
バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
なぜ効かない人がいるのでしょうか
抗がん剤を含めさまざまな治療薬が、必ずしも万人に対して同じ様に効くとは限りません。
なぜ、効かない人がいるのでしょうか?
免疫療法が効かないがん患者の腫瘍では、免疫T細胞が分泌するタンパク質(アペリン)の機能を喪失させる遺伝子変異が起きていることが2017年8月31日の科学専門誌『ネイチャー』で発表されました。
なぜ、どのようにして、遺伝子変異が起きたのかは、まだ不明です。
ただ、2017年6月6日のネイチャーに掲載された論文にヒントがあるように思い、要約しながらお伝えします。
この論文を読んで、統合食養学の根幹ともいえる「バイオ個性に沿って食べる」ことの重要性を改めて感じました。
なお、裏付けとなる研究論文は、最後に参考文献として一覧にしています。
ヒトゲノムによるパーソナル・メディシンの限界

1. 遺伝子では1%しか説明できない
従来の個別化医療(パーソナル・メディシン)の研究は、特定の薬に対する体の反応を、個々人のゲノム(遺伝子)に合わせてコントロールすることに焦点があてられてきました。
しかし、あなたは、あなた自身の遺伝子だけでなく、その100倍もの共生細菌のゲノムから影響を受けて生きています。(詳しくは『バクテリア・コミュニケーション』をご参照ください。)
ヒトゲノム(あなたの遺伝子)の解析から得た情報だけでは、あなたの体の反応の原因の1%程度しか分からないのです。
病気が起きた原因も薬の副作用の原因も、あなた自身の遺伝子の分析だけでは99%が説明不可能なんです。
2. マイクロバイオーム
そうしたことから、近年、特定の薬が、ある人に効くのかどうかを判別するために、個々人に固有の共生細菌のゲノム(マイクロバイオーム)が、鍵となり得ることを示す証拠が蓄積されています。
6月4日、米国ルイジアナ州のニューオリンズで開かれた米国生物学会(the American Society for Microbiology)の会合では、次の現象を示す証拠データが提出されました。
健康な人であっても、
共生細菌の構成の違いによって
薬を代謝する過程が異なる
ヒトの遺伝子に合わせて薬を造るだけでは十分ではなく、腸内細菌の遺伝子に合わせた薬を造ることが必要であることが示されたのです。
医薬品の構造を変容させる腸内細菌

通常、薬は、肝臓のグルクロン酸抱合と呼ばれる化学物質群を通して無毒化され代謝されます。
しかし、ある種の腸内細菌が発する酵素が、グルクロン酸抱合群を除去してしまい、薬を有毒化することが判明しました。
ニューヨーク市のアルバート・アインシュタイン医科大学(the Albert Einstein College of Medicine)の数理分析生物学者リー・ガスリー(Leah Guthrie)博士は、特定の患者に下痢などの副作用を起こす抗がん剤イリノテカンについて論じています。
1. 動物実験結果
マウスを用いた研究では、ある種の腸内細菌が産生するβ-グルクロニダーゼと呼ばれる酵素が、イリノテカンや他の薬の化学構造を変化させることが観察されています。
2. ヒト実験結果
ヒトの腸内細菌が薬をどのように代謝するのかを見極めるために、健康な20人の成人から採取した大便のサンプルが用いられました。
サンプルにイリノテカンを混ぜ、イリノテカンと接触した腸内細菌が産生した物質を調べると、高度に有毒化したイリノテカンが検出されたサンプルがありました。
更に、その腸内細菌が産生したタンパク質を分析すると、イリノテカンを有毒化する腸内細菌を有している人には、次の特徴がありました。
- β-グルクロニダーゼをつくる腸内細菌が多い(マウスと同じ現象)
- 糖分を細胞に輸送するタンパク質(グルコース・トランスポーター)を高い水準で保有している
そして、イリノテカンを有毒化したサンプル(糞便)の所有者たちは、毒物を吸収しやすく、消化器官に問題を起こしやすいことが示唆されています。
β-グルクロニダーゼの影響は広範に及ぶ可能性

肝臓は、グルクロン酸抱合群を利用して、イリノテカンだけでなく様々な薬を処理します。
ある種の腸内細菌が産生するβ-グルクロニダーゼが、グルクロン酸抱合群を排除し、他の薬をも有毒化するとしたら、影響はかなり広範に及ぶ可能性を、研究者は示唆しています。
1. 抗炎症性医薬品
ある種のβ-グルクロニダーゼが、イブプロフェンなどの抗炎症性の薬を変容させ、長期間の使用によって腸内で毒性を発生させることが既に観察されています。
2. パーキンソン病薬/抗不安薬
腸内細菌が、パーキンソン病や抗不安薬などの医薬品を変容させることを示唆する多くの事例が既に報告されています。
3. HIV予防薬
6月2日に発表された論文では、膣の中に塗るジェルタイプのHIV予防薬テノフォヴィルは、ガードネレラ菌を膣内にもっている女性には効果がないと報告しています。この細菌は、薬を素早く分解し不活性化させてしまいます。
腸内細菌の顔ぶれと薬

ハーバード大学の生化学者エミリー・バルスカス(Emily Balskus)博士は次のように述べています。
「医薬品を開発する際、動物実験段階では毒性が見られないのに、
ヒトで毒性をもってしまう化合物がなぜあるのかを
腸内細菌による干渉よって説明できるかもしれない。」
しかしまだ多くのことが疑問として残っています。例えば、薬を崩壊させてしまう腸内酵素を、まだほとんど特定できていません。
腸内細菌と医薬品との相互作用を理解し、医者が治療の一環として処方できるようになるまでには、もう少し時間がかかるかもしれませんが、そのうちにきっと、
どの菌を持っている人には、どの薬が効くのか
どの薬に合わせて、どの菌を増やせば良いのか
そんなことが医療として行われるようになるのではないでしょうか。
特殊な食事療法が鍵になる
あるマウスを用いた実験では、食事療法によって腸内細菌の顔ぶれを変更したことで、「ディゴキシンと呼ばれる心臓病薬の構造が壊されなかった」と、報告されています。
バルスカス博士は次のようにも述べています。
「もし腸内細菌が問題を起こしそうであれば、
腸内細菌の酵素の発生を抑制する薬を処方したり、
あるいは、腸内細菌の構成を変えるための
特殊な食事療法を提供できるようになるかもしれない。」
1. エピジェネティクス要因
既に多くのエピジェネティクス(ゲノムの発現に影響を与える環境要因)の研究によって、特定の遺伝子のスイッチは、オンにしたりオフにしたりできることが明らかにされています。
そのエピジェネティクス要因には、食事とライフスタイル(運動、飲酒・喫煙など)が含まれています。
食事やライフスタイルは、あなたの遺伝子のスイッチのオン/オフに影響するだけでなく、当然、あなたの腸内細菌の顔ぶれにも影響しています。
詳しくは、『腸内細菌の構成は遺伝と食事どっちで決まる?』をご確認ください。
2. 腸内細菌の顔ぶれを変える食事
人間に共生しているバクテリア(共生細菌)は、そこに存在する栄養を食べて生きています。「そこに存在する栄養」つまりそれは、あなた(宿主)が食べる食事です。
宿主が好んで食べる食事を、好んで代謝する細菌が、結果として腸内に残り、多く繁殖します。
甘いものが好きな人の腸内には、砂糖を好む腸内細菌が増え、お肉が好きな人の腸内にはお肉を好む腸内細菌が増えます。
食事を変えることで、腸内細菌の顔ぶれを変えることができるのです。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス

特殊な病気や特殊な薬と特殊な腸内細菌との関係については、これからの研究成果を待たなくてはならないかもしれませんが、現在までに報告されているさまざまな研究は、少なくとも善玉菌と呼ばれる腸内細菌のグループが腸内に多いほど、病気予防になるだけでなく、薬による副作用が少ないことを明らかにしています。
善玉菌とは、いわゆる、乳酸菌とビフィズス菌に含まれる菌類です。
例えば、がん治療と腸内細菌と食事との関係については『プレシジョン栄養療法』をご確認ください。また、ワクチン接種による副作用との関係については『ワクチンと腸内環境』をご確認ください。
1. 統合食養学のバイオ個性というアプローチ

統合食養学には「バイオ個性」という考え方があります。
私たちはひとりとして同じではない
という考え方です。遺伝子構成がまったく同じ一卵性双生児も、バイオ個性は異なるとのアプローチを執ります。
統合食養学のバイオ個性とは、ひとりひとりの遺伝的な要因と食事やライフスタイルだけでなく、あなたの人間関係や仕事/キャリアなども含めた概念です。
だから、ひとりとして同じバイオ個性を持った人はいません。
私はこのバイオ個性というアプローチは、つきつめたらマイクロバイオーム(共生細菌のゲノム)のことなのではないかと思っています。
あなたが、ご自身のバイオ個性に沿った食事をすることで、あなたの共生細菌の顔ぶれをあなたに適したものに変えることができます。
もしおひとりで取り組むことに不安や難しさを感じるのでしたら、ヘルスコーチと、一度、話をしてみませんか?
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。

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参考文献
- “Gut bacteria can stop cancer drugs from working“, 06 June 2017, Sara Reardon
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング


