バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
カルシウムの食事摂取基準(2020)
成人一日の摂取基準です。
- 女性|必要量:550mg、推奨量:650 mg、限界量:2,500mg
- 男性|必要量:600~650mg、推奨量:750~800mg、限界量:2,500mg
カルシウムの性質
私達の体重の1~2% がカルシウム
体内のカルシウムの99% は、骨と歯の中にあります。
残りの約1% は、血液や組織液、細胞に含まれ、身体のさまざまな機能を調節するはたらきをしています。
血液中のカルシウム濃度は非常に狭い範囲で一定に保たれている
一定の範囲よりも濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンが分泌されます。副甲状腺ホルモンは腎臓でビタミンDを活性化し、活性化したビタミンDは小腸からカルシウムの吸収を増加させます。
更に、副甲状腺ホルモンと活性化したビタミンDは、破骨細胞を活性化させ、骨からカルシウムを放出するよう刺激します。また、腎臓でカルシウムの再吸収を増やし、尿への排出を減少させることで、血液中のカルシウムの濃度を元に戻します。
副甲状腺ホルモンの量が高い状態が続くと、骨から溶け出すカルシウムの量が多くなり過ぎ、骨がスカスカ(骨粗鬆症)になっていきます。
詳しい仕組みについては『血中のカルシウム量が多いと診断されたら気をつけたい食事と検査して欲しい病気』をご参照ください。
カルシウムの機能
生命維持機能
カルシウムは、生命維持に極めて重要な次の様な機能を担っています。
- 血管の収縮と弛緩
- 筋肉収縮
- 神経伝達
- ホルモン分泌を助ける
タンパク質と酵素の補酵素
カルシウムは、次の様な役割の補酵素としても働いています。
- 多くのタンパク質と酵素を安定させ
- タンパク質と酵素の活性を最適に維持する
例えば、止血にとって重要となる、ビタミンK依存性凝固因子を活性化する働きを担っています。ビタミンKについては『ビタミンKの作用と豊富な食品』をご参照ください。
カルシウム欠乏の原因
血液中のカルシウムが不足する原因には、様々な要因が考えられます。
- カルシウム摂取量が少ない|偏食など
- ビタミンD摂取量が少ない|偏食/日光浴不足など(参考『ほぼ全ての細胞が必要とするビタミンDはほぼ全ての機能と関係している』)
- マグネシウム摂取量が少ない|マグネシウムの不足は破骨細胞の反応を低下させる(参考『マグネシウムの働き』)
- 塩分摂取量が多い|ナトリウムは腎臓でのカルシウムの再吸収を阻害する
- 食品添加物・炭酸飲料|食品添加物や炭酸飲料に多く含まれているリンは、腎臓でのカルシウムの排出を増加させる
- カフェイン飲料|カフェインは短時間でカルシウムの尿への排出を増加させる
- 副甲状腺の機能低下
- 慢性の腎臓疾患
- 成長期|カルシウムの必要量が増加し、供給量が追い付かないケース
カルシウム欠乏
骨粗鬆症
骨の約40%はカルシウムですから、カルシウムが不足すれば骨粗鬆症が起こります。そのため上述したカルシウムを欠乏させる要因によって骨粗鬆症が起こります。
なお、骨粗鬆症が起こる原因は上述した要因だけでなく、加齢、エストロゲン不足、喫煙、代謝性疾患(甲状腺機能亢進症など)、特定治療薬(コルチコステロイド,抗痙攣薬など)の使用によっても起こります。
なお、運動は骨粗鬆症の予防要因ですが、十分なカルシウムの摂取をしないまま、タンパク質に偏った食事で運動をすると返って骨粗鬆症になります。
骨の健康に必要なのはカルシウムだけではない
マグネシウムやビタミンD、やせ過ぎ、喫煙、運動不足など、多くの要因が関連しています。
- マグネシウムの多い食品を食べる
- 日光浴をする、ビタミンDを含む食品を食べる
- 発酵食品を食べる
- 適正体重を意識する
- 禁煙
- 運動
を心掛けてくださいね。
骨の健康については、『骨粗鬆症を予防して骨を健康にする食品は?ヒント:カルシウムじゃありません』、『みかんの筋がコレステロールを下げ、認知症を予防し、骨を再生!』もご参照ください。
カルシウムの病気予防効果
大腸がん
カルシウムには大腸がんを予防する働きがあることが裏付けられています。
ヒトを対象とした臨床研究で、1日にカルシウムを1,200~2,000 mg摂取することで、大腸がんになる前のがん性ポリープを有意に減少させたことが報告されています。その後、5年間、がん化することがなかったとのことです。
その他にもカルシウムを十分に摂取している人達は、そうではない人達と比べて、大腸がん発症リスクが低いことが多くの論文によって報告されています。
高血圧
1日のカルシウム摂取が100 mg増えるごとに、収縮期血圧(上の血圧)が0.34 mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が0.15 mmHg下がることが確認されています。
1日に1,000~1,200 mgのカルシウム摂取は、高血圧の予防と改善に有効であると報告されています。
子癇前症(しかんぜんしょう)
子癇前症については『危険な妊娠合併症を予防できる簡単な方法』をご確認ください。
妊婦によるカルシウムの摂取量と子癇前症の発症率は、逆相関していることが判明しています。つまり、カルシウムを多く摂っている妊婦ほど、子癇前症になり難いということです。その詳しい仕組みについては判っていないものの、カルシウムによる代謝が関係しているのではないかと考えられています。
なお、カルシウムが不足している妊婦に対して、カルシウムの補給は予防効果を示したものの、既にカルシウムを適切に摂取している妊婦に対しては、追加的なカルシウム摂取に有意性はなかったことも報告されています。
PMS(月経前症候群)
食事からのカルシウム不足が、PMSの発症と関係していることがいくつかの研究で報告されています。また、カルシウム補給によって、症状が改善することが確認されています。
PMSの改善には『毎月の辛い生理痛やPMSに統合食養学的なアプローチはいかがでしょうか』をご参照ください。
鉛中毒
鉛が体内に入ると、骨に蓄積されて20年以上も残り、骨の代謝が起こる際に、骨から放出された鉛によって臓器ダメージが起こります。また、妊婦の場合、血液中の鉛は胎盤を通過して、胎児の神経系の発達に極めて重大な影響を起こします。
カルシウムの多い食品を食べることで、胃腸からの鉛の吸収を減らすことができ、骨から放出された鉛による臓器ダメージを予防することが確認されています。
鉛の蓄積予防と排出については『ひどい場合には死をもたらす有害な鉛を体内に入れない簡単な方法と体から排出する方法とは』をご参照ください。以前、IN YOU に提供した記事です。
カルシウムの過剰摂取による副作用
ミネラルは、不必要な分は、尿といっしょに排出されてしまうから、たくさん摂っても心配ないと考えるのは、危険です。
高カルシウム血症
過剰摂取によって、高カルシウム血症を起こすことがあります。詳しい高カルシウム血症については『血中のカルシウム量が多いと診断されたら気をつけたい食事と検査して欲しい病気』をご確認ください。
泌尿器系結石
結石の予防法については『ハーバード大学のお医者様が勧める簡単な方法』をご参照ください。
ミルクアルカリ症候群
信頼度の高い症例報告が存在するのは、ミルクアルカリ症候群です。ミルクアルカリ症候群が発症する最低健康障害発現量は約2.8g/日です。
とはいえ、通常の食事をしていて、一日 2.8 g / 2,800 mg 以上のカルシウムを食べることは困難ですから心配する必要はありません。サプリメント錠からカルシウムを摂っている人は要注意です。
他のミネラルの吸収抑制
カルシウムは、小腸での他のミネラルの吸収を阻害してしまう作用があるので、他のミネラル欠乏/不足の症状を起こすことがあります。
特に、カルシウムの大量摂取によって、鉄分、マグネシウム、亜鉛の吸収を減少させることが報告されています。
カルシウムのサプリメント
カルシウムのサプリメントには、骨を強くする効果があまりないとする研究報告が多く、しかも、心疾患や脳障害との関係が報告されているので、多くの研究者が、食品から可能な限り多くのカルシウムを摂るように勧めています。
詳しくは『カルシウムのサプリメントと心疾患、脳障害、アルツハイマー病、骨粗鬆症との関係』をご覧ください。
カルシウムのサプリメントには、
- 炭酸カルシウム
- 乳酸カルシウム
- グルコン酸カルシウム
- クエン酸カルシウム
- クエン酸リンゴ酸カルシウム
などが使用されています。このうち、炭酸カルシウムが一般に使用されている、最も安価なカルシウムのサプリメントですが、このカルシウムが骨になることはほぼありません。
どうしてもサプリメントで摂る必要がある場合には、食事と一緒に摂ることで多少吸収を高めることができます。上記の中では、クエン酸カルシウムとクエン酸リンゴ酸カルシウムの吸収率が高いです。
なお、天然由来(貝の殻や動物の骨)のカルシウムのサプリメントには、鉛が混入している可能性が指摘されています。
カルシウムのサプリメントは合成か天然かによらず、あまりお勧めできません。多くの研究者が言うように食事から摂ることが大切です。
カルシウムのサプリメントと医薬品
次の医薬品を服用している人は、カルシウムのサプリメントは、2時間空けてから服用することが推奨されています。カルシウムの多い食品を食べる際にも時間を空けると安心です。
- チアジド系利尿剤(ハイドロクロロチアジドなど)|高カルシウム血症の発症リスクを上昇させる
- ジギタリス(ジゴキシン)|不整脈の可能性を高める
- 抗生物質(テトラサイクリン系とキノロン系)|薬剤の吸収低下
- ビスホスフォネート系製剤|薬剤の吸収低下
- レボチロキシン系製剤|薬剤の吸収低下
- H2遮蔽薬(シメチジンなど)|炭酸カルシウムとリン酸カルシウムの吸収を減少
- プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾ-ルなど)|炭酸カルシウムとリン酸カルシウムの吸収を減少
なお、食事によるカルシウムの摂取は、カルシウムチャンネル遮蔽薬の作用には影響しないと考えられています。
カルシウムを多く含む食品
こうしてみると、カルシウムが多いイメージの牛乳ですが、100g当たりにしてみると、他の食品の方がずっと多く含んでいるように見えますね。
干しエビだったら10gで1日の必要量が摂れます。ひじきなら40gで摂れますが、ひじきは戻すとかなりの量になるので40g食べるのは大変です。
食品によっては大量に食べるのが大変なものがあるので、そう言った意味では、牛乳は、200ml(約200g)=コップ1杯飲むだけで、1日に必要なカルシウムの約3分の1 (220mg)がカバーできちゃうので、お手軽なのでしょうね。
牛乳にはいろいろな疑義があることも確か
ホルモン剤や抗生物質による汚染
大手乳業メーカーの牛乳は、ホルモン剤や抗生物質を投与された牛の乳であることが問題です。グラスフェッドの(牧草のみを食べて育った)牛の乳を購入することが重要となります。
授乳中の母親がアルコール飲料を飲んではいけない理由が理解できれば、理由は明白ですよね。母親が飲食したものが母乳に出てしまうからです。
つまり、母牛に投与されたホルモン剤や抗生物質は、そのまま私達が飲む牛乳の中に混在していることになります。
乳糖ラクトースの消化
乳糖を消化分解できない日本人は非常に多いです。牛乳を飲むとお腹が緩くなるのはこのせいです。
乳タンパク質カゼインの功罪
牛乳に含まれているカゼインというタンパク質が自己免疫疾患を引き起こす可能性について、権威ある研究機関から様々な警告が発せられているので、注意が必要です。
牛乳のカゼインについては、こちらをご覧ください。『今更ですが、グルテン極悪説をどう思いますか?』
一方で、痛風になってしまった人にとっては、カゼインが尿酸値を下げる働きがあり、痛みの緩和に効果があると言われています。
が、それに関する研究論文では、”may reduce(下げるかもしれない)“という結論になっているだけです。また他の論文も、「巷で言われているカゼインと尿酸値の関係については、確固たる証拠が必要だ」とするものが多く、この効果については科学的な証明がまだなされていないようです。
乳脂肪に減肥効果
チーズやバター、ギーなどに含まれている乳脂肪には、オメガ6不飽和脂肪酸の一種、共益リノール酸(CLA)が多く含まれています。これは、天然に含まれるトランス脂肪酸です。
構造的には、トランス脂肪酸なのですが、ヒトの体脂肪の減少に効果を示す天然の脂肪酸のため、FDA(米国食品医薬品局)やデンマークではトランス脂肪酸の規制から除外しています。
また、こんな報告もあります。
乳製品を定期的に食べると死亡率と心血管疾患リスクが低下する
5大陸21カ国15万3,220人(アルゼンチン、バングラディシュ、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、インド、イラン、マレーシア、パレスチナ自治区、パキスタン、フィリピン、ポーランド、南アフリカ、サウジアラビア、スウェーデン、タンザニア、トルコ、UAE、ジンバブエ)の各国の35~70歳を対象に、1年間に食べた乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなどを含む製品、全乳製品、低脂肪製品)について調査した結果を、Lancet誌が2018年9月11日に発表したものです。
マインド・ボディ・メディシン講座の中でも牛乳についてふれますが、それがグラスフェッドの牛乳であることを前提に、牛乳は、乳糖、乳タンパク質、乳脂肪を区別して付き合う必要がある食品であるように思われます。
さて、あなたは、牛乳を飲みますか?飲みませんか?
植物性ミルクについては『どのミルクがお好みですか?植物性ミルクのいろいろと作り方』をご参照ください。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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参考文献:
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痛風とカゼインに関する論文
“Effects of skim milk powder enriched with glycomacropeptide and G600 milk fat extract on frequency of gout flares: a proof-of-concept randomised controlled trial“, Dalbeth N1, Ames R, Gamble GD, Horne A, Wong S, Kuhn-Sherlock B, MacGibbon A, McQueen FM, Reid IR, Palmano K, Ann Rheum Dis. 2012 Jun;71(6):929-34. doi: 10.1136/annrheumdis-2011-200156. Epub 2012 Jan 23. - 乳製品について:“Association of dairy intake with cardiovascular disease and mortality in 21 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study” 2018、DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)31812-9 (Lancet誌、2018年9月11日)
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング