簡単な方法』をご参照ください。

妊婦の喫煙との関係

妊娠中の喫煙は、他の妊娠合併症の中でも胎児の発育不良や早産を引き起こすだけでなく、小児呼吸器疾患の主な原因となります。

妊娠中に喫煙した女性がビタミンCを補給することによって、胎盤剥離と早産のリスクを減少させることができることが判っています。

また、妊娠中に喫煙をした女性が妊娠中にビタミンCを一日 500mg 摂取すると、新生児の生後一週間の肺機能が向上し、1歳までの喘息発症リスクが低下することも判っています。

たばこを吸わない妊婦さんにとっては、ビタミンCの追加補給はあまり効果はないようですが、喫煙者の妊婦さんにとっては、ビタミンCがお腹の中の赤ちゃんの健康を守ってくれそうですね。だからと言って、妊娠中の喫煙による影響が帳消しになるわけではありませんから、吸わないのが一番良い選択です。

妊娠中の喫煙の影響については『母親の喫煙とストレスが胎児の心と脳に影響する』もご参照ください。

アルツハイマー病との関係

脳内のビタミンC濃度は、脳脊髄液を測ることでより正確に把握できます。しかし、脳脊髄液中のビタミン C 濃度を測定した研究はほとんどありません。

その数少ない研究によって、次の事実が判明しています。

  • ビタミンCは、能動的に脳へ運ばれている
  • 脳の血液脳関門の細胞内に濃縮されて保存されている
  • 脳脊髄液中のビタミンC濃度は、血液中のビタミンC濃度の数倍以上に濃縮されている

血液脳関門の完全性が損なわれると、脳がビタミンCを保持できなくなり、脳脊髄液中のビタミンC濃度が下がり、血液中のビタミンC濃度が上がることも判っています。

しかし、脳脊髄液中の濃縮されたビタミンCが、認知機能やアルツハイマー病、そして、その他の神経変性疾患に対して、どのような役割を果たしているのか、まだ十分には理解されていません。

ただ、マウスを用いた研究によって、脳脊髄液と脳の細胞外組織内のビタミンC濃度が低いと、アミロイドの沈着とアルツハイマー病の進行が促進されることが判明しています。

ビタミンCを合成する能力を欠落させたアルツハイマー病のマウスでは、高用量のビタミンCの補給によって大脳皮質と海馬へのアミロイドの沈着が減少し、血液脳関門障害とミトコンドリア機能障害が抑制されました。

ヒトを対象とした研究では、アルツハイマー病ではない人と比較して、アルツハイマー病の人は、血液中のビタミンC濃度が低いことが判明しています。更に、血液中のビタミンC濃度が高いほど、認知機能が向上し、認知機能障害の発症リスクが低下することも判っています。

アルツハイマー病の可能性のある人(32人)を1年間追跡した小規模な研究では、追跡開始時の血液中のビタミンC濃度に対する脳脊髄液のビタミンC濃度の比率が高いほど、認知機能の低下速度が遅くなることが観察されています。

また、ビタミンC(500mg/日)、ビタミンE(800IU/日)、α-リポ酸(900mg/日)を組み合わせて16日間摂取した二重盲検無作為対照試験では、開始から数週間までは、脳脊髄液中のリポタンパク質の酸化が減少したものの、軽度から中等度のアルツハイマー病の症状の改善は見られませんでした。1年間摂取した他の研究においても同様の結果が報告されています。

つまり、ビタミンCは認知機能低下の予防にはなるものの、低下してしまった認知機能を回復させることは難しいのかもしれませんね。

アルツハイマー病の食事については『アルツハイマー病と認知症|予防・改善のための食事法』をご参照ください。

白内障との関係

様々な研究によって、食事からのビタミンC摂取量が多く、血液中のビタミンC濃度が高いほど、加齢に伴う白内障のリスクが低下することが報告されています。しかし、サプリメントでビタミンCを補給した場合には、効果は見られず、コルチコステロイド(抗炎症剤)療法を受けている人では白内障リスクが上昇したことが報告されています。

食事(果物や野菜)からの毎日のビタミンCの摂取量が多いほど、白内障の発症リスクが減少することは繰り返し報告されています。

ヒトの房水(眼の前房と後房を満たしている液体)中のビタミンC濃度は、血液中のビタミンC濃度の15倍~20倍もあり、ビタミンCが重要な役割を果たしていることを示唆しています。実際、眼の水晶体のビタミンC濃度が低下するほど、白内障が重症化することが観察されています。

ただし、ビタミンCだけでなく、ビタミンEとβ-カロテンについてもサプリメントでは白内障と白内障手術後の両方の症状の進行に対して、2年~12年間摂取し続けても実質的な効果が見られなかったことが報告されています。そのため、現在では、白内障予防にビタミンCのサプリメントは推奨されていません

なお、白内障予防の食事については『目の健康のためにサプリメントを飲んでいる人は期待が裏切られるかもしれません』をご参照ください。

痛風との関係

血液中の尿酸濃度や痛風の発症は、遺伝することが多いのですが、食事とライフスタイルを改善することで、予防と改善の両方に役に立つ可能性があることが様々な研究によって示されています。

1,387人の男性を対象とした観察研究では、ビタミンCの摂取量が多いほど、血液中の尿酸の濃度が低くなること、46,994人の男性を20年間追跡した研究では、毎日のビタミンC摂取量が多いほど、痛風の発生率が低いことを報告しています。

また、4,576人を対象にした横断研究では、食事中のビタミンCに対する糖分の割合が高いほど、高尿酸血症になる確率が高くなると報告しています。

ご家族に痛風の人がいる場合には、白い砂糖は控えめに果物とお野菜を豊富に食べることで、予防できる可能性が高まるのではないでしょうか。

尿酸値が上昇している健康な人を対象とした無作為対照試験のメタ分析では、1日500mgのビタミンCサプリメントを30日間摂取すると、対照グループと比較して尿酸濃度が0.35mg減少したことを報告していますが、これは統計的に有意な結果ではありませんでした。

また、痛風の標準薬(アロプリノール)とビタミンCのサプリメントを併用した研究においても、ビタミンCを追加する効果はなかったことが報告されています。

やはり、ビタミンCはサプリメントからではなく、野菜や果物から摂らなくてはダメですね。

敗血症との関係

敗血症とは、細菌が体内で繁殖し、組織や臓器が正常に働かなくなり、生命を脅かす状態になった時に現れる症状です。

重い病気の人や、敗血症性ショックを起こした人はビタミンC欠乏になることが多く、ビタミンCの1日の推奨量を経腸/非経口栄養療法によって投与しても、欠乏症が持続することが判っています。全身で起こっている炎症反応の代謝にビタミンCが大量に使用されているためだと考えられています。

集中治療室の敗血症患者に、体重1 kgあたり1日に50mg~200mgのビタミンCを96時間、静脈投与した研究では、ビタミンC欠乏症が改善し、SOFA(逐次臓器不全評価)とAPACHE(急性生理学的評価および慢性健康評価)IIスコアの上昇が起こらなかったことが報告されています。更に、炎症と内皮損傷のマーカーも低下しました。

重症の敗血症性ショック患者28人を対象とした別のランダム化二重盲検比較試験では、体重1kgあたりビタミンCを25mg、6時間ごとに72時間、静脈投与すると、昇圧剤(ノルエピネフリン)の必要量が大幅に減少して、治療期間を減少させ、28日間生存率を劇的に改善したことが報告されています。

退院までの間に、次のいずれかを投与した場合でも同様の結果が報告されています。

  • 静脈内ビタミンC(6時間ごとに1,500mg)
  • ヒドロコルチゾン(6時間ごとに50mg)
  • チアミン(12時間ごとに200mg)

標準的な治療と比較して、昇圧剤の使用量と投与時間が半減以上になり、死亡率を90%近く抑えることができたと報告されています。

ただし、高用量のビタミンCの投与は腎不全のリスクを上昇させる可能性があるため注意が必要と研究者は述べています。

風邪予防と気管支症状との関係

風邪予防に関してビタミンCの効果が40年以上に渡って研究されてきましたが、ビタミンCのサプリメントによる一般の人の風邪予防効果は観察されていません。しかし、肉体的に過酷な状況にいる人、例えば、冬季の持久系のアスリートや兵士などは、ビタミンCによって風邪の発症率が半減したことが報告されています。

このことについては、以前、記事にしていますので『風邪の予防と症状緩和にビタミンCは効果がない?』をご参照ください。

また、風邪をひいている間のビタミンC補給には効果があることが示されていて、効果は大人よりも子供で大きいことも報告されています。

更に、呼吸器に感染した(咳・喉の痛みがある)場合に、1日にビタミンCを1g(1,000mg)2週間摂り続けると、喘息発作を予防できることも報告されています。

感染症による喘息と診断された人を対象に行われた研究では、1日にビタミンCを5g(5,000mg)1週間投与すると、ヒスタミンに対する気管支の過敏症を起こす人の割合が有意に少ないことを報告しています。

運動誘発喘息との関係

運動誘発喘息は、運動後に、一時的に咳や喘鳴(ぜんめい|ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音)によって呼吸困難になる現象で、喘息をもっていない人にも起こります。運動後に気管支が収縮して起こるので、運動誘発気管支攣縮(れんしゅく)とも呼ばれます。

運動誘発喘息をもつ40人に対して行われた次の3つの実験では、いずれも運動後の喘息の発生が予防できたと報告されています。

運動前にビタミンCを次の通り投与しています。

  • 1日500mgを2日間摂取
  • 1日だけ2,000mgを摂取
  • 1日1,500mgを2週間摂取

ただし、ビタミンCには予防効果が無いとする研究もありました。

鉛のデトックス

鉛は、車の排気ガスや塗料、たばこの煙からだけでなく食品からも体内に入ってきます。

これは農林水産省がホームページで公開している、食品に含まれている鉛から日本人が1日に平均してどれくらいの鉛を摂取してしまっているかを示したグラスです。

妊娠中に鉛を大量に摂取してしまった女性の乳児には、成長不良と発達異常が起こります。また、慢性的に鉛を摂取してしまっている子供には、学習障害、素行異常、低IQが起こる確率が高くなります。成人では、腎臓障害、高血圧、貧血を引き起こすことがあります。

いくつかの横断研究では、食事からのビタミンCの摂取量が多い人と比較し、ビタミンCの総摂取量が1日平均109mg未満の人の血液中の鉛の濃度が有意に高いことを報告しています。また、血液中のビタミンC濃度が高いほど、血液中の鉛の濃度が有意に低いことも報告されています。

喫煙と副流煙の吸引は、血液中の鉛の濃度を上昇させます。

喫煙者を対象とした研究では、ビタミンCを1日1,000mg4週間補給すると血液中の鉛の濃度が有意に低下することが報告されています。一方で、1日に200mgでは、血液中の鉛の濃度を減少させることはできなかったことも報告されています。

ビタミン C が血液中の鉛の濃度をどのように低下させるのかの、メカニズムは不明ですが、鉛が腸で吸収されるのを阻害したり、尿への排出を促すのではないかと考えられています。

鉛の害とその他のデトックス方法については『ひどい場合には死をももたらす有害な鉛を体内に入れない簡単な方法と、体から排出する方法とは』や『シラントロなら何でもデトックスに善いわけじゃない』をご確認ください。

乳がんとの関係

大規模追跡調査は、食事からビタミンCの摂取量が多いほど、乳がんの発症リスクが低くなることを報告しています。

米国の看護師を対象とした追跡調査では、乳がんを発症したことがある家族をもっている閉経前の女性のうち、1日にビタミンCを食事から平均70mg摂取している人比較して、食事から平均205mg摂取している人は、乳がん発症率が63%低かったと報告しています。

また、スウェーデンで行われたマンモグラフィの追跡調査では、肥満の女性のうち、1日に平均31mgのビタミンCを食事から摂っている人と比較して、平均110mgのビタミンCを食事から摂っている人は、乳がん発症リスクが39%低かったことが報告されています。

家族に乳がんの人がいることや肥満は乳がんのリスク要因です。そうしたリスク要因をもっていてもビタミンCを食事から十分に摂取していれば、乳がんが予防できるというのは素晴らしいことですね。

しかし、ビタミンCの摂取量(食事とサプリメントのどちらにおいても)乳がんの発症と関係がなかったとする研究も存在しています。

胃がんとの関係

多くの観察研究によって、食事からのビタミンCの摂取量が増えるほど、胃がんの発症リスクが低下することが判明しています。

研究室での実験では、胃で発生する、発がん性のN-ニトロソ化合物の発生をビタミンCが阻害することが示されています。(ソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースのがん予防のレクチャーでは、ビタミンCだけでなく、N-ニトロソ化合物の発生を阻害する他の栄養素などについても教えています。)

また、胃液中のビタミンC濃度が低いと、ピロリ菌感染による胃がんの発症リスクが高まることも知られています。

試験管試験では、ピロリ菌の生存性を高めコロニー形成を促進するウレアーゼという酵素をビタミンCが不活性化することが観察されています。そのため、研究者は、ビタミンCは最も効果的な胃がん予防薬になるのではと述べています。(ただし、胃酸欠乏症の人では、胃がん予防にはならないとのことです。)

非ホジキンリンパ腫との関係

非ホジキンリンパ腫は、リンパ球ががん化して増殖し、リンパ節やリンパ組織(扁桃、脾臓など)に腫瘍ができる病気です。日本人の悪性リンパ腫の90%以上が、非ホジキンリンパ腫です。

35,159人の女性(55~69歳)を19年間追跡調査した研究では、果物と野菜の摂取量が多いほど、非ホジキンリンパ腫の発症リスクが低下したことが観察されています。

154,363人の閉経後の女性を11年間追跡した別の調査では、食事によるビタミンC摂取量が多いほど、非ホジキンリンパ腫の一種の、びまん性B細胞性リンパ腫の発症リスクが低下することを報告しています。

ビタミンCだけでなく、カロテノイド、プロアントシアニジン、マンガンなどの抗酸化物質が多く含まれる食事をしている人において、同様の結果が観察されています。

しかし、サプリメントには予防効果は見られなかったとのことです。

ビタミンCのがん治療への適用

がん治療目的でのビタミンCの有用性についての論争が続きましたが、がん治療にビタミンCを用いる際には、その投与経路が重要であるという結論が出されています。具体的には経口摂取ではなく、静脈注射による投与に効果があることが認められています

1日10g(10,000mg)を10日間、静脈投与することによって、血液中のビタミンC濃度を30倍~70倍にすることができ、この高い血漿濃度は、試験管試験でがん細胞を毒殺したのと同等の濃度になるとのことです。

血液中のビタミンCががん細胞と戦う具体的なメカニズムについては、まさに研究が行われている分野です。現在までの仮説では、次の作用にビタミンCが関与していると考えられています。

  • ゲノムの完全性を維持し、細胞を変異から保護(腫瘍化を阻止)している
  • がん細胞だけに選択的に有毒となる高濃度の過酸化水素の発生を助ける
  • がん細胞の生存率を高める低酸素誘導因子を不活性化する

など

ビタミンC静脈投与の安全性

管理された臨床試験から得られている現在までのエビデンスは、ビタミンCの静脈投与が一般的にも安全で、がん患者にとっても十分に許容されることを示しています。

転移性膵臓がんの患者を対象とした第I相臨床試験では、抗がん剤ゲムシタビンおよびエルロチニブと併用してビタミンCの静脈投与を行うと、血液中のビタミンCの濃度を安全に上昇させることが示されています。

切除不能ながん患者を対象とした第I相臨床研究では、ビタミンCの静脈投与量は、体重1kgあたり最大1.5g(1,500mg)用量と体表面積1m2あたり70~80g(70,000~80,000mg)で、忍容性が高く安全なことが報告されています。

ただし、現在までに、80g(80,000mg)のビタミンCを静脈投与された、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症(遺伝性疾患)の患者2名に溶血性貧血が起きたことが報告されているため、ビタミンCの静脈投与の前に、遺伝子検査を行い、適応者のスクリーニングが重要であることが判明しています。

また、化学療法と放射線療法のどちらか、あるいは両方を受けているがん患者を対象としたいくつかの観察研究では、ビタミンCの静脈投与を追加的に行うことで、副作用が減少し生活の質が改善したことが報告されています。

ただし、一般的ではありませんが、化学療法で用いられる抗がん剤が、細胞酸化のメカニズムを利用して作用する場合には、ビタミンCの投与が障害となる可能性が高くなると考えられています。抗がん剤治療を受けている人は、ビタミンCのサプリメントを飲む前に、主治医に相談することを強くお勧めします。

ビタミンCへの反応度

同じ種類のがん細胞でも、細胞を採取した患者によって、ビタミンCに対する反応度が大きく異なることが判明しています。個人差が生じる理由/メカニズムについては現在研究がなされている分野ですが、体内で過酸化水素を分解してくれているカタラーゼ(抗酸化物質)の活性が高いほど、ビタミンCへの反応が低いことが報告されています。

更に、ビタミンCを細胞へ輸送してくれる、ナトリウム依存性のトランスポーター(SVCT-2)の量が多いほど、がん細胞のビタミンCへの反応度が高くなることも報告されています。

これは悩ましいですね。がん細胞はナトリウムを利用して細胞死を免れる仕組みをもっているため、ナトリウム(塩)を控える方がいいのですが、ビタミンCをがん細胞へ届けるタンパク質(トランスポーター)がナトリウムに依存しているとすると、むやみにナトリウムを抜くことが得策になるとも言えず、がん患者へのナトリウム摂取の指導は非常に難しいと、言えますね。

サプリメント

ビタミンCのサプリメントは、次のような形態で入手することが可能です。

  • L-アスコルビン酸
  • アスコルビン酸ナトリウム(1gあたり111mgのナトリウムを含む)
  • アスコルビン酸カルシウム(1gあたり90~110mgのカルシウムを含む)

L-アスコルビン酸として販売されているサプリメントが最も多いですが、他の形態よりも吸収されやすい、あるいは生体活性があるという科学的なエビデンスはありません

また、ミネラル塩のビタミンC(アスコルビン酸ナトリウムやアスコルビン酸カルシウム)は、アスコルビン酸よりも酸性度が低く、消化管への刺激が少ないと考えられています。

フラボノイドとビタミンC

フラボノイドは、水溶性の植物色素で、ビタミンC豊富な果物や野菜、特に柑橘類に多く含まれている成分です。

果物や野菜からフラボノイドとビタミンCを摂取した場合の効果を様々な研究が報告しており、食事からフラボノイドとビタミンCを一緒に摂ることで生体利用率が高まると考えられています。

例えば、以前、執筆した『キウイフルーツ』や『目の健康』をご参照ください。

ただし、サプリメントでは、そうした効果は確認されていません

パルミチン酸アスコルビル

脂肪酸と結合するとアスコルビン酸は、ビタミンCエステルとなります。パルミチン酸アスコルビルは、ビタミンCがパルミチン酸(中鎖飽和脂肪酸)と結合したビタミンCエステルのことです。

通常、ビタミンCは水溶性(水に溶ける)ですが、ビタミンCエステルとなることで脂溶性(脂に溶ける)のビタミンCになり、安定性が向上します。そのため、パルミチン酸アスコルビルを配合したスキンクリームなどが販売されています。

しかし、ビタミンCは、皮膚からはほとんど吸収されません。また、試験管試験では、皮膚から吸収されたパルミチン酸アスコルビルの有毒性が報告されています。

パルミチン酸アスコルビルは、サプリメントとしても販売されているようですが、腸で吸収される前に胃で分解されてしまうので、無駄なお買い物です。

アスコルビン酸テトラヘキシルデシル(BV-OSC)

そのままでは不安定な生理活性したビタミンCを安定化させるために加工したビタミンC誘導体です。その高い安定性によって化粧品などに使用されることが増えている成分です。

肌から吸収されコラーゲンなどの生成に役立つことなどがいくつかの研究によって報告されています。

医薬品との相互作用

ここに記載しているのは、主なものだけです。全てを網羅しているわけではありませんから、ここに記載している医薬品を服用している人だけでなく、何かしらの医薬品を服用している人は、ビタミンCのサプリメントを飲む前に必ずお医者様か薬剤師さんにご相談ください

ビタミンCの腸内吸収を阻害する可能性のある薬

  • ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(降圧剤、ニカルジピン、ニフェジピンなど)・・・動物実験での結果
  • アスピリン(頭痛薬)の常用・・・ヒトによる結果

ビタミンCによって血中濃度が低下してしまう薬

  • フルフェナジン(抗精神病薬、プロリキシン)
  • インジナビル(抗レトロウイルス薬、クリキシバン)

ビタミンCによって作用が阻害される薬

  • ワーファリン(抗凝固剤)
  • スタチン(コレステロール低下薬)

ビタミンCなどの抗酸化作用のあるサプリメントと一緒に服用すると、効果が失われたとする研究報告があります。一方で、薬の作用に影響はなかったとする報告もあり、未だ真偽は不明です。

ビタミンCによって血中濃度が高くなってしまう薬

  • アルミニウム含有製剤(制酸剤、リン酸結合剤)

ビタミンCは、腸内でアルミニウムと結合して、アルミニウムの腸内吸収を増加させてしまう可能性があります。特に、腎機能障害のある人は、こうした薬と一緒にビタミンCのサプリメントを飲むと、アルミニウム中毒を起こす危険があります。

  • 女性ホルモン剤(経口避妊薬、更年期症状改善薬、PMS/生理痛改善薬など)

ビタミンCが、血液中のエストロゲン濃度を上昇させてしまう可能性があります。エストロゲン過剰は女性ホルモン系の様々な疾患(乳がんなど)をひきおこす原因のひとつです。

ビタミンCは検査数値に影響する

高用量のビタミンCのサプリメントの使用によって、次の様な検査数値に影響を及ぼすことが判っています。

  • 血清ビリルビン
  • 血清クレアチニン
  • 便潜血のグアヤック分析

そのため、1日の推奨量を超えるビタミンCのサプリメントを服用している人は、健康診断/検査時に検査責任者に必ずその旨を伝えておく必要があります。

ビタミンCは食品から摂ることが重要

統合食養学は、ホリスティックな栄養学ですから、体の栄養状態を考える時、ミクロ栄養素(サプリメント)ではなく、マクロ栄養素、つまりホールフード(食品そのもの)で食べることが大切だと考えます。

今回ご紹介したビタミンCに関する多くの研究論文も、概ね、ビタミンCは食事(野菜や果物)から摂取しなければ体内で上手く機能しないこと、サプリメントでは効果がないことを証明しています。

そのため、ここにビタミンCの多い食品をリストアップしておきました。

ビタミンC豊富な食品

米国食品医薬品局(FDA)は、100g中に一日の必要量の10%以上を含んでいる時、その栄養素を豊富に含んでいると定義しています。

その定義に従えば、ここに掲載している食べ物は全て、ビタミンC豊富と言って良い食品ばかりです!!

海苔にビタミンCが豊富に含まれているというのは意外ですね。ただ、海苔を100g食べるのは、なかなか大変なことです(笑)

ビタミンC豊富な果物

フルーツに限定して表を作成すると次の通りです。

やはり柑橘類が多いですね。詳しい機能について記事を執筆してあるものは、下にリンクしておきましたので、併せてご確認ください。

野菜に限定して表を作成すると次の通りです。

ピーマン、ブロッコリー以外では、濃い緑色の葉物野菜にビタミンCが多く含まれている印象です。

詳しい機能について記事を執筆してあるものは、下にリンクしておきましたので、併せてご確認ください。

ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

アスリートにとって、ビタミンCは欠かせないビタミンだと言えますね。激しい運動によって発生する活性酸素を素早く還元し肉体の回復力を早め、コラーゲンとミネラル吸収によって骨を強く柔軟に保ち、貧血を予防し、エネルギーを生み、必要なアドレナリンやドーパミンをもたらしてくれます。

そして、病気の予防にはサプリメントではなく、ビタミンCを多く含む野菜や果物を食べることが効果があること、病気の改善のためには、静脈から直接血液中にビタミンCを投与しなければ効果がないことがわかっていただけたのではないでしょうか。

もし、ビタミンCのサプリメントを飲んだら「がんが治る」的なことを言っている人がいたとしたら、それは確実に詐欺か無知ですから、相手にしないのが賢明です。

もし体調に不安があり、ひとりで取り組むことに難しさを感じているのなら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?

公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。

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参考文献

  • Vitamin C“, Micronutrient Information Center, Linus Pauling Institute, Oregon State University
  • 食品からの鉛の摂取量」、日本で実施された摂取量調査、農林水産省

ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング